※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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491 令夫人の申し出

「サキ様、この十日ほど、食材の補給がありません。それだけでなく、飲料品、衣類関係、生活物資、嗜好品、燃料用の薪、魔道具を動かすための魔法石など、あらゆる物資が入らなくなっております。塩の供給もとまりました。最初の段階は、逆に無駄だと思うくらいに潤沢に運ばれていたものが、だんだんと滞るようになり、いまは完全に停止していますね。これは、わたしたちが忘れられているというよりは、おそらく出入りの業者が来なくなっているのでしょう」

 

 フラントワーズが言った。

 サキは驚いた。

 

「食料が足りんのか?」

 

 サキはここに集めた者を飢えさせるつもりなど全くない。

 むしろ、国王並みに贅沢に暮らさせるつもりだ。

 ここの連中に期待しているのは、ロウの性奴隷になることだけなのだ。

 サキの言葉にフラントワーズは首を横に振った。

 

「食料は問題ありません。もともと、潤沢にありましたから、いまは皆で元々あったものを保存の効くように加工したりしてます。食材庫に入れておけば、魔道が働いて、いつまでも新鮮にはしておれるのですが、何分、食材庫を稼働させ続けるための交換用の魔法石も入らないのでは、いつ機能が停止になるかわかりませんしね」

 

「直ぐに手配させる」

 

 サキはとりあえず言ったが、奴隷宮への物資の補給がとまっているということ自体知らなかった。

 正宮殿から貴族や高級官吏が次々に逃げてしまい、行政機能が停止状態になっているのが原因に違いなかった。

 だが、実際のところ、サキにはなにをどうしたら、王宮内への物資の流通が再開できるかわからない。

 テレーズがいたあいだは、あれがうまく処置していたのだと思うが、いなくなってからは、サキは放置状態だ。

 勝手にさせておき、支配下に置いている人間どもが何とかするのを期待していたが、やっぱり、なんらかの指示も与えないとできんか……。

 しかし、部下として連れてきている眷属どもでは、人間族の官吏の肩代わりはできんだろう。

 

 ミランダに頭をさげるか……。

 いや、そんなことをしたら、せっかく集めたロウへの贈り物のハレムを解散させろとうるさく言うに決まっている。

 せっかく、ここまでにしたのだ。

 サキはロウに褒められたい。

 

「王都全体が食料不足になっているのですか? でも、入らなくなっているのは、食材だけでなく、王都内で生産も調達もできるもののすべてです。わたしは、おそらく流通の問題だろうと思っています」

 

「食料不足になどなってない」

 

 サキは言った。

 あまり把握はしていないが、王都が飢えているということはないと思う。

 確かに、一時期だけ不足気味の時期があって、そのときにはまだ少しは機能していた行政官が、危ない状況にあるということを報告してきたことがあった。だが、何とかしろと追い返したまま放っておいたら、王都内の市場はいつの間にか以前よりも増して物資が豊富になっていた。

 商業ギルドとやらを潰したのはルードルフであり、サキではないが、さすがにサキも住民を飢えさせれば、暴動が起きるくらいの頭はある。

 だから、気にしていたが、問題は解決したと思っていた。

 しかし、王宮内への物資流通か……。

 

「ならば、やはり、流通の問題ですね。いえ、流通の問題というよりは、王宮行政府の機能停止が問題なのでしょう。公爵家に軍が入る前から、その兆候はありましたし、我が公爵家にも、逃散の相談が大量に寄せられておりました。国王があれだけ暴政をしているのです。貴族たちが領地に逃げてしまうのは当然の成り行きです」

 

「貴族どもが逃げているのは本当だ……。領地に戻ったかもしれんし、ただ隠れているだけかもしれん。貴族ではない官吏どもの中にも、出仕をして来ない者が多数いるようだ。だが、食材だけでもなんとかする。心配いらん。食材のほかに、絶対に必要なもので不足しているものはないか? それを優先する」

 

 サキは認めるとともに、フラントワーズに訊ねた。

 やはり、ミランダに手伝いを求めるか……。

 あいつなら、あっという間になんとかしてくれると思うし……。

 だがなあ……。

 

