【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
548 闘女ふたりと朝の鍛練
「よし、ここでいいだろう……。エルミア、ここで体術の技を教えよう。……もっとも、俺みたいな者があんたに格闘を教えるなんて、おこがましい気もするが……」
「そ、そんな」
「だけど、知っておいて役に立つ技だ。マーズなど、俺と毎朝鍛錬をしているうちに、いつの間にか、この技を身に着けてしまった。俺も驚いたけどね……。まあ、俺のような弱い者に教わるなど気が進まないだろうけどな」
駆け足をやめたクロノス様から、気さくな笑顔を向けられて、エルミアは緊張して、身体を固くしてしまった。
また、エルミアは、思わずどきりとして、かっと顔が熱くなるのがわかった。
なにしろ、クロノス様の毎朝の鍛錬に、今朝は一緒に連れて来てもらったのだ。
いまはまさに、有頂天だ。
こんな私的な時間に混ぜてもらったことで、どう振る舞うべきか、まだ自分の立ち位置がわからなくて、ふわふわしている。
だから、いまも、どう答えたらいいのか、とっさに言葉が出てこなかった。
それに比べて、クロノス様はまったくの自然体だが……。
同行の許可を受けたのは昨夜であり、ノルズ教官の調教から始まった、クロノス様の調教のときだ。
親衛隊三十人の全員がクロノス様に抱かれ、その後、女王様や太守様や隊長まで混じって、大乱交の狂宴になった。
そのあいだに、クロノス様に声をかけられて、エルミアは体術が得意そうだから、今朝のクロノス様の鍛錬に参加してもいいと言ってもらったのだ。
嬉しかった。
同僚や女兵たちからも羨ましがられたが、クロノス様が許可したのは、エルミアだけだった。
心の底では狂喜していて、叫びたくなるのを必死で耐えたのを覚えている。
それにしても、不思議な時間だった。
あの大広間で、かなりの時間をクロノス様たちと乱交したと思ったけど、すべてを終わり、クロノス様が解散を命じて、広間から出て自室に戻ったとき、あまり時間が経っていなかったことに気がついたのだ。
クロノス様の相手をしたのは三十人であり、それだけでかなりの時間がかかり、それから、さらにあの狂宴だ。
時間はかなりのものであり、終わったときには、てっきり朝に近い時間になっていると思っていたのだが、広間を出て自室に戻ったとき、実際にはほとんど時間が過ぎておらず、定められた就寝時間にも、まだまだ余裕があったほどだ。
また、身体も変だった。
かなりクロノス様に激しく抱かれたと思ったが、ふと気がつくと、自室に戻ったときにはすでに、疲労のようなものはほとんど消えていたのである。
まるで、あんなことなど、なかったかのようだった。
しかし、愛されたという充実感と、快感の余韻だけはあった。
クロノス様は、“仮想空間”という術だといっていて、秘密にせよと命じたが、本当に不思議だ。
あんな魔道があるなど、耳にしたこともない。
いずれにしても、クロノス様はすごい。
あれだけの大人数の女をひとりで相手にして、ずっと平気そうだったし、今日だって、エルミアが待っていて、マーズとクロノス様が訓練の格好でやって来たときには、にこにこと笑っていて、とても元気そうだった。
本当に不思議な人だ。
待ち合わせで一緒になると、三人で水晶宮の外縁をぐるりと回り、さらに水晶宮を出て、シティ側に出てきた。
到着したのはシティ市民用に開放されている緑園公園だ。
上層地区にある市民の憩いのための公園であり、このような緑豊かな場所は、シティの上層地区のあちこちにある。
しかし、こういう場所はずっと、上級エルフ族だけの場所だった。エルミアも上級エルフ族とはいえないので、あまり入ったことはない。
いま、こうして気がねなく、エルミアがいれるのは、気分的には、上級エルフ族待遇のクロノス様がいるおかげだ。
もっとも、実際には、その隔てはすでに撤廃されている。
長いあいだ続いていた上級エルフ族のための上層地区と、それ以外の下級エルフ族や他種族のための下層地区という分離は、早々に撤廃されたのだ。
新しく太守になられたラザニエル様が宣言をなさり、すでに出入りや居住自由のお触れが出されている。
この分離施策の撤廃の法律は、まだ日が浅いので、市民に完全に浸透するには至っていないが、エルミアの知る限り、ラザニエル様の方針は、市民の大部分には好意的に受け止められている。
不満を口にするのは一部の上層エルフ族だけのようだ。
それさえも、大きな声ではない。
ラザニエル様は強烈なお方のようなので、面と向かって誰も文句は言えない感じだ。
しかし、そのラザニエル様でさえ、昨夜はクロノス様に徹底的にいたぶられていた。
あんなラザニエル様など想像もできなかったので、エルミアはびっくりした。
また、ラザニエル様以上に驚愕したのは、ガドニエル女王様だ。
まさか、あんなお方だったとは……。
そして、いまだ。
ほとんど夜明け直後に開始した駆け足だったが、シティの公園に到着したときには、それなりに陽が昇っている。
しかし、まだ早朝という時間の範囲であることには変わりなく、公園内に人影もほとんどない。
だが、この公園も昼間となれば、かなりの人で賑わうことを知っている。
