【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
サキははっとした。
一方で、連中の祭儀とやらの中で、いま運ばれてきた小冊子の朗読が始まっている。
「……
フラントワーズが手に持っていた小冊子を朗読し始めると、全員が一斉に両手を胸の前で握り頭をさげる動作をした。
令嬢や貴婦人たちだけでなく、集団の後ろ側に跪いた調教係の雌妖たちもだ。
それはともかく、サキが驚いたのは、フラントワーズの朗読とともに、フラントワーズが開いた小冊子から、薄っすらとした霧のように微かな魔道が拡がり始めたことだ。
さらに全員がうっとりと満足そうな表情になり、集会に穏やかな雰囲気が作られたみたいになった。
「これは……」
サキが思わず身を乗り出した。
これは、「
彼女たちをして、非常に信じやすくさせている正体がわかったのだ。
強い魔道でもないし、危険なものでもないが、あれは言霊に違いなかった。
つまりは、ごくまれにだが、特に強い能力を持った者が魂を込めて発した言葉には、その発した言葉そのものや、それを記した文字に、魔道のような力が宿ることがある。そして、その言葉が現実の事象に影響を与えるのだ。
それが言霊だ。
どうやら、最初に女たちに感じたスクルズの光魔道の影のようなものも、この言霊だったらしい。
身じろぎひとつする者はなく、広間にフラントワーズの言葉だけが響いている。
しかし、朗読しているフラントワーズが時々不自然に言葉に詰まることがある。
それが変化らしい変化だ。
多分、あれはフラントワーズが装着している貞操帯が振動をしたのだろう。
なんでもない風を装っているが、フラントワーズたちがしている貞操帯は、いまは無秩序に強弱をつけた振動を時々発生するようにしており、ずっと淫らな刺激をフラントワーズも受け続けているはずだ。
そういえば、ほかの黄色チョーク組も時折、微かだが身体を反応させる仕草をしている気がする。
もっとも、注意していないとわからないくらいの反応だ。我慢しているのだろう。
ともかく、朗読は静かに続いており、サキは、さらに言霊に意識を集中した。
言霊の力には様々なものがあるが、あの小冊子の朗読によって漂い始めた言霊は、意思に反して思考を変質させるというような悪影響を及ぼす洗脳効果はない。だが、緩やかであるが洗脳効果には違いない。
フラントワーズが朗読している言葉をずっと聞いていると、それを心から受け入れるような穏やかにさせる効果が発生するようだ。
それだけでなく、ある種の催眠効果も加わり、幸福感に包まれて、読まれている言葉を無条件に受け入れるような気持ちになると思う。
そういうものが、あの言霊にある。
あれが連中をこんな状態にしているのか……。
それだけじゃないが、かなりの影響を及ぼしているのは間違いない。
また、調教係の連中が集会に加わりだしたのも、これが原因だろう。
言霊の影響を受けたのだ。
しかし、フラントワーズがあの小冊子に込められている力に気づいているかどうかは不明だ。
言霊は、意図的に作るものではなく、強い能力が持った者が強い言葉を発したり、強い意思を持って文字を書いたときに勝手に作られるものである。
また、言霊は非常に自然に事象に溶け込むので、普通は言霊の存在には気がつかない。
サキほどの能力があるから、わかっただけだ。
それにしても、あれをどうするかだな。
放っておいてもいいが……。
害はないし……。
ロウに背くような行為をするならともかく、あれはその逆だ。
この祭儀とかいう集会を続けさせ、毎日あの言霊を浴びさせ続ければ、こいつらは心の底からのロウに対する信者になるだろう。
すでにそうなっている。
しかし、問題はロウがそのような洗脳状態ともいえる性奴隷たちを受け入れるかどうかだ。
その気になれば、この世のすべての女や雌を支配するほどの力を持っているにもかかわらず、ロウが女の意思に反して、自分に従わせるのを非常に嫌っているのは知っている。
支配に置いているエリカたちからして、身体の支配はするくせに、心の従属は最小限度の状態だ。
サキに対してもそうだ。
