【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「お前が流した噂だと言うのかい?」
まだ、しゃがんだままのアスカが、自分の裸体を抱き締めるようにして、男に顔を向けた。
さっきの羽根のくすぐりはもうないようだ。
しかし、アスカが目の前の結界を解除しようと魔道を注ごうとすれば、その瞬間に、再びアスカの身体を刺激する羽根がアスカを襲うのだろう。
アスカはすでに肩で息をしている。
すでに、かなりつらそうだ。
ダルカンという男が笑い声をあげる。
「まあ、そういうことだ……。とにかく、パリスには恩がある。絶対に返さなければならない恩がな。だから、お前に来てもらったんだ。パリスも喜ぶだろうさ。パリスはなんだかんだで、お前に執着していたしな。お前の身体に大切な命の欠片を隠すほどに……」
「なにが執着だい──。あいつは、わたしを騙して、利用し……、そして、都合のいい道具として、自分の命の欠片を置き、奴隷にし、わたしがいずれ死ぬと知っていて、瘴気の発生源としてわたしの身体を生贄にしたんだよ。それが執着だって──」
アスカが喚いた。
それはともかく、ダルカンとアスカが呼んだ男とアスカは、知り合いのようだ。
しかし、ノルズの情報網には、これまでダルカンという名の男が出てきたことはない。
「アスカ、こいつは?」
ノルズは訊いた。
すると、アスカが舌打ちをした。
「パリスの昔馴染みだ。だが、どうしようもない小者でね。魔道も大したことない。ただのあほ垂れだよ」
「あほ垂れはひどいな。何度か身体を重ねた間柄じゃないか」
ダルカンが笑った。
「ほざくんじゃない。粗ちんのくせに一人前の嗜虐癖ぶって……。と、とにかく、お前の魔道ごとき、簡単に……」
アスカが顔を真っ赤にして、身体を緊張させた。
結界を破ろうとしているのだとわかった。
「ああっ、だ、だめええっ」
しかし、一斉に噴き出してきた透明の羽根がアスカに群がる。
媚香で疼き切った身体を刺激され、アスカは身体を弓なりにして震え喘いだ。
ノルズは嘆息した。
「はははは、さっき忠告しただろう。ここまで、たっぷりと時間もかけさせたし、運動もさせた……。少なくともエランド・シティにある者を全員動員したんだ……。とにかく、もうたっぷりと媚香を吸い込んだことだろう──。大量に媚薬を吸いまくったその身体じゃあ、悶えながらでも我慢して、魔道を刻むというわけにはいくまい。それとも、もっと刺激してやろうか」
透明の結界膜の向こうのダルカンが宙で指を掻くように動かした。
「んんんっ、んあああっ」
すると、アスカが自分の股間を両手で覆って、大きな悲鳴をあげた。
ノルズは驚いた。
これでもノルズも魔道遣いの端くれだ。
いくらなんでも、結界を通してアスカに刺激を送り込むなど、簡単な魔道ではないことくらい知っている。
考えてみれば、転がっているエルフ女たちも、アスカが強引に解除したとはいえ、あれだけの数のエルフ女の全員を隷属状態にし、さらに、股間をむさぼる淫具を操作し、いまも、アスカがかなり苦戦している結界膜を刻み続けている。
アスカは小者と呼んだが、並大抵の魔道力ではできることではない。
「や、やめておくれえええっ、あああ」
アスカが必死で腰を捩らせて、ダルカンからの刺激をかわそうしているが、すでに脱力したようになっていて、うまく腰も動かないようだ。
そして、ノルズの見守る前で、身体をがくがくと震わせて、気をやった。
こりゃ、だめだ……。
ダルカンの為すがままになってしまっているアスカに、ノルズは呆れてしまった。
ただ、ノルズとしても、相手が結界膜の向こう側では、どうしようもない。
「相変わらず、打てば響くような身体だな。どれ──。いつまで、そうしていても気の毒だ。こっちに来い。疼きを癒してやろう」
ダルカンがいやらしく微笑むと、さっと手を振る。
すると、結界膜を跨いで、一本の丸太が出現した。
丸太には足がついていて、丸太の高さがアスカやノルズの腰の高さよりも、少し高いくらいになっている。
そして、思わず舌打ちをしてしまったが、丸太の上側には何十個もの男根の亀頭に似た突起があり、いまでも、淫らな振動と蠕動している。
「それに跨って来い。そうすれば、羽根の刺激なしに、こっちに来れるぞ。魔道も不要だ」
ダルカンが向こうで大笑いした。
「ふ、ふざけるんじゃないよ──。だけど、お前、なんでそんなに魔道が……。お前みたいな小者がどうして、そんなに次々に高位魔道を出せるんだい──」
アスカが怒鳴った。
「気にするな……。だが、まあ、教えてやろう。友の置き土産ということだ。友想いの男だ。あいつは、自分が死んだら、俺の身体に、自分の力の一部が転移するように仕込んでいてくれたのさ。その能力で、イムドリス宮の支配を引き継いだということだ。まあ、愉しくやらせてもらったよ」
「ふ、ふざけやがって……。ま、まあいいよ──。それよりも、ガドニエルは──。ガドニエルはどうしたんだい──?」
アスカが叫んだ。
「あの間抜けな女王様か? 知らんな。今頃は、すっかりと身も心も魔物に変わっちまって、どこかの森を
ダルカンが大笑いした。
魔物──?
