※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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529 副女王の選択

 いつもと変化のない水晶宮の廊下だ。

 人の往来は多くもなければ、少なくもない。

 ただし、パリス一派によるイムドリス占拠の後始末を中心として、たくさんの案件を抱えている時期なので、官吏たちの足の歩みはかなり速めかもしれない。

 それでも、アスカが通りかかれば、ほとんどの者が足を止めて、敬意のこもった挨拶をする。

 

 アスカは、その水晶宮を素っ裸で歩いていた。

 もちろん、首には『惑わしの首輪』と称する「欺騙リング」を首飾りにしてかけており、他人から見れば、普通に服を身に着けているように見えるらしい。

 しかし、アスカにしてみれば、なにも身に着けていない素裸であることには変わりない。

 

 アスカは、いまでも、自分の選択が信じられないでいた。

 だが、アスカは、ロウから、淫魔術の支配を解いて自由になるか、それとも、ロウの性奴隷として支配され続けるかという、ふたつの選択肢を突きつけられたとき、それほどの迷いもなく、後者を選んでしまった。

 性奴隷になるのを選んだ場合は、その洗礼として、素っ裸で水晶宮を歩いてもらうという鬼畜な条件を突きつけられてさえ、あまり迷わなかった。

 

 この自分が人間族の男の言いなりになり、恥辱的な全裸歩きを公然の中で行う……。

 

 とても、受け入られることではないはずなのだ。

 だが、逆らえなかった。

 拒否できなかった。

 ロウと離れる気にはなれなかった。

 

 だが、あの瞬間で誰があれを拒めるのか?

 もしも、世界を天秤にかけられても、アスカはロウを選んだのではないだろうか?

 答えは最初から決まっていたし、多分、あいつもそれを知っていた気もする。

 ガドニエルを叱ることはできないな。

 アスカは内心で自嘲した。

 

 いずれにしても、その結果として、いまこうして、あの男の命じるままに、全裸で廊下に出て、想像を絶する羞恥と緊張感、不安を覚えながら進んでいる。

 なにしろ、いまのアスカには、ロウから魔道を封印されてしまって、一切の魔道を遣うことができないのだ。

 魔道が遣えないアスカは、ただの非力なエルフ女に過ぎない。

 さらに、両手を指縛りにより後手に拘束され、股間にはロウの粘性体よって、淫らに振動をする「ろーたー」とロウが呼んだ淫具が貼りつけてある。

 いまのところ、振動はしないのだが、それでも、足を進めるたびに淫具の刺激によって、歩いている最中にも甘美な疼きが股間に走り、アスカに悶え声のような吐息を吐かせる。

 魔道具で全裸姿は隠せても、おかしな声は隠せない。

 アスカは必死に声を我慢している。

 

 しかも、あの意地の悪い男は、もしも、途中で気をやれば、その瞬間に、リングの効果がなくなり、アスカの全裸が露わになるように細工をしたのだ。

 このリングに魔道を込めたのは、ロウの指示を受けたガドニエルであり、ガドニエルは絶対にロウには逆らわないので、その言葉のとおりの仕掛けになっているはずだ。

 それに、ロウの淫魔術のこもっている淫具はまったく感知できないが、たとえ魔道は封印されていても、そもそも魔道具のことなら、大抵のものは見抜けるのだ。

 確かに、アスカがしているのは、ロウの言葉の通りのものだ。

 

「ううっ」

 

 剥き出しの太腿を擦り合わせるように歩いていたアスカは、にわかに燃えるようなむず痒さに襲われて、思わず声を洩らしかけた。

 ついに、ロウが淫具を貼りつけるときに肉芽に塗った掻痒剤が本領を発揮し始めたのだ。

 ロウによって一度は解放された、あの地獄のような痒みの再来だ。

 すぐに、ずんずんという痛みにも似た掻痒感と疼きが拡がりだす。

 アスカは歯を喰いしばった。

 

「んふうっ」

 

 そのときだった。

 アスカが痒みを覚え始めた、まさにその瞬間に、淫具が振動を開始したのだ。

 それほどの強い振動ではなく、むしろ微振動という程度の動きだったが、痒みを感じてきている、しかも、もっとも敏感な肉芽への直接の刺激は、アスカに衝撃を与えるには十分だった。

