※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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538 一女兵士の見たクロノス様(その1)

「床にもっと顔を近づけな。お前らはロウ様に支配される虫けらだ。徹底的に恭順しろ。言葉でも態度でも、ひたすらに畏まるんだ」

 

 ノルズ、すなわち、教官様が腕を振って、床に電撃の光線を放つ。

 まるで、巨大な鞭で床を引っ叩いたかのようだ。

 大きな音がして、ずしんと床が揺れたような感触が肌に伝わってくる。

 恐怖の衝撃だ。

 ほかの女兵たち、いや、将校である小隊長たちも同じように床に這いつくばり、素っ裸で数珠つなぎになって四つん這い行進をしているのだが、その間隙を縫うように数線の電撃が通過していく。

 ジェネは恐怖で竦みあがった。

 

 たったいまのは威嚇だが、ちょっとでも気を抜いたような動作をすると、本当に電撃を浴びせられる。

 ジェネは、まだ最初の一度しか直接電撃を浴びせられていないものの、あれはただの電撃ではなく、身体の芯からの激痛を掘り起こす魔道が混じっていて、凄まじい苦痛が襲いかかってくるようになっているのだ。

 

 突然に呼び出しを受けた水晶宮の大広間だ。

 赤い絨毯が敷き詰められているだけのがらんとした部屋である。

 ジェネは水晶軍に入って以来、ずっとイムドリス側でガドニエルの親衛隊に所属していたからよくは知らないのだが、ここは本来は水晶宮主催の舞踏会などをする場所であり、最近ではカサンドラ様が太守だった三箇月ほど前に、ここで酒宴が催されたそうだ。

 そこに、業務の終わった夕方に集められた。

 

 集合を指示したのはブルイネン隊長であり、理由もわからずに整列をしたら、ブルイネン隊長とともに、クロノス様といつも一緒にいる美しくて色っぽいエルフ女性と人間族の女性がそこにいて、ジェネたちに頭をさげ、どうかクロノス様の性の相手になって欲しいとお願いをされたのだ。

 

 いきなりのことでびっくりしたが、そのエルフ女性の説明によれば、いつもクロノス様に奉仕している十人ほどの女たちだけでは手が足らず、できればジェネたちの中からも、その性奉仕に加わって欲しいという申し出だった。

 クロノス様が大変に性愛にお強いということは耳にしていたが、十人もの女がいて、それでも相手が不足する絶倫というのはどうなんだろうと驚いたものの、そのエルフ女性の物言いはとても真摯だったし、正直、クロノス様のお相手をするというのは嬉しい話だと感じた。

 

 なにしろ、クロノス様は、イムドリス宮でジェネたちを救出してくれた英雄であり、それだけでなく、おそらくジェネもほかの女たちと同じように心を毀された状態になっていたと思うが、それを唖然とするほどの幸福感とともに治療してくれた神様のような恩人なのだ。

 その治療は、クロノス様がジェネたちひとりひとりに愛を授けるという手段で行われたのだが、夢心地の中で味わったクロノス様との性愛は素晴らしいものであり、ジェネはあれほどの快感と充実感を味わったことはそれまでになかった。

 

 とにかく、眩い光の中で生まれ変わったような心地とともにジェネは完全に元気になり、それどころかイムドリス宮の中で味わったことが全く心を傷つけることがないように記憶を細工されており、心身共に完全に復帰できた。

 魔道による身体の治療はできても、狂った心の治療はできないので、それは間違いなくクロノス様のおかげだとお互いに噂し合った。

 このことひとつのみでも、ジェネたちは背負って背負いきれない、返そうにも返せない恩があるといっていい。

 

 もっとも、クロノス様にやってもらったことを口外することは、ガドニエル女王様から禁止されたので、それを大っぴらに喋ることはできなかった。

 だが、クロノス様の愛を受けて狂った頭を回復をしてもらった女たち同士で、クロノス様への感謝と思慕の念の言葉を頻繁に交わし合った。

 

 そして、再び水晶軍の女兵としての当たり前の日常が再開した。

 ただちょっと違うのは、イムドリスに引きこもっておられたガドニエル女王は、日常的に水晶宮側に移ることになり、当面はイムドリスの結界世界そのものが封鎖された状況になったことだ。

