※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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504 太守夫人の受難

「今度の現場は、ここさ、カサンドラ。ところで、外の騒動は夕方までには終わるよ。そういう魔道を刻んだ。それにしても、潜入を咎められたときに備えて、あの手この手の対応策を準備してきたのに、女兵に扮して水晶宮に潜りこんだだけで、ここまで素通りとはねえ……。相変わらず、受けに回ったら弱い女だねえ」

 

「まあ、下手なことをしないことさ、太守夫人──。あんたの亭主が寝ている部屋に破裂弾を仕掛けてきた……。抵抗すれば、ふっとばして肉片に変わるよ」

 

「えっ? あ、あんたたちは……」

 

 異常なことが起こっている。

 それは自覚した。

 だが、一瞬頭が回らなかった。

 とにかく、その女が喋り続ける。

 

「パリスの愛人だったような浮気者じゃあ、亭主を人質にしても、大して効果はないかもしれないけど、あんたのせいで爆死するのは嫌だろう? 大人しくしな」

 

 二人組の女兵が変身を解く。

 ひとりは、髪が腰まで届く黒髪のエルフ美女であり、もうひとりは同じ黒髪だが、首の位置でばっさりと切っている人間族の女だ。

 もしかして、このふたりが今回の騒動の張本人……?

 つまりは、シティを大騒ぎさせている手配中のアスカと、その連れの女ということだろう……。

 

「あ、あんた……アスカ……様?」

 

「そういうことさ、カサンドラ。久しぶりだねえ」

 

 アスカが白い歯を見せた。

 とっさに、魔道の杖を抜く。

 カサンドラ程になれば、杖なしでも魔道は遣えるはずだが、この部屋が結界に包まれた瞬間に、カサンドラの周囲の理力が拡散させられて、魔道の妨害波に包まれた状態になったのだ。

 しかし、杖があれば……。

 

「おっと、それは預かるよ。まあ、どうせ、アスカの妨害であんたの魔道は封じられているはずだけどね」

 

 だが、抜いた途端に、呆気なく横から人間族の女に杖を奪われてしまった。

 目にもとまらぬ早業であり、カサンドラにはまったく対応できなかった。

 

 唖然としたものの、それよりもカサンドラは困惑していた。

 いまのいままで、カサンドラは、パリスの言葉もあり、アスカのことは、百年前に失踪したガドニエルの姉のラザニエルだと信じ切っていたのだ。

 しかし、目の前のアスカは、似ている気はしたが、百年前と風貌が一致していなかったのだ。

 人間族とは異なり、寿命の長いエルフ族では、大人になってからの百年程度では容貌が変化するということはない。

 ましてや、高位魔道遣いほど老化が遅いので、このアスカがラザニエルであれば、昔も今も、外見は大人になったばかりの頃と変わらぬ少女のような風貌をしているはずだ。

 だが、アスカには、かつてのラザニエルの面影がなく、美女ではあるが、妖艶な熟女という感じである。

 

 ラザニエルなのか……?

 カサンドラは判断しかねた。

 似ている……。

 それしか言えない。

 

 少なくとも、かつてのラザニエルと、目の前のアスカについては、内面から滲み出るものが違い過ぎている。

 アスカがラザニエルであるという事前情報がなければ、決して、このアスカをラザニエルとは考えもしなかったと思う。

 そのくらい違っているのだ。

 なによりも、髪の毛の色が……。

 

「アスカ、なんだか、当惑しているみたいだよ。もしかして、あんたって、あまりにも、百年前と変わり過ぎたんじゃないのかい? この太守夫人は、あんたの“ねこ”だったとのことだけど、それでも、いまのあんたのことはわかんなんらいしいよ」

 

 人間族の女がけらけらと笑った。

 どうでもいいけど、アスカと随分と親しそうだ。

 何者なんだろう……?

