【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
エランド・シティの下層地区側の大広場を、ノルズはアスカとともにエマを連れて歩いていた。
ノルズは、どこにでもいるような冒険者の女の恰好であり、アスカは旅の魔女を思わせる紫の丈の長いスカートに、胸に切り込みのある黒い上衣を重ね着をしていた。
だが、エマについては、ただひとり、下半身が
その破廉恥な姿で、エマを四つん這いで大勢の人間のいるシティの噴水広場と称されている場所を歩かせているのだ。
しかも、首には犬の首輪を装着させて鎖を繋ぎ、広場の周りをぐるぐると犬の散歩のように徘徊をさせている。
今朝は、もう少し抑えた格好で連れ出したのだが、立ちどまってしげしげとエマの奇妙な姿を眺める者や、横目で盗み見しながらにやにやとする者はいても、思ったよりもシティの反応が少なかったのだ。
それで、アスカと相談して、さらに過激にやることにした。
白昼におけるエマの裸体晒しだ。
これくらいやれば、水晶宮があまり目をかけていない下層地区といえども、おかしな三人が騒ぎを起こしていることくらい当局に情報が入るだろう。
それが狙いだ。
「あ、ああ、も、もうお許しを……」
エマがもう何十回目になるかわからない哀願をした。
すでに、この恰好で四つん這い歩きをさせ始めてから一ノス(一時間弱)は経っている。
喰い込ませている褌の布瘤がつらいというだけでなく、上体を支えるエマの両腕と肩には無理な力がかかって、すでに疲労困憊のはずだし、不自然な体勢で歩く脚にもかなりの負担がかかっていると思う。
その証拠に、エマの可愛らしい童顔は、すっかりと上気してかなりの汗が噴き出している。
また、股間を布瘤によって苛まされせているために、汗びっしょりのエマの裸体も、肌が赤く火照りきっていてて、しかも、汗ではない体液で股間の布をすっかりと濡らして、布でも抑えられない愛液がべっとりと、エマの内腿に滴っている。
エマには、それが隠せないように、膝をつけずに尻を高くあげた状態で四つん這い歩きをさせているので、後ろから覗けば、視線の真っ直ぐ先に、エマのその恥ずかしくも息を飲むような官能の姿があからさまだ。
女のノルズからでも、かなりの扇情的な光景だ。
真っ昼間から始まった若くて可愛らしいエマの破廉恥な雌犬散歩に、特に若い男の通行人を中心に騒然となっている。
「朝よりは、見物客も多いようさ。しかも、今度はいい反応だよ。面と向かって声をかける者はいないけど、露骨に視線を向ける者が大勢だ。注目されて、よかったじゃないかい、エマ」
鎖を曳いているノルズの隣を闊歩しているアスカが、愉しそうに笑った。
「で、でも……もう堪忍を……。こ、これ以上はもう……」
エマがよろめくように脚をもつれさせながら言った。
長い四つん這い歩きに体力が尽きかけているのか、それとも、もう合計で百人を超えるかもしれない通行人の好奇のまなざしに耐えきれなくなったのか、エマが必死の様子で哀願をしてきた。
まあ、その両方だろう。
このエマの新しい人格を作るとき、とにかく、命令には逆らえないけれども、羞恥責めには極端に恥ずかしがるような反応をするように、性格と性癖を調整した。
そんなエマには、この状況は心が耐えられない仕打ちに違いない。
「だけど、このシティが、こうやって、エルフ族主体の上層地区と、それ以外の種族の下層地区に分かれているとは知らなかったねえ。わたしがいた頃は、こんなことはなかったさ」
アスカがエマの哀願を全く無視して、ノルズに話かけてきた。
同時にちょっと遅めだった歩みを速くもしてくる。
ノルズはアスカの狙いがわかり、エマの首輪に繋がっている鎖を短く持ち直して、合わせるように歩行の速度をあげた。
「あっ、あっ、ひっ」
案の定、エマが鎖で曳かれながら、たちまち甘い声を出し始める。
