【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
クロノス様は軽くガドニエル女王を打っただけだが、余程にショックだったのか、ガドニエル女王は目に見えて顔を蒼くした。
「ガド、お前は女王だ──。だから、ほかの誰がやり始めてもとめることができた。だが、エリカによれば、率先してノルズにこれをやらせたようだな──。俺は確かに女好きで好色でどうしようもない変態だが、女を物のように扱ったこともないし、そんな思考をする相手は軽蔑する。それなのにお前はここにいるような優秀な彼女たちをまるで物のように扱おうとしたそうだな。つまり、お前は俺がもっとも軽蔑する思考の女ということだ……」
クロノス様の声がそれほどに大きな声ではなかった。
だからこそ、ジェネはクロノス様の静かな怒りを感じた。
「だ、だって……わ、わたしは……エリカ様から……ロウ様の性愛の相手をお探しだと耳にして……。それで、だったら、しっかりと準備しなくちゃと思って……。は、狭間の森のときのような侍女たちの醜態の二の舞いになってはいけないと……」
「黙れ、ガド──。お前は俺が怒っている理由をエリカのせいにするつもりか──」
すると、クロノス様がさらに怒鳴った。
ガド様はそれまでも震えておられたが、その瞬間に白い肌が完全に血の気が失ったかのようにさらに白くなり、その場で完全に項垂れてしまった。
ジェネは驚愕した。
なにが驚いたかと言って、あれほどに遠慮のない罵倒をクロノス様がガドニエル女王様にしていることだ。
ガドニエル女王様は、ナタルの森の女王とも称されるほど、非常に権威のあるお方なのだ。
それにもかかわらず、クロノス様は遠慮なくガドニエル様を叱り、これ以上ないというほどの悪態をついている。
また、さっきまで、教官様のノルズ様は、この世で一番に怖い相手だと思ってしまったが、それは間違いだった。
いま、この瞬間に怒気を発しているクロノス様は、なぜかとても怖かった。
本当に、本当に怖かった。
これまでに感じたことのないほどの威圧感を覚えた。
「ロ、ロウ様、わたしです。本当にわたしなんです。わたしがロウ様のお相手を増やしたいと、ガドに……いえ、ガドニエル様に頼みに行って……」
そのとき、クロノス様のお連れの方のエルフ女性が取りなすような言い方で口を挟んだ。
やっと思い出したが、彼女はエリカという名だ。さっき、クロノス様がそう呼ばれていた。
「エリカ、お前も黙れ──。お前のことだから、無体はしてないはずだ。多分、ここにいる彼女たちに誠意をもって頼んだんだろう。だけど、ここにいるガドたちが、こんなことを開始したに違いないさ」
クロノス様は言った。
まさにその通りだったが、まったく知らないのに、クロノス様がそれを当てられたのだとすれば、大した洞察力だと思った。
「ロ、ロウ……ここでは堪えておくれ……。場所を変えよう……。頼むよ……。こいつは女王なんだ……。済まなかったよ。わたしらは、お前が気に入るんじゃないかと思ってね……。そんなに叱らないでおくれよ。わたしが悪いんだから……」
ラザニエル様だ。
太守様も申し訳なさそうな顔をしている。
「いいや、ラザ、悪いのはガドだ。なにしろ、女王なんだしね」
そして、クロノス様はガドニエル女王様を睨み直す。
「い、いや、だけど……」
ラザニエル様はさらになにかを言おうとしたが、クロノス様がそれを手で制すると、ちょっと迷った感じの後で黙り込んでしまった。
クロノス様がガドニエル様に視線を戻す。
「しかし、どうして、こんなことをしようなんて思うんだ、ガド──。俺だって、似たようなことをしているし、鬼畜に女を扱う──。だけど、今回のことは、それとは違う。ガドがやったのは、あのダルカンがイムドリスでしたのと、まったく同じことだ。それだけはやっちゃいけなかったんだ。どうして、それを考えない、ガド──。なんで、お前は考えないんだ──」
クロノス様がまた声をあげられた。
はっとした。
クロノス様がどうして、あんなに激怒をしておられるのかわかったからだ。
それは、イムドリスでの地獄を味わったジェネたちのことを気遣って……?
だとしたら、ありがたすぎるが、それよりもジェネは目の前で起きていることで、いっぱいいっぱいになっていた。
ナタルの森の女王であり、神々しいほどにお美しく気高いガドニエル様が、あれほどに一方的に罵倒されて、まるで泣きそうになっている。
いや……。
泣いている……?