 

「髪の毛かもしれないねえ。それに、わたしは、ずっと風貌については欺騙の魔道をかけっぱなしにしてたんだ。ラザニエルであることがわからないようにね。こっちが、本当のわたしさ」

 

 アスカが女に笑いかけて、魔道を自分にかけた。

 いや、かけたというよりは、アスカ自身が言った通りに、事前にかけていた魔道を解いたのだ。

 理力の流れにより、カサンドラにもそれはわかった。

 すると、アスカの髪の毛が漆黒から黄金色に変わった。

 容貌も少し若くなって、少女っぽくなる。

 しかし、百年前とは異なっていた。

 それでも、今度は、やはりアスカという魔女が、ガドニエルの姉のラザニエルに間違いないと確信するには十分な程度だった。

 

「へえ、案外、見た目は若いねえ。まあ、でも、あたしは前の方が好きだけどね。あんたらしくって」

 

 人間族の女が笑った。

 

「や、やっぱり、ラザニエル様なのですね──。でも、説明してください。これはどういうことなんです──?」

 

 カサンドラは声をあげた。

 

「説明して欲しいのはこっちだよ、カサンドラ。太守夫人として、水晶宮を預かり、ガドニエルに代わって、ナタルの森一帯を統治する責務のあるお前が、よりにもよって、パリスの女になって、ガドニエルの敵に回るとはどういう料簡なんだい。それとも、お前は知っているのかい。イムドリス宮にいるガドニエルが、すでに偽者にすり替わっているらしいのを」

 

 アスカ、すなわち、ラザニエルが言った。

 そんな噂が突然に沸いたのは事実だ。

 昨夜から今朝にかけてのことであり、いくつかの証拠とともに密告が数件あったのだ。

 ガドニエルが偽者などというのは、とても信じられることではないものの、最近のガドニエルの変わりようを考えると、もしかしてと思ってしまった。

 それに、噂とはいうが、一緒に流れている証拠というものは、それが根も葉もない出鱈目だと簡単には無視できないものが多数含まれていたのだ。

 

 また、ガドニエルの名で、誘拐同然の手段で近傍の里々から、若いエルフ美女や少女が集められているという疑いようのない事実も発覚した。

 カサンドラがそれを承知したのは、昨夜遅くだ。

 もちろん、カサンドラは承知していないことだ。

 このことひとつにしても、納得いく説明をつけるには、ガドニエルが偽者というのが、しっくりくる。

 しかも、これは、偽者がイムドリス宮で、酒池肉林をするためだというのだ。

 また、真実を確かめようと、カサンドラはイムドリス宮のガドニエルに面会を求めたが、訪問も通信もいつの間にか閉鎖されていて、まったく接触できなくなっていた。

 どうすべきか迷った。

 そして、躊躇しているうちに、シティの破廉恥事件が連発して、そっちに気をとられていて、ガドニエルの偽者疑惑については、なにも対処していない。

 

「なんで、それを……。まさか、ラザニエル様がなにかをしたんじゃないですよね?」

 

 とっさに言った。

 カサンドラには、突然のガドニエルの偽者疑惑と、シティにおける連続破廉恥事件とが、まったく無関係のこととは、とても思えなかったのだ。

 だが、ラザニエルは、呆れたという表情をした。

 

「なんで、わたしがガドニエルに手を出すんだい? わたしはあいつを助けに来たんだよ」

 

 ラザニエルが言った。

 すると、その横で人間族の女が首を横に振った。

 

「いずれにしても、こいつは駄目だね。およそ、施政者としては無能さ。察するところ、ガドニエル女王の偽者の垂れこみにはなにもしていないようさ。つい数ノス前に耳にしたあたしでさえ、色々と手を回させて、調べさせているというのにね。こんなのを施政官に付けるから、パリスの一派のような連中に、呆気なくつけ込まれるのさ」

 

「さっきから、お前は誰だい──?」

 

 失礼な人間族の女の物言いに、カサンドラはむっとして言った。

 すると、短い棒のようなものが、その女によって脇腹に押し当てられた。

 

「ここにいるアスカの奴隷さ。名前はノルズっていうんだ。覚えておいておくれ、カサンドラ」

 

 カサンドラのことも、アスカの名も呼び捨てだ。

 さすがにカサンドラはかっとなった。

 だが、ラザニエルの笑い声が、そのノルズとやらに、カサンドラがなにかを言い返すのを妨げる。

 

「よく言うよ。お前のような図々しい奴隷がいるものかい──」

 

 ラザニエルはけらけらと笑い続けている。

 カサンドラは怪訝に思った。

 このふたりは、奴隷と主人という関係には見えない。

 どう見ても、対等の仲間という感じだ。

 

「んごおおっ」

 