 そのため、警備を水晶宮側とイムドリス側の双方に設置する必要がなくなり、ガドニエル女王の親衛隊が解散となって、水晶宮側の水晶軍に全員が編成され直した。

 

 ジェネだけでなく、クロノス様に助けられた女たちは、改めてクロノス様にお礼を言おうとクロノス様に殺到したが、なかなか直接に会うという願いは果たされずに、遠くから垣間見るだけという日が続いた。

 クロノス様の周りの女たちが、なかなかクロノス様に、ジェネたちのような者を近づけようとしなかったのだ。

 どうやら、クロノス様に不必要に接近する面倒な輩として、クロノス様の女たちにすっかり警戒をされてしまったようだ。

 

 まあ、ジェネならずとも、ほぼ全員が、あの日、クロノス様に愛された幸福感が忘れらず、あと一度でいいから愛されたいという下心を持っているのは否定しない。ただ、そんな邪まな感情をクロノス様の女の方々はすっかりと見抜いてしまったらしい。

 

 いずれにしても、クロノス様に再度愛されるという希望は、なかなか叶いそうになかった。

 それに、だんだんわかってきたが、ガドニエル女王様もまた、クロノス様に恋をされているというようであり、明らかに女王とクロノス様は男女の仲のように思えた。

 だったら、ジェネは諦めるしかない。

 やはり、ジェネのような一介の女兵とは立場が違いすぎる。

 

 ただ、クロノス様がついにハロンドールに帰国なさることになるにあたり、その護衛隊をブルイネン様を編成するという話があり、すぐにその一員にジェネも希望した。

 せめて同じ空間で息をして、あわよくば、ほんの一言でもいいから、声さえかけられたならば……。

 ジェネの願いはそれだけだった。

 ところが、いきなり、あのエルフ女性から、クロノス様の性の相手を大勢探しているという申し出があって……。

 

 否も応もない──。

 応だ。

 応に決まっている。

 

 一斉にほぼ全員がエルフ女の方の話を承知され、ジェネもまた、承諾の意味の言葉を叫んだ。

 エルフ女性の方はほっとした顔をされていた。

 もうひとりの人間族の女性が、クロノス様はちょっと鬼畜で変態だということを申されたが、ジェネは気にならなかった。

 クロノス様になら、なにをされてもいい。

 そう思った。

 

 事態が一変したのは、その直後だった。

 転送術の魔道で、ガドニエル女王様とガドニエル様の姉君のラザニエル太守様、そして、ノルズという方が広間に現れ、突然、全員に調教を受けろと言い出したのだ。

 クロノス様に仕えるための躾であり、それが必要なのだそうだ。

 考える余裕もなかった。

 そのノルズという人間族の女性が前に出て来て、いきなりジェネたち全員を激しく罵倒して、「規約」というものを復唱させられた。

 ジェネは、まず、そのノルズ、つまり、教官様の醸し出す圧倒的な迫力と威圧感に押され、どう聞いても猥褻そのものとしか思えない言葉を絶叫した。

 

 ただ、前に並んでいる小隊長様たちは、女王様の命令とはいえ、理由もなく人間族の女性に服従しろと言われたのが不服だったらしい。

 規約を口にするのを拒んだのだそうだ。

 しかし、教官様に手酷くやられ、下半身を丸出しにされるという恥辱を合わされた。

 武勇で知られるエルミア様、ドルアノア様が子ども扱いであり、その後、ジェネはほかの者と一緒に、あの恐怖の電撃の苦痛を浴びせられた。

 ジェネはその一発ですっかりと教官様に対する抵抗心を失っていた。

 

 それからは徹底した雌犬の躾だ。

 全員が素っ裸になるように命令され、ちょっとでも脱衣の動きがない者や躊躇した態度の者には、容赦なく電撃の光線が飛んできた。

 あまりの恐ろしさに、ジェネは恥辱感も羞恥も忘れて、懸命に服を脱ぎ捨てた。

 教官様に対する恐怖だけが身体を包んでいた。

 

 最初にやらされたのは、命令に従って四つん這いになったり、立ったり、片脚をあげたり、あるいは仰向けになったりする訓練だ。

 ほんの少しでも動作が遅れれば、教官様の電撃だ。

 ジェネはほかの女兵とともに必死でやった。

 