「不足しているということはありません、サキ様。最初に言ったとおりに、保存の効くように加工をしていますし……。たかが百余り人の生活ですので、質素に生活をすれば、もともとあったものだけで、十分に賄えます。燃料用の薪も自分たちで作れますし、魔法石がなくなって水道機能などがなくなっても、王宮内の井戸から交代で水汲みします。強いて言えば、食材加工用の塩が十分ではありませんが、完全に不足するということはありません。これが数箇月ともなれば問題ですが、まあ一箇月はなんの問題もないでしょう」

 

「一箇月だな」

 

 一箇月なら、間違いなくロウは王宮に戻るか……。

 いや、戻るのは、辺境候軍に合流して、どこかで王軍とぶつからせて、それを撃破してからだから、一箇月はぎりぎりか……。

 下手をすれば間に合わんな……。

 

「サキ様、つまりは、王宮から人が逃げている。それで王宮内の行政機能が滞っている。それで間違いないですね? そもそも、ここに集められた者には、女官として働いていた者もいますしね。その者がこんな風になったのです。王宮のほかの女官も当然に逃亡するでしょうし……。最初は、奴隷宮に用足しでやってきていた多少は見た小間使いや召使いの女もまったく見ません。そもそも、警護というか、見張りというか、その王兵も見なくなりましたよ。その気になれば、脱走できるかもしれません」

 

 フラントワーズが手で口を隠すように朗らかに笑った。

 

「王兵が?」

 

 行政機能だけでなく、王兵もどこかに行ったか──?

 いや、そんなはずはないが、奴隷宮に近づかなくなったということか……?

 

「まさか、軍営に入る補給もとまっていますか? 王兵もものは食べるし、補給がとまれば、仕事などできませんよ。まあ、軍には王宮の行政とは別に、物資の調達機能があるので、そこまでの問題はないとは思いますが、軍の上層部も貴族ですから、そっちがいなくなれば、そもそも命令する者がいなくなるということです。それはどうなっているのです?」

 

「知らん──。だが逃げるなよ。逃げれば……」

 

「逃げませんよ。天道様にお仕えすることこそ、わたしたちの幸せなのです。それがスクルズ様のお導きなのです。逃げれば、天道様にご奉仕する機会を永遠に失います。以前にも言いましたが、わたしたちの一番の恐怖は天道様が戻って来られる前に、ここを出されることです」

 

「そ、そうか……」

 

 サキはそれだけを言った。

 しかし、考えてみれば、貴族が逃げれば、王宮からだけではなく、王軍からも貴族が消えるということか……。

 貴族どもが逃亡するのはいいが、軍が動かなくなるのは困る。

 ロウが叛乱軍を連れて来たときに、出動して大負けしてもらわないと困るのだ。

 

 こっちはチャルタやピカロの一匹を呼び戻すか……。

 あいつらは二匹とも辺境候軍に行かせている。

 いや、それよりも事態の把握が先か……。

 そもそも、いまどうなっているのだ……?

 サキは苦虫を噛み潰したような気持ちになった。

 

「サキ様、ここには百以上人の女がおり、赤チョークの娘たちは、毎日の調練により、天道様にお仕えする身体と心を作らないとなりませんが、青チョークの全員が一度に調練を受けるわけにはいきません。だから、一日で修行ができるのは、せいぜい三十人ほどです。それ以外はわたしたちをはじめ、家事のようなことをしています。でも、百人の世話に半分以女の青と黄のチョーカー組は不要です。それで提案なのです」

 

「提案?」

 

「男女の官吏が王宮からいなくなって、行政機能がとまっているなら、わたしたちが代わりにできると申したいのです。先程も言いましたが、ここに集められた女には、もともと女官である者も多数おります。わたしも公爵家で家宰のようなことをしていましたし、領地経営にも熟知していますので、ある程度の行政業務はできます。ほかにも、そのような女はいます。そんな仕事に不慣れな者も、教育をすれば使えます。適材適所に人を回します。その人の回しも、わたしがやります。サキ様はただ、わたしに、やれとご命じになればよいのです」

 

「お前たちが官吏の代わりを……? い、いや、だめだ。ここから出すわけにはいかん」

 

 サキははっきりと言った。

 それだけはできない。

 しかし、フラントワーズが首を横に振った。

 