エマの股間には、褌の布瘤がきつく喰い込んでいて、敏感すぎるエマはほんとのちょっと身じろぎするだけで、布瘤から強い刺激を受けてしまうのだ。その疼きと痺れのような快感にも、エマはずっと苦しんでいる。
しかも、速く進めば、その分だけ刺激も大きくなり、エマはもっと追い詰められるはずだ。その証拠に、速度をあげた途端に、エマは喘ぐような声を息に混ぜ始めた。
それだけでなく、腰の動きが馬鹿みたいに大きくなった。おそらく、自分では気がついていないと思うが、感じまくっている身体がそんな破廉恥な仕草をエマにやらせているのだ。
見物人がさらに騒然となるのがわかった。
中には露骨な軽蔑の視線を向ける者もいる。
あの中の誰かが、上層地区の水晶宮に、下層地区で破廉恥な行為をしている女三人のことを届けてくれるかもしれない。
そうすれば、得体の知れない三人組の女の捕縛のために上層地区からカサンドラの配下の水晶軍がやってくるかもしれないし、役人が状況を確認するためにやってくるかもしれない。
ノルズたちの狙いはそれだ。
とにかく、手っ取り早く水晶宮に潜りこむために、わざと騒乱を起こすことにした。
騒乱を起こして、転送術を使ってでも騒乱の場所を拡大し、兵の連中を水晶宮からできるだけ外に出してから、その隙を狙って逆に乗り込むのだ。
また、万が一捕縛されたところで、いまのアスカとノルズがいれば、雑兵が何十人と束になっても、倒す自信がある。
要は騒動を起こすのだ。
「いまは病床にいるけど、カサンドラの夫の太守が、こうやって二層形式にしたらしいさ。まあ、選民思想の強いエルフ族だけど、カサンドラの夫は、特にそれが強かったようさ。十年ほど前に、いまのような分割統治のような形になったと聞いているよ」
「ふうん……。ガドニエルはなにをしているのかねえ。そんなことをすれば、エルフ族に対する反感が強まるだけじゃないか。エルフ族はナタル森林でこそ数は多いけど、全土を見れば、圧倒的に種族の数としては少ない。長命である分だけ、種族として子供も生まれ難いしね。意味のない差別施策は愚策以外のなんでもないと思うけどねえ」
アスカが嘆息した。
ノルズはくすりと笑った。
「あんたがまともに統治の話をすると、あんたがここの女王の姉だというのが、本当の話じゃないかと思ってくるよ。あんたは、性奴隷をいたぶるのと、性愛で自分がいい気持ちになることしか興味がないと思っていたからね」
「ぬかすんじゃないよ、ノルズ──。それよりも、水晶宮に乗り込むためのお前の策だけど、こうやって騒動を起こすのは、なんで、下層地区なんだい? お前の話によれば、ここは当局の目は届きにくく、下層地区でなにが起きても、上層地区の水晶宮はあまり反応しないそうじゃないかい。どうせなら、エマを連れて羞恥歩きをさせるのは、上層地区でやればいいんじゃないかい」
アスカが言った。
ノルズは首を軽く横に振った。
「理由は三つある。ひとつは、上層地区には魔道封じの結界がかかっていて、あんたといえども、魔道は遣いにくい。最初に水晶軍に衝撃を与えるときには、とにかく、がつんとやって騒ぎを大きくしたい。そのためには完全に魔道が通用する場所の方がいい。第二に、上層地区に転送術を遣って直接乗り込むのは困難だ。結界がかかっているからね。それでも、幾つかは刻んだけど、準備した転送術の結界は下層地区が圧倒的に数がある。第三に……。まあ、これが、一番の理由だけどね……」
ノルズはそこまで言ってにやりと笑った。
「なんだい、もったいぶるねえ……。三番目の理由とはなんだい?」
アスカが首を傾げた。
「あんな上品な上層地区で同じことをやれば、あっという間に水晶兵が殺到するさ。そうすると、エマをいたぶる時間が少ない。こうやって、いつまで待っても来ないくらいの時間がちょうどいいのさ」
ノルズの言葉に「そりゃあ、そうだね」とアスカが声をあげて笑った。
そのとき、エマを引っ張る鎖に急に力が加わって、後ろ側に引っ張られるかたちになった。
「あ、ああ……、も、申しわけ……あああっ」
ふと見ると、ついに布瘤の刺激に耐えられなくなったらしく、エマが四つん這いで歩きながら気をやっている。