淫魔術や真名の支配を受けているものの、その支配は穏やかだ。
もはや逆らう気持ちもないが、おそらく、やろうと思えば、サキはロウに対して自由意志をもって攻撃することもできると思う。
ロウがしているのは、その程度の支配だ。
やはり、取りあげるべきかな……。
サキはそう思った。
「ラミダナ、フラントワーズが読んでいるものを聞いていて、なにか感じるか? あそこに加わりたくなるとか」
訊ねた。
ラミダナは首を傾げた。
「穏やかな気持ちにはなるかな。しかし、加わりたいとは思わん。どうかしたのか、サキ様?」
ラミダナは答えた。
どうやら、ラミダナには効果はないようだ。
もちろん、サキには効果はない。
あの程度の言霊であれば、高位能力の妖魔には影響などない。人族の高い能力者でも同様だ。ラミダナもそこそこの妖魔なので問題はないのだろう。
そもそも、ラミダナは人族の言葉がもともと苦手で、言霊の影響があるほどに言葉を操れない。
言霊というのは、そもそも、その言葉を理解できるものでなければ、影響などないからだ。
「お前たちはどうだ?」
サキは一緒にいる他のふたりにも訊ねた。
「と、とてもいい気持ちになります。涙が出るような……」
「心がすっとします、サキ様」
二匹が言った。
この二匹はかなり影響を受けている。
見たところ、そわそわしているし、サキが許せば、このまま集会に参加してしまうような気配だ。
おそらく、そうやって調教係の妖魔たちも取り込まれたのだろう。
まあ、サキが集めた眷属の雌妖たちは、その気になればロウが犯してもいいくらいの気量よしであり、これからロウのために役に立ちそうな能力ものを選定したつもりだ。
「ロウ教」ともいえるような、目の前の狂信者集団に加わってもらって、なんの支障はないのだが……。
いずれにしても、言霊に加わっている魔道の波動は間違いなくスクルズのものだ。
もっとも、もはや、スクルズだけでなく、あそこにいる連中の魔道と思われるほかの波動も感じる。言霊が重ねかけされているのだ。
だが、間違いなく、根っこはスクルズだ。
そもそも、最初にフラントワーズたちが熱心な信仰もどきになった切っ掛けはあれだ。
やっと、わかった。
サキが、連中が薄っすらとした光魔道を帯びているなと思ったのは、その正体は言霊だったのだ。
つまりは、スクルズがここにやって来たとき、スクルズはあまりにも熱意を込めてロウのことを語ってしまい、おそらく、本人は無意識だと思うが、その言葉に言霊がかかった……。
それが、死んだはずのスクルズが復活した奇跡と思い込んだフラントワーズたちが、信仰のようなものにすり替えた。
さらに、この宮廷内では魔道が遣えないとはいえ、そもそも、フラントワーズをはじめ、貴族女の大半は大なり小なり、魔道が扱える者が半分以上だ。
スクルズの言葉を信仰に変えてしまったフラントワーズたちもまた、あまりにも熱心に信じたばかりに、自らの言葉に、無意識に言霊を込めてしまった。
それが何重にも重なり、あの小冊子ができあがったに違いない。
「あの小冊子になにかあるのか、サキ様?」
ラミダナがサキに訝しむような表情を向ける。
「ふむ……。どうやら、あのフラントワーズが読んでいる小冊子には、軽い“魅了術”がかかっているな」
言霊というのが珍しい現象なので、サキはわかりやすく「魅了術」という言葉を選んだ。
「魅了?」
「わしやお前ほどの能力があれば影響はない。しかし、魔道を遣えない者や低い者には影響がある。あの狂信者集団に取り込まれたくなるような……」
サキの言葉にラミダナがびっくりしている。
だが、ほかの二匹はサキの言葉を耳にしても、それほどに気にした様子はない。
それどころか、いまでもうっとりとした顔で、フラントワーズの読みあげる朗読を聞いている。
これが言霊か……。
サキは思った。
それにしても、またしてもスクルズか……。
元はといえば、あいつが自分の喋った言葉に言霊を込めてしまったから、目の前の異常集団ができあがったのだ。
サキは舌打ちした。
「そもそも、あの小冊子はなんだ?」
ラミダナに視線を向ける。
