【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
生娘同然って……。
そりゃあ、ノルズが知っている男は、ロウひとりだけど……。
「女相手は数多いようだけど、男相手のことを語るには、せめて百人くらいの男に抱かれて修行してきな。お前の守護神は、女ならなんでもござれのクロノスにも相手にしてもらえない、獣人族の守護神のモズじゃないのかい?」
「なんとでも言っておくれ。あたしの守護神はロウ様だよ──。あの人に命を救われ、あの人に恩を返すために、あたしは生きているんだ──。とにかく、約束したからね。あたしは、あんたのために、あたしの持っている組織とあたし自身の能力のすべてを使ってやる。だから、全てが成就したら、ロウ様に抱かれておくれ。それで、あんたの身体に刻まれているパリスの呪いも魂の欠片もできるから……」
「わかったよ……。それに、お前のいうことが本当で、あの男がパリスを殺してくれていて、さらに、死してさえ、あいつの呪縛から抜け出せないわたしをあの男が解呪して助けてくれるなら、わたしは、それこそ、あの男の足の指でも尻の穴でも舐めるね」
アスカは声をあげて笑った。
「……ところで、ガドニエルというあんたの妹の女王のことだけど……。パリスの狙いが彼女だというあんたの勘は確かなのかい? 連中は女王なんかに手を出せるのかい?」
ノルズがアスカに堕ちた後、急に方針転換をして、アスカとともに、ガドニエルのいるイムドリス宮という隠し宮に乗り込むことを決めたのは、ノルズの持っていない情報をアスカが握っていたからだ。
すなわち、パリスはガドニエルを次の標的にしようとしてるということだ。
「ガドニエルは優れた魔道遣いさ。あいつに魔道をかけるのは、パリスでも無理だろう。基本的に魔道でもなんでも、操りや洗脳、ほとんどの悪意ある魔道は、能力に差がある低位魔道者側から高位魔道者側にはかからない。わたしの知る限り、ガドニエルは世界最高の魔道遣いだ。唯一の例外を除いてね」
「唯一の例外?」
ノルズは首を傾けた。
すると、アスカが白い歯を見せた。
「わたしだよ──。パリスは、手下どもにわたしを徹底的に調べさせて、わたしの魔道の波動を調べ抜き、わたしの波動に合致したなにかの魔道符のようなものを作っていった。どんな魔道に調整をしたのかまではわからなかったけど、だから、嫌な予感がずっとしてたんだ」
魔道符というのは、あらかじめ魔道を刻み込んだ護符のようなものであり、それを遣えば、そのときに術を刻んだ魔道遣い本人がいなくても、魔道が発動するようにした一種の携帯魔術だ。
アスカ自身の魔道の波動を引き出して護符として調整したとすると、確かに、連中はアスカの魔道を持っていったということになるのだろう。
アスカの言葉のとおりであれば、それなら、世界一と称される魔道遣いのガドニエルでも効果を及ぼすかもしれない。
「そもそも、あいつは頭が軽くて、不用心だからねえ。まんまとパリスの罠にあっさりと嵌まるような気がするんだよ……」
アスカが心配そうに言った。
しかし、ノルズは首を傾げた。
実は、ノルズは短い期間だが、変身のリングという魔道具で、ガドニエルの部下に変身して、隠し宮ことイムドリス宮に潜り込んだことまである。
そのときには、パリスの属する皇帝家の一派が、陰謀を抱いていることまで警告した。
なにを企んでいるかまでは不明だったが、ナタルの森が次の標的になっていることくらいは、わかっていたからだ。
それはともかく、そのときの印象は、決してガドニエルは、軽いという感じではなく、行儀のいい有能な女王という印象だった。
だから、そう言った。
しかし、アスカは爆笑した。
「あいつはねこを被るのが上手いんだよ。実はとんでもないど淫乱でね。まあ、わたしが仕込みもしたんだけど……。だけど、考えてみれば、お互いに性については未熟な時代に、わたしはガドニエルをマゾ奴隷のように躾けたんだから、わたしが、いまのわたしになる要素は十分にあったんだろうさ」
そのときだった。
小屋の外からけたたましいエマの悲鳴がしたのだ。
「さて、来たようだね。アスカさん、敵だ」
ノルズはすっと立ちあがった。
「敵?」
アスカは怪訝な表情になった。
「あんたを探しているパリスの手の者に、あんたがここにいるって情報を流したのさ。なにせ、あんたが死ねば、パリスが生き返るんだろう? だから、来てもらったのさ」
「どういうことだい、ノルズ……?」
アスカがノルズを睨む。
この女は信頼した相手に裏切り続けられた女だ。
もしかしたら、またもや、裏切られたとでも思ったのだろうか……?
