【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「そ、そんなあ……。ロ、ロウ……。か、痒いんだよお──。ああっ」
アスカは必死にロウの足元で訴えた。
すでに、全身を苛む淫情への焦燥感と、なによりも死ぬような股間の掻痒感がアスカを追い詰めている。
ロウに股間の奥を犯して欲しい。
滅茶苦茶に突いて欲しい。
壊れるくらいに抱いて欲しい。
アスカは気が狂いそうだった。
「どうにも、エルフ女王家の姉妹様は、自制がないねえ。ラザ、おあずけと言ったら、おあずけさ。そこで見てるんだ。少しでも目を離したら、夜までそのまま放置するぞ。まあ、そっちも面白そうだけどね」
ロウが言った。
そして、はっとした。
正座をする両脚が床にぴったりと粘性体で密着して離れなくなっている。
しかあし、ロウの言葉のとおりに、忌々しい刺激遮断の機能だけはなくなっていることに気がついた。
なにも考えられなかった。
ほとんど無意識に、アスカは指縛りをされている後手のまま、お尻の穴を掻きむしろうと思った。
股間もアヌスも痒みでただれそうだ。
ほんのちょっともじっとしていられない。
「動くな、ラザ──。おあずけだと言っただろう──。許可なく触るな──」
そのとき、ロウの大きな怒声が響き渡った。
アスカは硬直した。
一瞬、なにを──という怒りも煮えたが、それよりも、ロウの強い命令に、アスカの手は金縛りになったように動かなくなる。
魔道のようなもので拘束されたわけではない。
アスカ自身の意思がアスカ自身の身体を静止させのだ。
自分の意思でお尻を掻きむしろうと思えばできる。
だが、ロウに逆らえば、今度はどんな罰を受けるのかわかったものじゃない。
いや、ロウが動くなと命じたのだから、動いてはならない──。
そんな、アスカにとっては、不可思議としか思えない感情が発生して、アスカに勝手な行動をとることを自制させている。
しかし、限界を遥かに越している掻痒感を前にして、なにもしないでじっとしているというのは、とてもじゃないが受け入れることのできない冷酷な命令だと思った。
しかも、こいつは、いまからアスカの目の前で、ガドニエルを抱くのだという。
なんという底意地の悪い仕打ちだろう……。
「ううっ、くっ」
とにかく、アスカはぐっと歯噛みして、この常軌を逸する掻痒感を耐えた。
「ガド、もっと近くに寄れ。ご褒美だ。スカートをまくれ。貞操帯は外してやる」
しかし、すでにロウはわざとらしくアスカを見ていない。
一方で、ロウにスカートを捲れと命じられたガドニエルは、心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべて、ロウの前に跪いている。
尻尾でもあれば、ぶんぶんとそれを振っているかのような、まさに物欲しそうな雌犬の顔そのものだ。
アスカは、自分の胸がかっと燃えるとともに、胃が締めつけられるような気持ちに襲われた。
「ロ、ロウ様、ど、どんな格好でスカートをまくればいいですか? 前を向いて? それとも、後ろで?」
「さあね、好き者の女王様だしね。普通に抱いても満足できないんじゃないか? いろんな体位を教えたろう。その中で一番好きな体位を選びなよ。だけど、どうでもいいけど、そのスカートは長いなあ。俺好みじゃない。スカート丈は膝よりも上だ。太腿は半分以上出せ。きれいな脚を隠すんじゃない」
ロウがガドニエルをしげしげと眺めながら言った。
当然だがガドニエルの装束は、エルフ族の伝統的なものであり、スカート丈は足首まである。ノルズのところで剥ぎ取られたアスカのスカートも同じくらいのものだった。
「膝よりも上ですね。はい、ロウ様。これくらいで……。これでどうでしょう?」
ガドニエルが、魔道で一瞬にしてスカート丈を言われたとおりにした。
アスカは目を丸くした。
エルフ族女王が身に着けるものとは信じられないくらいにスカート丈が短いのだ。
まあ、別段下着が見えるというほどじゃないが、伝統的で格式の高い水晶宮で、女王がそんな服装をしていれば、周りの者は唖然として目を疑うだろう。
きらっきらっ目を輝かせているが、もしかして、この馬鹿妹はこの場の戯れじゃなく、今後ずっとその服装をしそうな気がする。
とにかく、ロウになにかを命じられたり、指図されたりするのが、嬉しくて堪らないという態度だ。
「まあ、それくらいかな。ガドにぴったりだ。俺好みさ」
ロウが笑った。
ガドニエルが心から嬉しそうに破顔する。
いや、こいつの顔を見れば、間違いない。
