【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
553 新たな情報
「叛乱?」
「ええ?」
一郎は、イライジャからもたらされた情報に驚いて、スクルドとともに声をあげてしまった。
ハロンドール王国において、向こうに残っていた女たちが策謀めいたことをして、王都を中心として大騒動を起こしていることは承知していた。
なによりも、その策謀を一端を担って、騒ぎを拡大した女がここにいる。
なにしろ、この女は、旅に出てなかなか戻ってこない一郎を追いかけるためだけに、その騒乱に紛れて自分の死を装い、これにより、王都の騒乱は後戻りのできない状況になったということなのだ。
そして、イライジャからの情報は、混乱して錯綜していたハロンドールに関わる新たな情報のことであり、ついにハロンドール王国内で地方叛乱が勃発したというものだった。
一郎がイライジャが冒険者ギルドの情報力を駆使して集めているものと、スクルドが「自白」した一郎を助けるための企みの告白から考察し、確かにいつ叛乱が起きても不自然ではない王国の情勢とは理解していた。
だが、スクルドの話によれば、叛乱を発生させようとしているのは、スクルドが王都を離れる直前に王宮を封鎖したサキだけの計略であり、しかも、サキは一郎が王国内に戻らない限り、その叛乱の策略を起こさないはずだというものだった。
しかし、いま、イライジャが持ってきたのは、一郎がいないハロンドール内でついに、地方叛乱が発生したというものだ。
一郎は、傍らのスクルドに視線を向けた。
「わかりません。だ、だって、サキさんは、ご主人様を盟主にして叛乱を成功させて、王位に就かせる計画なのですから、ご主人様が戻らないのに、その前に叛乱を起こすわけが……」
スクルドも驚いているようだ。
ついに叛乱というのは、ほぼ当事者のスクルドにも意外だったみたいだ。
一郎は溜め息をついた。
「
自分自身、柄にもなく嫌味っぽい物言いかもしれないと思ったが、思わずスクルドを批判するような言葉が口に出てしまった。
スクルドは恐縮するように、珍しくも意気消沈するように顔を床に向けた。
帰国前に、ガドニエルが開催してくれることになった「英雄式典」とやらに出席するために待っている控え室である。
ロウについては支度は終わり、すでに正装に着飾ってもらって、準備万端に整っている。
いまは別室で衣装を合わせている女たちの準備と、式典そのものの開始刻限を待っているところだ。
また、目の前のイライジャについても、衣装の着付けは終ってる。準備が終わっていないのは、ここにいない女たちの全員である。
そして、目の前のスクルドは式典には出ない。
なにしろ、これから行う英雄式典とやらは、ガドニエルとアスカの魔道力、さらに、エルフ族王家の魔道技術を駆使して、世界通信として映像の一部が各国に流されるらしい。
そうなれば、ハロンドール王に殺されたはずの、敬虔で美貌の女神殿長「スクルズ」が生きていたことが、公になればまたもや大騒ぎになる。
従って、スクルドは準備する必要はなく、一郎の支度の手伝いで一緒にいたのだ。
「……いえ、どうやら、叛乱はスクルドさんが言っていたマルエダ辺境侯の勢力ではないみたいなの。ハロンドール王国の南西部……。マルエダ辺境侯が兵を集めているのが王国の東側でしょう。王都を挟んで真反対ね」
イライジャが言った。
「南西部?」
一郎は首を傾げた。
つまりは、王都の女たちが引き起こしたものとは別口ということか?