 次の瞬間、とんでもない衝撃が脇腹で発生した。

 なにが起きたのかもわからなかったが、さっきの棒から強烈な電撃を打ち込まれたのだとわかった。

 そのときには、カサンドラは完全に脱力させられて、床に横たわってしまっていた。

 人間族の女がカサンドラの脇腹に足を差し込んでうつ伏せにする。

 両手を背中に回されて腰の括れの位置で水平に束ねられて、革帯を巻かれてしまった。

 あっという間の出来事だった。

 

「悲鳴も、嬌声もあげ放題だよ、カサンドラ。いくら声をあげても、ここにいるアスカの結界は、水晶宮の連中がよってたかっても破れないさ。ああ、それと、ここの会話はすでに外には筒抜けになっているからね。恥をかきたければ、大声を出しな。外の連中に全部、まる聞こえさ」

 

 人間族の女が言った。

 外の連中?

 

 しかし、確かに、ここでカサンドラが監禁されたならば、いくらなんでも水晶宮の者たちは、すぐに異変に気がつくだろう。

 同時に、このラザニエルの結界が並大抵では破れないことは、朝から続けている破廉恥事件の顛末から、よくわかっている。

 カサンドラが人質になったことに気がついたところで、水晶宮に残っている者には、対応らしい対応もできないはずだ。

 

「な、なにをするつもりよ、人間族の女──。それ以上失礼なことを言うと、ゆ、許さないからね──。ラザニエル様も、なにかおっしゃってください。どうして、この人間族の女に好き勝手させるのです」

 

 カサンドラは奥歯を噛みしめて、人間族の女に怒鳴った。

 無駄だとはわかっていても、魔道を背中の革帯に放って、拘束を解こうと懸命に身を捩る。

  

「最初はただ、イムドリスへの道を開かせることだけを強要するつもりだったけど、お前がパリスの愛人に成り下がっていたのだと知ったら話は変わってくる。お前が敵なのか、味方なのか、判断できるまで、調教するよ」

 

「ちょ、調教……?」

 

 カサンドラは息を飲んだ。

 まさか、突如としてカサンドラの前に戻ってきたラザニエルが、いきなりカサンドラを調教──?

 もしかして、昔のように……?

 

「なに期待しているか知らないけど、あんたを調教するのは、アスカじゃなくて、あたしだよ。ほら、抵抗しな。もう一度、電撃を喰らわせてやるから」

 

 人間族の女が倒れたままのカサンドラの前にしゃがみ込み、片手でさっきの棒を腹に押し当てたまま、もう一方の手でカサンドラの胸の膨らみを揉みしだきだした。

 

「け、汚らわしい手を離しなさい──」

 

 カサンドラは身体を跳ねあげて避けながら金切り声をあげた。

 確かに、カサンドラはマゾで、かつては、ガドニエルとともに、目の前のラザニエルの“ねこ”だっとこともある。

 魔道修行の一環であり、三人は修行仲間であって、ガドニエルもカサンドラも、このラザニエルの積極的な百合の手管の前に調教されてしまい、完全に性奴隷のように屈服する立場になったことがある。

 

 もっとも、もう昔の話であり、ラザニエルが出奔したあとは、ガドニエルとも、性の関係を結んだことはない。

 ラザニエルの出現に、それを思い出し、一瞬身体が疼くような感覚が発生しなかったというと嘘になるが、そうであっても、ラザニエルではなく、その連れの人間族の女に嬲られるなど、耐えられるものじゃない。

 

「んぐうううっ」

 

 そのとき、またもや腹に電撃が加わった。

 カサンドラの身体は一瞬にして脱力する。

 

「たっぷりと揉みがいのある乳房をしているじゃないの、太守夫人──。もっと声を出してあげな。情けない声を部下に聞かせてやれば、無能の施政者でも、それなりに人気が出るかもしれないよ」

 

 人間族の女が胸を揉む手を中断して、すっと服の上から縦に動かした。

 刃物でも指に挟んであったのか、服が下着ごと腰の近くまで左右にすっぱりと切断されて、乳房が露わになる。

 カサンドラは恐怖を覚えた。

 

「そうそう、大人しくね……。もしかしたら、今度は電撃じゃなくて、肌を切り裂かれるかもしれないよ」

 