 

 いずれにしても、まだアスカが緊張によって身体が強張っているときには振動を自重し、羞恥と繰り返す肉芽への刺激により身体が熱くなり、さらに痒みを覚えだした、まさにその瞬間を選ぶ淫具の責めは巧妙としか言えない。

 また、アスカが耐えられるぎりぎりの刺激に留めているのも、女を責めることの上手いロウならではだろう。

 しかし、他人事なら誉めたくなるが、自分が調教されるとなると……。

 

 とにかく、我慢しなければ……。

 だが、直接に視線を向けていなくても、ロウがアスカをどこかで観察しているのは明白であり、いま、この瞬間でも、ロウはいくらでも淫具を激しくして、アスカを責めることができるのだ。

 それに対して、アスカはなにも抵抗できない。

 まさに、すべてをロウに握られているといっていい。

 

 この緊張感……。

 恐怖……。

 

 だが、なんともいえない不思議な幸福感……。

 

 アスカは、ただの羞恥の苦痛だけではなく、痺れるような甘美な感覚と奇妙な解放感にも包まれていた。

 素っ裸で、衆人環境を進む……。

 しかも、淫具と媚薬に苛まれながら……。

 いま、こうしていても、そんなことを自分が受け入られたのが信じられない。

 

「太守様、ご苦労様です」

 

「あ、ああ……」

 

「副王陛下、お疲れ様です」

 

「ああ」

 

「副王様、お疲れ様です」

 

「あ、ああ」

 

 通りがかりの官吏との何十回目の無味乾燥な挨拶を交わしながら、ひたすら、ロウの待つ女王の間に進む。

 見えていないとわかっていはいるが、全員の好機の眼差しが容赦なく注がれている気がする。

 「副王」というのは、正式の役職名ではないが、誰彼となく呼ぶようになった太守の別名らしい。

 アスカがガドニエルの姉のラザニエルだと浸透したことで、なんとなく、そう呼ぶ者が増えた。

 アスカもガドニエルも、それを許しているので、だんだんと副王呼びが増えている気もする。

 

 それはさておき、素っ裸で水晶宮を歩くという行為の恥ずかしさと屈辱感……、そして、興奮……。

 本当に裸に見えてないのか?

 

 いや……。

 

 錯覚じゃない気がする。

 確かに、普段以上の視線を感じるような……。

 そう思うと激しく心臓が鼓動を鳴らしだす。

 

「副王陛下──」

 

 そのときだった。

 怒声のような大きな男の声が響き渡った。

 視線を声の方向に向ける。

 大股で水晶軍の軍服姿でやって来るのは、水晶軍の総帥のような立場にいるエステバンだ。

 アスカが出奔前から知っていた軍人であり、堅物だが剣技や武術にすぐれた生粋の軍人だ。カサンドラは、この男を水晶宮の警備責任者のような地位にしていたが、アスカはすぐに全軍の頂点の将軍に抜擢した。

 形式的にはアスカが総帥だが、事実上、軍を統括するのは、このエステバンだ。

 そのエステバンがやって来る。

 ほっとしたことに、とりあえず、淫具の振動が静止した。

 ロウが気を使ってくれたのだろうと思った。

 

「部下から報告がありましたがな──。あの魔族の処断実行を早めたそうですな。それは、構いませんが、晒し刑場の警備をしているのは、水晶軍の一隊なのですぞ。それにもかかわらず、警備の隊にまで、事後連絡とはどういうことなのです。報告によれば、女王陛下の命令書を携えた、あの人間族の男が人間族の女とともにふらりとやってきて、一瞬にして殺してしまったということです。なぜ、事前に軍に報せてくれなかったのです──」

 

 エステバンがアスカに向かって、憤慨の感情を隠すことなく、怒鳴りたててきた。

 どうやら、パリス処断に際し、処刑場の警備にあたっている軍に連絡なく処刑執行をしたのが気に入らず、顔を潰されたと怒っているようだ。

 それはいいが、なんでいまなのだ。

 アスカは泣きそうになった。

 

「うるさい、エステバン──。後だ。い、いま忙しい──」

 