ノルズはそのみっともない姿に笑い出してしまった。
アスカも隣で愉しそうに噴き出している。
「仕方ない。少し休憩をするかい。さすがに、一ノス以上も歩き続ければ、わたしも喉が渇いたよ」
アスカが声をかけてきた。
ノルズは周囲を見渡して、屋台の前に横長の椅子がある、ひとつの果実水屋を見つけた。
気をやったばかりで、脱力して身体がふらついているエマを引っ張るのをやめて、アスカに顎で指す。
「あれはどうだい、アスカさん。わたしが奢るよ」
ノルズは笑った。
奢るもなにも、アスカはまったく路銀のようなものを持っていない。旅のあいだで、飲み物にしろ、寝るための場所にしろ、必要なもののすべてを都合しているのはノルズの役割だ。
「ああ、奢りな。ガドニエルと再会できたら、一万倍にして返してやる」
「よろしく頼むよ」
ノルズは笑って、目的にしている屋台の正面の位置する道を挟んだ場所に立っている街路樹まで、エマをアスカととも引っ張っていき、鎖を幹に巻きつけてエマが離れられなくしてから、エマを後ろ手に手錠をかけて拘束した。
「お前はここで待っていな、エマ。水は置いておいてやろう。ノルズ、エマ用の皿を出しな」
ノルズは収納術で格納している荷から、犬が餌を食べるためのような水皿を取り出して、エマの顔の前に置く。
もやは、こっちに視線を向ける通行人はかなりの人数になっているが、それは無視する。
それよりも、あまりの羞恥に泣きそうになっているエマの表情が、ノルズの嗜虐欲を心地よく刺激してくれる。
ノルズが皿を置くと、アスカがあっという間に、それを水で浸した。
「エマ、それはただの水じゃない。お前のために魔道で合成した特性の媚薬入りだ。必ず、全部飲み干すんだ。次は勃起した乳首に鈴をつけて歩かせる。そのためのものさ」
アスカが笑った。
「乳首が勃起しているのはいまも同じさ……。まあいい。そういうわけだから、アスカさんの命令に逆らうんじゃないよ。じゃあね」
ノルズもアスカととともに笑い声をあげて、アスカを正面の屋台に促した。
「は、はい……。で、でも……。あのう……」
すると、エマが目に涙を浮かべて呼び止めてきた。
「なんだい? 言いたいことがあるのかい、エマ?」
ノルズは振り返った。
「そ、その……か、厠に……。お、おしっこが……」
エマが周りをはばかるように小声で告げた。
ノルズはほくそ笑んだ。
朝の羞恥散歩で褌をしたままの「おもらしデビュー」をさせたエマだったが、いま少し見物人が少なかったため、ここに来る前にも、多量の水分を改めて飲ませていた。
しかも、水に利尿成分のある薬剤も溶かし込んでいたのだから、エマが尿意に襲われているのは当然だ。
「わたしたちが果実水を飲んで戻るまで我慢しな。なに、すぐさ。そうしたら、小便をさせてやるよ。朝とは違って、ちゃんとした場所でね」
ノルズはそう言って、人通りの多い通路を挟んで反対側の屋台に向かった。
エマを置いてきぼりにすると、すぐに野次馬の通行人がエマに集まりだすのがわかった。かなりの注目をされていたものの、アスカとノルズに得体の知れないものを感じて、接触は躊躇っていたようだ。
だが、見える距離にあるとはいえ、ふたりが離れたことで、さっそくエマにちょっかいを出しに来たようだ。
しかし、ほんの少し手前でエマに接触するのは阻まれている。
さっきアスカが特殊な結界をエマに周りに張ったのだ。
ノルズはそれに気がついていた。
「ここで、待っておくれ、アスカさん」
ノルズはアスカを先に椅子に座らせてから、屋台の主人に果実水を二杯注文した。
「どうぞ、お客さん」
店の主人が代価と交換で果実水をノルズに渡す。
その果実水とともに、小さな紙片がさっとノルズに手渡された。ノルズはさりげなく一瞥し、その紙片を丸めて指のあいだに挟んで揉む。それで紙片は蒸発するように消滅する。そういう細工をした紙なのだ。
ノルズは二杯の果実水を持って、アスカのところに戻り、一杯をアスカに手渡した。