 次に全員並んで自慰をするように命じられた。

 さすがに鼻白んだが、ここでもエルミア様が怒りだした。

 エルミア様はもう一度容赦なく、教官様に蹴り殴られ、さらに電撃を浴びせられた。

 股間に直接だ。

 そして、失禁した。

 腕に覚えのあるエルミア様としては屈辱だっただろう。

 エルミア様は悔し涙を流しだした。

 だが、教官様はさらに激しく怒り、エルミア様の顔を足で踏んづけて、赤い絨毯の上に失禁したおしっこを舌で掃除するようにがなりたてた。

 エルミア様はそのときには号泣していて、もう気力も失ったように舌を動かしていた。

 とにかく、こんなに怖い人はいないと思った。

 それくらい、そのときの教官様の権幕は激しかった。

 

 次に、させられたのが四つ足で並んで歩くことだ。

 膝を床に着けずに、お尻をあげるように進むのだ。

 いまがそうである。

 どんなにそれがみっともない恰好かということは、目の前を歩く女兵の股間が顔の前に曝け出していることからわかる。

 五人ごとの六個のグループになり、命じられるままに素っ裸で四つん這いで歩いている。

 

 これまでのあいだに、あのエルフ女の方たちが、何度もやめるように太守様や女王様に哀願をしてくれ、ブルイネン隊長もガドニエル様にやり過ぎだと懸命に口添えしてくれていた。

 しかし、ガドニエル女王様はとても上機嫌に微笑むだけで話を聞く様子もないし、それはラザニエル様も同じだ。

 むしろ、エルフ女の方が折檻をされるのではないかという勢いでラザニエル様に叱咤されて、途方に暮れていた。

 

「ほら、こっちの列に光線の棒がいくよ。こっちの班は、みっともなく股ぐらをあげな」

 

 教官様の声が響く。

 左からジェネたちに沿うように走っている光の光線がゆっくりと近づくのが見える。

 

「きゃああ」

「ひゃああ」

「ああ、またです」

「ひいいっ」

 

 一斉に悲鳴があがる。

 あの光に当たると、あのもの凄い苦痛が身体に走るのだ。

 ただ、とてもゆっくりとしか接近してこないので、片脚をあげて跨ぎ、すぐに反対側の脚をあげてやりすごせば、当たらないで済む。

 しかし、そのために、大きく股間を晒す姿をしなければならず、教官様はそれを、ちょうどガドニエル女王様やラザニエル太守様が座っておられる前でさせるのだ。

 

「ほらほら、来るよ。お前ら誇り高いエルフどもの鼻ぱっしらをこのノルズ様が叩き折ってやる。徹底的な奴隷の精神を叩き込め。みっともなく泣いて許しを乞え。それが雌犬だ」 

  

 教官様の叱咤が飛ぶ。

 三十人は五人ずつくらいで間隔が開いていて、ジェネたちがガドニエル様たちの前を過ぎる番だったのだが、教官様の命令でとまらされた。

 

「この列は停止。もう一度だ。脚をあげろ」

 

 すると、ガドニエル様側から、またもや光線の棒が膝の高さで接近してきた。

 ジェネたちは悲鳴をあげて脚をあげて跨ごうとした。

 だが、光線は通り過ぎずに、あげた脚の真下で静止してしまった。

 そのため、脚をおろせない。

 

「よし──。じゃあ、ガド様に向かって、小便を披露しろ。そんな恥辱を悦びに感じるほどにやるからね。ほら、小便だ。十数えるうちに始めないと、股に電撃が浴びせられるよ」

 

 その残酷な宣言が嘘じゃない証拠に、全員の股間の下の床に魔道の光の玉が出現した。

 ジェネはほかの女兵とともに、悲鳴をあげた。

 

 そのときだった──。

 

「なにをしている──。やめんか──」

 

 身体の芯に響くような大喝が部屋に響き渡った。

 びっくりした。

 

「ロウ様」

 

 裏返ったような声をあげたのは教官様だ。

 一瞬にして魔道の光線の棒も、身体の下の光の玉も消滅した。

 とにかく、なにが起きたかわからなかった。

 だが、ジェネのそばにたまたま教官様が立っていたので、教官様の様子が見えたのだが、さっきまでの勢いは消え失せ、教官様の顔が真っ蒼になっていた。

 