また、南西部と言われて、思い出すことがあった。
その地域はもともとが、あのキシダインが自分の勢力基盤としていた地域だったと思う。
そのため、キシダインが権勢を保っていた時代は、さまざまな優遇処置の施策によって繁栄もしていたが、キシダインを失脚させるためのマアの流通攻撃と、キシダイン失脚後の特権取りあげによって、一気に地域として衰退していたはずだ。
旨味を吸えなくなって、没落した者も多いはずだ。
もしかしたら、そういう恨みを抱いていた勢力が、王都の混乱に乗じて、叛乱の旗を掲げるのは、大いに考えられる。
「とにかく、叛乱が起きたことだけは事実みたいよ。ナタル森林からしても反対側になるけど、王都の混乱、西の辺境侯、次いで今回の南側の地方叛乱……。一気に不穏な状況に変わったわ。あなた自身への捕縛指示もそのままの状況だし、わたし個人の意見としては、やっぱり帰国は賛成しないわね」
イライジャがさらに言った。
しかし、一郎は首を横に振った。
「いや予定通りに戻るよ。エルフの都の名残も惜しいけど潮時さ。ましてや、ハロンドールはいまや、俺の故郷になりつつある。なにができるかわからないけど、そういう状況なら、なおさら帰る。俺の女たちのいるところだし」
一郎は笑った。
「わかったわ。じゃあ、引き続き情報を集めるわ。ただ、どうしても、ここは遠いのよ。情報集めも限度がある……。あなたの親衛隊が同行するんだから、混乱に乗じて、強引に国境突破するというのもひとつの方法だわ」
イライジャが小さく首を数回縦に動かす。
とにかく、今日の英雄式典が終われば、いよいよここを出発して、ハロンドールの王都に向かう帰途につく予定になっている。
それで、ずっと王都動向を調査し続けてきたイライジャが、この待ち時間を活用して、最終的な情報をロウに伝えてくれているところだ。
それに、やはり独自の情報網を持つノルズが加わってくれた。
ノルズもまた、その情報網で、それなりに調べてくれていたようであり、今日はこの控室まで、ノルズもまた、イライジャとともにやって来てくれたところだ。
「ロ、ロウ様、わたしの調査でも同じです。辺境侯とは別の南西部で叛乱発生です。ついでにいえば、こいつの仕掛けたナタル森林とハロンドール王国の国境にあたる森林の林縁部の一隊も健在です。そいつらが密かに展開して、ロウ様を捕らえる罠を作っている状況に変化ありません」
ノルズが口を挟んだ。
ロウは思わずくすりと笑ってしまった。
どうでもいいけど、ノルズはロウの前に来ると、がちがちに緊張したような態度になる。
他の者に訊くと、他者には気が強く、傍若無人ともいえる態度をとるらしいので、一郎だけに対する独特のもののようだ。
どうでもいいから、普通にしてくれと頼んでいるのだが、これが普通だと真顔で拒否され続けられている。
いまも、一郎相手にがちがちに緊張している素振りを見せるので、なんだかとても面白い。
つい悪戯を仕掛けたくなるが、さすがに、いまは自重すべきだろう。
「あら、ノルズ、それは罠というほどのものじゃないわ。あのサキさんがナタル森林から戻るロウ様を捕らえて、準備している辺境侯軍と強引にでも合流させるために展開させている隠し兵だわ。問題ないわ」
スクルドがあっけらかんと言った。
これについても、スクルドから「白状」させて承知している。
網を張っているのは、なんとシャングリアの実家のモーリア男爵の準備した一隊であり、そこには、ジャスランというサキの女眷属が待ち構えているというのだ。
さらに、スクルドは、そのジャスランを出し抜いて、ナタル森林に来るために、ジャスランとやらとひと悶着起こしてきたというのだ。
それをあっけらかんというスクルドには、呆れたものだった。
「それを“罠”っていうんだよ、スクルド。なにが問題ないなんだよ」
ノルズもまた、呆れた表情をしている。
「まあいい。とにかく、こうなったら、可能な限り早くハロンドール側に戻って、正確な状況を把握する。それを第一目標にしよう」
一郎は言った。
「わかったけど……」
正装姿のイライジャは、まだ不安そうな感じだ。
さて、そもそも、目の前のイライジャがすっかりと支度が終わっていて、ほかの女たちの支度が終わっていないことについては特段の理由はない。
例によって調子に乗り過ぎて、朝から女たちを抱いているうちに、うっかりと抱き潰してしまったという、至っていつもの平凡で些細な日常のことが理由だ。
しかし、式典においては一郎だけでなく、女たちもガドニエルから提供をしてもらう正装にならなければならず、むしろ女の支度は一郎よりも遥かに時間がかかるそうだ。