「連中が手書きで作ったものだ。材料は渡した。教典だそうだ。いまでも一生懸命に暇なときに書き写して増やしている。もうかなりの者が持ってるんじゃないか」
「複製だと? 持ってるか?」
「おう、持っている。連中が一生懸命に手書きで複製しているから危険なものじゃないかどうか確かめるために、複製のひとつを取りあげたのだ。だが、危険なものだったのか……。気がつかなかった。あたしは人族の文字は読めんし……。ところで、すぐにやめさせないでいいのか、サキ様?」
ラミダナは口惜しそうな顔をした。
そして、収納魔道により、小さな紙の綴りを出す。
サキはそれを受け取った。
「いや、危険なものではない。わし自身も、あのまま続けさせるか、やめさせるべきか迷っておる。実害はないのだ」
実害はない。
あの言霊は、ロウを心から慕う気持ちと、喜んで性奴隷になるという感情をどんどんと増幅させるだけだ。
それに、もともとそれに近い感情がなければ、自分の意思に反して、あの集団に入ろうという気持ちにはならない。
言霊が人の感情に影響を与えるのはその程度だ。
「中身は
ちょっと目を通してみると、これまでのロウの王都における活躍を「奇跡行為」と神格化して、ここに綴られている。
おそらく、ここにいる連中がロウの業績を思い出して集め、それを誰かが文字にしたのだ。
ロウもなんだかんだで、冒険者として有名人だし、冒険者上がりでいきなり子爵の爵位を受けただけでなく、王妃アネルザや王太女イザベラと昵懇であることは貴族界ではよく知られていたので、貴族たちは一生懸命にひそかにロウの情報を集めまくっていた。
だから、ロウの噂や行動について、ここで集めることも難しくはなかっただろう。
それにしても、時系列はばらばらだが様々なロウの行動が「奇跡」として記されている。
軍隊でも取り押さえられなかった冒険者ギルドに現れた悪霊を一瞬にして退治した奇跡──。
これはよく知らないが、クライドとかいう悪党をロウが殺したときの話か?
悪意に染まった者がロウに接することで、たちまちに改心して許しを乞いた奇跡──。
これは知らんな。
改心したのは悪女と書いてあるから、淫魔術で女をたらしこんだ話か? 相手は悪役貴婦人とか、悪役貴公子とあるな……。
また、ロウに従わなかったキシダインが雷に打たれて死んだのも、ロウの奇跡と書いてある。
いま読んでいる大ラット退治も猛獣を自在に従わせる奇跡だそうだ。
さらに、各地に拡がる魔獣や魔物を手もなく退治したり、特異点という空間のほころびを簡単に消滅させることもできると記してある。まあ、あれはクグルスに手伝わせたことのはずだが……。
んっ?
スクルズのことも書いてある。
悪霊に取りつかれたが、ロウによって救われ、さらにロウに信心したことで魔道の能力が飛躍的に向上したことも奇跡として書いている。
ロウの淫魔術による能力向上のことのようだが、スクルズが喋ったのか?
もちろん、死んだスクルズが復活したのも、ロウの起こした奇跡だと記述されている。
「なるほどなあ……」
サキは苦笑した。
こうやって整理されて書かれると、確かにロウが奇跡を次々に起こしている「
いずれにしても、これは複製らしいが、こっちには言霊は宿っていない。
複製には言霊はこもらなかったみたいだ。
「これはもらうぞ、ラミダナ」
「は、はい」
ラミダナが頷いた。
サキは小冊子を収納術で格納する。
視線を集会に戻す。
ちょうど朗読が終わったみたいだ。
「では、交わりの儀に入ります」
フラントワーズが言った。
黄色チョークのひとりが小さな祭壇の片側にある白い布を剥ぐ。
現われたのは、スクルズが残していった真っ黒い男性器のディルドだ。
触ればたちまちに絶頂に陥るというとんでもない淫具だ。
サキは、うっかりとあれに触れて、フラントワーズたちの前で失禁してしまった醜態を思い出してしまい、顔が赤らむのを感じた。
また、交わりの儀だとフラントワーズが宣言したことで、静かだった集会が一斉にざわめいた。
女たちがそわそわと落ち着かない感じになっている。
しかし、困惑しているとか、そういうものではない。
なにか、嬉しいことが始まるので、それが待ち遠しいという感じだ。
誰も彼も、笑顔になっている。
