【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「隣、いいですか、田中先輩? ひとりですか?」
忘年会としての二十人ほどの教師の酒盛りの隅でひとりでチューハイを舐めていたわたしに声をかけてきたのは、
目鼻立ちが派手で可愛らしく、また、性格もてきぱきとしていて、とても人気がある一年目の英語教師だ。
今日の飲み会でも、ずっと男性教師たちに絡まれ、それでいて、深入りするほどには一箇所で長くならないように巧みに動き、居酒屋の席の幾つかの輪を転々と動くということをしていた。
別段、見張っていたわけではないが、彼女の男に媚びを売るような甲高い物言いが響くので、ついつい暇にあかせて意識してしまったのだ。
その丹羽先生がジョッキに入れた生ビールを持って立っている。
それなりに飲んだのだろう。
ちょっと顔が赤い。
「もちろんよ、どうぞ」
わたしは応じたが、そのときにはすでに丹羽先生は、適当に座布団を引っ張って来て横に座っていた。
この手の宴会のときには、隅でひとりで静かに酒を飲むというのが大抵のわたしの定番だ。
別に孤独を気取っているわけではないが、教師仲間の中では、わたしの存在は地雷のように扱われているのを知っている。
わたしも無理に打ち解けようとはしていないので、誰にも積極的に話しかけないし、付き合いもしない。
人嫌いではないのだが、わたしとしても、女教師はともかく、酔った男教師にべたべたとされるのが気持ち悪いので都合がいいくらいだ。
そもそも、いつもそうなのだが、教師というのは、忙しい忙しいと全員が主張するわりには、ものすごくこの手の宴会が多い。
歓迎会だ──。団結会だ──。なにかの行事の打ち上げだ。忘年会だ。送別会だというように、月の二、三回は教師同士の宴会をしているのではないだろうか。
しかも、とても騒がしい。
わたしは大学のコンパというものには、結局一度も参加しなかったが、教師たちの酒飲みの集まりのときのノリを一郎お兄ちゃんに説明したところ、大学生のコンパのときのノリとまるで一緒だそうだ。
多分、先生というのは、学校からそのまま学校に戻るので、どうしても学生気分が捨てきれないのかもしれないねと笑っていた。
それはともかく、そういう喧噪が嫌いなのと、わたし自身がやらかした幾つかのことで、わたしは学校では浮いている。
仕事に関することはきちんと接してもらえるし、授業などのことで困ることはないが、まるで腫れ物に触るような感じで、私的な会話をしようとする者はほとんどいない。
しかし、今日は珍しく声をかけられた。
「やっと、話ができますね。ずっと話したいなあって思ってたんですけど、なかなか離れられなくて。新入りだから、一応、全員にお酌しないといけないし……。あっ、ごめんなさい。先輩に嫌味を言っているじゃないですよ。本当はしたくないんです。キャバ嬢じゃあるまいし、なんで女がお酌なんだって思うんですけど……。まあ、先輩みたいに勇気ないし……」
彼女が謝るような口調で言った。
「勇気?」
「ええ、聞きましたよう。一年目の最初の歓迎会で、男教師にお酌はしないって宣言したんですよねえ。すっごいです」
彼女が目をきらきらさせている。
鼻につくようなわざとらしい舌足らずの物言いは不快だけど、どうやら、本気でそう思っているみたいだ。
このところ、わたしに宴席で話しかける者には、ほとんどが嫌味や悪意のようなものが混ざっている。だから、久しぶりに向けられる純粋な好意らしきものに、わたしはちょっとくすぐったさを覚えてしまった。
「宣言って、ほどじゃないけど、主人に叱られるので、そういうことはしませんって、言っただけよ」
あれは、いまは三年目の教師になるわたしが新任教師だった歓迎会のときだったと思う。
正直にいえば、お兄ちゃん以外の人とお酒を飲みにいっても大して愉しくはないし、お兄ちゃん可愛がってもらえる時間を無駄に潰しているような気もするから、宴会そのものが嫌なのだが、お兄ちゃんがそれも社会人としての仕事の一部だと諭すので、こうやって、宴会は断らないで参加することにしている。
だけど、そうだとしても、酔った男性教師たちに、身体を触られたり、下品な言葉をかけられりするのは不快で仕方がない。
そう思うと、わたしはどうやら、淫乱女ではないということになる。
いや、すっかり淫乱なのだが、それは一郎お兄ちゃん限定だ。
同じからかいでも、お兄ちゃんに言われれば、ぞくぞくするような興奮を覚えるし、お兄ちゃんにどこを触られても、わたしはあっという間に雌の顔になる。