エマを見物するようにふたりで、果実水をすする態勢になる。
「この羞恥責めも、エマにはなんだかんだで満更でもないようさ。見てごらんよ。集まった見物人たちに囲まれて、羞恥に泣きそうな顔をしているくせに、乳首はすっかりと硬直させているようだ。あれは、感じているんだねえ」
アスカが道の向こうのエマに視線を向けながら、果実水を上品にすすった。
「しかも、尿意のために、無意識に腿を擦っているよ。でも、そんな動きをすれば、縄瘤の刺激の餌食さ。ほらっ、いまも快感を昂ぶらせて喘ぎ声を出した。ははは……。あれは、若い男には目の毒だねえ」
ノルズもエマを観察しながらアスカに声をかけ、さりげなく、アスカの耳元に口を近づけた。
「……手の者からの連絡さ。やっと、水晶宮に、得体の知れないあたしらのことが連絡が届いたみたいさ。それだけでなく、あんたとあたしの人相が伝えられたようだ。どうやら、あんたは手配されていたみたいだね。ここに軍が一個隊ほど来るそうさ」
ノルズの言葉に、アスカの眉が動いた。
「お前の手の者からの連絡かい? でも、どうやってやり取りを……?」
アスカが怪訝そうに目を細めて、その口が小さく動いた。
「いまの屋台の主人は、あたしの手の者だ。ほかにも周りに三人ほどいる。無論、上層地区を見張っている者もいる。お互いに連絡をし合っているのさ」
「準備のいいことだね。じゃあ、手筈通りに暴れるかい。それでいいんだね?」
「まあ、作戦ともいえないけどね。あとは出たとこ勝負だ。暴れまくって、最終的には水晶宮に乗り込んで、カサンドラを人質にとる。あるいはわざと捕まるかもしれない。とにかく、どういう状況になっても、あたしを信じな」
「誰かを信じるなんて、当の昔に懲りたんだけどね」
アスカが笑った。
そのときだった。
道路の反対側の正面のエマが、急に引きつった悲鳴をあげたかと思うと、周りにいる見物人たちから身を隠すように、さっと身体を小さくしてうずくまらせたのだ。
その足元にみるみる水たまりが大きく拡がっていく。
「ああ、しまった──。もう少しはもつと思ったのに──。ぎりぎりまで我慢させてから、首輪を引っ張って立たせて、失禁をさせるつもりだったんだ──。あいつの限界を読み間違ったよ──」
ノルズは舌打ちとともに、声をあげた。
エマが小便を洩らしてしまったのは明白だ。
結界に阻まれて、すぐそばに集まっていた見物人たちも、激しい奔流となっているエマの小尿の水溜まりが自分たちの足元まで拡がってきて、慌てて立ち退いたりしている。
「お前は、これから軍に襲いかかられることよりも、エマの失禁の時期を読み間違ったことの方が衝撃を受けているみたいじゃないか」
横でアスカが笑い転げた。
ノルズは苦笑した。
確かに、そうかなと考えてしまった。
「……ところで、もうひとつ情報さ。未確認だが、ガトニエルは偽者だという垂れ込みが複数同時に入ったそうだ。そのことでも、水晶宮は騒いでいるらしい。ただのひとつの垂れ込みなら一蹴したかもしれないが、同時に別系統からだからね」
「偽者? じゃあ、ガトニエルは──?」
アスカが血相を変えた。
ノルズは首を横に振った。
「落ち着きな。これはちょっと胡散臭い情報さ。まるでわざと流されたみたいな流れで入ってきたようだ。考えなければならないのは、この状況で急にそんな情報が出るのはどういう意味があるのかということだよ」
「どういう意味でもいいさ。罠だろうと、そうでなかろうと、お前とわたしで、火の玉になって敵を粉砕する。それだけのことじゃないか」
アスカが不機嫌そうに言った。
しかし、それもそうかとノルズは考えた。
検討した末の正面突破の策だ。
確かに、罠だろうと、なんだろうと関係ない。
すると、離れた場所から、これまでとはまったく異なる喧噪が近づいてきたのがわかった。
周りにいた見物人たちが、驚いたように、一斉に散っていく。
その逆に、現われたのは五十人ほどのエルフ族だけで編成された統制された武装集団だ。