どういう意味だ?
ただ、ここにはいないということではあるようだが……。
そのときだった。
「うぎゃああああっ」
向こうでダルカンが大きな悲鳴をあげて倒れたのだ。
見ると、ダルカンに足元にいた手足のない女がダルカンの足首に噛みついている。
いや、噛みつくなどという生易しいものじゃない。
足首の裏から噛みつき、肉を喰い破っている。
そして、倒れたダルカンの身体に胴体をのしかからせて、喉元に喰らいついた。
「うぎゃあああ」
ダルカンが絶叫した。
それでも、女はダルカンの喉を喰い破るのをやめない。
もの凄い形相でダルカンを噛み千切っている。
そして、結界膜が消滅した。
ダルカンが魔道を保持できなくなったのだ。
「こ、この機会を待ってた……。隷属が消えた。なぜか、消えた。待ってた。ば、馬鹿にしやがって……。しかも、妹まで……」
女が一瞬、ダルカンの喉から口を離して、大きな声で喚いてから、また、喉に喰らいつく。
よくはわからないが、余程の恨みがあるのだろう。
また、いきなり隷属が消えたというのは、さっきまとめてアスカが部屋の女たちの隷属を強引に解除したためだと思う。
それが、この女にも影響したに違いない。
他のエルフ女とは異なり、首輪は外れなかったようだが……。
ノルズは跳躍して、ダルカンに飛びかかり、心臓に短剣を突きつける。
「あんた、もうやめな──。死にかけている。もういい──」
ノルズは手足のない女を制した。
そして、ダルカンを見る。
すでに、死に瀕している。
放っておけば、このまま死ぬだろう。
「……せめて、アスカと……もう一度、遊んでから……と思ったがな……。まあいい……。予定のことだ……。なんの取り柄もない……。うだつもあがらぬ……。ただの愚物の……俺を……本当……に、あいつはよくしてくれた……。感謝……しても……しきれぬ……。だから、俺の……命を……くれてやる……」
ダルカンが喉から血を噴き出しながら、ぶつぶつと呟くのが聞こえた。
「ダルカン……?」
遅れてやってきたアスカが訝し気に小首を傾げたのがわかった。
ノルズも気がついた。
なにかがおかしい。
当たり前の死のはずだが、目の前のダルカンは死に瀕しているようでありながら、その身体でなにかの大きな魔道が動いている。
しかも、なにかが、新しく生まれるような……。
すると、アスカが悲鳴のような声をあげた。
「闇魔道かい──? もしや、これは復活の魔道──? しまった。もしかして、こいつの身体にも、パリスの命の欠片が──?」
アスカがぎょっとしたような声をあげた。
ノルズも驚愕した。
パリスの命の欠片──?
ダルカンの身体に──?
そうであれば、命の欠片を身体に入れている者が死ねば、そいつの魂は消失するが、その代わり、その身体をパリスの命が奪って、パリスは復活する──。
いま、ダルカンが死んだ。
つまり……。
死に瀕していたダルカンの目が覚醒したように見開いた。
すでに、その顔には死の色はない。
ふと見ると、女が噛み破ったはずの喉の傷も足首の傷も存在していない。
少しだけ、拭き取ったような血の痕があるだけだ。
「アスカ、撤退だよ。転送術を」
ノルズは慌てて叫んだ。
「アスカ、硬直しろ。身体も、魔道も──」
ダルカンの口が静かに言った。
アスカが金縛りにあったように動かなくなる。
ノルズは舌打ちした。
「持つべきものは、俺のための命をかけてくる友だな……」
そして、ダルカンの口が開いて、また、小さく呟いた。
いや、これは……。
「お前、まさか……」
アスカがぎょっとしている。
「待てよ、アスカ……。お前のことは待て……。それよりも、ダルカンの仇を打たねえとな……。ダルカンの記憶によれば、あいつは、こうなることを見越して、このアルオウィンという女に隙を作ってみせたらしいが……。復活に必要な恨みの感情を植えつけてな……」
「ど、どういうことだい?」
ノルズは眉をひそめた。
本当にパリス?