「触り過ぎないようにしてください。節度を守ってください、皆さん。触るのは一瞬です。天道様から与えられるはずの幸福感の片鱗をこれで感じましょう。本物の天道様はこの数十倍もの幸せをわたしたちに与えてくださるのです」
マリアが大きな声で言った。
それを合図にして、全員が音楽を口ずさみだした。
歌ではなく、曲だけだ。
スクルズの神殿長就任式のときの式典でも使われていた曲だと思った。
それを歌抜きで曲だけ口ずさんでいる。
「……では前の列から……」
フラントワーズが声をかけると最前列の令嬢や貴婦人が一斉に立ちあがった。行列を作ったまま、ディルドがある台車に並んでいく。そのあいだも、全員による歌は続いている。
なにが始まるのだろうかと思ったら、列の最初の女──服を着た青チョークの若い貴婦人だが、そいつがディルドに手を伸ばして触る。
「あふうううっ」
次の瞬間、その女がその場に崩れ落ちた。
あっという間に絶頂してしまって腰が抜けたのだ。
「さあ、場所を外して……」
マリアとほかの黄色チョークが手を貸して、そいつを横にどける。
次の女がディルドに触り、そいつもまた、嬌声をあげて崩れ落ちた。
なんだ、あれ……。
さすがにサキはどん引きした。
ああやって順に触り、ひとりひとり絶頂するのが「交わりの儀」らしい……。
これを音楽の口ずさみとともに、全員が回るまでするようだ。
とにかく、全部が終わるまで待つことにした。
フラントワーズとは話をしないとならないが、まあ、終わってからでいい。
そして、奇妙な儀式が続いていく。
令嬢と貴婦人がひとりひとり絶頂をして崩れ落ち、すぐにどかされて次の女になり、ということが果てしなく繰り返される。
しゃがみ込む女はすぐにどかされるし、詰まるような感じになったら、次の女が触りやすいように台車をちょっと移動させたりして、案外に整斉と続いていく。
「ああ、気持ちよさそう……」
そのときだった。
ラミダナの横の雌妖が思わずという感じで口ずさむのが聞こえた。
視線を向けると、顔が上気して真っ赤であり、おそらく無意識であろうが腿を擦りわせるような仕草をしている。
サキは嘆息した。
しばらく、「交わりの儀」が続いていたが、ひとりの背の高い女のときに、その女が躊躇したように身体を硬直させるのが見えた。
いままで、誰ひとりとしてディルドに触るのを躊躇う者がいなかったので、なんとなく注目してしまった。
「大丈夫です、ベアトリーチェ様……。皆さまも笑いませんし、そのときには、わたしたちも、お手伝いしますから……」
後ろから声をかけたのは、あのアドリーヌだ。
そして、サキはディルドに触るのを躊躇った背の高い美女が何者かを思い出した。
少し前にサキがここにいる全員の前で半殺しにした雌妖の意地悪で、繰り返し尿意拷問を受けていた騎士だ。
そういえば、ベアトリーチェという名前だったか……。
「あ、ありがと、アドリーヌ……」
ベアトリーチェがやっとディルドに触れた。
「あふううっ、んんんんっ」
ベアトリーチェががくりと膝を折った。
だが、しゃがみ込みはしなかった。
しかし、身体をぶるぶると震わせて、首をのけ反らすような仕草をしており、ベアトリーチェが絶頂感に見舞われたのは明白だ。
すぐに後ろのアドリーヌがディルドに触れる。
「あはああっ」
彼女が股間に両手を当ててしゃがみ込んだ。
「ああ、また……。もう、いやだああっ」
そのときだった。
アドリーヌの前に絶頂をしたベアトリーチェがその場で失禁を始めたのだ。
じょろじょろと彼女の足元に、彼女がしたおしっこの水たまりが拡がっている。
「だ、大丈夫です……。い、行きましょう、ベアトリーチェ様。ど、どうか手を……。エミール、ここをお願いね」
アドリーヌがベアトリーチェを抱え込む。
すでに放尿は止まっているが、彼女を外に連れ出す気配だ。
また、エミールと呼ばれたのは、アドリーヌの後ろに並んでいたやはり、赤チョークの令嬢だ。
絶頂をしてしゃがんでいたが、すぐに立ちあがって布を青チョークの召使い姿の貴婦人から受け取って床を拭きだした。
そのあいだに、ベアトリーチェとアドリーヌは広間から出ていく。
なんだったのだ、あれは……?