「出ません。すでに、ここはわたしたちの城です。天道様がお戻りになるまで、お戻りになっても、天道様のご指示なしに、一歩も出るつもりはありません。それはわたしたち全員の総意です」

 

「しかし、いま、官吏の代わりをすると……」

 

「サキ様、行政機能が動かないのは、つまりは、書類がとまっているからです。上がいなくなっても、末端の役人が動けばいいのです。しかし、役人は書類が来なければ……つまり、指示がなければ動きません。だから、書類が動けばいいのです。ここでも書類は作れます。必要なものを運んでいただきさえすれば……」

 

「ここで書類を?」

 

「作ります。役人には現状の報告などもさせますが、機能がとまっている行政府に書類が来ても、そこでとまるだけです。行政報告などの書類も、ここに来るように手配しましょう。その命令書も作ります。わたしたちは、一歩もここからは出ません」

 

「おう、それなら……」

 

 サキは思わず声をあげた。

 こいつらが肩代わりしてくれるなら、ミランダに頭をさげなくてすむ。

 

「サキ様、サキ様は国王を自由にできますね? たとえば、必要な書類に無条件に署名をさせるとか?」

 

 フラントワーズが言った。

 もちろん、できる。

 サキは頷いた。

 

 しかし、どうでもいいが、フラントワーズはさっきから、ルードルフのことをまったく敬称も敬語も使わずに話している。

 まあ、一連のことはルードルフがやったことになっているから、敬称などもう使う気にはならんか……。

 

 そういえば、ルードルフは、ここにいる公爵家の全員を犯したんじゃなかったか……?

 公爵家の女を並べて尻を犯す映像を映録球で流したと思う。

 そのときには、公爵家の令嬢のエリザベスもつれて来いとうるさかったな……。

 令嬢の方は赤チョークに入れたので、手は出させなかったが、闇魔道がかかっていたとはいえ、思考はルードルフのものだ。つまりは、我慢していただけで、令嬢の方も前から犯したいと思っていたということだろう。

 

「だったら、問題ありません。ここで書類を作るように手続きしましょう。サキ様、まずは国王の勅命で、貴族議会と行政庁の無期限の閉鎖を命令してください。その後は、当面は王の直裁による勅令ですべてを行うと触れを出してください。それで機能の全部がここに移ります。すでに、貴族議会も行政府も停止状態でしょうから、それに与えられている権限を国王に戻してください。問題ありません。書類は作ります。サキ様はそれに国王の直筆の署名だけをさせていただけませんか? ただ、その書類を運搬する事務官だけは、手配してもらわなければなりませんが」

 

「それは問題ない」

 

 サキは大きく頷いた。

 もっとも、フラントワーズの言っていることの半分も理解できない。

 本当に人間族のやり方というのは面倒臭い。

 これも、まあいいか。こいつの言うとおりにやればよさそうだ。

 書類とやらはこいつらが作ると言っているし、書類運びには、この奴隷宮のほかにも、近衛兵や王兵に潜りこませた眷属が何匹もいる。

 書類を運ぶだけの仕事なら、あいつらでも十分にこなせる。

 

「あとは、すべての命令を勅命で動かします。王はここにいるのですから、王都のすべてをここで支配できます。わたしたちにお任せください。食材の補給などもすぐに再開させます。下級役人まで逃げてしまって機能停止している部署があれば、それもここに機能を移動させて、女たちで手配します。サキ様にはお手は煩わせません。最初に各部署に現状報告させ、それにより、必要な体制を考えて作ります。とにかく、譲渡している命令執行権を王に戻し、勅令で末端まで動かす根拠を作ります。ただ、書類に必要な材料の手配はお願いします。それだけです」

 

 フラントワーズが言った。

 

「書類材料の手配は、あたしがする。サキ様、それでいいか?」

 

 ラミダナが口を挟んだ。

 

「わかった。任せる。詳しいことは、こいつに言え。書類ができたら、わしに渡せ。それも、こいつらに言えばいい」

 

 サキは頷いた。

 すると、フラントワーズがにっこりと微笑んだ。

 なんだか、ここにいる奴隷どもに、いいように使われかけている気がしないでもないが、まあいい。

 こいつらがなんでもしてくれるなら、こんなにありがたいことはない。

 

