※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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488 眷属たちの困惑

「サキ様、お話があります──」

 

 執務室代わりに使っている後宮側の一室に、珍しくも妖魔三匹が連れだってやって来た。

 いまは奴隷宮側に集めている貴婦人や令嬢たちの世話をさせている雌妖たちであり、見た目は人間族の姿だが、変身をしているだけであり妖魔である。

 

 サキたちと監禁している令嬢や令夫人たちは、この王宮区の中で、いわゆる国王の後宮とアネルザの管理していた王妃専用の奴隷宮に分かれて過ごしているが、こっちの後宮側にいるのは、いまだに寝台に鎖で繋げているルードルフと、その世話をするために連れてきている小間使いの雌妖とサキしかいない。

 そして、貴族令嬢や貴婦人たちは、いまはことごとく、後宮に並ぶ王妃用の宮殿の地下である「奴隷宮」に集めていて、この三匹はその管理の中心になる雌妖だ。

 

 あのスクルズが残していった置き土産のために、様子がおかしくなってしまった黄色組を、とりあえず連中の望み通りに赤組を集めている奴隷宮側……すなわち、もともとの王妃宮の地下宮に移してから、数日がすぎていた。

 結局、あの様子なら、一緒にした方が性修行に励むであろうと判断した結果だ。

 

 理由はどうあれ、強要しなくても性調教に積極的に励むようになったのであれば問題ないし、そっちの方がいいに決まっている。

 要は、好色なロウが王になったときに喜ぶような淫乱女たちがロウの帰還までに、出来上がりさえすればいいのだ。

 

 その代わりに、サキはなにもしなくなったルードルフが健在であるように見せかけるために、ルードルフの監視を兼ねて、こっちで色々とやっており、奴隷宮についてはこの連中に任せきりにしていた。

 用事があるときには、サキの方から呼び出すのが専らであり、向こうからやって来るのは珍しい。

 

「なんだい、お前ら?」

 

 サキは椅子に座ったまま、目の前に並んだ三匹に視線を向けた。

 

「サキ様、実は人間族が怖い」

 

 すると中央の一匹が言った。

 ラミル族で個体名はラミダナだ。

 この三匹は、直接に調教に携わる役目ではなく、調教係の雌妖たちを管理する役目なのだが、ラミダナはさらにそのリーダーだ。

 とても神妙な顔をしている。

 サキは訝しんだ。

 

「怖い? 連中が命令に従わないのかい? ある程度は折檻してもいい。別に懲罰を禁止しているわけじゃないよ。このあいだのあいつは、度を越したことをやっていたから、ぶっ飛ばしただけだ。調教に精を出さない愚図な人間族は、遠慮なくやりな」

 

 サキは言った。

 このあいだというのは、先日のことだが、赤チョーカーの令嬢のうち、女騎士のなんとかという女を目の敵にして、調教ではなく、ただの嫌がらせのいじめをしていた雌妖がいたので、全員の前で半殺しにしたことがあった。

 ちゃんとした理由があるならともかく、罰にならない不始末をでっちあげて、わざと大量の水を飲ませては、排尿を禁止するという嫌がらせを繰り返していたのだ。

 そいつは、すでに異界に帰したが、それ以来、懲罰という名の時間外調教は、あまりやらなくなったと耳にしていた。

 それで、人間族の女たちが図に乗り出したのだろうと思った。

 

 しかし、ラミダナたちは首を横に振った。

 

「いや、そういうんじゃないんだ。連中は、ちゃんと調教に励んでいる。だけど、数日前から随分と変わってきていて……」

 

「数日前? とにかく、問題ないだろう。こっちはこっちで忙しいんだよ。いいから、主殿(しゅどの)が戻るまでに、淫らで立派な性奴隷に仕上げときな。いいね──」

 

「だけど、もしかしたら、やり方が間違っているかもしれないと思って……。いずれにしても、一度来てくれればわかるよ。連中が変なんだ。人間族というのは、ああいうものなのかもしれないけど、あたしらは、人間族にはそんなに慣れてないから、やり方が間違っているのかなあと思って……。その点、サキ様は人間族にお仕えするくらいだから、詳しいだろうし、一度、来てくれないか?」

 

「変だと?」

 