まあ、お兄ちゃんに依存しきっている気もするが、わたしは、十二歳でお兄ちゃんの恋人にしてもらってからずっと、お兄ちゃんに夢中だ。
とにかく、ほかの男の人なんて、気持ち悪くて仕方がない。
それはともかく、だから、嫌だと言っただけだ。
すると、周りの全員が白けた感じになっただけでなく、翌日に学年主任と教頭に呼ばれて、輪を乱すような言葉や態度はよくないと説教された。
だったら、宴会でお酌をするのは職務命令ですかと切り返したら、向こうも嫌な顔をしていた。
それが最初のぶつかりだった。
「嫉妬深い旦那様に怒られるって言ったんですよね。あたしもそういう人がいれば、同じことが言えるんですけどねえ……。いいですよねえ……。あっ、それと、セクハラ退治の話……。あれも聞きました。先輩、かっこいいですう」
「その結果、こうやって誰も話しかけないけどね」
わたしは手元のチューハイで口を湿らせた。
セクハラ退治というのは、わたしが職場で浮くことを決定的にした事件であり、やはり、新任一年目のことだった。
宴席におけるお酌拒否のあと、わたしへの風当たりは強くなった。
なにかと因縁のような嫌味を言われたり、明らかにほかの人よりも厳しい態度で教育指導を受けるようになったのだ。
わたしは頑張った。
新人が指導を受けるのは当然だし、それをもって不当とは考えなかった。そもそも、正当な指摘に対して、不満を口にするつもりはないし、自分だけ厳しいと思うことでも、いつかは必ず、自分の糧になると歯を喰いしばった。
だが、そんな時期に、わたしにやたらに構う体育教師がいたのだ。
本人は、教員室の中でほかの教師たちの輪に入ることのできないわたしをコミュニケーションに誘うためのアプローチだと主張していたが、なにかと話しかけてきては、肩や頭に触ったり、ときにはお尻をぽんと手で叩いたりする。時には、胸に近い場所を触ったりもしてきた。
わたしは、それが嫌で嫌で仕方がなかった。
だから、そう告げたのだが、いまもそうだが、当時の学校にはわたしの味方はまったくいなかった。
むしろ、宴会でお酌を拒否する協調性に欠陥のある女とされていたのである。
その体育教師が生徒に人気のある明るいキャラクターだったこともあり、些細なことでまたもや大騒ぎする問題児のように扱われた。
わたしは腹が立ち、一週間ほど教員室におけるその体育教師の態度を隠し撮りすると、教育委員会内にあるセクハラ対応部署に、証拠とともに送りつけた。もちろん、わたしの訴えに対する教頭たちの反応の音声録音も付けてだ。
その結果、体育教師は謹慎処分になり、しばらくのあいだ、異動のうえに、特別な指導教育を受けることになった。校長と教頭も減給を喰らった。
わたしについては、被害者保護制度により、被害を訴えたことで不利益を与えることは禁止されているので、それだけの騒ぎを起こすことになったが、職場における扱いは同じだ。
ただ、一年目で二度も、そんなことを起こしたわたしは、三年目のいまになっても、すっかり「地雷」扱いというわけだ。
「だけど、本当は感謝している女先生も多いみたいですよう。空気を読んで、先輩に接してこないけど、結構、ここって、昔はセクハラって、かなりあったみたいですしい」
「そうなの?」
「ええ──。みんな、こっそりとは教えてくれるんです。まあ、だから、全員が敵じゃないってことでえ……」
彼女がくすくすと笑った。
わたしは、ありがとうとだけ言った。
「まあ、あたしは知りませんけど、それで異動になった体育教師って、結構いい男だったそうじゃないですかあ。それについては残念がってはいましたね。狙っている女も少なくなかったみたいだし……」
「あれを?」
わたしは首を傾げた。
あの体育教師のことはよく覚えているが、いい男だったという記憶はない。
面倒で失礼な奴という印象だけだ。
「ええ──。だって、セクハラって、いい男がやっても、普通はセクハラにはならないんですよう。逆に中年男が同じことをすれば、すぐに訴えられますけどね。その先生も、それをわかっているから、先輩に手を出してたと思いますよ。先輩がさっさとセクハラ委員会に訴えたのは、そいつも驚いたもしれませんね。いい男だったですかあ?」
「全然」
わたしは首を横に振った。
彼女がけらけらと笑った、
「やっぱり、先輩って、旦那さんひと筋ですよねえ。学生結婚って聞きましたけど、なにをされている人なんですかあ?」
学生結婚というよりは、籍を入れたのが高校生だったときなので、高校生結婚ということになるのだろうか。
まあ、余計なことなので口にはしないが……。
「学習教材を作成したり、全国に学習塾を展開している会社よ」
一郎お兄ちゃんが務めている大手企業の名を告げた。
