【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ねえ、わたしとセックスしない、一郎お兄ちゃん?」
突然にケイラ=ハイエルが言った。
一郎は面食らってしまった。
「いきなりだなあ」
一郎は思わず言った。
すると、ケイラが噴き出した。
「なによ。
ケイラがけらけらと笑い続ける。
一郎も苦笑してしまった。
「怖気づくわけじゃないけど、
一郎は言った。
すると、今度はケイラが苦笑顔になった。
「まさか、断られるとは思わなかったわ。これでも現役のつもりだけどね。ガドニエルやラザニエルのように若くはないけど、みんなの生命力をもらっているから、まだまだ現役のつもりよ……」
ケイラが誘うように、椅子の上で身体を崩した。
ちょっとした動作だが、エルフ族の女長老らしい貫禄が消えて、妖艶なエルフ女性の色香が溢れる感じになる。
さすがは、八百年も生きているエルフ族の女は違う。
ほんの少しの仕草だけで、色々な女を演じることができるのだと感心した。
「もちろん、享ちゃんも、ケイラ=ハイエルという女性も十分に魅力的だ。だけど、俺の精の危険も知っているだろう? 俺の精は抱いた女を支配する。唾液程度であれば、一時的な魅了ですむけど、愛し合ったりすればそうはいかない。二度と心が離れなくなる。怖くはないのか?」
「それこそ、なにを今更よ。わたし・わたしたちケイラは、あなたを受け入れると決めたわ。田中享子はあなたを信頼しているし、信頼したいと思っている。それは故郷である世界を捨てさせて、ケイラ=ハイエルに魂を一体化させることを選んでくれたことに対するお礼でもあるし、義務でもある」
「享ちゃんが望むから、俺を受け入れてくれるということ?」
「何度も言っているけど、すでに田中享子という女性は、ケイラ=ハイエルの一部なのよ。まだ完全には溶け切ってはいないけど、ケイラ=ハイエルは二十人以上の異世界の女性が溶けて混ざった人格の統合体……。享子という人格もその一部。彼女が望むことは、わたしたちが望むことであり、ケイラ=ハイエルの望みだわ」
「聞いていて混乱するよ」
「だったら、受け入れなさい。さすがに八百年も生きていれば、男とセックスするたびにいちいち恥じらいもしないわ。まあ、愉しくて気持ちのいい運動の一種という感じかしら。いずれにしても、もう、わたしはあなたを拒絶しない。拒絶しない以上、絶対的に受け入れる。そうなると、淫魔師だというあなたに、ケイラ=ハイエルは大変に興味があるわ。どんな感じなのかとね」
「俺に興味? 本当に?」
「ええ……。実をいうと、ケイラ=ハイエルというエルフ族の女長老と言われる女は、結構好色なのよ。さもなければ、何十人も子供を産むほどに、たくさんの男にセックスを求めないわ。もっとも、無理強いはしないわ。わたしがエルフ族の女の中でもとんでもないお婆ちゃんであることは確かだし」
ケイラが笑った。
一郎は軽く肩をすくめる仕草をしてみせた。
「これは悪かったよ。恥をかかせるつもりも、あなたを魅力的と思わないわけでもないんだ。だけど、享ちゃんは大切な妹のようなものだったし……」
「あなたにとってはね……。だけど、田中享子の人生にとっては、生涯に唯一愛した初恋の男だわ。成就しなかった恋だったけど……」
「恋か……」
享子は自分に恋をしてくれていたのか……。
召喚される前の田中一郎は、女を抱いたことさえない貧乏男だったけど、そうやって、好きになってくれていた女性がいたということだけで、頑張って生きていたことが報われたみたいな気持ちになった。
「そうよ。あなたが大好きだったの。病院のベッドであなたが来てくれるのをいつも楽しみにしていたわ」
「そうか……。悪かった……。あなたが俺に恋をしてくれているなんて気がつかなかった。まあ、さえない男だったし、比べる対象がなかっただけだったろうけど」
「比べる相手がなかったのは本当ね。ところで、
「いや、代償なんて求めないよ。ケイラ=ハイエルという女性も、俺の思い出の中にいる享ちゃんも十分すぎるほどに素晴らしい女性だと思う。ありがとう……」