 サキは首を傾げた。

 どうも、要領を得ない。

 まあ、来てくれればいいと言うなら行きもするが……。

 

「そろそろ、午後の調教の終わりかねえ……」

 

 サキは、呟きながら立ちあがった。

 ラミダナがほっとしたように頭をさげる。

 サキは、小間使いに使っている雌妖を呼んだ。

 

「あい、サキさま」

 

 すぐに、ひとりが目の前に現れた。

 姿は十歳くらいの人間族の可愛らしい童女だが、実際には二百を超えている。

 しかし、知能が低いので、人間族の大人や老女に化けると、ぼろが出る。その点、子供の姿だっから、不自然な点がなくなるので、呼び出した眷属のうち、知能が低いのは子供に変身させている。

 ただ、妖魔の能力そのものは、どの眷属もサキの折り紙付きだ。

 

「奴隷宮に向かう。その間、ルードルフになにかあったら、通信球で呼べ。また騒ぎ出したら、眠らせろ。よいな」

 

「あい、わかりました、サキさま」

 

 その小間使いの雌妖がにこにこと微笑んで返事をする。

 サキは、ラミダナたちを促して、奴隷宮に向かって歩みを進めた。

 

 それにしても……。

 あれから、五日余りか……。

 サキは歩きながら思った。

 

 突然にルードルフを支配していた闇魔道が希薄になり、サキを襲ってきたあいつを殴り倒して監禁するという事態の変化が起きてから、五日ほどが経っている。

 あれから忙しかった。

 まずは、ルードルフだ。

 

 闇魔道による感情制御がなくなり、冷酷性が希薄になったため、すっかりと臆病な面が表になってしまったルードルフだが、とにかく、あの手この手で逃亡を企てようとして閉口した。

 見つける度にぶちのめしているが、このままでは死ぬだけだと思い込んでいて、なかなか諦めない。

 たった五日なのに、その間に、十数回の逃亡を企てる根性だけは、まあ感心する。

 だから、なかなか目が離せない。

 昨日も、あんまり腹がたったので、ルードルフを寝台に縛りつけ、尿道に金属の細い棒を突っ込んで、半日ほど微弱な電撃を流しっぱなしにしてやった。

 ところが、あいつはなにを勘違いしたのか、そろそろ観念しただろうとやってきたサキに、次は余の番だぞと、ぼろぼろの身体でサキを抱こうとし、さらにぶちのめすことになった。

 テレーズがいなくなり、闇魔道も消えたところで、不能まで回復してしまったのが誤算だったが、もう一度勃起できなくした方が管理しやすいのだろうか。

 いま、迷っている。

 

 とにかく、ほかにも、正体が妖魔と知らない小間使いの雌妖に外に向けた手紙を託そうとしたり、窓から助けを求める文字を書いた布を放ろうとしたりと色々だ。

 そのくせ、好色だけは変わっておらず、童女にしか見えない雌妖をたらしこもうと手を出そうとしたり、はたまた、サキがいくら折檻したところで、その都度、男根を勃起させたりするので、拷問もままならない。

 かといって、ロウに討伐してもらう前に殺すわけにもいかず、サキとしては扱いに難儀している。

 

 また、サキは、ルードルフだけに関わっているだけじゃない。

 アネルザの父親の辺境侯に編成させている叛乱軍のこともある。

 そっちは、チャルタだけでなく、いまはピカロも送り込んで、その二匹に支配させているが、まあ順調にいっているようだ。

 ほぼ完全に出撃準備は整っていて、あとは旗頭になるロウが合流するのを待つだけの状況のようだ。

 ロウさえやって来れば、あとはロウがなにもしなくても、転がるように、ロウが悪王を倒して新王になるという事態が進むようにすべての段取りが整っているみたいだ。

 チャルタたちの操りにより、辺境候にはロウという一介の子爵を旗頭にすると宣言もさせているが、それでも特に問題なく、周辺の貴族を中心に叛乱軍は勢力を増やしている。

 

 そして、なによりもテレーズの闇魔道の影響の消えた王宮側の官吏や女官や大臣連中、それに王軍の支配の修復だ。

 とにかく、全部をテレーズではなく、サキ自身の支配で操りをやり直した。

 もともと浸透していたルードルフが取り出した王家の秘宝とやらも、もちろん使わせてもらっている。

 それもなんとか終わり、この王宮を外部と完全遮断した態勢は継続している。

 