あれが水晶軍と通称される上層地区からやってきた治安部隊なのは明らかだ。
「おいでなすったよ。最初はあんたがいくかい? それとも、あたしにする?」
「今回は任せるよ。わたしはエマを囲んでいる結界を強めておく。あの場所から、三日は出れないし、誰も入れないようにしておく。その分の食料と水も置いてくるさ。それだけあれば、十分に戻るまでもつだろうよ。三日間も、あんな目立つ場所で晒しものじゃあ、エマの羞恥責めのデビューとしては十分だろう?」
アスカが立ちあがった。
足手まといのエマについては、そうやって置き去りにしようというのは、あらかじめ話し合っていた。
ノルズは収納術から三日分の食料が入った袋を手渡す。
飲み水の方は、アスカが魔道で準備するはずだ。
糞尿は垂れ流しになるが仕方がない。
せいぜい、人の多い場所に置き去りにされて、エマには肝の冷える思いをしてもらうことになっている。
「待て、お前たち──。ちょっと、話がある。大人しくしてもらおう」
兵たちが周囲を取り巻いたのはあっという間だった。
ノルズとアスカとエマ、そして、屋台がある場所が完全に遠巻きに包囲された。
たくさんいた通行人は、ずっと遠くの見えない場所まで散り去ってしまっている。
展開した兵の後ろから、大きな声をかけてきたのは、この隊の隊長だろう。
「
「やや──。やっぱり、手配中のアスカか──。おい、油断するな。魔道の遣い手だ──」
隊長が、いまはエマのところにいるアスカを指さした。
ノルズは妖魔術を念じて、昏倒するほどの強力な毒をもつ妖魔の羽虫を大量に発生させた。
その羽虫に刺された兵たちが、次々に倒れていく。
なにが起きているかもわからなかっただろう。
まったく何もしないうちに、最初にやって来たこの隊は全滅してしまった。
「なんだい? 無抵抗かい……。いくらなんでも、弱すぎないかい、アスカさん──。あれでも、あんたの元の軍だろう?」
ノルズは倒れている兵たちを縫うように歩きながら、アスカに近づいていった。
アスカは笑っている。
一方で、なにが起きたかわかっていないエマは、アスカに施された結界の透明の檻の中で、顔を蒼くしている。
すでに、アスカによって拘束は解かれているようだが、アスカやノルズに近づこうとして、アスカの結界に阻まれて狼狽えている様子だ。
「いまはカサンドラが手配している軍さ……。それよりも、お前、さっきこいつらに啖呵切ったとき、どさくさに紛れて、わたしのことを呼び捨てにしただろう」
アスカの方からも、ノルズに近づいてきた。
そういえば、啖呵を切ったときに呼び捨てにした。
ノルズは肩を竦めた。
「そりゃあ、気がつかなかったよ。悪かったかい?」
「いや、それだけ、生意気な口をきいているのに、呼び方だけさん付けじゃあ、そっちの方が気持ち悪いのさ。これからも、呼び捨てにしろって言いたくてね」
アスカが白い歯をノルズに見せた。
ノルズも微笑んだ。
「じゃあ、行くかい──。こっから先は策なんて上等なものじゃない。出迎える水晶軍はどれもこれもやっつけて、そのまま水晶宮に乗り込む。とりあえず、カサンドラでも人質にとるかい。そうすれば、イムドリス宮に向かう道も開けるというものさ」
「まあ、わたしとお前らしい策さ。いまのわたしは女王家から籍抜かれて、イムドリス宮に転送術で直接に跳ぶことができないしね。ガドニエルに会うには、カサンドラをとっ捕まえるしかない。まあいい、いくよ、相棒──」
「はいよ、アスカ」
ふたりで上層地区に向かう塔に向かって歩き出した。
後ろからエマが泣き叫ぶ声が聞こえていたが、もうなにも気にする気にはなれなかった。
すると、突然に思い出したように、アスカが後ろに転がっているエルフ兵の連中に魔道を被せて、ある処置を施した。
そして、ノルズの顔を見て、まるで子供のような無邪気そうな笑みを示した。
アスカのその悪ふざけに、ノルズはぷっと噴き出してしまった。
(第40話『悪党ども集結』、第41話『イムドリスの開放』に続く)