 アスカはありったけの気力を総動員して、エステバンに声を荒げて怒鳴った。

 そうでなくても、股間で淫具の微振動がいつ再開さるかもわからない。

 ここで立ちどまって、仕事の話をする気にはなれない。

 

「お待ちください──」

 

 すると、いきなりエステバンががっしりとアスカの後手の拘束されている二の腕を掴んでいた。

 

「ひいっ、うわあっ」

 

 自分でも信じられないくらいの悲鳴をあげてしまった。

 エステバンからどう見えているかわからないが、後手に拘束されている全裸の状態で、その腕を掴まれたのだ。

 

 そのときだった。

 不意に、股間の淫具が再び振動した。

 しかも、かなり激しい。

 エステバンがやって来たので淫具をとめたのではなく、もっとも効果的なタイミングを狙っていたのだろう。

 

「ああっ、いやあっ」

 

 ただでさえ、掻痒感に太腿を擦るわせるようにしていたアスカは、その刺激で悲鳴をあげてしまった。

 しかも、がくりと腰まで折った。

 脳天まで突きあげるような甘美な衝撃だ。

 だが、しゃがみ込むのは、アスカの矜持が許さない。

 懸命に足に力を入れて、股を開いて体勢を取り直す。

 

「こ、これは失礼……。思わず……」

 

 エステバンがびっくりしてアスカから手を離した。

 おそらく、自分が腕を掴んだので、アスカが体勢を崩したくらいに思ったのかもしれない。

 

「触んじゃないよ──」

 

 思い切り、エステバンの足を踏んづけてやった。

 

「んがっ、も、申し訳──」

 

「やかましい──」

 

 腹に膝を打ち込む。

 エステバンの大きな身体がぐらりと揺れる。

 

「身体に勝手に触れた無礼はこれで許してやる。それよりも、エステバン、よく聞きな──」

 

 アスカは大声で怒鳴ってから、エステバンの耳元に口を寄せる。

 

「……タリオ国で皇帝が逃亡した。手引きをした者がいるらしい……。急ぎの処断はそのためだ……」

 

 ささやいた。

 たったいま教えられただけの受け売りだが、エステバンはまだ報告を受けていないだろう。

 目を丸くして驚いている。

 

「ま、誠に……?」

 

「ああ……。そ、そんな連中がいれば、パリスの奪回に動く可能性がある……。だ、だから、なによりも先に処断させた……」

 

 アスカは歯を喰いしばる。

 いまのいまでも、淫具は意地悪く振動を続けている。

 しゃがみ込みたくなるのを必死に耐える。

 膝ががくがくと揺れ出す。

 

 頼む……。

 やめて……。

 

 アスカはどこかで、この姿を見ているだろうロウに心の中で哀願した。

 その気持ちが通じたのか、振動がまた静止する。

 ほっとする。

 

「そ、そういうことですか……。だ、だが、事前に教えてもらっても……」

 

 エステバンはまだ不満そうだ。

 アスカは、鼻を鳴らした。

 

「の、のぼせるんじゃない──。水晶宮をあっさりとパリスの手の者に事実上奪われたのはお前らだよ──。くっ、ふう……。あ、あいつの息のかかった者はまだいると思いな……、んくうううっ」

 

 やっと静止したとと思った淫具がまた動き出す。

 今度は大した振動じゃないが、猛烈な痒みに襲われているクリトリスへの刺激は、アスカの身体を硬直させるには十分だ。

 これは……。

 アスカは歯を喰い縛る。

 つっと愛液が膝裏に垂れるのがわかる。

 くそう………。

 本当に、他の者には、服を着ているように見えているんだろうねえ……。

 

「副王陛下?」

 

 エステバンが怪訝そうな表情になるのがわかる。

 アスカは平静を装った。

 

「……ふ、ふう……、れ、連中は洗脳と操りを得意とする連中だ。し、報せることで、も……もしも、こ、皇帝一派に……パリスを……奪われたらどうするんだ……。く、くだらないことを言ってくる暇があったら、ナタルの森に蔓延っている魔獣の十匹やニ十匹も狩って来い──」

 

 勢いで怒鳴りあげた。

 エステバンが身体を緊張させ、次に恥じ入るような表情をする。

 しかし、なんというロウの意地の悪さ……。

 あいつは、ちっともアスカの股間の淫具の振動をとめようとはしない。

 