 あとは、ロウだけだ。

 いずれにしても、そのうちにロウも戻るだろう。

 早く会いたいものだ。

 王になるのは面倒だと嫌がるかもしれないが、だからこそ、こんなに性奴隷たちを集めたのだ。きっと、サキを誉めてくれるに違いない。

 

「そういえば、奴隷宮に監禁している者の中に、家族との連絡を取りたいと泣きつく者はいないか? それについては、どのように対応しているのだ?」

 

 サキは、ラミダナたちとともに、奴隷宮に向かって歩きながら言った。

 後宮と奴隷宮は地下道で繋がっていて、実際には壁ひとつ挟んで管理が変わるだけで、ふたつの建物に区分されているというよりは、ひと繋がりの大きな地下宮という感じだ。

 

 妖術による瞬間転送で移動するのではなく、歩いて向かっているのは、この人族による魔道妨害結界だらけの場所では、サキひとりならともかく、三匹を連れての転送術は困難だからだ。

 三匹に限らず、この場所で転送術を駆使できるのは、サキくらいのものだ。

 ほかに、人族ならスクルズは、妨害結界に関係なく魔道を遣っていた。

 それに比べて、あの日、大喧嘩したベルズが、ここに突撃してこないのは、あるいは、ベルズにはこの宮廷内に魔道で侵入することができないのかもしれない。

 

 それはともかく、サキが監禁している令嬢や貴婦人が外部にいる家族と連絡をしたがっていないかと質問したのは、実は以前、連中の外にいる家族から、監禁されている令嬢や令夫人たちと連絡がしたいという嘆願が山のように届いてたのをふと思い出したからだ。

 積み上げている嘆願書を発見したのは、まだテレーズがいる頃のことであり、最初は放っておいたが、放っておくと何度でも繰り返し山のように届いてくるのもわかった。

 

 だから、業を煮やしたサキは、繰り返し嘆願書を送って来る家族がいる令嬢と夫人数名を選んで、その嘆願書を口に咥えさせて、対象となる令嬢を木馬責めにし、その光景を映録球に記録して、王都内の全ての貴族屋敷に送りつけてやった。

 一応、テレーズの名を使ってやった。テレーズは笑っていただけだったが……。

 つまりは、うるさく嘆願を繰り返せば、監禁している子女を痛めつけるぞという脅しだ。

 おかげで、ぱったりと嘆願は消えたが、口に咥えさせたくらいなので、外の家族が心配しているという事実だけは、令嬢どもも悟ったことだろう。

 それで、変化はないかどうか気になったのだ。

 

「家族との連絡をしたがる者はいない。あたしの知る限りはだ。むしろ、集まっている連中は、家族のところに戻ることを怖れている。帰りたくないんだ」

 

「帰りたくない?」

 

 どういうことだろうかと思ったが、そういえば、五日前に、後宮側にいた女たちを奴隷宮側に移動させたとき、スクルズを神に派遣された救世主だと思い込んで、ロウのことを「天道(てんどう)様」としてお待ちするのだと、妙な信仰心に取りつかれてしまったあいつらが、同じように「戻りたくない」と口にしていたことについて、記憶を呼び起こした。

 

 忙しかったので、そいつらを奴隷宮に移動させてからは、まだそっちには顔を出しておらず、夫人たちが赤チョーカーの令嬢娘たちと再会してからのことはわからないが、そういえは、あの妙な信仰もどきはどうなったのだろう?

 あまり気にしてなかったが、いま思い出した。

 

 奴隷宮側に到着した。

 やってきたのは、主な調教の場所である大広間だ。

 

 全裸の令嬢や貴婦人たちが、幾つかの組にわかれて、調練を受けていた。

 後宮側が人の気配がほとんどなくなって寂静としているのに比べて、こっちは女の体臭とか性の匂いでむんむんとしている。

 なによりも、性的調教をしているので、女たちの身体の醸し出す熱気と体臭がすごい。

 サキたちは連中の邪魔にならないように、目立たない広間の隅で、全体を見渡せる位置に陣取った。

 