一郎は、自分とケイラを隔てているテーブルの上に、花瓶に生けられている一輪の淡い黄色の薔薇の一種の花を出した。
淫魔師レベルがあがったことで、新たに加わったらしい“性感帯移動”という能力を使う。一瞬前には、どういう能力ということさえわからなかったが、一郎がこの能力を使ってみようと考えた瞬間に、この新しい能力に、完全に習熟していた。
「あら、花?」
「うん、モッコウバラという花だ。俺たちの世界の花……。花言葉は初恋……。そして、“あなたが俺には必要です”……」
「ロマンチックなこと……」
ケイラが微笑んだ。
一郎は花を手に取り、ケイラの身体に魔眼を当てて、性感帯の赤いもやを見た。
身体全体がもやで薄い赤色で染まっていて、すでに欲情しかけていることがわかる。
股間、胸……脇や内腿。
耳……。
当たり前の場所に濃い性感帯もある。
あるいは意外な場所にも……。
一郎は、股間の性感帯全体の赤いもやを目の前の花に移動させた。
これで、ケイラの性感帯は、一郎が持っている花に移動してきたことになる。
一郎はモッコウバラの花の縁を指ですっと触った。
「ひっ──。えっ?」
ケイラが身体をびくりとさせて、股間に両手を当てた。
しかし、すぐに違和感を覚えたのだろう。
赤くなった顔の表情を強張らせた。
「股間に感覚がなくなったことに気がついた? すでに、あなたの身体は俺の思いのままだ。ほら、こんな風に……」
持っている花の花びらをゆっくりと揉みほぐす。
そして、口元にもっていくと、舌で小刻みに花びらを弾く。
「ああ──、こ、これ、いいっ、な、なにこれ──?」
ケイラが喉をあげて喘いだ。
そして、股間に両手を挟んでぎゅっと内腿で締めつけるような仕草をする。
「八百歳のエルフ様は敏感だね」
さらに舌を花全体にねっとりと這わせながら、指で刺激する。
それだけじゃなく、ケイラの全身の赤いもやを花側に移動させてしまう。この状態で花に刺激を受けると、全身の性感帯を一斉に刺激されるのと同じことになるはずだ。
一郎はさらに舌と指をねちっこく動かした。
「ああ──、だ、だめええ」
ケイラが椅子の上で身体をのけぞらせた。
舌を花の中心にもっていく。
ここは子宮の入口の最奥に繋げている。普通であれば、そんな奥を外から刺激されるということなどない。
だが、いまの状態であれば、身体中の性感帯をそこに集中させられて、常識ではありえない快感を股間の奥に打ち込まれることになる。
一郎は花の中心を舌で強弱をつけて、揉み転がす。
「ああっ、ああ──っ」
ケイラの全身が優美に捩られ、脚から力が緩んでスカートに包まれた股が開く。
茎はクリトリス……。
しかも、下腹部の内側に隠されている奥側の部分の感覚まで茎に移動させてしまう。
手で軽く、しかし、素早く何度も茎を擦ってやる。
「いぐううっ」
ケイラの身体が大きく打ち震えて、膝が痙攣するようにがくがくと動いた。
絶頂したのだ。
魔眼のステータスにも、それがはっきりと出ている。
「どうしたのかな? ちょっと花を触っていただけだけどね」
一郎は自分の顔から花を離してやった。
だが、軽く花を宙に動かしてやる。
花びらが揺れて動く……。
「ああんっ、う、動かさないでええ──。す、すごいいい──。ま、参ったからああ」
性感帯は花に移動させたままだ。
だから、花が動くと、快感が脳に直撃するというわけだ。
ケイラが悶絶するような声を出す。
一郎は笑いながら、花を花瓶に戻してやる。同時に性感帯をケイラの身体側に復帰させた。
ケイラはがっくりとなった。
「お愉しみはこれからだよ。まだ始まってもいないけどね」
一郎は立ちあがると、ケイラのいる場所に移動した。
まだ肩で息をしているケイラの身体をひょいと持ちあげて横抱きにすると、そのまま、たったいままでケイラが座っていたソファに座り直した。
達したばかりのケイラのいい香りが鼻を刺激する。
「はあ、はあ、はあ……。さ、さすがに淫魔師様ね……。こ、このわたしが、あんな風に一瞬で圧倒されるなんて……。所詮は寿命の短い人間族って、見くびっていたわ」
「すでに、ガドと
「そうだったわね」
ケイラは一郎に抱かれたまま頷いた。
汗で前髪が張り付いている。
とても、色っぽい。