よく見たら、もはや完全に顔を俯かせているガドニエル様は、肩を震わせて泣いているように思えた。
愕然とした。
もはや、さっきまで受けていた仕打ちなど忘れ果てた。
クロノス様の怒りがジェネたちを庇うためのものなのであれば、それこそなにか言わなければ……。
「あ、あのう、クロノス様……」
そのとき、ドルアノア様が意を決したように口を開かれた。
おそらく、ジェネと同じように思ったのだと思う。
「まだだ──。まだ黙ってくれ。いいから……。それと、ここでのことは、ここだけのことだ。見たもの聞いたもののすべてを忘れてくれとはいわない。ただ、口外は困る。ガドは女王だ。そのガドが一介の人間族の冒険者に叱られて、口答えもしなかったとあっては、ガドの立場が悪くなる……」
なぜか、ジェネはクロノス様の言葉を聞いた瞬間に、なにがあっても喋ってはならないと感じたし、いまも口を挟まなければならないという気が失せてしまった。
ドルアノア様も同じのようだ。
クロノス様の言葉で再び口を閉ざした。
「ロウ、お前、いま……?」
ラザニエル様が怪訝そうな表情でクロノス様を見た。
「……彼女たちには、治療のときに一度精を放った。絶対にここでの話を他では口にさせない。だから、ガドのことは最後まで叱らせてくれ、ラザニエル」
クロノス様が言った。
よく意味がわからなかったが、クロノス様に対する気持ちがぱっと開いたような気持ちになった。
これまで抑圧されていたものが、やっと解放されたという気分だ。
クロノス様……。
クロノス様──。
ああ、なんと恰好がよくて、素晴らしいのだろう……。
やっぱり、クロノス様は素敵だ……。
ジェネは自分はクロノス様をお慕いしていたと思っていた。
しかし、なんと言い表せばいいのかわからないが、突然に解放されたこの感情こそが、クロノス様を愛しているのだという気持ちだ。
この人のためだったら、なんでもできる。
さっきのノルズ様の調教だって、大歓迎だ。
調教を受けることで、クロノス様がジェネに少しでも気を配ってもらえるなら……。
そのクロノス様が再びガドニエル様に視線を向けられた。
「ガド、お前はいつまで服を着たままでいるんだ。やっぱり、お前こそ調教からやり直さないとな……。俺の女の中で俺に叱られて、服を脱がない者なんていないぞ……。お前が俺の雌犬のつもりなら、謝罪の仕方をまだ知らないのか……?」
今度のクロノス様の口調は怒ったようなものではなかった。
どちらかといえば、諭すような物言いだ。
ガドニエル様ははっとしたように顔をあげた。
その目は真っ赤であり、涙の痕がはっきりとある。
やっぱり泣いていたのだ。
「わ、わたしを……ま、まだ、ロウ様の雌犬と呼んで頂けるのですか……?」
ガドニエル様はまたもや震えていた。
だが、今度の震えはさっきまでのものとは少し違う。
心なしか嬉しそうな心が滲み出ているような気がした。
「言ったはずだ、ガド。俺は一度女にした相手を絶対に開放しない……。しかし、おまえは躾からやり直しだ。お前についてはやはり置いてはいかないよ。しばらく一緒にいろ。政務のことはラザニエルにしばらく頼むといい」
「ちょ、ちょっと、待っておくれ、ロウ」
「いや、待たない。これはもう決めた。元老院会議も族長会議もなんとかしろ。それと、ラザへの罰もあるからな。ここではしないがこの後でする」
クロノス様が言った。
それだけでもう太守様はなにも言わなくなり、それどころか、ぽっと顔を赤らめた。
ジェネはその瞬間に、太守ラザニエル様もまた、クロノス様の女なんだと確信した。
そう思った理由など、ラザニエル様の表情だけで十分だ。
ラザニエル様もまた、クロノス様の女なんだ……。
「ガド、お前は視野が狭くて思い込みが強すぎる。人の上に立つ器じゃない。お前は支配される側の女だ。政務のことはラザに託し、それ以外のことは、一切を俺に委ねろ。なにをするにも、俺の許可を取れ。食事にしろ、糞尿にしろ、なにをするのも俺の命令を仰げ。まずは全裸土下座だ。だが、謝るのは俺にじゃないぞ。みんなに謝るんだ。一緒に謝ってやるから、俺の雌犬……」
ずっと怒りしか浮かべていなかったクロノス様に、やっと微笑みが浮かんだ。
その瞬間、ガドニエル女王様がわっと号泣をし始めた。
「あ、ありがとうございます……。ありがとうございます……。ありがとうございます……。ガドは間違っていました。すべてのことについて、ロウ様……いえ、ご主人様に従います。ガドは雌犬です。馬鹿で、視野が狭くて、思い込みが激しくて、ご主人様を不愉快な思いをさせるどうしようもない駄犬です……。で、でも、嬉しいです……。ロウ様……、いえ、ご主人様の……雌犬と呼んでくれて、ありがとうございます──」