 いまは、そろそろ夕方であり、午前中と午後の二回と決めている毎日の性調教が終わる時刻だ。

 この時間から後は、懲罰を命じられた女と家事をする黄色チョーカー以外は、ある程度の自由な時間になる。

 衣類も渡されるし、決められた時間だけとはいえ、厠の許可もあるし、浴場で身体を洗うこともできる。

 食事だって、はっきりいって、調教係である雌妖に渡すのよりも、遥かに美味で高級なものだ。

 食事は、チョーカーの色によって変わりはない。

 全員に十分なものを支給させている。

 

 サキとしては、ここに集めた性奴隷とその候補要員について、決められている調教さえ受け、ロウのために淫乱になってくれさえすれば、ほかのことで不自由させるつもりはないのだ。

 サキが求めているのは、調教だけだ。

 

 改めて、今日の調教の様子を観察する。

 今日の調練という名の調教の組み分けは、四個のようだ。

 

 尻を上にあげ、鞭打ちを受けながら、「集団おねだり踊り」の練習をしている組──。

 

 後手に拘束をされ、舌だけの女同士の百合の性愛により、舌技の実践練習をしている組──。

 

 即席の触手の池に放り込まれて、ひたすらに身体の感度を鋭敏にする処置を受けている組──。

 

 部屋中を四つん這い歩きで、さまざまな痴態を号令で行う「基本調練」をしている組──。

 

 それぞれの組を直接に調教する雌妖は、三匹から五匹というところだろうか。

 調教を受ける女体の人数は、以前よりもかなり多くなったみたいだ。

 各組がそれぞれに十数名くらいずつであり、全部で百名はいないが、それに近いくらいいる。

 四組のうち、いま「おねだり踊り」としている組と、百合の性愛が赤チョーカーであり、ほかは青チョーカーだ。

 

 以前とは異なり、黄色組のほとんどが合流してから、チョーカーの色の意味は若干の変化をしていて、これはサキも報告を受けている。

 別段に強要をしたものではなく、赤組の令嬢たちに再会してからの令夫人たちが言い出したことであり、数日前からのことらしい。

 変わった申し出だとは思ったが、問題はないと思って許可した。

 そのための新たなチョーカーも届けさせた。

 

 すなわち、「赤チョーカー」が、集まった貴族子女の中で生娘であり若い個体であって、ロウの性奴隷の最有力候補の集団であることには違いはないが、これまでとは異なる新たな青チョーカー組を作り出したのだ。

 

 青チョーカー組は、以前はルードルフ用の奴隷の意味があったのだが、こっちの都合で一度なくしていた。しかし、合流してからは、赤チョーカー以外で調教を希望し、ロウの性奴隷になるための調練を受ける者という位置付けになったのだ。

 とにかく、本当に眷属たちが強要したものではなく、黄色チョーカーの者から、ロウに選ばれなくてもいいので、調練としての調教だけは受けたいと申し出があったらしいのだ。

 

 いや、そうじゃないな……。

 実際には「調練」ではなく、「修行」という言葉を使っていたか……?

 調教としての修行をしたいと申し出てきたんだっけ……。

 まあいい……。

 

 それはともかく、この奴隷宮の管理をさせる召使いの意味もある黄色チョーカーだったが、そこから、かなりの人数が調練を希望してきたようだ。

 サキとしては、よく考えれば、ロウは別段生娘であることにこだわりはないようだし、むしろ、ロウの愛人の中で、最初から生娘だった女の方が少ないくらいだ。

 また、年齢もロウにはこだわりもなさそうだ。

 だから、年増でも、見込みのある者を増やすのもいいと考え、調練の参加を許した。

 

 これが、先日からの「青チョーカー」だ。

 一方で、「黄色チョーカー」が召使いとして、いわゆる家事全体のことを行うことには変わりない。

 奴隷の序列としては、上から、赤、青、黄の順だろう。

 

 だが、こうやって見ていると、随分と青チョーカーが多い。

 細部は、横にいるラミダナたちに任せているが……。

 

「随分と、青チョーカーが多いな」

 

「サキ様に言われたので、希望する者は、青チョーカーとして調教を受ける機会は与えた。不甲斐ない場合は、黄色チョーカーにすぐに格下げするという条件でな。実際にやらせてみたら、手を抜く者はいないし、積極的だ。毎日青は増えていくし、今朝になってもまた増えた。制限する理由も格下げする理由もないので増えるばかりだ。だめだったか?」

