【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
カリュートが
その直前は、街道辻を荒らす十人ほどの追い剥ぎの首領をしていた。
だが、地方王軍の警備隊に見つかって討伐を受け、生き残った三人ほどの人間と一緒に、当時、すでに賊徒仲間では頭角を表していたこの盗賊団に身を寄せたのだ。
もちろん、最初は、最底辺の賊徒の兵として働くつもりだったが、実は、カリュートはかなり前だが王軍にいたこともあり、多少ではあるものの軍の経験があった。また、武芸についてはそれなりに自信があり、最初の日に少し実力を試されて、いきなり、この大賊徒団の重鎮級に抜擢された。
カリュートが四十歳のときだ。
最初はびっくりしたが、才能があると認めた者をすぐに取り立てるというのが頭領のドピィのやり方らしかった。
カリュートに限らず、見込みのある者はその場で地位と権限を与えられ、賊徒の中心の中で役割を果たすことを求められるというわけだ。
しかし、その反面、無能だとみなされれば、すぐに粛清される。いや、無能でなくても、ドピィに敵対するなど都合が悪くなれば、簡単に殺された。
ドピィは、そういう点では容赦なかった。
そして、そうやって、この賊徒はあっという間に、一万の賊徒を養うほどの大集団になったのだ。
カリュートは、自分に才能などがあるとは思わなかったが、任せられたのは賊徒団に集まる賊徒を兵として鍛錬することと、行動するときの隊の指揮だった。
そして、やってみたら面白かった。
実のところ、数年程度だが王都で王軍に加わっていたときには、平民出身でありながら、頭がよかったことを認められて将校だった。
軍の育成については、そのときの経験が役に立った。
あのまま軍に留まることができれば、それなりに出世する自信もあったが、上官の不正に巻き込まれて、後ろ盾のない平民のカリュートは、鞭打ち刑を受けて軍を追い出されてしまった。
三十歳を少し超えたときだった。
自分がやったわけでもない罪で、鞭打ちを受けるなど理不尽だと思ったが、さらに理不尽なことが待っていた。
その当時、カリュートは下級貴族出身の令嬢を妻にして子供もいたが、カリュートが捕らえられた直後、妻はカリュートと離縁して、子を連れて実家に帰ってしまったのだ。
絶望したカリュートは、あっという間に身を持ち崩して、世間の道から外れた無法人となってしまった。
いずれにしても、ただの賊徒を軍の体裁を作って鍛え上げるというのは愉しい仕事だった。
カリュートは、ドピィに認められて、やがて、さらに高位の重鎮に数えられるようになり、いつの間にか、この大賊徒団の四天王の呼称を得るようになっていた。
とにかく、ドピィとは不思議な男だった。
性格は陰湿そうで、冷徹であることは半年も付き合えばわかった。
ただ、人を見る目があり、適材適所に人材を登用するのが上手だった。
年功に関係なく新しい者を責任のある地位に配置し、その結果、必ず組織はうまくいくようになっていった。
また、組織のまとめ方も上手であり、集まってくる賊徒の心をよく掴んでいた。
そして、なによりも頭がよく、千人単位に機能区分して賊徒団をひとつの村のように機能化し、食を確保する方法を確保して、地方軍の摘発を受けることのない大集団に作りあげた。
これだけの人数を集めれば、簡単に討伐するなど無理だ。
ドピィが核となる盗賊団を乗っ取ってから五年だというから、ほとんどなにもないところから、人の集まっていない山中に、一万にも達する大集団の生存場所を作り上げたということだ。
大した男なのだ。
とにかく、賊徒団には人が集まってきた。
やっているのは、カリュートのような世間に行き場を失った者たちを取り入れて、生活の場所を与えて喰わせることだ。
特に、この一年では、南方地域全体が不安定となり、職を失った者や税を支払えずに逃散する農夫一家などが続発して、大量の流民が溢れるようになっていた。
そんなとき、大勢力になったために簡単に官軍の討伐を受けることもなく、さらに、飢えないだけの食を与えてくれるこの賊徒団は、最高の彼らの受け皿になった。