「そ、そうでした……。これは私が間違っておりました。なんの功績もあげずに、信頼を求めるなど恥ずかしい……。申し訳ありません。信頼をしてもらえなかったのは、確かに、我ら水晶軍の不徳──。それに比べれば、副王陛下や英雄殿は、まさに実をあげて、ナタルの森を救ってくださったお方がた……。この身がお恥ずかしい……」

 

 エステバンが項垂れたまま言った。

 

「わ、わかりゃいいんだよ」

 

 アスカは言い捨てた。

 エステバンの横を進もうとした。

 気を張ったうちは気にならなかったが、その分まで痒みと疼きが倍増した気がする。

 

「……それにしても、随分とお綺麗な……」

 

 すると、不意にエステバンが思わず言葉を洩らしたという感じで小さく呟いた。

 だが、横をすぎるときに、その呟きが耳に入ってきた。

 

「は?」

 

 反射的に問い返してしまい、アスカは一瞬後、後悔した。

 

「あっ、こ、これは重ねて失礼を……。お美しい装束なので、つい……」

 

 エステバンが真っ赤な顔で深々と謝罪のために頭をさげる。

 

「な、なにが……美しい装束だい」

 

 美しいどころか、アスカは一糸もまとっていない。

 とにかく、アスカは逃げるようにその場を離れた。

 

 それからもアスカは、振動と静止を繰り返す淫具に翻弄されながら、晒し者になったかのように、全裸で水晶宮を進み続けた。

 やっと、女王の間に近づいたときには、気力も体力も使い果たしたような気持ちになっていた。

 

 そのときには、いつもに増す視線の正体もわかった。

 どうやら、連中に見えているアスカの偽の装束はかなりの美しいものらしい。

 また、淫具に悶えながら歩むアスカは、なんとも艶かしく美しいそうだ。

 周りの者たちのアスカに対する呟きで、それがわかった。

 

 どうでもいい。

 とにかく恥ずかしい。

 

 勃起している乳首や、だらしなく垂れ流れている股間の愛液までじっと観察されている気もして、おかしな汗をどっぷりとかいている。

 こんな姿を本当に見られたら、身の破滅だ。

 なんで、こんなこと受け入れたのだろう。

 やっぱり、いまでも信じられない。

 

 いずれにしても、もう少し……。

 女王の間が近くなる。

 官吏よりも、護衛の兵の方が多くなってきた。

 

 そして、扉が見えるところまで到着すると、上にのぼる階段が迫り、十人ほどの衛兵が両側に並んでいた。

 それほどの階段ではなく、少し見上げるくらいのところに、ガドニエルの生活空間となる区域を遮る扉がある。

 その向こうが女王の間だ。

 

 ここまで来れば……。

 その途端だった。

 これまでのものとはまったく違う、最大振動としか思えない強さで、股間の淫具が暴れ出したのだ。

 

「ああっ、はうっ」

 

 アスカは体勢を崩して、その場にしゃがみ込みそうになった。

 

 しまった……。

 

 そう思ったときには、もう遅い、

 アスカの声で、衛兵の視線が一斉に向いたのがわかる。

 しかも、アスカは、ばったりと女王の間に繋がる階段の途中で座り込んでしまった。

 すぐに立とうと思ったが、腰に力が入らなくて立てない。

 それどころか、快感が込みあがり、全身がぶるぶると震えてくる。

 

 そのとき、首からさっと首飾りが外されるのがわかった。

 驚愕する。

 アスカの裸身を隠しているのは、その首飾りだ。

 それが外されるということは……。

 アスカは全裸を晒される恐怖に竦みあがる。

 しかし、入れ替わりに、別の首飾りをかけられていた。

 『惑わしの首輪』とは、別の首飾りだ。

 

「……これをしていれば、今度は連中から、俺たちの姿が見えなくなる。でも、声は聞こえるぞ……。声は抑えろよ……。ところで、さっきの軍人さんへの啖呵と膝蹴りはすごかったね。横にいて怖かった。ど迫力だったよ」

 

