【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「やっと、その方法に気がついたんだな。だが、もう遅い──」
背後の男はしっかりとした声を発した。
だが、アスカについては、その意味を考える余裕がない。
怖ろしいほどの快感が後ろから犯されている精の放出とともに沸き起こった。
気持ちがいい……。
快感が迸る……。
自分の身体が飛翔するような心地だ。
強烈な絶頂がアスカに襲い掛かっている。
そして、意識が消えそうになる。
まるで大きくて温かいものにしっかりと身体全体を包まれているようだ。
「どうした? アスカ? と、とにかく、解毒だ──。早くしろ──。すぐにやるんだ──」
パリスが喚いている。
しかし、まだ快感は続いている。
また、なにかが股間から流れている。
なんだろうとは思ったが、どうやらアスカは失禁してしまったようだ。
あまりにも気持ちよくて意識が飛び、それで股間が緩んでしまったらしい。
羞恥が襲うが、もう、なにもかも、どうでもよかった。
身体も完全に脱力して、アスカは丸太にうつ伏せになったまま、おしっこを流し続けた。
「驚いたねえ。おしっこを漏らされるとは……」
アスカを犯していた男が苦笑交じりに、アスカから男根を抜く。
「うわっ」
そのときにも快感が走り、アスカは声をあげてしまった。
気がつくと、もう粘着体はない。
「ひっ」
アスカは丸太から落ちそうになり、慌てて両手でしがみつく。
いずれにしても、解毒の魔道をしろとパリスが喚いているが、まったくその気にならないし、身体が勝手に動くこともない。
アスカは白々とした気持ちで、パリスの喚く言葉をぼんやりと聞いていた。
そのときだった。
部屋全体を真っ白い光が突然に襲った。
唖然としたが、これは光魔道だ。
エルフ族の王家の者だけが発することができる、最高度の浄化魔道である。
いや、違う……。
王家の魔力じゃない。
だが、魔道そのものは、王家特有のものだ。波動も特有のものだ。
しかし、魔力、すなわち、理力が異なる。
つまりは、王家の魔道を他の者が放っている?
いや、逆か……。
ほかの者の魔道力を遣って、王家の者が魔道を放っているのだ。
つまりは、エルフ族王家の者がエルフ族以外の他人の魔力を使って、光魔道を放っているのだと思う。
いずれにしても、怖ろしく強力で強いものだ。
アスカでさえも、ここまでの強い光魔道を発することは不可能だ。
おそらく、さっきの隠蔽術も、この光魔道を放った者と同じ人物がやったのに違いない。
魔力を借りていることを除けば、光魔道の強さそのものは、パリスの闇魔道はもちろん、アスカの全力の魔道もおそらく上回る。
信じられないほどに、凄まじい威力の光魔道だ。
これほどの魔道の強さ……。
しかも、王家……。
思いつく人物はひとりしかいない……。
「だ、誰だ――?」
いまは鳥人族の姿のパリスが声をあげた。
眩しい光がだんだんと薄くなり、パリスの前に誰かが出現しようとしている。
いや、ひとりじゃない……。
次々にパリスを取り囲むように人影が……。
「……お姉様……。お懐かしく……。ところで、申し訳ありません。お姉様の魔道は、スクルド様やミウ様に魔力を借りて、一時的に封印させてもらいました。この魔族の魔道もです……。でも、もう必要ないかもしれませんね。お姉様もロウ様の女になったのでしょう?」
現われたのは、やはり、ガドニエルだ。
女王の正装ではないが、しっかりとエルフ族の装束を身に着けている。
生きていたのだ……。
アスカはほっとした。
あれは紛れもないガドニエルだ。
一方で、アスカは驚いてもいた。
かつて出奔したときには、ガドニエルはここまでの魔道遣いではなかった。
もしも、ガドニエルが当時子供だったら、身体の成長とともに、魔道が成長するということもあるだろう。
だが、すでに成人していた。
そのガドニエルが、百年といえども、ここまで魔道力が高まるというのはあり得ない。
それで気がついたが、部屋に充満していたエルフ族の女用の媚香は完全に消滅している。
アスカでもできなかった魔毒の浄化をガドニエルがやってのけた?
しかも、魔道切れを起こしている気配すらない。
いや、横に見知らぬ人間族が……。
青白い髪をした若い人間族の女?
もしかして、そいつからガドニエルに魔道が流れている?