この
ドピィは、集団をまとめることに巧みだった。
彼が賊徒団をまとめるために利用したのは、人の心が持つ“憎悪”だ。
ここに流れ着く者たちは、それまでの人生で大なり小なり、理不尽な目に遭っている。税が払えずに家族を奴隷として連れ去られた者もいるし、細々と蓄えたものを貴族から奪われてしまった者も大勢いる。
ドピィは、そんな彼らが抱く、貴族社会への恨みを戦うための原動力に変えていったのである。
ドピィは、大勢の隷下の賊徒や、その家族たちに対して、領主たち貴族の横暴や世の中の不正を訴えるということをしたが、カリュートだけは、それを醒めた目で見ていた。
あれは、おそらく、人を惹きつけるためだけの演技だと思っている。
どうにも、ドピィには、本気で世直しをやろうと考えている気概のようなものを感じなかったのだ。
カリュートだけは、なぜかそれがわかった。
いずれにしても、あそこまで完全に作りあげた王家直轄領の拠点を捨て、隣接するクロイツ領に、賊徒団として攻め込むと口にしたときには驚愕した。
カリュートは内心では反対だったが、反抗する部下に対するドピィの残酷性に気がついていたので、四天王を含む重鎮の会同が行われて、ドピィから“相談”があったとき、反対の言葉は口にしなかった。
だが、十人いる重鎮の中で六人が反対して、その場では決心は持ち越しとなった。
しかし、その反対の六人は、翌朝起きてこなった。
病死だとドピィは淡々と説明したが、毒で殺されたのだ。
翌日、残った四人で決議して、クロイツ領への移動が決定した。
なお、死んだ者の中では、四天王に数えられていた者がふたりいて、その役割は次級者に引き継がれた。
とにかく、決定してからは、ドピィは拙速だった。
あっという間にその準備を整えさせ、気がつくと領境を越えたクロイツ領に一万もの賊徒を丸ごと安全に移動させ終わっていた。
実のところ、カリュートをはじめとして主立つ者にも、伝えていなかっただけで、ドピィは、この計画を数年前から準備していて、クロイツ領の内部にすっかりと準備を終えていたのである。
カリュートたちは、すでに手配の終わった状況で、ただドピィの指図の通りに動き、ドピィの決めたとおりに賊徒を動かして、その実行の監督をしただけだ。
その結果、ほとんど混乱もなく、しかも、秘密裏に一万もの賊徒が、王家直轄領と侯爵領を越境するということをやってのけた。
まったく、大したものだ。
そして、いまだ。
カリュートは、新しい拠点に移ってから十日ほど経ったとき、他の新たな四天王とともに、ドピィの居室に呼び出されていた。
実のところ、今回の決起について、どういう戦略で実行するのかということを教えてもらっていない。
しっかりとした計略そのものは、ドピィの頭にはあるらしいが、これまでのところ、ドピィから叛乱の全体像を教えてもらっていないのだ。
ただ策の実行すべき行動をその都度、命令を受けるだけである。
もともと、ドピィの頭の良さだけで維持されているような賊徒団だから不満はない。
特に、今回の行動についてはそうだ。
カリュートも、四天王だともてはやされたりしているが、ドピィは自分のやり方に諾々と従う者を上に置いているだけのことであり、逆らったり疑ったりすれば、ドピィはあのときの会同のように容赦なく部下を切り捨てるだろう。
だから、この賊徒団にドピィの言葉を疑う者などいない。
「そろそろ動く。二百の騎兵を連れて、明日、俺が出る」
ドピィが示したのはそれだけだった。
その二百をどう動かすのかは、伝えられなかった。
ドピィは、誰に対しても信用しきってはいない。
カリュートたちのような重鎮にもだ。改めてそれがわかった。
「二百だけで、ドピィ様が自らですか?」
声をあげたのは、ほかの重鎮のひとりだ。
一万に近い賊徒団の中で、動かすのはたったの二百だという。
カリュートも大丈夫なのかと不安は感じた。
「それ以上だと目立つ。我らの拠点を知られたくない。二百であれば、いざとなれば、クロイツ領の自然の中に溶け込んでしまえる。騎馬だから領軍の歩兵では追いかけてこれない。これはまだ前哨戦だ」
ドピィが白い歯を見せた。
笑った?