しかし、ノルズはアスカに、にやりと微笑みかけた。
「アスカ城の女囚のあんたが、狩猟と戦いの女神アルティスになるための回復練習さ。もう、この山小屋はいらない。あんたを追っている連中に居場所がわかったところで、次は転送術で跳躍するから、足はつかない。だから、お招き願ったのさ」
「わざと呼んだということかい?」
「あんたの魂は、
「だけど、それは言ったはずだ。パリスは死んだ。そして、いまだに復活できないでいる。そのために、あいつの呪術はだんだんと弱まり、いまや、相手がパリス自身でもない限り、なんの縛りもないってね」
アスカは苛立ったように言った。
希代の魔道遣いでありながら、闇魔道の遣い手であるパリス自身はともかく、パリスの手の者にすら言いなりにならないとならないという歳月は、ずっとこの女の心理的な打撃であり続けた。
パリスに虐げられた話は自虐的にするくせに、この女はパリスの手下に嬲られ続けた話題は絶対にしない。
なによりも屈辱だったのだろう。
しかし、この女が言うには、その呪術もいまや弱まっているのだそうだ。
これも、パリスが死んで、いまだに復活していないことに関係があるのだろう。
だから、ノルズが、アスカにパリス一派がナタルの森に対して企てていた策謀について、知っていることを全部語ったとき、思い切って乗り込み、そこで決着つけようという話になったのだ。
「だからさ……。見せておくれよ。あんたが戦えるということをね……。さもなきゃ、あんたは留守番だ。ガドニエルというあんたの妹は、あたしが助けてくるよ」
「のぼせるんじゃないよ。お前じゃあ、力不足さ」
アスカは立ちあがった。
そのまま、ふたりで小屋の外に出る。
果たして、武器を持った男たちが二十人ほど、小屋の前を取り囲むようにしていた。
刃物だけじゃなく、半分は魔道の杖を構えていて、攻撃魔道の準備をしてこっちに向けている。
また、エマは連中に捕らわれている。
上衣は侍女っぽい出で立ちで、下半身は赤いふんどしをちらちらさせているという破廉恥な恰好のまま、連中のひとりに首を腕で抱えられていた。
「やっと見つけたぜ、女王様──。お迎えにきましたよ。お痛はなしだ。魔道は禁止する」
声をあげたのは、エマを掴んでいる男の隣にいる大男だ。
にやにやと、いやらしく舐めまわすような視線をこっちに向けてくる。
「アーロンかい……。お前、よりにもよって、とんでもないのを連れてきたね」
アスカが横で苦笑している。
「知り人かい?」
「パリスの手の者の中では、一番の武闘派だね。ついでにいえば、とんでもない絶倫だ。ただし女をいい気持ちにすることはない。手前勝手な性交をするだけだ。あいつの性格そのものさ」
「あんたも犯された口かい?」
「パリスに逆らえなくてね……。何度もパリスの前で、あれとまぐ合わされたよ。だけど、あれに犯されてもセックスが嫌いになるだけで、パリスの思惑とは逆だったね」
「逆?」
「下手くそなセックスしかしないからね。つまりは、数はできるが、女を気持ちよくできない早漏野郎だ」
「早漏野郎かい? 淫乱なあんたが呆れるんだ。さぞや、無様なセックスなんだろうさ」
ノルズは笑った。
すると、アーロンという男が怒りで顔を真っ赤にするのがわかった。
「言いやがったな、女。ただで死ねると思うなよ。たっぷりと苦しめたあとで、ゆっくりと死ぬように始末してやる。アスカについては、いつものように全員に奉仕だ。ひとりひとり珍棒を吸って、尻も舐めてもらう。丁度いい小屋もあるし、飽きたら殺してやるよ。パリス様がお前の身体から、お前の魂がなくなるのをお待ちだ」
アーロンが酷薄そうに笑った。
「パリスの腰巾着が偉そうじゃないかい。パリスがそばにいなければなにもできない赤ちゃんだと思ってたよ」
アスカがすっと数歩前に出た。
ノルズも続く。
連中は気がついていないようだが、すでに地中にノルズの操る妖魔が大量に潜んでいる。
ここにいる全員を無力化するのに、大した時間はかからない。
「アスカ女王──。まずは、その後ろにいる女を無力化しろ。パリス様の名において命令する──。“黒の闇は北の森で間抜けエルフを犯す”」
アーロンが合言葉めいた言葉を発した。