「ねえ、どうせ抱くなら、最初は、まだ個体として生きていた田中享子という女の子に、思い出を贈ってあげたいんだけど、だめかなあ?」
「思い出?」
ケイラは訝しむ表情になって、軽く首を横に動かした。
「俺にとって、向こうの世界にいた時期は、自分が惨めになるような思い出しかなかった。だけど、享子という可愛かった女の子が実は俺に恋をしてくれていたということだけで、俺の記憶に花が咲いたような感じになったんだ。だから、享ちゃんにも同じものを贈りたくてね。仮想現実だけど……」
「あんなんで嬉しくなったの? 齢八百超えのエルフお婆ちゃんは笑うわよ」
ケイラが微笑んだ。
「ケイラの中に溶け込んでいる享ちゃんも?」
「そっちは嬉しいかもね。だから、ケイラ=ハイエルも嬉しいと感じるわ。わたし・わたしたちは同じなのよ」
「なら、よかった……。では、
一郎はお道化た口調で言った。
ケイラがきょとんとした顔になった。
*
べたべたにべただが、夏休みを利用してやってきた海辺のホテルで、わたしは大好きな一郎お兄ちゃんに、初めてをもらってもらおうと決めていた。
もちろん、親はわたしがお兄ちゃんとふたりきりで、海のある観光地に旅行をしに来たとは知らない。
女友達たちと旅行をしにきたということになっている。
一応は、友達たちには、口裏を合わしてくれるようには頼んでいるが、その代償ははやりのイチゴパフェを彼女たちに御馳走することと、ひと夏の冒険の思い出を友達たちに包み隠すことなく報告することだ。
正直、まだ高校一年生のわたしに、三人分のパフェの支払いはつらいが、それもこれも、大好きなお兄ちゃんとの思い出を作るためだ。仕方ない──。
わたしは、これまでため込んだお年玉の全部を、このお兄ちゃんとの旅行と、友達への賄賂に使うことにした。
後悔はない──。
一郎お兄ちゃんこと、田中一郎さんは、わたしの従兄であり、十年くらい前から一緒に暮らしていた四歳上のお兄ちゃんのような人だ。
わたしが幼稚園のとき、お兄ちゃんの両親が事故で死んでしまって、施設に預けられるくらいならと、わたしの親がお兄ちゃんを引き取ったのだ。
お父さん、お母さん、グッジョブ──。
とにかく優しい人であり、突然にやって来た男の兄弟に、わたしは徹底的につきまとった。
わたしは、なにを言っても怒らず、どんな我儘でも付き合ってくれ、絵本でも、ままごとでも、公園遊びでも付き合ってくれる一郎お兄ちゃんがあっという間に大好きになった。
わたしの初恋だ──。
お兄ちゃんは本当に優しかった。
そして、素敵な人だった。
わたしは、幼稚園の卒園記念に書く“しょうらいのゆめ”という欄に、大きく“おにいちゃんのおよめさん”と書いた。
わたしの中では、最初から将来の旦那さんと決まっていたお兄ちゃんだが、その恋がついに成熟したのは、わたしが大病を患って、長い入院をすることになったときだ。
身体がだんだん動かなくなり、ついには死んでしまうという病気にかかったわたしは、数箇月に三回も入院しては退院するということを繰り返し、三度目の入院のときには、お医者さんからは、“もう退院することはできない”とお父さんとお母さんが言われたらしい。
そのときには知らなかったが、あとから教えてくれた。
元気になったいまでは、お医者さんの絶望的な宣告も、笑って語れる思い出のひとつだ。
なにしろ、わたしはお医者さんも絶望した病気から、復活した奇跡の少女なのだ──。
そんなことはともかく、わたしがお兄ちゃんに告白したのは、病院で三度目の入院をしているときだ。
毎日やって来てくれていたお兄ちゃんに、わたしは勇気を出し、元気になったらお嫁さんにして欲しいと頼んだ。
お兄ちゃんは、嬉しそうに笑って、元気になったらねと言って、わたしに触れるだけのキスをしてくれた。
もしかしたら、治らない病に侵されているわたしを可哀想に思って、告白を受け入れてくれたかもしれないが、そうだとしたら、わたしは病気になってよかったと思う。
なにしろ、お兄ちゃんがわたしを受け入れてくたのだ。
わたしは天にも昇る気持ちになった。
あっ……。不治の病なのに、天に昇る気持ちというのは縁起が悪いかな?