言葉の内容よりも、カリュートはこの頭領が感情のようなものを見せたということに驚いた。
実のところ、平素のドピィは、滅多に他人へ心を露わにしない男なのだ。
それにも関わらず、珍しくも笑顔を露わにしたことにびっくりした。
だが、カリュートは慌てて余計な思念を頭から打ち決して、口を開く。
「俺も加わっていいですか。この賊徒を鍛えたのは俺ですし」
「当然だ。二百については精鋭を集めろ。馬はひとりにつき三頭──。だが食は一日分でいい。補充の算段は整っている。出動準備については、明日の朝までに整えておけ」
「わかりました」
カリュートは頷いた。
そもそも、軍事的なことについては、カリュートが責任者なのだ。これまでの隊商や近傍部落などへの襲撃については、カリュートかドピィが実行の指揮をすることがほとんどだ。
先日の王軍輸送隊への襲撃については、ドピィが事前に策を与え、カリュートが賊徒兵を率いて実行をするというやり方だった。
叛乱の行動を起こすとすれば、当然にドピィかカリュート、あるいは、両方が実行の責任者となるべきなのだ。
そもそも、四天王と呼ばれているが、全員が軍の指揮のようなことをできるわけじゃない。実のところ、それぞれに得意分野は違う。
情報だったり、調略だったり、兵站であったりとそれぞれだ。ほかにも、武器調達の責任者、砦作り、炊き出しの責任者などがいる。それが老若男女のすべてが区分けされて、役割を与えられている。
それがこの賊徒団だ。
カリュートは軍事の責任者であり、秩序などを嫌う賊徒集団を軍隊のように組織化して調練させたのはカリュートのしたことだ。
上級将校、中級・下級将校、下士官、兵という階級を取り入れ、騎兵を作り、歩兵を作り、銃兵隊まで作った。
一万もの流民を集めてやりたい放題の襲撃をしても、王軍の討伐を寄せ付けないのは、その組織力にあるだろう。
とにかく、カリュートは、当然に一緒に出動するつもりだった。
ドピィが留守番を命じなくてほっとした。
「ほかの者は手筈を整えて拠点で待機だ」
ドピィが全員に言った。
さらに、主力の行動については、細部が伝えられる。
「それで、俺たちはどこに出るんですか?」
カリュートは訊ねた。
「明日には、ユンデという小都市で大規模な暴発がある。これまでのような小さなものじゃなくて、手が付けられないような大暴動だ。まだ領都から出てこない侯爵軍の主力がその鎮圧のために出動する。それを後ろから襲う」
なぜ、そんなことがわかるのかとは訊ねなかった。
かなり前からドピィが、このクロイツ領における決起を準備していたというのはわかっている。
ケルサの隠し村にしろ、あちこちの都市に埋めて暴動を扇動しているらしい工作員たちにしろ、周到に仕掛けているみたいだ。
「祭りの始まりだ」
ドピィが突然に声をあげて笑った。
やっぱり、柄にもなく、この頭領はかなり気分が高揚しているようだ。
カリュートは、ほかの重鎮たちとともに、笑い声をあげるドピィを呆然とした気持ちで眺めた。
*
「ユンデで虐殺だと──」
報告を受けたとき、領主である侯爵クロイツは、文字通り椅子から転げ落ちそうになった。
クロイツ領には、領都を中心として、小都市が四個あり、それぞれに管轄の田畠を管理している。地域の治安も五個の都市に分散している侯爵軍が目を光らせており、徴税なども都市にいる役人が名主などを通じて実施している。
ユンデというのは、領都の北西側にある小都市のひとつだ。
報告はそこで住民の蜂起があり、軍が平民に襲われて四散してしまったというものだった。
しかも、都市部の役人は住民たちによって殺されており、都市を管理させている政務官やその家族など、首を切断されて都市の広場に晒されているという。
クロイツは激怒した。
「なにがあった──?」
クロイツはさらに怒鳴った。
切っ掛けは、このところ連続して発生している住民による小さな暴動だったという。