そして、すぐにさっきのちょっとした騒動などなかったように、交わりの儀が続きだした。
やがて、妖魔たちの番になり、同じように絶頂して崩れ倒れる。
雌妖たちも恍惚として幸福そのものの顔になっている。
「……では、テルミナ様から……」
マリアが声をかけた。
黄色チョークの番のようだ。
ほかの女たちはすでに終わって、前と同じように床に座って並んでいる。
「あああっ」
テルミナと呼ばれた女が崩れる。
そのときに、服の下でちりんちりんという鈴の音がした。
服は許されたようだが、股間の貞操帯と乳首に結びつけさせている鈴はそのままのようだ。
まあ、あれは両方ともサキの魔道であるので、いずれもサキの許可がなければ外せない。
外せるのはサキが許可した厠の時間のときだけだ。
身体の手入れもその時間内にするしかない。
いまでもそうしているのだろう。
それにしても、黄色チョークの連中は平然としていたものの、集会のあいだも貞操帯の淫靡な振動はずっと続いていたはずだ。
あれだけ表に出さないのは、あれはあれで、かなりの精神力を必要だと思う。
まあ、身体が慣れてきたというよりは、淫具に苛まれていることを隠すことができるようになったということだろう。
「そういえば、青チョークに変わった黄色チョークの連中のしていた貞操帯はどうした? 外したのか?」
思い出して訊ねた。
青チョークにしたといっても、もともとは黄色チョークだ。
青に移動した黄色組の貞操帯の扱いは、このラミダナに一任している。着脱の操作も、チョークを青に変えた時点で、ラミダナで自在にできるようにしていた。
「調教に参加するときには外させている。だが、調教に参加しない女は全員が装着している。別に抵抗はしない。服を着るように全員が素直に自ら身につける。そして、貞操帯の刺激に耐えるのも、連中にとっては修行らしい。身体は感じていても、表には出さない……。それも、天道様に仕えるための大切なことだと言っていたかな」
ラミダナが言った。
「なんでも修行なのだな」
サキは半分呆れて言った。
一方で、交わりの儀が最後のフラントワーズの番になっている。
「くうっ、んふうっ」
フラントワーズはがくりと膝を折ったものの、ほかの女に比べれば、ずっと反応は小さかった。それでも、フラントワーズが絶頂をしたのは間違いない。
マリアがフラントワーズの背中を支えるような仕草をした。
だが、フラントワーズはそれを断り、自分の足ですぐに真っ直ぐになる。
「はあ、はあ、はあ……。そ、それではこれで今日の祭儀を終わります……。皆さま、これからも天道様にために励みましょう。スクルズ様の言葉を心から信じるのです。わたしたちの幸せはその先にあります……。では、お祈りを……」
全員が胸の前で手を組む。
「わたしたちは天道様のしもべです……」
「天道様のために……」
「天道様のお求めになる淫らな性奴隷になりましょう……」
全員が同時に言った。
これで終わりらしい。
散会になった。
サキはフラントワーズを呼び出そうとして声をあげようとしたが、ふと見ると、すでにフラントワーズは大勢の女に囲まれて話をする態勢になっている。
また、サキの前にも、令嬢がふたりほどやって来た。
さっきのベアトリーチェとアドリーヌだ。
まだ服は着ておらず、裸だ。
ふたりとも、手で身体を隠すようにしている。
しかし、ベアトリーチェについては、布のようなものを股間に巻いている。
おしめか……?
サキは首を傾げた。
「あ、あのう、サキ様──。こちらから話かける無礼をお許しください。でも、どうしてもお礼を言いたくて……」
アドリーヌが口を開いた。
お礼?
なにか、こいつに直接礼を言われることをしたかな……?
「礼とはなんだ?」
サキはアドリーヌを見た。
「三角木馬です。あのような修行のものを与えてくださって感謝します。わたし、あの四台の木馬を管理する係になったんです。それで代表してお礼を申したくて」
アドリーヌが丁寧に頭を深々とさげた。
だが、三角木馬のお礼だと……?