 とりあえず、大きな声がした方向に目をやる。

 すると、クロノス様がいた。

 明らかに激怒しているとわかる表情をしている。

 ジェネはノルズも恐ろしいと思ったが、いまのクロノス様はそれ以上だった。

 憤怒の気を発しているクロノス様がもの凄く怒っているのは明らかだ。

 また、クロノス様の横には申し訳なさそうな顔をしたあのエルフ女性がいる。

 彼女がクロノス様を呼んできた気配だ。

 

「ガド、お前だろう──。こんなことをやらせているのは──」

 

 クロノス様が怒鳴りあげた。

 

「は、はいっ、い、いえ、ひいっ」

 

 ガドニエル女王様は明らかに狼狽していた。

 教官様以上に顔を蒼くして、その場に直立する。

 

「すぐにやめさせろ、ガド──。それとも俺の言うことがきけないのか──」

 

 クロノス様が大きな声をあげた。

 

「は、はい──。み、みなさん、終わりです──。や、やめなさい」

 

 ガドニエル女王が悲鳴のように叫んだ。

 まだ状況がわからないが、クロノス様に仕えるために調教を受けているはずだったが、どうやらクロノス様としては承知していたわけでもなく、むしろ不本意だった気配である。

 とにかく、ジェネは足をおろしてその場にしゃがみ込んだ。

 ほかの者も同じようにしている。

 

「あ、あのう、ロウ様……」

 

 教官様、つまり、ノルズ様は顔を蒼くしたまま、クロノス様に声をかけようとした。

 すると、クロノス様がきっとノルズ様を睨む。

 

「やかましい──。俺は怒っているんだ。お前のことも後だ。許可なく口を開くな。そこでじっと立っていろ。ぴくりとも動くな──。命令だ、ノルズ──」

 

「は、はいっ」

 

 どちらかというと、クロノス様はいつも穏やかで優しそうだったので、あんなにも怖いところがあるとは思わなかった。

 また、ノルズ様もまた、さっきまでジェネたちを口汚く罵っていた鬼のような教官だとは思えないほどに大人しくなっている。

 しかも、顔が泣きそうだ。

 

「ロ、ロウ──。ちょっと待っておくれ。わたしだよ。わたしがけしかけたんだ。とにかく、みんなの前では……」

 

 すると、ラザニエル太守様がおもねるような物言いで、入り口で仁王立ちになっているクロノス様に近づいていく。

 だが、クロノス様は険しい表情を崩さずに、ラザニエル太守様を手で制した。

 

「だったら、この広間に、結界でもなんでもして、防音したらいいだろう。これは俺の矜持の問題だ。ほかの言い方をすれば、俺の女としてのガドの質の問題だ。黙っていろ──」

 

 クロノス様が言った。

 すると、ラザニエル様はそれだけで、しゅんとして口をつぐんでしまった。

 ジェネは、今回のイムドリスの危難に際して現われた女王様の姉君のラザニエル様が、とても魔道が強く、それ以上に心も強く、容赦なく強い言葉で大勢の高位貴族などを従えて水晶宮を仕切っているのを知っていたので、そのラザニエル様が、クロノス様といえども、ただのひと言であんなに意気消沈して黙り込んでしまうとは信じられなかった。

 

 だが、それが事実だ。

 ノルズ様も同じだ。

 動くなという命令を受けて、いまでも身体をぴんと伸ばして、真っ直ぐに立っている。

 まるで息をするのも我慢するように、静止している。

 しかし、その身体が小刻みに震えている。

 クロノス様が怖いというよりは、叱られたことそのものに衝撃を受けているように思えた。

 

 しんと静まり返った広間をクロノス様がつかつかと横切りガドニエル女王様に歩み寄っていく。

 また、クロノス様の横を狼狽えたようなエルフ女性の方が横を歩いていく。

 それで気がついたが、もうひとりのクロノス様の女の人間族の女の方とブルイネン様は広間の隅で完全に硬直して、顔をひきつらせていた。

 

 クロノス様がガドニエル様の前に立った。

 すると、いきなり手の裏で軽くガドニエルの頬をクロノス様がぴしゃりと張った。

 

「ひっ」

 

 強い力ではなかったが、ガドニエル様が衝撃を受けたように、その場にしゃがみ込んでしまった。

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