だが、たまたま、農村から税の代わりに連行されてきた子女を乗せた檻車が出くわすことにより、住民の反感が拡大して、一部の市民が兵に石を投げたらしい。
そして、警備していた領軍が石を投げた市民たちを攻撃したことで、暴動が都市部全域に拡がったのだという。
領軍は逃亡して四散し、さらに、役人や商家などが次々に襲われて怒り狂った住民に殺されたのだという。
いまは、完全に機能を失い都市全体が無秩序状態なのだという。
クロイツは驚愕した。
「賊徒の連中か──?」
王家直轄領から南下してきた
複数の情報源からのものなので、ほぼ確実といえる。
ただ、いまだに隠れており、大きな動きはない。
従って、今度のユンデの騒乱が賊徒団の行動かと思ったのだ。
「わかりません。しかし、都市を占拠したのは、そこに居住していた平民たちに間違いありません。いまのところ、外からの勢力の潜入の兆候はないようです。ですが、連中の息のかかった者たちが煽った可能性も……」
部下が報告する。
クロイツが領に戻った当初は、代官にやらせていた情報集めは、いまは領軍の任務として一本化している。
しかしながら、重税による生活の困窮が平民の反撥を呼んでおり、平民の協力がなくて、なかなかに情報は集まっていなかった。
いくつかの有益そうな情報も入っているものの、裏付けまでは得ていない。
だから、賊徒団の情報があってからは、確実なところがわかるまで領軍主力は領都に留めるつもりだったが、そうも言ってられなくなった。
平民の動乱など、早く抑え込まなければ、領域全部に拡大しかねない。
クロイツは決断した。
「鎮圧の軍を出す。領都からすぐに進発させろ。対応が遅れれば、暴徒の火があちこちに燃え移る」
*
二百の騎馬が拠点から出発した。
だが、これが情報として、外に漏れることはないはずだ。
拠点にしている周辺の部落は、賊徒団の進出に合わせて、すでにひとり残らず殲滅している。
また、領境の越境移動のときには、行き交う旅人や隊商などは、出会うたびに、ことごとく皆殺しにもした。
全ては、賊徒団の行動を隠すためだ。
今回の行動に際して、ドピィは情報が洩れることを極度に嫌がっていた。
「斥候を出さないのですか?」
馬上のドピィは目立つ真っ赤な装束を身につけていた。
ほかの者も、赤い布を首に巻くことを求められ、カリュートも深紅の布を首に巻いている。
そして、その赤装束の二百騎がユンデというクロイツ領内の小都市に向かって進んでいる。
「無用だ。俺の指図に従えばいい」
ドピィはカリュートの意見を一蹴した。
これまで、ドピィは賊徒として軍以外のものを襲撃したことはあるが、今回は侯爵軍が相手だということは教えられている。
だから、軍人出身の自分が軍との戦い方について助言をする必要があると思ったのだ。
とにかく、拠点を出立してから、単純にまとまって、ユンデという都市に向かって進んでいるだけなのだ。
これではただの騎馬の行列だ。
しかし、カリュートが間違っているということはすぐにわかった。
ユンデが近づくにつれ、ところどころに赤い布を身に着けて待っている者が出現し始めたのだ。
そして、彼らは、カリュートたちがやってくると、ドピィに近づいて報告らしきものを伝えていく。
どうやら、事前に潜入させた諜報を使っているみたいだ。
ただ、これに至るために、指示らしいことを道々発信している感じではなかったので、かなり前から決めていた手筈に従って、行動をさせている気配ではある。
早朝から出立して、陽が中天に近づく頃に、ユンデの都市が見えてきた。
「前方にユンデの町があります」
カリュートは叫んだ。
ユンデは燃えていた。
さらに近づくと、かなりの混乱の中にあるのがわかった。
町の入口の門のような場所に、侯爵軍の一隊があった。縛られた状態で殴られている者たちもいる。
接近する。
さらに、城門の横には、三十ほどの生首が地面に置かれている。
ドピィが、ユンデで市民の暴動が起きると予言のようなことを口にしていたから、もしかしたら、それを鎮圧している侯爵軍なのか?