この女は、もう生涯、短いスカートしかはかないだろう。
アスカにはわかる。
深く嘆息する。
しかし、そう言えば、ロウの周りの女たちのスカートは、本当に短い。
エリカを始めとして、まるで競って短くしているように思えるし、短いスカートでないのは、半ズボンのコゼくらいだろう。
闘女姿のマーズさえ、スカートだ。
そういうことかと思った。
しかし、どうでもいいけど、痒い……。
アスカは、懸命に腿と腿を擦りつけて、発狂しそうな痒みを我慢する。
だが、きっと、ガドニエルの後には、自分を抱いてくれるのだと思う。
それまで……。
「す、水晶宮の女には短いスカートをはくようにお触れを出します。全部、ロウ様のお好みのとおりに……」
するとガドニエルがとんでもないことを口にした。
アスカは唖然とした。
「ば、馬鹿女──。そんなことを──」
慌てて口を挟んだが、ガドニエルはまったくアスカを見ていないし、耳も貸す気がなさそうだ。
にこにこしながら、ロウだけを見つめている。
「そんなことはしなくていいさ。でも、ガドが短いスカートをはき、ラザもそうすれば、自然とそれが当たり前になるよ。流行の最先端みたいに扱われてね」
「わ、わたしもかい?」
驚いて言った。
ロウがアスカを見て、にやりと微笑む。
「別に強要はしないさ。でも、俺はそうして欲しい」
ロウが言った。
そう言われてしまうと、アスカもそうしてあげたいという気持ちになってきた。
まあいいか……。
そうか……。
短いスカートがこいつは好きなのか……。
こいつには、世話になったし……。
そうか、こいつは短いスカートがいいのか……。
考えていると、なぜか急に長いスカートがつまらないものに思えてくる……。
何枚かなら、短くしても不自然ではないデザインのスカートもあったはずだ。
新しく作らせてもいいし……。
そうか、こいつは短いスカートをねえ……。
「それよりも、体位だ。どんな恰好で抱くんだ、ガド? うんといやらしいものを選べよ」
ロウがガドニエルを促した。
ガドニエルはちょっと困惑したような顔になったが、さっきまで座っていた籐椅子にちらりと目をやり、それをさっと魔道で手元まで引き寄せた。
そして、それに上体を傾けて預け、大きく脚を開いてお尻側をロウに向ける。
挑発的で煽情的な格好だが、美貌で抜群の体形のガドニエルがすると気品さえ感じるから不思議だ。
「で、では、う、後ろから……。ガ、ガドは後ろから雌犬のように、ロウ様に犯して欲しいです」
ガドニエルの声は、ロウとの情交の期待に、喜び溢れてしまって声が震えてすらいる。
どこまで、ロウが好きなのだろう。
アスカもちょっと呆れた。
ガドニエルがスカートを捲りあげて、貞操帯のある股間を露わにする。
呆れたことに、貞操帯の縁からこぼれた愛液で、すでにびっしょりと濡れている。
まるで、放尿でもしたのかと錯覚するほどの愛液だ。
この男に抱かれるという期待感だけで、あっという間に、あれだけ濡らしたようだ。
「最高だね、女王様」
ロウがそう言うと、両手でガドニエルの胸を服の上から掴み、上から覆いかぶさるようにして、ガドニエルの首筋に舌を這いまわしだす。
「はっ」
それだけで、ガドニエルは身体をのけ反らすように跳ねあげた。
ロウの手がガドニエルの乳房を襟口の外に引っ張り出した。
さらに、乳首を捏ねるように動かしたのがわかった。
「はにゃああっ、ぎ、ぎもちいいですう」
瞬時に与えられる愉悦に、ガドニエルの身体ががくがくと震える。
異常なほどの感じやすさだ。
まあ、もともと敏感な身体をしていた妹だったが、やはり、ロウの手管が凄いのだろう。
こいつの愛撫はひとつひとつが神がかりなのだ。
ああ、その愛撫でアスカの胸を揉んで欲しい。
股間を貫いて欲しい。
見るだけなんだ気が狂いそうだ。
なんという残酷な命令を与える男だ──。
アスカは、股間を擦り合わせながら、目の前で情交を開始したロウとガドニエルの姿を心の底から恨めしく思った。
ロウが片手で乳房を揉みながら、すっと手をガドニエルの貞操帯に手をやった。
それがさっと消える。
何度見ても不思議な術だ。
収納術という魔道もあるが、身に着けているものだけを取り去って消してしまうという魔道は耳にしたことがない。
人が身に着けているものというのは、魔道では人間と一体化とみなしてしまい、常識的にはそれを外すか脱ぐかしないと、収納は不可能だ。
耳にしたところによると、こいつは人間そのものさえ、収納してしまうというが、そんな魔道は知らない。
それが仮想空間の術とかいうやつなのだろか……?