 くすくすと笑う声とともに、そう耳元でささやかれた。

 ロウの声だ。

 驚いたが、新しい首輪の効果が発生すると同時にロウの姿が見えてきた。

 しかも、すぐ横にいた。

 どうやら、ロウはこの同じ首飾りをして、その効果を使って、ずっとアスカの横にいたようだ。

 唖然とした。

 

「ロ、ロウ?」

 

 そばにいてくれたということが嬉しくて、思わず声を出す。

 しかし、ロウが小さく首を振る。 

 

「声が大きい……。いまのは、聞こえたかもね……。ちょっと怪しんでるよ」

 

 ロウが聞こえるか、聞こえないかどうかの小声でささやく。

 そのとおり、衛兵たちの何人かは、首を傾げてこっちを覗くような仕草をしている。

 確かに見えてはいないが、声は聞こえるようだ。

 アスカは慌てて、口をつぐむ。

 

「踊り場で待つよ。立てなければ、這っておいで」

 

 ロウが言い残して、すっと上に向かって歩いていく。

 次の瞬間、さらに強く淫具を動かされた。

 

「んんんっ」

 

 必死で口をつぐむとともに、ロウに必死に首を横に振って見せて、哀願の視線を向ける。

 口を開くと嬌声がこぼれそうだし、こんなに振動を強くされたら動けない。

 しかし、ロウはすたすたと階段を歩き、言葉の通りに、女王の間の前の大きな扉の前でこっちを向いた。

 やって来いと言わんばかりの表情だ。

 

「んんっ」

 

 アスカは洩れそうな声を必死に我慢しながら、階段を這うように進む。

 魔道具で姿を隠されているとはいえ、人前で淫具に苛まれ、腰が抜けている姿で床を這い進むなど、羞恥と惨めさで顔がひきつる。

 だが、立とうにもまったく力が入らないのだ。

 

「あっ……くっ……」

 

 気が狂う──。

 

 そう思うくらいの羞恥心と恥辱感だ。

 だが、激しい快感が荒れ狂ってもいる。

 実際、媚薬と淫具だけでは説明のつかない蜜液がどんどんと股間から流れ出ているのがわかる。

 

 必死に声を耐えて、やっと上まで辿り着く。

 倒れ込むように、ロウの前に触れ伏した。

 

 やっと……。

 

 やっとだ……。

 

 もう女王の間はすぐ後ろの扉の向こう……。

 そこは、ガドニエルの完全なる個人的空間だ。

 やっと、そこで……。

 

 きっと、そこで……。

 

 しかし、アスカに向かって姿勢を屈めたロウの顔がにやりと微笑んだ気がした。

 嫌な予感がする。

 

「んんんっ」

 

 いきなりだ。

 ロウがアスカを後ろに向けたかと思うと、さっとズボンから取り出した怒張を後ろからアスカの狭間にあてがったのがわかった。

 ずぶずぶと押し入ってくる。

 すっかりと濡れていたアスカの股間には、前戯など不要だった。

 あっという間に、深々と貫かれる。

 だが、ここで──?

 

「んんっ」

 

 声が漏れそうになるが、ロウの手がアスカの口を塞ぐ。

 それがまるでレイプのような錯覚を呼び、さらにアスカは興奮状態に陥った。

 

 駄目だ……。

 もうなにも考えられない……。

 

 魔道具で周囲にはわからないとはいえ、衆人のいる状況の中で後背位で犯されるなど、これが現実とは思えない。

 しかし、それが逆に、異常なほどの官能と興奮の中ですさまじい欲情を誘う。

 さらに快感が上昇する。

 

 視線があるわけがない。

 だが、視線を感じる気がする。

 見られていないはずだが、見られているかもしれないと思うと、駆け巡る妖しい甘美感も大きくなる。

 

 本格的な律動が始まった。

 あまりもの快感で、アスカは本当に気が狂う気がした。

 ロウの怒張が粘膜を擦り、子宮に近いところをどんどんと叩く。

 脳髄からつま先まで、激しすぎる快感が駆け巡る。

 

 もうなんでもいい。

 

 恥ずかしめでも、屈辱でも、この男に与えられるものなら、どんなものでも受け入れたい。

 アスカは、ロウによって与えられる一打一打の律動に酔いしれた。

 階段とはいえ、ここが水晶宮の廊下であり、衛兵が見守り、官吏もすぐ横を歩くような場所だということが、アスカの興奮を膨れあげる。

 