そういえば、少し前に、家族から嘆願書をしつこく王家に送りつけてくる令嬢と貴婦人を四人ほど選んで、嘆願書を口に咥えさせて、三角木馬に長い時間乗せてやって苦しめたことがある。
しつこく嘆願書を送る貴族家への見せしめとして、拷問をしている姿を映録球で記録し、テレーズの名で、当該家族だけでなく、王都の全貴族に送りつけてやったのだ。
そういえば、その四人の中に、このアドリーヌが入っていたな。
与えたというよりは、あれからほったらかしにしていだけだが、あれをなにかに使うことにしたのか?
多分、あの教典から流れる言霊による洗脳の影響だと思うが、それについて礼を言われるのか?
「お前は馬鹿か? それは、わしへの当てこすりか? 女官長と陛下の命令とはいえ、あのような仕打ちをしたのはわしだぞ。しかも、お前が全裸で木馬を跨がされて苦しむ姿は全貴族家に送られた。もはや、貴族としては生きていけまい。そのような仕打ちをしたわしに礼を言うのか?」
面倒くさい。
寵姫の真似事はやめだ。口調は元に戻す。
「構いません──。お父様たちには申し訳ありませんが、わたしはもう天道様への信仰とともに生きていくつもりですので……。それよりも、三角木馬はいい修行の道具です。苦痛の中から快感を見つける修行に本当に役に立っています。自主調教のときに、みんなで交代で使っております。いいものをありがとうございました」
「はあ……」
サキはもう頷くしかなかった。
「わ、わたしからもお礼を……。先日は助けてもらってありがとうございます、サキ様」
今度は、ベアトリーチェが頭をさげた。
こっちは、先日こいつに意地の悪い尿意拷問を繰り返していた雌妖を半殺しにして、追い出したことについての礼だろう。
「それはいい……。だが、それよりも、その腰につけているのは、おしめか? ただの下着ではないな」
サキは気になって訊ねた。
すると、ベアトリーチェが真っ赤になり、ちょっと悲しそうな表情になる。
「え、ええ……は、はい……。お、おしめです……。そ、その……。た、助けてはいただいたのですが、そ、そのう……。おもらし体質になったというか……。ちょっとしたことで、すぐに漏らしてしまうのです。治療術でも治らなくて、心の問題だとは、みんなに言われているのですが……」
ベアトリーチェが意気消沈したような顔になる。
そういえば、さっき絶頂のときに失禁したな。
だから、触るのを躊躇ったような仕草になったのか……。
おそらく、あまりにも繰り返し限界を越える尿意を我慢させられ、さらに失禁を繰り返させられた後遺症だろう。
サキは笑ってしまった。
「哀れだが、主殿が……ロウ様が喜びそうだな。そんな面白い性癖をロウ様が見逃すわけがない」
サキは言った。
すると、ずっと暗かったベアトリーチェがぱっと顔を輝かせた。
「本当ですか、サキ様──。天道様は喜んでいただけると思いますか? こんな失禁を繰り返すような病気の女を受け入れてくださると?」
「むしろ、喜ぶと思うぞ」
あまりものベアトリーチェの勢いに、気押される感じになり、サキもたじろぐ感じになった。
いずれにしても、ロウが好きそうな性癖だ。
間違いない。
まあ、性癖ではないのだろうが……。
「よかったですね、ベアトリーチェ様」
アドリーヌがベアトリーチェに笑顔で声をかけている。
ベアトリーチェも破顔している。
「嬉しいです、サキ様──。わたし、これを治しません──。それはもう自信を持って……。天道様に気に入ってくださるなら、こんな病気も大歓迎です」
ベアトリーチェがもう一度頭をさげた。
そして、アドリーヌとともに、もう一度礼を言って立ち去っていった。
サキは溜息をついた。
「サキ様」
そのとき、ラミダナが声をかけてきた。
ふと見ると、フラントワーズが近くに立っていた。
「サキ様にお話があるのですが、よろしいですか? サキ様に得になるお話だと思います」
フラントワーズが言った。
彼女だけでなく、黄色チョークの五人全員が揃っている。
「そうだな。わしも話がある」
サキは言った。
しかし、フラントワーズ側から、サキに得になる話だと?
なんだ?
すると、フラントワーズが口を開いた。
*
まだまだ続きます。