それはともかく、お兄ちゃんのキスがよかったのか、それからわたしは、奇跡の快復をして、病から全快してしまった。
二度と退院できないと言われた病院からも、その月のうちに退院することができてしまい、しかも、あれから一度も病気は再発していない。
定期的に行っている診断でも、常に異常なしだ。
まさに、お兄ちゃんとの愛の奇跡である。
わたしとお兄ちゃんが恋人になったことで悔しがったのは、お姉ちゃんだ。
涼子お姉ちゃんは、わたしよりもふたつ上の実の姉妹であるが、実はお姉ちゃんも一郎お兄ちゃんが好きだったのだ。
だけど、姉妹といえども、恋は別だ。
友情よりも愛情──。
ましてや、姉妹愛など、一郎お兄ちゃんとわたしとの愛と比べれば、とるに足らないものだ。
そもそも、お姉ちゃんは、いつまで経ってもお姉ちゃんだけど、一郎お兄ちゃんは、もし別れてしまったら、ただの他人だ。どちらを優先すべきかなど、考えるまでもない。お兄ちゃんだ──。
もちろん、わたしは、この幸運を手離すつもりはなく、絶対に別れるつもりはない──。
小学生だったわたしは当然として、当時中学生だった一郎お兄ちゃんも、異性と付き合うのはお互いが初めてだった。
だから、最初から知っているふりはしないですんだし、わからないことはわからないとリラックスできた。
一郎お兄ちゃんは、性急にがつがつするタイプではなかったから、それは安心できた。
ただ、ちょっと物足りなく考えたりすることもあった。
でも、お兄ちゃんは中学生のうちは、やめておこうと言っていた。
その代わり、わたしが甘えると、いつも大人のキスをしてくれた。
とにかく、一郎お兄ちゃんとは、もう四年の仲になる。
病院でしてくれた優しいキスは、いまでは大人のキスに変っている。
だけど、まだ大人の経験はまだだ。
でも、高校一年生になって初めての夏休み──。
この夏休みをひと夏の経験にしようと決心していた。
だから、お兄ちゃんに頼んで、ふたりきりの旅行につれてきてもらったのだ。
一緒に暮らしていたお兄ちゃんも、大学生になってからは、ひとり暮らしを始めている。
寂しかったが、遠くではなかったので、遊びに行っては、料理をしたり掃除をしたりして、奥さん気分を味わった。
そういう意味では、離れて暮らすのも悪くないかもしれない。
ひと夏の経験だって、お兄ちゃんが家を出ているから、親を
一緒に暮らしていたら、さすがに同時に外に泊まれば、一緒に行ったんだとわかってしまう。
「料理美味しかった。花火もきれいだった」
午前中にホテルに到着して、荷物だけを預かってもらい、そのまま海に出た。
お兄ちゃんと愉しく過ごし、ホテルにチェックイン──。
小さな部屋だが可愛い造りであり、なによりも、ベッドがひとつ──。
それを見て、ちょっと赤くなってしまったが、気がついたら、お兄ちゃんの顔も赤くなっていた。
わたしが抱きつくと、お兄ちゃんは、いつもの大人のキスをしてくれた。
着替えて食事──。
そして、ホテルのサービスのひとつである毎夜の花火──。
お兄ちゃんとホテルの中庭でベンチに座って観た。
ずっとお兄ちゃんは、わたしの腰を抱き寄せてくれた。
とてもどきどきした。
そして、いま……。
わたしたちは、寝台の前に並んで立っている。
「できるだけ、優しくする……。そして、頑張って、気持ちよくする。だから、享ちゃんを愛させてくれ……」
一郎お兄ちゃんがわたしをダブルベッドに腰掛けさせながら言った。
「わたしも……、一郎お兄ちゃんを愛させて」
そして、わたしは言った。