復活した?
だが、圧倒的なものを感じる。
絶対にかなわないという格の違いだ。
そして、ダルカンの口が語り続ける。
「それでも、俺を復活させるために、あえて、死んでくれた友の仇なのは間違いねえ。信じられねえ……。俺の代わりに死ぬなんて……。しかも、アスカという最高の土産まで残して……」
「うぎゃああ──」
次の瞬間、床から一本の杭が出現して、いきなり手足のない女の股を貞操帯ごと貫いた。
しかも、その杭が女の胴体を貫通して、女の口から先端を突き出てきた。
「ひゃががががが、ががあっ、あがっ……」
女がぴくぴくと身体を痙攣させ、苦悶に顔を歪めた。
そして、もの凄い勢いで暴れ始めた。
杭が貫いている身体を千切り裂かんばかりの激しさだ。
ノルズは呆気にとられた。
喉に木杭が刺さっているので、悲鳴というよりは息の漏れる音なのだが、それも凄まじい。
怖ろしいほどの苦痛に喘いでいるのは間違いない。
「ははは、いいざまだな、エルフ女──。ダルカンを殺したんだ。簡単には死なせてやらねえ。呪術で痛覚の情報を直接頭に送り込むようにしてやった。一方で身体は回復し続ける。俺が許可するまで死なせてもやらねえ。狂わせてもやらねえ。そうやって、いつまでも踊ってろ」
ダルカン……いや、ダルカンの身体の中で復活したパリスが起きあがりながら言った。
そして、甲高い声で爆笑する。
ノルズはその残酷さに鼻白んだ。
そして、女から発せられる苦悶の悲鳴が突然に遮断された。
これもパリスの仕業だろう。
ただ、串刺しの女の暴れぶりには変化がないので、無限苦痛はそのままなのだと思う。
声だけを消したのだ。
こいつは、本当にこのまま放置するつもりなのだと確信した。
「お、お前……」
ノルズは呻いた。
こいつだけは許せないと思った。
一方でアスカは、呑まれたように、上気していた顔を蒼くして硬直している。
そのパリスが、ノルズとアスカに視線を向けた。
「さて、アスカ、やっと復活できたぜ……。しかも、ダルカンはわざわざ、お前をここまでおびき寄せてくれたみてえだな──。わかっているとは思うが、お前は俺には攻撃できねえし、命令にも逆らえねえ──。お前に刻まれている“俺の魂”が、俺に服従することを強要するからな……。くくくっ──。じゃあ、とりあえず、奴隷の刻みを完全に復活させてやろう。かなり、薄くなっているようだしな……。黒の闇は北の森で間抜けエルフを犯す──。さて、これでお前は、俺にも、俺の部下にも絶対服従。そうだな? アスカ、言え──。お前は俺のなんだ──?」
「わ、わたしは……お、お前の……奴隷……だ」
アスカが言葉を吐くことそのものが苦痛であるかのように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……じゃあ、復活祝いの最初の命令だ、アスカ──。その連れの女……。いや、もしかして、ノルズか? 俺から逃げ出した……。いや、死んだんだったかな……? まあいい……。とりあえず、その人間女の手足を根元から切断しろ、アスカ──」
「えっ?」
「ただし、殺すんじゃねえぞ。ここに辿り着くまでのお前らの状況を観察していたダルカンの記憶によれば、その女には見どころがある。そいつの能力も貰っておくか。だから、とどめは俺だ。とりあえず、お前は無力化しろ」
パリスが事も無げに言った。
アスカが顔をひきつらせたまま、ゆっくりと身体をノルズに向けた。
「い、いやああああっ、パリス──。そ、そ、それだけは許してええ。後生だよう」
アスカが絶叫して、泣き叫んだ。
しかし、そのアスカがノルズに振り向き、魔道を放つ構えをした。