しかし、冒険者ギルドに集まっていた情報を確認するために、前の夜はギルドに泊まっていたイライジャが水晶宮に戻ったときには、まだ一郎の女たちは、ことごとく床に突っ伏している状態だったのだ。
イライジャが、一郎に対して激怒したのはいうまでもない。
「それと、その発生した地方叛乱というのは、もしかしたら、アーサーの計略かもしれません、ロウ様。タリオが前からカロリック侵攻を計画していたのは事実です。しかし、それをすると、大国のハロンドールがどう動くか予想できずに自重していたんです。だけど、帝国の陰謀ということで大義名分を得て、今回カロリック侵攻を実行に移しました。もしかしたら、ハロンドールが向こうのことに手を出せないように、なにかの陰謀をしたのかもしれません」
ノルズが神妙な調子で言った。
これも、不確定な情報だが、パリスのやった冥王復活の陰謀を口実に、タリオ公国は軍を皇帝直轄領、次いで、隣国のカロリック公国に進めたということだった。
指揮をするのは、アーサーの部下のランスロットという若い将軍だそうだ。
アーサーと一郎が対立した、アーサーのハロンドール王都の訪問のときに、一郎はランスロットと会っていて、彼の真面目そうな雰囲気をよく覚えている。
どうでもいいことだが、魔眼でステータスを覗いたときに、ランスロットは“童貞”と表現されていたんだっけ……。
どうでもいいことだが……。
また、ノルズは一郎の女として尽くす傍ら、タリオの諜報員もしていて、いわゆる“二重スパイ”のような立場だ。
危険を承知で、ノルズは一郎に不利になる動きがないかどうか、探ろうとしているのである。
「ええ、そうなの? なにか知っていることがあるなら、わたしに言ってくれなきゃ困るわよ、ノルズ。情報源はできるだけ多くあった方が正確なことを推測できるんだから」
イライジャがノルズに横から言った。
すると、見ているだけの一郎がたじろぐような鋭い視線をノルズが一郎に向けた。
「なんだい──。あたしがなんで、あんたに情報を回さないとならないんだい──。あんた、イライジャって、いうんだっけ?」
ノルズの鋭い視線に、イライジャがたじろいだようになった。
こっちが素なのだと思うが、一郎も顔を強張るくらいのすごい殺気だ。
垣間見たノルズのど迫力に、一郎もちょっと緊張してしまった。
だが、一郎の視線に気がついたのだろう。
ノルズがはっとしたように一郎を一瞥すると、すぐに顔を取り繕って、顔を真っ赤にして俯かせてしまった。
そのギャップが面白すぎる。
一郎は噴き出しそうなった。
しかし、そのノルズが改めて、イライジャに視線を向ける。
「も、もちろん、ロウ様のご命令なら、これからもずっと、いくらでも情報は流します……。いずれにしても、もちろん、アーサーの思惑は探り直します」
ノルズがイライジャと一郎を交互に見ながら言った。
「いや、無理に探るために動いて、ノルズが危険になるのは避けたい……。それにアーサーの謀略はいい。それよりも、カロリックに侵攻したタリオ軍に関する普通の情報が欲しい。むしろ、そっちの情報が乏しいしね。ノルズはそっちを頼むよ」
一郎は言った。
その程度なら、ノルズは大した苦労もなく情報を集めてくるだろう。
ノルズは一郎に一途過ぎて、一郎が求めれば、危険を承知で深い情報まで集めようとするだろう。
だが、勘にすぎないが、今回はそんなことまでする必要はない気がするのだ。
だから、一郎は敢えて、危険のなさそうな情報集めをノルズに頼むことにした。
「わ、わかりました。い、命に変えても、ロウ様のご期待にこたえます」
声をかけられて、ノルズは顔を真っ赤にして裏返ったような声をあげた。
また、一郎に指示を受けたことで、本当に嬉しそうな表情にもなっている。
二重人格か……と突っ込みたくなったが、ノルズと向かい合うように座っているイライジャは、一郎に対する態度と、イライジャに対する態度の違いに目を丸くしている。
「まあ、可愛いわね、ノルズ」
すると、横のスクルドがにっこりと微笑んで言った。
「ああ?」
しかし、ノルズは一転して不機嫌そうにスクルドを睨みつけた。
だが、イライジャとは異なり、慣れているのかスクルドはたじろぐような素振りはしない。
にこにこしているだけだ。
「とにかく、二度と帰らないわけにはいかないから、無理をしてでもハロンドール王国内に戻る。ノルズは得た情報をラザに伝えてくれ。そのラザからガドに情報が渡り、俺たちに届く。逆もまたそうだ。そうやって連携していこう」
一郎は言った。