ただ、都市の外にいるのは、間違いなくその一部だ。
「行くぞ──。雄叫びをあげろ──」
ドピィが馬上で怒鳴る。
一気に加速した。
カリュートたちは馬腹を蹴って、それに続く。
替え馬も含んでいるので、六百騎を超える騎馬の突撃だ。土煙もすごいだろう。
やっと、向こうでこっちに気がついて、動転する様子を示し始める。
一蹴した。
侯爵軍は暴動を起こした市民たちを捕らえて集めていただけで、ほとんどこっちに備えてなかった。
ぶつかった瞬間に馬で踏みつぶすか、武器で斬り裂くかした。
カリュートたちの武器は、各人が得意なものでよいとされていたが、馬上では槍を使う者が多い。
本来の槍の遣い方は、突くように動かすのだが、どこで知ったのか、ドピィは槍は突くのではなく、戦場では叩くように使うとよいとよく教えていた。
だから、もともと武芸の心得がある者以外は、そんな風に槍を動かす者が多い。
カリュートは、素人のようなドピィの指図に、最初は鼻白んだが、やってみたら、かなり有効であることがわかった。
突くよりも、叩くやり方の方が確実に相手に当たるからだ。
そして、相手が怯むか、体勢を崩したところで突いて殺せばいい。
だから、最近ではカリュートも部下に教えるときには、叩くように槍を動かせと指導している。
不意を突かれたかたちの侯爵軍の一隊は、あっという間に全員が逃げていく。
「一度、退け──」
ドピィが合図した。
まとまって騎馬で離れる。
すでに、そこにいた侯爵軍の一隊は潰走している。
しばらくすると、門から兵が飛び出してきた。
町の中にいた侯爵軍の本隊だろう。
騎馬も歩兵も入り混じっている。
「続け──」
ドピィが駆け始める。
再び、まとまって突撃した。
どんどんと中から出てくるが、ほとんど隊列も組んでいないような集団だ。
しっかりと隊形を組んでいるカリュートたちが、彼らを突き崩すのか簡単だった。
侯爵軍は四散して、面白いように崩れていく。
「容赦するな──。叩きつけろ──」
ドピィが叫んでいるのが聞こえる。
カリュートもまた、一心不乱に武器を振るう。
しばらくすると、侯爵軍が全体で逃げ始めた。しばらく追撃して追い散らす。
賊徒である自分たちが領主の軍を蹴散らすなど信じられないが、これは痛快だ。
ドピィは深追いは求めず、完全に追い払ったところで、全員を都市に戻した。
周囲の街道や原野には、侯爵軍の死骸で埋まっていた。
そのまま、都市に入る。
中は騒然としていたが、侯爵軍の気配はない。
「よし、もういい。今度は町に入る。二ノスのあいだ自由に略奪してよし。食料もそのあいだに補充するのだ。貴族でも平民でも襲っていい。ただし、腕に赤い布をしている者には手を出すな」
町を進みながらドピィが叫んだ。
略奪の許可に、戦った賊徒の兵たちが歓声をあげる。
ドピィは、この町の暴動に協同するつもりも、市民たちを助けるつもりもないみたいだ。
暴動の鎮圧に夢中になって態勢のとれていなかった侯爵軍を襲撃して、それで目的を達成した感じである。
いずれにしても、すでに鎮圧されてしまった市民たちにも、逃亡をしていった侯爵軍たちにも、カリュートたちに抵抗する
あっという間に、あちこちで賊徒兵たちの殺戮と凌辱が始まった。
「おい、その女は俺に寄越せ――」
もちろん、カリュートも、その略奪に参加するために、喧噪の中に突進していった。