 

 ラミダナは首を傾げた。

 妖魔なので、人族のように丁寧な言葉を使うほどの言語能力はない。

 ため口なのは、言語能力の低さを示すものであり、サキを軽んじているわけではない。

 

「別に構わん。奴隷宮の管理に支障がないのであればな。まあ、青チョーカーになれば、家事からは免除される。調教に耐えることができるなら、黄色チョーカーでいるよりは、青になって調教さえ我慢した方がましだろうさ」

 

 サキは笑った。

 だが、ラミダナが首を横に振った

 

「いや、違う。家事については、よくわからないが、赤チョーカーも交代でするようになった。調教時間には家事を行えないから、それ以外の時間で……。連中が勝手にそうしたことで、そうしたいなら、すればいいから好きなようにさせている」

 

「そうなのか?」

 

「そういう意味では、黄色が青になったところで、家事は免除されない。むしろ、いまは青チョーカーがほとんどになってしまったので、日中については、青チョーカーの全員が毎日調教を受けるのではなく、交代で、家事担当の日と、調教参加の日を作ってこなしている。逆に、むしろ、黄色チョーカー組は、実際には家事はしなくなっている。奴隷たちのリーダー的な何人かが黄色のままになっている体勢かな? よくわからんが、黄色が合流してから、あっという間にこうなった」

 

 ラミダナが記憶を思い起こすような素振りをしながら言った。

 しかし、サキはびっくりした。

 

「黄色は家事をせずに、青が交代で家事だと? 黄色チョーカーは、主殿の性奴隷候補ではなく、使い道のない女の意味なのだぞ。しかも、そいつらが令嬢どもを管理するのか──?」

 

 サキは声をあげた。

 ラミダナは、慌てたように姿勢を正した。

 

「なにか駄目なのなら、すぐに元に戻す。連中がそうしたいと言ってきて、そうしてもらえば、これからはもっと調教に熱を込めてやるということだから好きなようにさせた。その通り、連中は一生懸命にやっている。でも、サキ様が駄目だと言うなら戻す」

 

「駄目とは言わんが……」

 

 サキは腕組みをした。

 よくわからんが、ちょっと気を許したことで、随分と奇妙なことになったようだ。

 

「それに、黄色チョーカーとして残ったのは、人族の女では年配の組であり、そいつらに令嬢たちを管理させた方がうまくいくみたいなのです」

 

 ラミダナではない別の雌妖が言った。

 

「どういうことだ?」

 

 サキは言った。

 そのとき、午後の調教が終わることを示す合図の鐘の音が鳴り響いた。

 四個の場所で続けられていたそれぞれの「調教」が一斉に終わる。

 

「見ていればわかると思う……」

 

 ラミダナが小さな声で言った。

 すると、別の扉から青チョーカーを率いた黄色チョーカーの女が集団で入ってきた。

 青チョーカーも黄チョーカーも服を着ている。

 ただし、召使い用の服だが……。

 

「服も許したのか?」

 

 サキは声をあげた。

 ここに集めた連中については、徹底的に性奴隷としての自覚を促すために、調教時間には衣類を許さず、調教を受けることのない黄色チョーカーについては、その代償としてすべての時間を貞操帯のみで過ごすように命じたのだ。

 それがここで覆されている。

 

「そ、そうしたいというので……」

 

 ラミダナはばつが悪そうに言った。

 これは、サキの指示に明確に逆らう行為だ。

 ぶちのめしてやろうと思ったが、なにか理由もあるのだろうと思い直した。

 だから、わざわざ、サキにここに足を運んでくれと頼んできたのだろう。

 

「……理由は後で聞く……。わしの指示に逆らった理由が、つまらないものだったら、半殺しではすまんぞ」

 

 サキは小さな声で言った。

 ラミダナは蒼くなったが、一方でほっともしているみたいだ。

 

「よ、よかった……。とりあえず、見ていればわかるんだが、調教というだけのことだったら、その方が上手くいくのだ。実際にうまくいっている。黄色が混じってから、この連中の調教に対する意気込みがからりと変わった。だから、連中の自由を許した。でも、だんだんと不安になってきて……」

 