「んんふううっ、んああああ」

 

 これまで経験したことがないような快感の爆発がアスカの身体の中で起きた。

 声が我慢できないが、もうどうでもいい。

 ロウの手を乗り越えて、声が迸る。

 

 もういい。

 ばれてもいい。

 

 それよりも、この快感を逃したくない。

 そして、ロウの怒張がアスカの中でさらに大きくなったと思った。

 

 見られもいい……。

 誰に知られてもいい──。

 

 自分はロウの女だ──。

 こいつの性の奴隷だ──。

 

「んはあああっ、んんんん」

 

 絶頂の大きな渦に巻き込まれながら、アスカは全身をわななかせた。

 歓喜に打ち抜かれたアスカは、さらに押し寄せる絶頂感に忽然となりながらも、ロウの熱い精を子宮に受けとめ続けた。

 そして、ふわりと身体が浮きあがる。

 

 いや、これは転送術……。

 

 ロウとアスカの身体が繋がったまま、転送術によって、どこかに跳躍させられるのがわかった。

 

 

 *

 

 

「お、お姉様、お声が大きくて焦りました。ロウ様が声を抑えてとおっしゃたのに」

 

 聞こえたのはガドニエルの焦ったような声だ。

 どうやら、扉の向こう側のさらに、奥にある完全な私室空間に魔道で跳躍させらたらしい。

 

「俺も肝が冷えた。とっさに口を押えたけどね。途中で諦めた。ガドが、なんとかすると思ったし」

 

「で、でも、気づかれたかもしれません。すぐに防音術と気配を消滅させる魔道をかけましたけど、全部まではとても……。それにしても、ロウ様もあんなに無頓着に……」

 

 ガドニエルが困ったように言った。

 しかし、アスカは、この馬鹿妹が世間体のようなものを気にするのがちょっと面白かった。

 

「いいよ……。よく考えれば、わたしには守らなければならない外聞なんてないしね。まあ、愉しかったよ。とても、どきどきした。たっぷり百年ぶりの気持ちだ……。それに、突き放されたかと思ったけど、お前はずっと隣にいたんだね……。嫌な奴だ。そんなことしてくれたら、次はもっとお前に甘えたくなるだろう……。まあいい。とにかく、ありがとう、ロウ」

 

 アスカは笑った。

 もういい……。

 それよりも、本当にこの男は愉しい。

 女を愉しませてくれる。

 アスカも、あんなに興奮したのは久しぶりだ。

 

「礼を言われるとはね……。参ったな……。まあ、今度はもっと面白い趣向を考えておくよ」

 

 ロウが苦笑交じりに言いながら、男根を抜く。

 アスカは激しい絶頂で脱力してしまっていて、その場に横になる。

 

「冗談だろう」

 

 とりあえず、そう答えた。

 しかし、実際にはどきどきした。

 こいつに、なぶられる自分を想像して興奮した。

 

「そんな、ずるいですわ。お姉様ばかり」

 

 すると、ガドニエルの抗議の声が耳に入ってきた。

 顔をあげると、ガドニエルは頬を大きく膨らましている。

 本当に、この馬鹿妹は……。

 アスカは苦笑した。

 

 だが、そのアスカの耳に、複数の女たちの嬌声が入ってきた。

 それで気がついたが、ここは、ガドニエルの私室に間違いないのだが、アスカとロウとガドニエルだけじゃなくて、ほかにもいる。

 

 顔を向ける。

 いるのは、ガドニエルの侍女らしき五人のエルフ女だ。

 しかも、上半身は普通の侍女姿なのだが、下半身が貞操帯だけとかの破廉恥な恰好のエルフ美女たちだ。

 

 まずは、下半身が貞操帯の女が三人。

 さらにふたりいて、そっちは下半身にはなにも身につけておらず、驚いたことに、ノルズのところでアスカも乗せられた木馬にそれぞれ跨らされていて、手足を拘束されている。

 泣き声混じりの嬌声をあげているのはそのふたりであり、他の三人は艶めかしく悶えはしているが、一応は、侍女としての仕事をしている。

 ただ、そっちも貞操帯から淫らな刺激を受けているのだろう。

 時折、腿を擦り寄せたり、伸びあがるように動作をとめたり、あるいは、小さく悶え震えたりしている。

 

 なんだこれ?