そのときだった。
ロウがちらりとアスカを見たのだ。
どきりとした。
しかし、そのロウが意地の悪そうな表情になると、いまアスカが痒みに苦しんでいる場所と同じところをガドニエルに愛撫したのだ。
「んふううっ、はああっ」
ガドニエルは身体を跳ねさせた。
アスカはぐっと後手の手を握りしめ、焦燥感に歯を喰いしばる。
本当に鬼畜だ。
しばらく、その愛撫が続く。
ガドニエルはロウの手が動くたびに、激しく身体を反応させ、大きな嬌声をあげ続けた。
「入れるよ」
やがて、ロウがひと言だけ声をかけて、自分の下半身からズボンと下着を消滅させる。
そのまま、一気にガドニエルの股間に後ろから突きたてたようだ。
「あ、あああっ」
ロウの怒張が侵入する衝撃に、ガドニエルが悲鳴をあげながらぴんと上肢を逸らす。
アスカは、ロウの怒張が身体に入ってくるときの、途方もない快感を身体で知っている。
あれが欲しい……。
心の底から欲しい……。
ああ、痒い……。
痒い……。
痒い──。
もう、気が狂う。
この痒い場所をロウの怒張で突いてもらえれば、どんなに気持ちがいいか……。
きっとロウは、いまもってなんの刺激も受けることができずにいる膣の奥の部分を的確に擦って、痒みを癒してくれるだろう。
ロウのことだから、膣を貫いたあとで、きっとお尻も犯したがるかもしれない。
いや、それともお尻が先か……?
なんでもいい。
ロウに抱いて欲しい──。
ロウの精が欲しい──。
煽られまくるあまりの自分の欲情に、目の前の光景から目を背けたいが、ロウの命令だ。
それはできない。
アスカは泣きたくなるような悶々とした気持ちで、ロウとガドニエルの性交を見続ける。
「ああっ、はああ、あああっ、あああ」
ロウは、ガドニエルにすでに本格的な抽送を開始していた。
さらに、たった数回の律動だけで、ガドニエルが絶頂近くまで追い込まれたのがわかった。
「ああ、く、口づけを……口づけをさせてもらってよろしいでしょうか、ロウ様──」
ガドニエルが叫んだ。
そして、貫かれたまま上体を捩って、開いた唇をロウの顔に近づける。
「仰せのままに、奴隷女王様」
ロウがお道化た口調で応じると、近づくガドニエルの唇に唇を重ねる。
お互いがお互いをむさぼるような獣のような口吻が始まった。
知らず、アスカは自分の舌をいつの間にか、それに合わせるように動かしてしまっていた。
一方で、そのあいだも、ロウの怒張はガドニエルの股間を出入りしている。
「んはあっ、も、もうだめえっ」
ガドニエルがロウの口から顔を外して、身体を震わせだす。
ロウの股間の動きがそれに合わせるように激しくなる。
そして、絶頂の衝撃がガドニエルの全身を撃ち抜いたのがわかった。
「ふわああああっ」
ガドニエルが気の抜けたような声を放ったかと思うと、後ろに回した両手でがっしりとロウを掴んだ。
一方でロウは、崩れ落ちるように脱力するガドニエルをしっかりと抱き締めて、さらに股間を前後させる。