 同じ手が今度はスカートの上から股間を撫ぜた。

 思わず身体を捻りかけて、さっき打たれた電撃と、指で撫ぜるだけで、服を切断した光景を思い出して、カサンドラの身体は竦んだ。

 

「うっ、くうっ、ああっ」

 

 抵抗をやめたことをいいことに、人間族の女の手はカサンドラのスカートの中に入り込んで、無遠慮に下着の上から股間をまさぐる。

 必死に声を我慢したが、かなりの手管であり、カサンドラははしたない声を部屋に響かせてしまった。

 この人間族の女の物言いが本当であれば、その声が外にいるのだというカサンドラの部下にも聞こえてしまっただろう。

 それがカサンドラに羞恥と屈辱を誘う。

 

「こりゃあ、かなりのマゾ女だよ、アスカ──。呆気なく、パリスに堕とされたのもわかるね」

 

 ノルズはカサンドラのスカートから手を抜きながら、ラザニエルに笑いかけた。

 ラザニエルはカサンドラが腰かけていた椅子を引き出して、見物の体勢になる。

 とにかく、カサンドラはかっとなった。

 いくらなんでも、この仕打ちは許せない。

 

「い、いい加減に……」

 

 カサンドラは、とにかく、人間族の女に怒鳴ろうとした。

 だが、その人間族の女が、突然に奇妙な鉄仮面を出現させた。

 その仮面は左右に分かれていて、首の部分に鉄輪があり、それを首に嵌めてから、左右から仮面の扉を閉めて、顔を包み込む形状になっている。

 また、いつの間にか仮面の頂上に天井から繋がって鎖が繋がってもいた。

 そして、目の部分も、口の部分もない。

 辛うじて、鼻の穴の部分には小さな金網のようなものがあり、そこから息ができるようにはなっているようだが、まさかとは思うが、それを嵌めようというのだろうか……。

 

 持ち方からして、かなりの重量物であることは予想がつく。

 カサンドラの顔の大きさに比べて、仮面は小さく、それを嵌められれば、顔は怖ろしく圧迫されるだろう。

 

「じゃあ、あんたのマゾ女の度合いを身体に訊ねようかい?」

 

 人間族の女が笑った。

 鎖によって宙に引きあげられた鉄仮面がカサンドラの顔に近づく。

 やっぱり嵌めるのだと思った。

 カサンドラはぞっとした。

 

「や、やめ……、あっ」

 

 カサンドラは声を放った。

 鉄仮面が顔に嵌められたのだ。

 

 外見ではわからなかったが、額から顎の部分に縦の突起があり、それが鼻を圧迫して、容赦なく付け根まで鼻を押し潰してくる。それに、口の部分に大きな金属の球体もあり、拒絶したくても、鉄仮面が閉じられてしまうと、その丸い部分が容赦なく口の中に入り込んでくる。

 なによりも、視界が消滅した。

 それが怖ろしいほどの恐怖感を生み、さらにうまく呼吸ができないことも、苦痛とともに被虐心を呷ってくる。

 

「な、なにを……する……の……。そも……そも……お前……だれ……?」

 

 仮面の中で口をいっぱいに開けば、なんとか途切れ途切れながらも言葉を発することはできる。

 カサンドラは、懸命に言葉を発して抗議した。

 しかし、嵌められた仮面が上に引きあがる。

 当然に、カサンドラは強引に立たされることになった。

 

「誰かだって? 自己紹介は終わったと思ったけどねえ……。あたしはノルズだよ。これから、あんたの支配者になる女さ」

 

 カサンドラがつま先立ちになったところで、仮面の引きあげがとまり、人間族の女の声が聞こえてきた。

 人間族の女……、つまり、ノルズが笑うのが聞こえる。

 また、それでわかったが、仮面の耳にあたる部位には、小さな穴が開いているようであり、これにより、なんとか外の音も聞きとれた。

 

「じゃあ、アスカ、頼むよ。じゃあ、水の底にご招待だ」

 

 ノルズがそういうとともに、仮面の頂点の天井からの鎖が繋がっている場所の近くが蓋のように開いたのがわかった。

 真っ暗闇になっていた仮面の中に、上からの明かりが入ってきたのだ。

 

「これでいいかい?」

 

 ラザニエルの声──。

 すぐに、いま開けられた仮面の上部分から、大量の水が注ぎ入ってきた。

 カサンドラは恐怖に絶叫した。 

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