 

「彼女たちは問題ありませんわ、お姉様。わたしの侍女たちです。わたしたちとロウ様のことは、全部知っております……。この者たちは、改めてロウ様の性奴隷になりたいと言っているので、とりあえず、調教をしているところです。なにしろ、この者たちは、ロウ様に助けられたのに、逆らって、ロウ様を害そうとさえしたのです。恩知らずの者たちです。でも、泣いて謝ることで、優しいロウ様が調教を受けることをお許しになったのですわ……。わたしは、ロウ様に逆らった者など放逐しようとも思ったのですが……」

 

 ガドニエルが五人の女を睨みながら言った。

 よくはわからないが、あまり他人のことを悪く言わない妹なのだが、いまは、この五人には、かなり腹をたてている気配だ。

 話を聞く限り、ロウを一度裏切ったらしいが、それが立腹の原因らしい。

 

「そ、そうかい」

 

 それしか言えなかった。

 しかし、そもそも、一度の裏切りや敵対で、こいつに受けいられないなら、アスカもノルズもこいつの女にはなれない。

 こいつは、どこまても懐が大きいから、こいつ自身は気にもしないとは思うが……。

 

 すると、後手の指縛りがぱらりと解けて、手が自由になった。

 裸体の上に、アスカの服一式がそっと置かれる。

 顔をあげると、ロウだ。

 

「とてもいやらしくて、淫乱で、興奮した。本当に、またやろうな」

 

 ロウがアスカに向かって屈み込み、唇を寄せてくる。

 アスカも顔を向けた。

 舌を絡め合う。

 

「んんっ」

 

 たちまちに、身体が溶けるような幸福感に全身が包まれる。

 本当に、この男との逢瀬は危険だ。

 これ以上、この男と接すれば、もうアスカは、もう一生、ロウと離れることができなくなるだろう。

 

 いや、もうなっているか……。

 口惜しいけど、もうアスカはロウに堕ちてしまった。

 ロウの背中に腕を回しながら、アスカは心の中で苦笑した。

 

「たから、嫌だと言ってるだろう。ごめんだよ。冗談じゃない。調子に乗んじゃないよ」

 

 だが、唇が離れると、そう言ってロウを睨む。

 しかし、ロウはにこにこと微笑むだけだ。

 その顔は、また同じような悪戯を仕掛けるつもりが満々のようだ。

 アスカは肩を竦めた。

 そして、すでに魔道が戻っていることに気がつき、洗浄の魔道で身体の汗や体液をきれいにする。

 ロウからもらった服を身に着け始めた。

 

「マリレンド、イザベリアン、ロルリンド、わたしのお姉様ですよ。ロウ様同様に接しなさい。呆けてないで世話をするんです」

 

 ガドニエルが怒鳴った。

 

「あっ、はい」

 

「も、申し訳ありません。お、お世話を……」

 

「太守様、よ、よろしくお願いします」

 

 三人がやって来た。

 アスカを囲んで、身支度を手伝おうとする。

 だが、やはり、股間の貞操帯で淫靡な刺激を受け続けているのだろう。

 その刺激に苦悩しているようであり、動作がぎこちない。

 

「ディルドでも挿入しているのかい? いつから、やられてるんだい?」

 

 アスカは笑った

 

「ディルドを入れたのは、今日はほんの朝からですわ、お姉様。そのとき、媚薬を足してあげました。強いものじゃありません。ちょっとくすぐったいくらいのものです。貞操帯はもう二日連続になりますが……。その間、焦らすだけで、一度も達しさせてはいません。厠は朝と夕だけさせてます」

 

 ガドニエルが口を挟んだ。

 ふと見ると、ロウが部屋の長椅子に腰掛けて、そのロウに飲み物のようなものをガドニエルが渡している。

 ロウの世話は侍女にはさせないらしい。

 その後、ガドニエルは、嬉しそうに、ロウの足元の床に座り、身体を脚にすり寄せるようにした。

 

「これは?」

 

 アスカは、木馬で悲鳴をあげているふたりを顎で指して、侍女に訊ねた。

 

「ヒ、ヒルエン様とギルリーズ様は……、そのう……。ロウ様に逆らった……首謀者なので、ガドニエル様が一番の罰だと……」

 

 三人のうちのひとりが言った。

 

「おふたりは、もう四日、あの罰を受けてます。よ、夜と半日だけは解放されるのですが……。でも、やっぱり貞操帯で封印されて……」

 

 さらに別の者が言った。

 

「へえ」

 

 ガドニエルにしては徹底した調教だ。

 それとも、ロウの指図か?