「き、気持ちいいです、ロウ様──」
そして、限界まで身体を伸ばしてがくがくと痙攣させたガドニエルが完全に脱力する。
ロウがガドニエルを支えたまま、精を放ったようだ。
そして、静かにガドニエルを床に横たえた。
ガドニエルから離れたロウがやっとアスカに身体を向けた。
股間には、たったいまガドニエルの中から抜いたばかりの怒張が汁を滴らせて、隆々と勃起している。
「ラザ、掃除をしろ」
妹を犯したばかりの怒張を口で掃除をしろという冷酷なロウの言葉に、アスカは鼻白む思いだったが、身体の方は逆に、ロウに命じられるまま、膝立ちでロウの股間ににじり寄っていた。
いつの間にか、膝を床に密着させていた粘性体も消滅している。
下着でさえもなくなった。
大した躊躇いもなく、アスカはロウの怒張を頬張る。
舌でガドニエルの愛液を舐めとる。
それだけじゃなく、怒張の先端にはロウの残り汁のようなものもあった。
アスカは夢中になって、それをすすった。
「ああ、気持ちいいよ。前回は下手くそだってからかったけど、本当は、ラザの舌技は最高だよ」
ロウがアスカの奉仕を受けながら、愉しそうに言った。
前回のときには、こいつの意地悪で何度もフェラをさせられながらも、一度も達してくれなかった。下手くそだと繰り返し罵られて、アスカは本当に惨めな気持ちになった。
無論、それも言葉責めの約束事だとは承知していたが、いま、上手だと褒められて、アスカは嬉しかった。
心の底から嬉しかった。
もっと悦ばせてあげようと、舌技を駆使する。
「出すよ」
すると、おもむろにロウが言った。
次の瞬間、ロウの精が口いっぱいに拡がった。
「んああ、ああ」
思わず声が出た。
アスカは必死になってそれを喉に押し込む。少しも残すまいという気持ちで先端からも吸う。
意識しての行動じゃない。
本能のままの行為だ。
アスカはいつまでもロウの性器を舐め続けていた。
そして、心の片隅でちょっと思う。
つい、この前まで、自分がこんなに嬉々として男に奉仕することがありうるとは思えなかった。
どんなに性愛で溺れても、どこか白けている自分がいた。
だけど、いまは愉しい。
ロウに奉仕するのが愉しい。
こいつは、そんな風に思わせてくれる。
本当に不思議な男だ。
「ありがとう。そして、飲んでくれたのもね。本当に最高のフェラチオだった……。そして、痒みに耐えて、よく頑張ったね。もう苦しくないはずだ」
肩を叩かれた。
我に返って、ロウから口を離す。
自分の口の周りの涎やロウの精などを舌できれいにしながら、アスカは身体の違和感に気がついた。
たったいままで、あれほどにアスカを苦しめていた股間の痒みや、飢えのような性欲への疼きと渇望がなくなっている。
特に、掻痒感については完全に消滅していた。
呆気にとられた。
「ラザ、あなたに謝罪しなければならないことがある」
ロウがアスカの前に胡坐で座り込んだ。
気がつくと、すでにズボンをはいている。
何度見ても、不思議な術だ。
だが、謝ること……?