ガドニエル女王様が泣きじゃくりながら、立ちあがって、どんどんと服を脱いでいく。
やがて、全裸になり、クロノス様の足元に土下座をして這いつくばった。
そのあいだ、ラザニエル様をはじめ、誰ひとりとして口を開かなかった。
ジェネもそうだったが、目の前の出来事に圧倒されたようになってしまっていた。
「ほら、首をあげろ」
クロノス様がそう言って、突然に宙からなにかを出現させた。
真っ赤な首輪だった。
ジェネたちがされているチョーカーよりも一回り太く、とても装飾には見えない完全な犬用の首輪だ。
それをガドニエル様の首に嵌めた。
ガドニエル様はとても嬉しそうだった。
その赤い首輪には、緑の紐のリードが繋がっていて、そのリードをクロノス様が掴んでいる。
「胸も出せ、ガド」
クロノス様がさらになにかを取り出した。
「はい、ご主人様」
今度はなにであるのかよくわからなかったが、強くなにかを挟むようにできている金属のクリップのようだった。大きさは人の手のひらほどもある。
クロノス様は、それを無造作に、ガドニエル様の乳首に挟む。
「んぎいいいっ」
ガドニエル様が絶叫して身体をぴんと伸ばした。
「悲鳴をあげるな、ガド。もうひとつだ」
「は、はい、ひ、悲鳴はあげません。ガドは悲鳴をあげません。ご主人様の命令ですから……」
クロノス様がもう一個クリップを出して、ガドニエル女王様の反対側の乳首を挟む。
「んぐううううっ」
相当の激痛なのだろう。
ガドニエル女王様は、全身を真っ赤にしながら必死の形相で口を閉ざしている。
また、ガドニエル様の身体がみるみる赤くなり、脂汗のようなものが噴き出してきた。
おそらく、大変な激痛なのだろう。
「来い、ガド──。ひとりひとりに謝罪する。全員がお前の謝罪を受け入れてくれたら、お前への罰は終わりだ。躾をやり直すことには変わりないがな。そのクリップを床から離さないように、ついて来い。ぐずぐずするな──」
クロノス様がいきなり緑のリードを持って歩きだされた。
乳首に嵌まっているクリップを床から離さないようするとなると、ガドニエル様は極端な前傾姿勢にならざるを得ない。
その通りの姿で、ガドニエル様がこっちに歯を喰いしばりながら、懸命に這い寄ってきた。
だが、さすがにクロノス様が普通に歩く速度についてはいけず、何度も首輪を引っ張られて、そのたびにえずくような苦悶の声を出される。
しかし、そんな惨めそうなガドニエル様なのだが、とても満足そうな表情をしている。
それだけでなく、あんなに惨めな恰好をさせられているのに、とても、とてもお綺麗なのだ。
ジェネは息を飲んでしまった。
やがて、呆然としているジェネたちのところまで、ガドニエル様とクロノス様が辿り着いた。
「ガド、全員に自分の頭を踏みつけるように頼め。ひとりでも拒めば、お前に対する調教は取りやめにする」
「そ、そんな……。み、みなさん。どうか、わたしの頭を踏みつけなさい。命令です──」
ガドニエル様が床に乳房を貼りつけるような恰好のまま、ジェネたちに叫んだ。
ガドニエル様の頭を踏む──?
ジェネは愕然とした。
そんなことができるわけないのだ。
「まだ、わかっていないな、ガド──。それが謝る態度か──」
クロノス様がいつの間に取り出したかわからないが、乗馬鞭でガドニエル様のお尻を力いっぱいに叩かれた。
「ひぎいいっ──。も、申しわけありません。み、皆さん、わ、わたしの頭をひとりひとり踏んでください。どうか、このとおりです。皆様、申し訳ありませんでした」
ガドニエル様が必死の口調で言った。
「いいぞ、ガド──。それにしても、お前はもう欲情しているのか。どうしようない淫乱な駄犬だなあ。下の口が涎を垂らしているぞ」
クロノス様がそう言って、ガドニエル様のお尻を再び引っ叩かれた。
「は、はいっ、ガドはどうしようもないほど淫乱でマゾの駄犬です。ご主人様に鞭で叩かれて、もう股間を濡らしています」
ガドニエルが声をあげた。
とても恥ずかしいはずの言葉だが、ガドニエルはむしろうっとりと酔ったように欲情している様子だ。
女のジェネさえ、ぞっとするほどに妖艶だ。
ジェネはなぜか、股間がかっと熱くなるのを感じて、知らずぎゅっと内腿を締めつけていた。
すると、ねちゃりと股で水音のようなものがしたような気がした。
だが、それにしても、ナタルの森の女王様が実はマゾで、実はこの中の誰よりも雌犬的な女だったなんて……。
言えない……。
絶対に言えない……。
ジェネは怖くなった。
(第46話『クロノス親衛隊』終わり、第47話『クロノスの懲罰』に続く。)