 アスカは服を着させられながら思った。

 

「なあ、ラザ、実のところ、こいつらをどうするか、まだ迷っている。改めて精を注ぐかどうかもね。それで、こいつらの調教を請け負ってくれないか? 徹底的に躾けて欲しい。淫乱で従順なマゾ女に仕上げてくれ」

 

 すると、ロウが言った。

 アスカはロウに視線を向けた。

 

「わたしにかい?」

 

「ああ、好きなように扱っていい。あんたに任せる」

 

 ロウが言った。

 アスカは頬を綻ばせた。

 

「そうかい。じゃあ、全員集まりな。ガドニエル、そのふたりもこっちに寄越すんだ」

 

「よろしくお願いします、お姉様……。さあ、お前たち、今日からお前たちを躾けてくださるのはお姉様です。すべてに従いなさい」

 

 ガドニエルが侍女たちに言った。

 すぐに木馬が消滅して、ふたりが床に倒れ込む。

 

「別に無理に従わなくてもいいさ……。ただ、逆らえばどうなるか、身体で覚えてもらうだけだからね。そら、お前ら、そこに並べ」

 

 アスカが侍女たちを睨むと、五人の顔が一斉に蒼くなる。

 とりあえず、貞操帯組の三人は、やっていることを中断して、アスカの前に並ぶ。

 

「……ああ、も、もう……お、お許しを……」

 

「お、お願いでございます……。じ、慈悲を……」

 

 さらに、ふたりが息も絶え絶えに言った。こっちはまだ倒れたままだ。

 アスカは魔道で軽い電撃をふたりに飛ばす。

 

「ひぎいいっ」

「あがあああ」

 

 それでも、ふたりには衝撃だったのだろう。

 電撃の激痛にのたうち回った。

 

「まだまだ元気じゃないかい。さっさと、立ちな。立てと言ったら立つ。黙れと言ったら黙る。寝ろと言われれば寝る。そっから教えなきゃ駄目かい……。とにかく、わたしのご主人様のご命令だからね。徹底的に躾けるよ。とりあえず、お前らふたりは浣腸だ。全員の前でこれから糞便をさせる。まずは、そこからだね。それで、自分の立場を自覚しな」

 

「ひっ」

「か、浣腸?」

 

 浣腸と聞いて、木馬に乗っていたふたりが顔を引きつらせる。

 だが、アスカは収納魔道で取り出した手枷足枷をふたりの前に投げる。

 

「お前ら、三人──。こいつらを拘束しな。ぼやぼやしてたり、躊躇ったら、お前らに浣腸する。言っておくけど、まともに糞便を出せると思うんじゃないよ。水晶宮の反対側にあるわたしの執務室まで行って戻ってからだ。そっちがいいなら、それでもいい」

 

 アスカがそう言うと、三人は慌てて、ヒルエンだか、ギルリーズだかというふたりの女に群がる。

 ふたりは悲鳴をあげて逃げようとするが、あっという間に拘束されてしまう。

 

「さて、じゃあ、やろうかね」

 

 アスカは浣腸袋を魔道で出した。

 先端を尻穴に挿して、ぐっと絞れば簡単に浣腸ができてしまう便利な責め具だ。

 

「そうか、愉しみだね。糞便姿は俺も見学していいのかい?」

 

 ロウが笑いながら言った。

 ふと見ると、ガドニエルはもうロウの股の間にしゃがみこんで、フェラチオをしている。

 まったく……。

 

「もちろんさ、ご主人様。うんと惨めにやらせるから、愉しみにしておくれ」

 

 アスカはお道化て答えた。

 

 

 

 

(第44話『クロノスを探して』終わり)

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