この男が自分の「鬼畜ぷれい」とやらで、謝罪するとも思えないが……。
「はあ、はあ、はあ、ロウ様……。お姉様の様子は……?」
ガドニエルがまだ情交の余韻がとれないような半分呆けた様子で、こっちに寄ってきた。
まだ、服装は乱れているが、とりあえず胸は服の下にしまい、まくったスカートも戻している。
丈は短いままだが……。
「問題ない。あらゆる意味で正常だ。ガドから見てどうだ?」
「わたしの観察でも問題ありません。発動はしてません。安心しました」
ガドニエルが安堵の溜息を吐いている。
アスカは怪訝に思った。
「なにを言っているんだい、お前ら?」
荒れ狂っていた掻痒感と焦燥感が急に消滅したので、逆に変な感じなのだが、それにしても、ふたりが服を着直したのに、アスカだけが全裸のままというのはなんだか恥ずかしい。両手だってまだ後手で指縛りのままだ。
アスカは、ちょっと身体を斜めにして股間を隠すようにした。
ロウがそんなアスカに目をやり、にんまりと微笑む。
やな男だ……。
なぜか、アスカはかっと頬が熱くなるのを感じた。
「お姉様、実は……」
「いや、俺が説明する」
ロウがガドニエルの言葉を遮った。
そして、アスカに真っ直ぐに視線を向ける。
「な、なんだい……、改まって?」
「パリスの処刑を執行した。たったいまのことだ。つまり、晒し刑で生かすのを中断して、息の音をとめたということだ。俺の方で処置させてもらった。実際にはスクルドだが、いまは、ガドの部下に引き渡して、パリスの身体を灰にする作業をしている」
「灰にしたパリスの遺骸は、家畜の糞便に混ぜて処分するように指示しました。パリスは完全に息絶えたという報せもありました。さっきの鐘がその合図です」
そういえば、ガドニエルがアスカをいたぶったとき、鐘が鳴った。
そうか、あれが……。
「以前、最終的には、ラザに仕返しをさせてやるということを口にしたと思うけど、その約束は守れなかった。申し訳ない」
ロウが頭をさげる。
顔をあげるようにロウに告げながらも、アスカは、びっくりするくらいに、それをどうでもいいことだと思っている自分に気がついた。
それどころか、この数日、パリスの存在のことを頭に思い浮かべることもなかった。
そういえば、身体に杭を貫かせたまま、まだ生かして水晶宮の前に晒しているんだったのだ。
しかし、アスカも、最初に一度確認しただけで、それっきり見にいってない。
そうか、殺したのかとは思ったが、なにか理由があったのだろうか……?
「お姉様、本来であれば、太守のお姉様を抜きにして、処置を早めるというのはご法度です。今回は、水晶宮の者たちにも、事前には知らせていません。すべて事後処置です。わたしの方で手配しました」
ガドニエルも頭をさげる。
なんなんだ、これ?
「まあ、いいけど……。それよりも、理由があったのかい?」
心の底からどうでもいいと思っているけど、とりあえず訊ねた。
ガドニエルが口を開く。
「ところで、本当になんでもないですよね、お姉様? パリスの死で心が締めつけられるとか、急に不安になるとか……。あるいは、動揺するとか……」
「動揺? そういえば、晒してたんだなとは思い出したけど、なんで動揺しなくちゃいけないんだい……。あっ、いや……。そうか。後追いか……」
アスカはガドニエルがなにを心配しているのか合点がいった。
「
つまり、
ガドニエルは、ロウと
それくらい強い心の結びつきなのだ。
そのため、なんらかの事情により、どちらかが寿命を全うできなかった場合は、残された側の魂が衰弱して、生きる力を失い、自殺や無気力死を招くというのが頻繁にあるのだ。
そういえば、オデッセイという仮姿に対してとはいえ、アスカはパリスと
そんな気持ちなんて、とっくに消滅していたので、いまのいままで忘れていた。
「そうです。後追いです。お姉様はもうパリスに未練はないと思いますが、お姉様の魂は、まだオデッセイとしてのパリスに引き寄せられている可能性もありました。それで、お姉様には教えずに、処置させていただきました。申し訳ありません」
「実のところ、
「それはもういいよ……。つまりは、後追いの心配があるから、ノルズやこいつに協力させて、わたしに意地悪をしたというわけかい──。その間に全部終わらせるために……」
アスカはロウの言葉を遮った。
どうやら、なんとなく、今日のこともわかってきた。
呪いの下着による悪戯は、目の前のロウの遊びには違いないが、後追いの懸念のあるアスカに対して、他のことなど考えられない状況に陥らせ、その間に、パリスの処置を実行してしまおうということだったのだろう。
それにしても、ほかにやりようはなかったのか。
「他のことなど考えてられないようなことになってれば、多少は違うと思ってね」
「そうです。申し訳ありません、お姉様」
「まあ、そういうことにはなっているけど、半分以上は、俺の愉しみだ。俺の淫魔術があるので、
ロウが破顔した。
アスカは苦笑した。
「冗談じゃないよ、まったく……。まあいいけど……」
よくはないが、まあいい……。
どうせ、こいつのやることだ。
今更、文句を言っても仕方がない。
こういう性癖の男なのだ。
「……それで、なんで、パリスへの処置を早めることになったんだい?」
アスカは訊ねた。
すると、ガドニエルが真剣な顔になる。
「お姉様、タリオ国の、皇帝直轄領から皇帝が脱走しました。今朝に情報が入りました」
「えっ?」
ガドニエルの言葉に、アスカは思わず声をあげた。
皇帝が逃亡?