それだけじゃない。
もうひとり、人間の童女がいる。
そいつからも、ガドニエルに魔力が流されている。
ガドニエルはそれを使っているのだ。
「うわっ」
突然に丸太が消滅した。
そういえば、これもダルカンが魔道で出現したものだ。
ダルカンは、パリスに増幅された魔道力を遣ったと口にしていたので、その拠り所も闇魔道だろう。
ガドニエルの発した光魔道により、この部屋のありとあらゆる闇魔道が無効化されていっている。
それで、消滅したに違いない。
「おっと」
床に落ちかけたアスカを後ろから男の手がしっかりと支えた。
アスカは急いで振り返った。
こいつが、さっき、アスカを犯した男に間違いないのだ。
それにしても、あれほどの性の技巧を見せた男は誰──?
「あああっ、お、お前──」
思わず声をあげた。
アスカを背後から支えてくれたのは、イチ──つまり、ロウ=ボルグだ。
ノルズが紹介すると言った男──。
淫魔師の能力を持っていて、こいつこそ、アスカを助けてくれるとノルズが何度も繰り返した男……。
アスカがかつて、いまはエリカと名乗っているらしいエルスラともども殺そうとし、まんまと仕返しをされて、逃亡を許した男……。
いまのは、こいつだったのか……。
唖然としたが、妙な納得感もあった。
そうか、こいつが……。
アスカは、不思議な安堵感を覚えた。
「アスカ様、落ち着いてくださいね──。ロウ様は決して、アスカ様に危害は加えません。敵意はありません。それよりも、ガドに言われて、アスカ様を助けようと──。それで慌てて、態勢を取ってこっちに来たんです。本当に敵意はありませんから──。わたしたちは味方です──。とにかく落ち着いてください──」
血相を変えた口調で耳元で怒鳴られた。
エルスラ……。いや、いまは、エリカか……。
驚いたことに、以前にアスカ城にいたときよりも、遥かに美しくなっているし、なによりも滲み出るような女の色香を発している。
しかし、間違いなくエルスラだ。
アスカは、すぐに反応することができずに、ただただ目を丸くした。
「まずは、あんたが落ち着くのね、エリカ」
エリカの横にいた小柄な人間族の女が笑ったのが聞こえた。その女も可愛らしいし、美人だ。
いつの間にか、部屋は武器を持った女たちでいっぱいだ。
ロウとエリカ──。
ガドニエル──。
そして、エリカに声をかけた小柄な女──。
ガドニエルに魔力を供給している大人の人間女と人間族の童女──。
十本の指から刃物のような長い爪を生やした獣人族の娘──。
黒エルフもふたり──。
とにかく、その全員がすっかりとパリスを囲んでしまっている。
「あっ」
そのとき、アスカは気がついた。
さっきまで、パリスにより串刺しにされて激しい苦痛を与えられたまま放置されていた女がいなくなっている。
どこに行ったのだろうと思ったが、すぐに見つけた。
部屋の隅で、さらにもうひとりいた白エルフに抱き締められている。
すでに身体に刺さっていた杭はなく、苦痛も消えたようだ。いまは、その白エルフに抱き締められて静かに眠っているみたいだ。
いつの間にか、女は串刺し状態から救出されていたのだ。
また、手足のない女を抱いている白エルフは、服装からだと、このイムドリス宮の親衛隊のようだ。
そういえば、ノルズがロウがガドニエルの親衛隊長の女をたらし込んだとか言っていたっけ……。
こいつがそいつだろうか……?
「人をこんな風に扱うとは、本当に心がないんだな、お前……。悪いが、ガド、こいつへの酬いは俺に決めさせてくれ」
ロウが怒りを露わに、ガドニエルに言った。
どうやら、パリスがさっき串刺しにしていた手足を切断されていた女のことを口にしているようだ。
ガドニエルが首を縦に振った。
「ロウ様のよろしきように」
ガドニエルがにっこりと微笑みながら、きっぱりと言った。
ロウ様?