 ラミダナが言った。

 サキはラミダナの表情に、こいつは本当に悩んでいるのだということを思わせるものを感じた。

 考えてみれば、このラミダナは人族の言葉を上手に使うことには限界はあるが、思慮深く、勝手なことはしない。

 信頼もできる。

 だから、ここの管理を任せている。

 

 一方で目の前の令嬢たちだ。

 彼女たちについては、調教の疲労や快楽漬けで動けない者を外から来た青チョーカーが肩を貸し、全員が大広間の中心に集められつつある。

 調教を受けた女たちは床に座らせられ、疲れのひどい者などは青チョーカーの付き添いが肩を支えたりしている。

 

「魔道による傷の回復はさせないのか?」

 

 サキは訊ねた。

 本来であれば、調教のときに受けた鞭痕などは、調教の終わりとともに魔道で治療することになっている。

 しかし、見たところ、調教係に当たった妖魔は令嬢たちの集団の背後に立つだけで、魔道をかける様子はない。

 

「夜の自主修行があるのでな。治療はその後に申し出があった者から順番になる。最終的には、自主修行が終わってから全員の治療をして、翌日に残さないように処置をする」

 

 ラミダナが言った。

 自主修行──?

 なんだ、それ……?

 

 そうこうしているうちに、これまで調教を受けていた全員が広間の中央に集まったようだ。

 前には五人ほどの年配の貴婦人が令嬢たちに向かって立っている。全員が黄色チョーカーだ。

 これが、ラミダナが衣類の着用を許したリーダー的な黄色チョーカー組ということだろう。

 五人とも貞操帯はしているようだ。服越しだが、貞操帯の与える淫らな振動に苛まれているのは、眺めていればわかる。

 それだけは、ラミダナも勝手には外さなかったみたいだ。

 なら、まあいいか……。

 

「それでは今日の反省会を始めます。では、順番にあなたから、今日の調教の成果と、我ら天道様にお仕えするために、明日に努力することを言いましょう」

 

 喋ったのは前に立つ黄色チョーカー組であり、あれは公爵夫人か……?

 名は、フラントワーズだったような……。

 そして、フラントワーズに指名された令嬢が立ちあがった。

 赤チョーカーだ。

 

「はい、アドリーヌは今日の反省をします。今日は午前中も午後も、お尻踊りの調練をいたしました。踊りについては全員がきちんと合わせられるようになったと思いますが、天道様に見ていただいただけで、股間を大きくしていただけるほどのいやらしさには、まだ淫靡さが不足です。おそらく、わたしたちの色気が足りないのだと思います。これからのこととして、天道様のことを頭に思い浮かべるだけで、お股のお汁が垂れるような、もっと淫乱になることが必要と思っています。明日は朝の朝礼のときに、想像だけで達するのが目標です。そのために、夜の修行では親友のエミールとともに焦らし調教の調練をしたいと思います」

 

「いい心がけですね。あなたは、いまのところ、おそらく赤組の中の筆頭奴隷でしょう。皆様の見本となれるように、立派な淫女になってください。では次──」

 

「はい、エミールです、今日受けた調教は、先ほどのアドリーヌと同じです。わたしは、アドリーヌほど身体の感度の開発が進んでいません。それで、天道様に喜んでもらえるために、触られただけで達するような敏感な性奴隷を目指すためにもっと感度の開発をしたいです。それで、寸止め修行が感度開発に効果があるとお聞きしたので、アドリーヌと自主調教をしたいと思います。もしも、効果的な方法があるのであれば、できれば、ご教授願いたいのですが」

 

「そうですね。わたしもお教えしたいのですが、何分にも、わたしは、調教の修行の認められない皆さま以上に半端者の身であり、お答えできる知識を持ちません。後ろにおられる調教係様の方々で、具体的なやり方などを教えていただける方がおりましたら、迷える子羊たちのために、教えを願えませんでしょうか」

 

 フラントワーズが令嬢たちの後ろに立っている監督官の雌妖たちに呼びかけた。

 すると、一匹が口を開く。

 

「……おそらく個人差があると思うけど、あたしが知っているのは……」

 

 そいつが寸止め調教のやり方を喋り出す。

 ものすごく、真面目な口調だ。

 

 なんだ、なんだ、なんだ?

 なにが始まったのだ?

 そして、なにが起こったのだ?

 サキは目を丸くした。 

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