タリオ王国の地下牢で厳重に監禁されたと耳にしたが……?
それこそ幾重もの監視と警戒のもとで……。
「皇帝家を包囲して攻めたタリオ公国軍は、皇帝を捕らえたと発表していたようですが、実は包囲された軍を突破して逃亡したようなのです。情報が入りました。何者かが手引きしたのだと思います。皇帝自身は、魔道も遣えない人間族の老人ですし、自分では何もできない男です。ほかの者は捕らわれたままで、皇帝だけがいなくなったそうです。何者かの手引きに間違いありません」
「つまりは、厳重な監視下にある皇帝を連れ出せるだけの能力がある残党がまだいる可能性を危惧したということだ。ならば、パリスを奪われる可能性もある」
ガドニエルに続いて、ロウも言った。
アスカは頷く。
「それで急いで、息の音をとめたということかい。わかった。ご苦労さん。わたしに教えなかった理由も納得いっている。問題はないよ。まあ、どこに逃げたか知らないが、魔道も遣えない皇帝一匹。どこかで、そのうちにの垂れ死ぬさ」
アスカは吐き捨てた。
まあ、皇帝を連れ出した組織というのは気になるが、どうせ、タリオ国の馬鹿どもが間抜けだっただけのことに違いない。
今更、どうということもない。
アスカは肩を竦めた。
そのとき、ロウがさらにアスカににじり寄った。
「な、なんだい?」
ちょっと気後れするものを感じて、アスカはたじろいだ。
「いずれにしても、これで一連のことは全部終わったと思う。ノルズとガドに頼まれたラザに刻まれたパリスの呪術関連については、完全に消滅した。ラザに今後、一切なにかの影響があるということもない。たとえ、パリスが生き返ったとしても、もう問題ない」
「そ、そうかい……。ありがとよ」
アスカはそう言ったが、言い終わってから、もっとちゃんと感謝の言葉を口にすべきだったかと思った。
しかし、すぐにロウが言葉を続ける。
「だから、改めて、ラザには選択の機会をあげようと思う」
「選択?」
アスカは眉をひそめた。
「俺は鬼畜で、嗜虐好きの変態だ。女を大事にはできない。好き勝手に弄ぶ。そんな男だ」
「まあ、嗜虐好きだとは思うけど、大事にはしてるんじゃないかい?」
アスカは笑った。
だが、ロウは真顔のままだ。じっとアスカを眺めている。
アスカも、笑みを消して口を閉ざした。
「ラザを俺の淫魔術で支配したのは、ラザの解呪をするのに、ほかに手段がなかったからだ。だけど、それはもう終わった。完全に淫魔術の支配を消滅させることはできないけど、可能な限り薄くすることはできる。ラザがそれを選択すれば、ラザに対する一切の支配をなくす。心の自由も保証するし、俺に性感を支配されるということもない。いまこの瞬間のように、魔道を勝手に遣えなくされるということもない。ラザは俺と離れて自由になる」
「えっ?」
びっくりした。
ただ、びっくりした。
そんなことを言われるとは、夢にも思っていなかったからだ。
こいつの支配から外れて自由になる?