「わかったわ……」
「わかりました」
イライジャとノルズがそれぞれに頷いた。
いずれにしても、これまでの情報で、一郎が認識している王都の異変は以下のようなものだ。
〇 まずは、王太女イザベラと元王女アンが一郎の子を孕み(アンについては、おそらく、一郎の淫具がもたらしたノヴァとの子だと思うが)、離宮に蟄居させられた──。
〇 一郎が王国中に手配をされ、入国次第に捕えよという国王命令が、全王軍や各領主に通達された──。
もっとも、これはアネルザたちが、王都で騒動を繰り返したことで、ほとんど実体をなくしている。
一気に求心力を失ったルードルフの行いのために、一郎の捕縛指示など吹き飛んでしまっている。
〇 王妃アネルザは、王命により逮捕され、いま現在も、王都内の貴賓者用の囚人塔に監禁されていることになっている──。
もっとも、これはアネルザたちの工作であり、実際にはアネルザはイザベラたちを追って、ノールの離宮に隠れているらしい。
アネルザは、そこから父親のマルエダ辺境侯の縁のある大貴族に手紙を送り、反ルードルフの旗を掲げさせようとした――。
また、アネルザが本来やろうとしたのは、ルードルフに悪政をやらせ、大貴族たちからの退位要求をつきつけて、王位をイザベラに譲位させることだった。
○ ハロンドールの冒険書ギルドを束ねるの副ギルド長のミランダが交代し、副ギルド長がサキになった──。
これもまた、スクルドを含む王都に残った一郎の女たちの工作であり、実際には身を隠したミランダは、ルードルフを退位させるための世論工作を密かにやっている――。
〇 だが、ルードルフを悪王に仕立てあげる陰謀が思いのほかうまくいきすぎ、王都では暴動騒ぎに発展していること。
特に、スクルドの私的な欲求が絡んでいる偽装処刑によって、大暴動が起こった。
〇 そして、アネルザと共同したはずのサキは、実はアネルザやミランダとは考えが違っていて、一郎を王位につけるために、内乱を引き起こそうと考えている。そのために、サキはピカロやチャルタという眷属を使って、王宮や王軍を乗っ取り、さらにルードルフの身柄を押さえている――。
◯ 考えの違いや、主導権争いの末に、どうやら、王都の女たちは決定的に喧嘩したらしく、サキは王宮を乗っ取ったまま閉鎖し、完全に外部との連絡を遮断している――。
ところが、そういう状況を承知し、よくきけば、それに拍車をかけたらしい当事者のひとりのスクルドは、一切を放置して、一郎のところに来てしまった――。
◯ さらに、サキとともに王宮を支配するテレーズという女官がいて、得体の知れない能力があるようだということ。
但し、彼女についても、スクルドはほとんど関与しておらず、彼女の情報は、まったくない――。
◯ そして、最後に、サキが企てていた内乱ではなく、南西部という別の地域で地方叛乱が起こったらしい――。
これらのことが王都や王国内で起きているのだ。
一郎たちが王都を出立したのが約二箇月前くらいなので、なんという変化だろう。
「……とにかく、王都に帰還するという考えは変わらないということでいいのね、ロウ?」
イライジャが溜息をついた。
一郎は大きく頷いた。
「おそらく、これ以上はここにいても、事態は動かないと思うね。だが、俺が帰国することで、なんらかの反応もあるだろう。それで大概のことはわかるさ。とにかく、ハロンドールに密かに入るのは難しくなさそうだし、。とりあえず、戻る……。ガドやみんなとの約束もあるしね。公爵になって、結婚をしないとな」
一郎は笑った。
だが、イライジャとノルズのふたりは深刻そうな表情を崩さない。
心配をしてくれているのだろう。
「問題はありませんわ。わたしも、ご主人様の望みのとおりになるように頑張ります」
一方でスクルドは、にこにこと呑気そうにしている。
騒動の当事者のひとりなのだが、あまり深刻にも考えてないみたいだ。
一郎は苦笑した。
「ねえ、公爵って、本気なの? 本当にそんなことを目指すの?」
イライジャが眉をひそめながら言った。
まあ、常識で考えれば、不可能だろう。
一介の冒険者の一郎が、王族にしか与えられないような公爵位を正式に得ようというのだ。
しかし、一郎はやりようはある。
なんだかんだで、王太女のイザベラも、王妃のアネルザも一郎の女だし、寵姫サキを通じて国王自身にも手が届く状況にある。
あいつらのことは、一郎が戻りさえすれば、すぐに解決させる自信はある。
まあ、今回のことで状況は変わってるかもしないが、場合によっては、それも活用すれば……。