上層地区のこの場所は、エルミアには、まだなかなか緊張する場所だが、この公園は、十数個ある下層地区と繋がるチューブのひとつの間近なので、さっそく下層地区の住民たちが、昼間はここにかなり集まったりするらしい。
さらに、目聡い下層地区の商人が、彼らを目当てにした屋台なども数日前から開いたようであり、これまでとは異なる賑わいを昼間は見せるそうだ。
しかし、いまはまだ静かだ。
鳥の声が賑やかに聞こえる以外には、エルミアたち以外の人の声はしない。
「せ、先生は弱くなんて、ありません……。お強いです……」
息を切らせているマーズが、顔だけでなく、露出している肌の全部を上気させながら言った。
ここまでは軽い駆け足だったが、すでにかなりの汗だ。
しかし、それはマーズの体力がないというわけでもなさそうだ。
どことなく、淫靡な雰囲気がマーズから漂う。
走りながら、時折声を出すマーズがとても色っぽいのだ。
とにかく、エルミアが一緒に駆け足をしてきたのは、クロノス様のほかに、このマーズという人間族の少女だ。
少女とはいっても、身体がしっかりとできあがっていて、大柄のエミルアと遜色のない身体つきだし、筋肉もしっかりと鍛えられている。
胸も大きい。
いまは、上に薄物の訓練用の肌着のようなシャツと、短パンという出で立ちだから、身体のかなりを露出しているが、そのマーズの筋肉が戦うために鍛えられた本物だというのは、エルミアにはわかった。
エルフ族の将校として、鍛練で身体を作っているエルミアが及ばないほどだ。
それでいて、首から上の顔は、まだ幼ささえ感じる。
なにしろ、まだ十六歳だそうだ。
しかしながら、醸し出す色香は、同性のエルミアでさえ、どきどきしてしまうくらいに艶っぽい。
少女の顔にある大人の戦士の身体、そして、戦士の逞しさに一人前の女の色香──。
そんなふたつの不均衡のすべてが入り混じっている人間族の少女──。
それが、マーズだ。
「だいぶ、股縄をしたまま走り込めるようになったな、マーズ。これも鍛錬だぞ。だが、かなり気を集中できるようになってきたようだ」
「は、はい、先生」
マーズの顔が真っ赤になった。
そして、クロノス様が宙から汗拭きの布を出して、マーズに手渡し、エルミアにも投げ寄越した。
エルミアは恐縮して受け取った。
しかし、いつ見ても不思議な術だ。
エルミアも魔道が遣えるので、同じ収納術でも、クロノス様のは違うというのがわかる。
まったく、理力や波動の動きがない。
つまり、まったく兆しがないのだ。
どんな魔道遣いでも……ガドニエル女王様やラザニエル太守様ほどになろうとも……、完全に事前の兆しや波動の乱れなく、魔道が放てるということはない。
事前動作が短いので瞬時に魔道を放ったとしか思えないだけだ。
しかし、クロノス様とは違う。
周辺の理力に乱れはない。
本当に空中から取り出しているようにしか思えない。
高位魔道遣いであるほど、クロノス様の技には戸惑うだろう。
それにしても、股縄……?
いま、そう言った?
そして、ふと視線をマーズの股間に向けた。
エルミアは思わず、顔がかっと熱くなった。
マーズの股間には確かに不自然な縄の筋のような盛りあがりがあり、ちょうど股間の部分には丸い分泌液の染みができあがっていた。
薄いシャツの下の乳首もしっかりと勃起して、尖っている。
マーズが淫靡な仕打ちを受けながら、ここまで走ってきたためだというのは間違いがない。
エルミアは知らず、ごくりと唾を飲み込んだ。
「気がついたか、エルミア? マーズにはこの薄物の訓練着の下には下着は着けさせていない。縄の下着以外はな。股間だけでなく、胸も縄で縛っている。馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないけど、マーズはこれで気弾という技ができるようになった。魔道とは違う技だ。マーズは魔道は元々使えないしね」
「気弾?」
耳にしたことはない技だ。
だが、股縄に胸縄……?
それよりも、エルミアはどぎまぎしてしまって、そのことから頭が離れない。
股縄をして、クロノス様の調教を受けながら、朝の鍛錬をする……。
自分がそうされることを想像しただけで、くらくらと酔いのようなものが身体を襲う。
クロノス様の調教……。
すると、くすくすという笑い声がした。
クロノス様だ。
はっとして、エルミアは思念を現実に向けなおす。
「満更でもないみたいだな。今日の夜か、明日の朝には出動になると思うから、すぐには無理だが、いつか落ち着いたときに、この朝の鍛錬が復活したら、今度はエルミアも股縄をして駆け足だ。最初は歩くのもつらいと思うけどね。マーズもそうだったし」
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします──」
思わず身体を真っ直ぐにして、上半身をがばりと倒してお辞儀をした。
嬉しい……。
嬉しい……。
嬉しい……。
クロノス様に、さらに鍛錬を突き合ってもいい許可を受けた……。
嬉しい……。
本当に嬉しい……。
クロノス様の大笑いが聞こえた。
「よし、とにかく、一度手合わせをしてみろ。ふたりで体術の試合だ」
クロノス様が言った。
「はいっ」
「は、はい――」
エルミアとマーズは揃って返事をした。