「その代わりといってはなんですが、どうしてもお願いしたいことがあります。それをお聞き届け願えませんしょうか」

 

 するとフラントワーズが言った。

 

「願い?」

 

「はい、ひとつは、ここにいるテレミアの離縁を王命で出して欲しいのです。ほかにも、ここにはまだ形式上は、夫と夫婦である者が何人もおります。その者たちの離縁手続きがしたいのです。しかし、貴族の婚姻も離縁も国王の承認が必要です。書類を作りますので、それに王の署名を……。それを彼女の実家に、おそらく、領地に戻っているかもしれませんが、そこに文書を送って欲しいのです。サキ様には国王の署名だけを……。ほかは全部こっちでします」

 

「離縁か?」

 

「天道様にお仕えするためには、ほかの者の妻でいるわけにはいきません。わたしのように夫が死んだ女は問題ありませんが、まだ夫がいる者は全員が縁を切ることを望んでおります」

 

「それは必要なのか?」

 

 サキは言った。

 人間族は夫婦という関係を作るために、婚姻という行為をすることは知っている。

 それでつがいの約束をするのだ。

 だが、妖魔にはそんなものはない。

 まあ、種族によっては、同じような行為をする種族もあり、生涯にわたって同じ相手としか性行為をしない種族がないわけじゃないが、大抵は強い雄が気に入った雌を犯し、雌はその相手の種が気に入れば、その子を産んで育てる。

 その程度なので、人間族が婚姻というしきたりにこだわる気持ちは、正直あまり理解できない。

 強い男が大勢の女を支配し、弱ければ寝取られることもある。そういうものだと思っているし、それで強い種が残っていくのだ。

 いずれにしても、サキとしては問題ないが……。

 

「問題ないが、夫と会わずに離縁できるのか? わしは離縁という手続きはよくわからんが……。そういえば、娘たちもここだな」

 

 このテレミアという女は、確かサンドベール伯爵家だ。娘の姉妹も一緒にここにいる。娘はエミールとカミールで、十七歳と十五歳だ。もちろん、娘ふたりは生娘であり、なかなかの美少女だ。赤チョーク組にいる。

 

「サキ様、問題ありません」

 

 フラントワーズが口を挟んだ。

 

「確かか?」

 

「貴族の離縁とは両家の家長が認め、国王が認可するだけです。両家の家長の同意なくても、国王の勅令があれば、それで終わりです。後は貴族名簿を修正する書類手続きだけのことです」

 

「そういうものか」

 

 サキは頷いた。

 すると、テレミアという貴婦人が前に出る。

 にっこりと微笑んでいる。

 

「……問題はありません。夫には愛人におりますし、そちらにも子はおります。わたしたちは、ここに連れて来られた段階で貴族の女としての価値は消滅しております。おそらくですけど、夫の伯爵からわたしたちへの嘆願書は来ていないのでは?」

 

 テレミアが微笑んだまま言った。

 そういえば、来てないな。

 というよりは嘆願書をうるさく送ってくる家は限られている。

 それも、数日前に、該当する家の令嬢と貴婦人を木馬責めにして、全貴族に映録球を送ってから完全になくなったが……。

 

「まあ、そうだな。じゃあ、任せる。好きにせよ」

 

「ありがとうございます」

 

 フラントワーズとテルミアが揃って頭をさげ、ほかの三人も同じように頭をさげた。

 

「それと、もうひとつだけお願いが……」

 

「まだ、あるのか?」

 

 サキはフラトワーズを見た。

 

「はい、この教典の朗読を全王国内、とりあえずは、王都内に向けて発信したいのです。先日、アドリーヌたち四人を木馬責めにする魔道映像を作って王都中にばらまいたとか……。それと同じことをさせてください。ただ教典の朗読だけでは、人々の興味も薄いでしょうから、彼らの娯楽になる破廉恥な映像を一緒に入れます。その映像に混ぜて、教典の朗読の音を重ねるのです。それをしていただけるのであれば、どんなことでもやります」

 

「王都内に向けて、その教典の朗読をだと?」

 

 サキは訝しんだ。

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