おそらく、それがアスカから抵抗力を奪うための暗示の言葉なのだろう。
アスカの歩みがぴたりととまった。
「アスカさん……?」
ノルズは訝しんでアスカの顔を覗き込むようにした。
次の瞬間、けたたましいアスカの笑い声が辺りに響いた。
「なんだ?」
「おっ」
「あれ?」
アーロンを始めとする男たちが一斉に訝しむような声をあげた。
連中からすれば、急に視界が低くなり、アスカやノルズを見上げるような光景になっているはずだ。
「きゃああああ」
エマがその場に座り込んだ。
一瞬だった。
なにをやったのかもわからなかった。
ただ、アスカから理力が膨らむような気配が起きた感じがし、次の一瞬には、アーロンたち全員が首を切断されて、生首だけの状態でこっちを眺める姿に変わったのだ。
首を離された身体の部分は、それぞれの首の後ろで血を噴き出させながら、地面に倒れている。
「なんだ? なんだ? なにをしやがった──。おい、アスカ──。お前の仕業か──。ど、どういうことだ──。黒の闇は北の森で間抜けエルフを犯す──。黒の闇は北の森で間抜けエルフを犯す──。黒の闇は北の森で間抜けエルフを犯す──」
アーロンの生首が必死になって喚いている。
アスカは冷たい表情で、アーロンの前まで行くと、再び魔道を飛ばした。
今度はわかった。
いずれにしても、理力を集中し始めるのと、実際の発動の間隔が怖ろしく短い。だから、魔道の気配を探知できないのだ。
これだけで、アスカがとんでもない魔道遣いだということがわかる。
「んんんんっ、んんんんっ」
アーロンが苦悶の表情でもがき始めた。アーロンの口と鼻の上に土の塊が貼りついたのだ。それで息ができなくなって苦しみだしたのだ。
「……いつも思っていたけど、その合言葉はむかつくんだよ……。わたしへの当てこすりだろう……」
アスカが静かに言った。
ふと見ると、アーロンだけでなく、全員の生首の口と鼻に土が密着している。
あちこちから苦痛の呻き声が響きだした。
だが、それもだんだんと小さくなり、やがて、完全になくなった。
全員が死んだことは明白だ。
「どうでもいいけど、あっさりと首を切断して殺すんじゃなく、いったん生かしておいて、わざわざ窒息死させるなんて残酷じゃないかい?」
ノルズは笑った。
さっと手を振る。
地中に隠していた妖魔たちが、一瞬だけ地上に出て、アーロンたちの死体を咥えて、地中に戻った。
死体も生首も、血の痕すらも消滅している。
「わたしがやらなきゃ、お前がさっきの妖魔に、身体を喰わせたんだろう? 窒息死させられるのと、生きたまま怪物に喰われるのと、どっちが残酷かねえ」
ずっと怒ったような表情だったアスカがやっと顔を綻ばせた。
「あ、あのう……。た、助けてくれて、ありがとうございます……。で、でも食事の支度が……」
エマが相変わらず、腰をもじつかせるような不格好な姿勢でやってきた。
ふんどしの布瘤が気になるのだろう。
よく見れば、股間の前に垂れている布の下に覗ける脚の内側には、足首まで届くような愛液の垂れがある。
どれだけ身体を欲情させているのだろう。
ノルズは笑ってしまった。
そして、エマが申し訳なさそうに向けている視線の先を見た。
朝食の支度の途中だったようである鍋と材料が地面にぶち撒かれている。
準備をしているときに、アーロンに襲われたに違いない。
すると、アスカが口を開いた。
「エマ、朝食の支度はいい。飯はエランド・シティで食べるよ。ノルズ、朝食のできる店くらい偵察してるだろう? 転送術で一気にいくから、案内しな」
「別に食堂を探すために、エランド・シティに行っていたわけじゃないけどね。まあ、知っているよ。もしかしたら、ふんどしを教えてくれた
ノルズは笑った。
エマが顔を赤らめて困惑した表情になる。
「……いや、その前にシティの広場に行くかい……。そういえば、エマと約束をしたんだったね」
すると、アスカがにやりと微笑んだ。
ノルズも微笑む。
「そうだったよ……。それに、エマ、まだ起きてからおしっこはまだだろう。シティの一番賑やかな場所に連れていくよ。おもらしデビューだ」
ノルズのからかい言葉に、エマが「ひっ」と引きつった声を出した。