「まあ、なにしろ、よく考えれば、俺のしていることはパリスと変わりない。ラザの意思とは無関係に身体と心を支配し、好き勝手に弄んでいる。パリスと同じことはしたくないんだ。だから、俺の支配から抜けて、自由になる選択肢をラザにあげたい」
ロウは言った。
アスカはロウを睨む。
「……選択肢と言う限り、もうひとつ以上の提案もあるということかい?」
すると、ロウは笑みを浮かべた。
「もうひとつは、もちろん、このまま俺の性奴隷、つまり、愛人のままでいることだ。そのときには容赦はない。俺好みに調教もする。そもそも、ラザは俺の女の中では、現段階では一番の新参者だ。今日みたいに、ノルズやガドに調教をさせるというともあるだろうね。エリカにも責めさせる……。恥辱的なことや屈辱的な遊びも受け入れてもらう。意思に反して、恥ずかしいことや苦悶することを無理矢理にさせる。それがもうひとつの選択肢だね」
聞いただけで怖気が走った。
そもそも、ノルズやガドニエルからの調教を受ける……?
さらに、エリカにまで?
アスカには受け入れがたい話だ。
「それだけじゃない……」
アスカの表情が変化でもしたのか、愉快そうにロウが嗜虐的な笑みを浮かべた。
「まだ、あんのかい──?」
思わず声をあげる。
「もちろん……。俺の愛人になることを選択した場合には、これからもラザを抱かせてもらう。だけど、その前に性奴隷の洗礼をもう一度、受けてもらう」
「洗礼?」
「そのまま、全裸で廊下を歩いて、女王の私室まで向かってもらう。まあ、大騒ぎにはならないように、他人からは普通の服を着ているように見える“欺騙の魔道具”はあげるよ。だけど、素っ裸で、その後手縛りなのは変わりない。それだけじゃなく、股間に玩具も付けてもらおうかな。もちろん、クリトリスには痒み剤を塗り直す」
ロウがにやりと笑うとともに、小さな楕円形の物体を空中から取り出すように出した。
訝しんでいると、ロウの手の上で、それがいきなり、ぶるぶると震えだした。
アスカはびっくりした。
「これをつけて、外を歩いてもらう。服は着ているようには見えるけど、変な声を出したり、それとも達したりしたら駄目だよ。声はともかく、絶頂すれば欺騙リングの効果が消滅する。そういう仕掛けにしておくね」
「ふ、ふざけるな、お前──。このわたしにそんなことをさせるつもりかい──」
怒鳴りあげた。
冗談じゃない。
そんなことするものか──。
いや、絶対にしない。
なんと言われてもだ──。
かっと腹が煮えるのがわかった。
「強要はしないよ。ラザには選択肢があると言ったじゃないか。ラザは拒否できる。そのときには、もう性交に関することでは、ラザにちょっかいは出さない。約束する──。ただ、これからも、この関係を続けるなら、俺の鬼畜な遊びには付き合ってもらう……。雌犬同然に扱ってやるよ」
ロウが微笑みを浮かべたまま、手のひらの淫具をアスカに差し出す。
さらに、それをすっとアスカの股間に近づけた。
「ひっ」
それだけで、アスカは声をあげてしまった。
ロウが笑った。
アスカはかっと顔が熱くなるのがわかった。
畜生……。
自分ともあろうものが、たったあれだけの行為で少女のような悲鳴をあげるなど……。
「どうする?」
ロウが最後通牒を突きつけるような物言いで、アスカに回答を迫る。
冗談じゃないよ……。
アスカは、大きく息を吐いた。
こいつとの関係を切っても困ることはない。
淫魔の恩恵とやらの能力向上がなくなっても、どうということもない。あんなのは、おまけのようなものだ。
ふと、ガドニエルを見る。
なにかを訴えるようにアスカを凝視しているが、アスカが決めるまで、口を開くことはなさそうだ。
アスカはもう一度嘆息した。
そして、口を開く。
「も、もう一度、か、確認するけど、わたしが自由を選べば、わたしを解放するんだね。そ、そのときには、お前に仕返しをするかもしれないよ」
「死なない程度なら覚悟するさ。それくらいのことはした」
ロウはあっさりと言った。
アスカはなぜか腹がたってしまった。
「な、なら、わ、わたしが束縛を選べば?」
「そのときには、その股間に俺の精をぶちまける。もしかしたら、孕むまでやるかもね。とりあえず、辿り着いた部屋でたっぷりと犯すよ。雌犬のようにね」
ロウがにやりと微笑む。
アスカの腹は決まった。
そして、完全なる自由意志により、ロウに選択を告げた。