そういえば、ロウはガドニエルのことを“ガド”と気安く呼んだ気が……。
いや、ロウだけじゃなく、エルスラ改めエリカも同じように呼んだな……。
アスカは訝しんだ。
「ど、どういうことだ──。いいから、アスカ、命令だ。俺に解毒──。いや、戦え──。全力をもって、全員皆殺しにしろ。すぐにだ──」
パリスが喚き続けている。
「いい加減にしろよ、お前──。ノルズの捨て身の反撃で一時的とはいえ、力を失い、道具のように扱っていたアスカも、その隷属を解放させてもらった。闇魔道も封印し、味方もいないお前に勝ち目はない……」
ロウがパリスの前に進み出てにやりと微笑む。
すぐに何人かの女たちがロウを守るように前に入ろうとするが、ロウがそれを手で制する。
そして、獣人族の娘に視線を向ける。
「すまない、イット……。能力を封じられたとはいえ、ほかの者だと闇魔道に返される恐れがある。その点、お前だけは大丈夫だ。俺の護衛についてくれ。パリスが不審な動きをすれば、身体のどこでも引き裂け。ただし、殺すな。簡単に死なせたくない……」
「命に代えても……」
獣人族の娘がロウの前に出た。
すると、ロウが顔をノルズに向かって振り向かせた。
「ノルズ……。お前だったのか……。ずっと心配していたんだぜ……。とにかく、ぎりぎりで間に合ったな。お前のパリスへの仕掛けは、ここに到着直後に見させてもらった……。色々と訊きたいこともあるんだけど、あとで教えてくれ。じっくりと肌を合わせながらね」
そして、ロウが目を丸くして絶句しているノルズに白い歯を見せた。
ノルズが顔を真っ赤にする。
さらに、その顔が泣き笑いのような表情になる。
ノルズのあんな顔を見たことなどなかったので、アスカも呆気にとられた。
「スクルド、ノルズの治療を頼む……」
ロウが人間族の女に声をかけた。
「はい……。ノルズ、久しぶりね……。もう大丈夫よ……」
青白髪の人間族の魔道遣いがノルズにうずくまる。
ガドニエルに魔力の供給をしていた者であり、こいつも、かなりの高位魔道遣いだ。
「え、ええ──。お、お前、ス、スクルズ? い、生きてたの……かい──」
すると、瀕死のノルズが目を丸くしたのがわかった。
「いまはスクルドと名を変えたわ。色々と話したいけど、後でね、ノルズ」
スクルドと名乗った女が微笑んだ。
それではっとした。
「ま、待って、わたしが……」
アスカは慌てて言った。
ノルズに向かって駆けよる。
ほかの誰であろうと、ノルズの治療だけは譲りたくない。
ロウがガドニエルに頷くのがわかった。
凍結されていたらしい身体に、理力が流れ出す。
言われるまで、動顛して気がつかなかったが、本当にガドニエルによって魔道を凍結されていたらしい。
それがたったいま解放された。
それにしても、ガドニエルがアスカの魔道を凍結……?
とても信じられない。
つまりは、余程の魔道力の差がアスカとガドニエルにあるということだ。
なぜ……?
「ア、アスカ……」
アスカに抱きあげられたノルズがアスカをに声をかけようとした。
「なにも言わないでおくれ。いや、すまなかったね。パリスに命じられたとはいえ……」
転がっていたノルズの四肢を引き寄せて、身体に治療術を施す。
白い光に包まれ始めたノルズの身体に、四肢が密着し始める。
ノルズはすでに安心しきったかのような表情になっている。
そのまぶたがそっと閉じられる。
「く、くそうっ……。どうして……? どうして……?」
パリスが狼狽えた声を放った。
ともかく、パリスが追い詰められているのは確かなのだろう。
顔を真っ蒼にして、身体を震わせているのがわかる。
無論、魔族になったパリスに接するのはこれが初めてであるものの、長年付き合ってきたパリスがあんなに怯えた表情になったのは、これまでになかったことだ。
「みんな、気を鎮めるのよ──。封印されたとはいえ、闇魔道の力の根源は、人の心の抱く悪意や絶望、怒りの感情よ。無駄に怒って、こいつに力を取り戻す手段を与えちゃだめよ」
ふたりの褐色エルフのうちの若い方の娘が言った。
「なんか、あんたに偉そうにされると腹がたつのよね……」
人間族の小柄な女が小さな声で不平を発したのが聞こえた。
「そういうのがよくないのよ、コゼちゃん」
褐色エルフの娘が言い返す。
人間族の女の顔が真っ赤になった。
「もう一度、コゼちゃんなんて言ってごらん。奴隷エルフ──。その髪の毛を半分引き千切るわよ」
「それがよくないと言ってんのよ、コゼちゃん」
「やめないか、お前ら──」
喧嘩しそうになっていたふたりをロウが制した。
すると、いまにも掴み合いでもしそうになっていた二人の顔から、すっと怒りの感情のようなものが消えたのがわかった。
アスカは怪訝に思った。
もしかして、感情を操作するような術をこのロウは遣ったのか?
「ねえ、ところで、あんたの真名がわかったわ。残念女王様の光魔道で、なんの隠蔽も消え去って、普通の鑑定術でしっかりとわかる……。あんたの真名はリンガーン・リンガーン・ゴンガーン・リネットというのね。まるで、鐘の鳴る音……。多分、あんたの弔いの鐘だわ」
続いて、若い褐色エルフがまたもや口を開いて、けらけらと笑った。
パリスが絶望的な顔になったのがわかった。