もっとも、新しい情報である地方叛乱というのは、ちょっと気になる……。
これについては、どうやら、一郎の女たちの思惑の外であるようだし……。
「まあ、やってみるさ。どうしても無理なら、結婚の手段はまた考える。だけど、お前たちふたりは、本当に結婚を望んでいないのか? スクルドはまあ、当分は無理だろうけど」
訊ねた。
ガドニエルの求婚を契機に、エリカたちとの婚姻も決心した一郎だったが、どうせだから、誰も彼も一気に結婚をしてしまおうと思っていた。
一郎の女たちの全員とだ。
だが、このふたりには断られた。
イライジャは、結婚という関係ではなく、少し一線を引いた愛人程度の関係が気楽だと言うし、ノルズについては、タリオ王国に属する間諜という立場があるので、一郎との関係は公にはできない。
ふたりとも、決意は頑なだったので、無理強いはしてない。
一郎自身も、妻であろうが、愛人であろうが、彼女たちに対する想いに変化はない。
ただ、エリカたちは、その方が喜ぶので、夫婦という正規の関係を選んだだけだ。
「いまの関係が一番いいわ」
「あ、あたしもです」
イライジャとノルズがそれぞれに言った。
「わたしは、ご主人様のお屋敷で飼っていただける雌犬にしてもらえれば……」
スクルドだ。
イライザャとノルズは呆れた顔をしている。
もっとも、スクルドとは、ほかの女同様に結婚する約束をしている。
だが、今日の式典同様に、死んだことになっているスクルドを表には出せないかもしれない。
だから、結婚式のやり方は考える必要はあるだろう。
そのときだった。
アスカがやって来た。
「小僧、そろそろ刻限だ。行くよ」
アスカは水晶宮の女太守としての見事な装束を身に着けている。
胸が開いたデザインの真っ黒なドレスだ。
大人の風格を持つアスカに本当に似合っている。
だが、スカート丈は大胆に、膝上でカットされている。
この新しい正装の意匠には、かなりの悶着もあったと耳にするが、ガドニエルも同じように、大胆に短いスカート丈にしていて、この色っぽい衣装が、今後の新しい長老家姉妹の正式の恰好だと、強引に乗り切ったようだ。
「よく似合っているよ、ラザ。俺好みだ。そのまま、抱きたくなる」
一郎は立ちあがりながら言った。
「い、いまは駄目だよ、小僧──。だ、駄目だからね──」
軽い冗談のつもりだったが、アスカが顔を真っ赤にして、大きくたじろいだ反応を示した。
一郎は笑ってしまった。
だったら、本当にしようかな。
それとも、神聖で敬虔な式典の最中に、淫魔術で悪戯をするとか……。
一郎はほくそ笑んだ。
「ロウ様──」
「ご主人様──」
「ロウ──」
「ご主人様──」
すると、別室で準備をしていたエリカ、コゼ、シャングリア、そして、マーズ、ミウ、イット、ユイナたちが一斉に部屋に入ってきた。
彼女たちもまた、一郎とともに今日の式典で栄誉を受けるのだ。
そして、どの女もとても綺麗に着飾っているし、怖ろしいほどの色っぽい。獣人のイットも令嬢ばりに美しく整えてもらっている。
なにか落ち着かない感じなのが面白いが……。
また、最年少のミウでさえ、ちょっと気後れするような色香を漂わせている。
この全員が一郎の女であり、どんな破廉恥なことをやろうと、どんな変態的な「プレイ」をしようとも、悦んで受け入れてくれるというのは、考えてみれば、一郎は果報者だろう。
とても、本当のこととは思えない。
「全員、綺麗だ。いつもの服装もいいけど、たまには、見事な衣装も悪くない」
一郎は言った。
すると、どの女も嬉しそうな表情になった。
「……でも、どうせ、あんたは、すぐに裸にしてしまうんでしょう? 変態なんだから」
ユイナが茶化すように言った。
そのユイナも、今日は美しく着飾っている。
ゲートの基本設計立案の功績で、ガドニエルの名で、これまでの罪には恩赦がなされた。
奴隷については、結局免れたのだ。
まあ、奴隷の刻みをしようがすまいが、ユイナを完全支配していることには変わりなく、一郎としてはどうでもいい。
結局、ガドニエルに頼んで、エルフ族の掟とやらはなんとかしてもらった。
コゼなど、甘いと立腹していたものの、強引に受け入れさせた。
まあ、説得方法は一郎のやり方だが……。
「お前らも、準備はいいね。転送術で水晶宮の庭園に準備された会場に入る。すでにガドニエルがお待ちかねさ、行くよ」
アスカが声をかけた。
転送術に備えて全員がロウの周りに集まる。
すぐに、魔道が発生して、転送術で転移する独特の感覚が襲ってきた。
いよいよ、ガドニエル主催の一郎たちに対する栄誉の授与式、
すなわち、「英雄式典」だ──。