彼女は大きく目を見開いた。
「わっ、あたしたちのような学校にも教材を卸している超大手じゃないですかあ。ある意味、ライバルなのかもう。いまの子って、ほとんど受験勉強については、あたしたちじゃなくて、そういう塾に頼りますものね……。あっ、もしかして、この前、先輩が提案した補講指導案って、旦那さんから情報をもらったりしてますう?」
「参考にできる情報は頼めばもらえるし、相談に乗ってもらったりはするわ」
わたしの持っている教科は二年生と三年生の国語になるが、授業というのは基本的には学習要綱に従って教えるものであるものの、ただ決まった通りに教えればいいというものでもない。
それぞれの教師の工夫もあるし、わかりやすくするために、教材やプリントを追加して使用したりもする。
この学校では、定期的にその工夫を発表する会議があり、幾度かわたしも発表した。
普段の人間関係が悪いので、なにかと厳しい課題を付与されたりしているが、わたしは、一郎お兄ちゃんの助けもあって、ほとんどをそつなくこなしている。
なにせ、わたしたち教師もプロのつもりだが、お金をとって子供たちに学習知識を習得させ、しかも、確実な結果を残して、ライバル会社と競わなければならないという民間の学習会社は、プロ中のプロということになるのではないだろうか。
一郎お兄ちゃんは、わたしが受ける課題について、惜しげもなく、会社のデータや教育ノウハウを活用してくれて、わたしを助けてくれる。
なにしろ、お兄ちゃんの仕事のことはあまり話をしないが、まだ三十前にして、すでにお兄ちゃんは、会社の重要なポストにつき、たくさんの大きな成果をあげているエリートらしいのだ。
その能力をすべて、わたしの仕事に対しても使ってくれる。
ありがたくて仕方がないが、「ご主人様」として当然だと笑ってくれる。
とにかく、わたしがいま、学校で過ごしていけるのも、ちゃんと教育の中で結果を残しているからであり、それはお兄ちゃんのおかげなのである。
「うわっ、羨ましい。偶然に旦那さんが、そういう仕事を手伝ってくれるような職務についているっていいですよねえ」
「まあ……」
もっとも、実は一郎お兄ちゃんが、教師になったわたしと繋がるような会社に入ったのは、偶然ではないのだ。
お兄ちゃんがいまの職務を選んだのは、わたしが教育学部を目指したからであり、その逆ではない。
民間で教育に携わるような大手であれば、わたしを助けられるだろうし、万が一、教師をやめたくなっても、塾の講師としての就職の受け皿を準備してやると言ってくれている。
実際、最近では、学生になにかを教えるということはやりたいと思っているけど、それは学校という場所じゃなくてもいいかなあと思ったりする。
それが塾のような場所でも、十分にやりがいを見つけらるとは確信している。
お兄ちゃんは、人に物を教える仕事をしたいと言うわたしのために、いまの大手学習企業で立場を確保しておいてやると言ってくれているのだ。
本当に優しい。
「いい旦那さんですよねえ」
彼女がわたしの左手の薬指を見ながら言った。
そこには、高校三年生のクリスマスイブに送ってくれたガーネットの指輪がある。
あの駅のホームでもらってから、これはいつもわたしの指に嵌まっている。
「ところで、実は先輩に感謝することがあるんです。本当に助かりました。でも、先輩の武勇伝って尽きませんよねえ」
すると、彼女が急に取り澄ました表情になった。
「武勇伝って?」
「二年の悪ガキたち五人ですよ。あいつら、ほんっとに、面倒だったから。集団で怖いし……」
彼女がさらに口を開いて告げた名前は、先日の授業の後に話しかけられた五人組の二年の男子生徒のことだった。
中学生二年の男子ともなれば、性のことに俄然興味が湧きだす頃だ。
しかも、その表現が直接的で、わたしや目の前の丹羽先生のような若い女教師に、性的な言動や、ときには胸やお尻に軽い接触をしてきたりする。
そういえば、その五人とわたしも、接触があったりした。
「先輩が対処してくれてから、あの五人組が大人しくなったらしくて。あたしも新米だから、舐められちゃって苦労してたんですう」
「そうなの? だけど、そもそも、対処したってわけじゃないけど」
わたしは言った。
確かに、あればそんなものじゃなかった。
多分、あれは、手頃なターゲットとなる若い女教師を見つけて遊ぶゲームというものだろう。
わたしがすでに結婚をして七年になることはかなり知られているはずだが、その五人は認識はなかったみたいだ。
おそらく、左手の薬指の指輪の意味も知らなかったのだと思う。
授業の終わりに、わたしのところに寄ってくると、質問があると囲んできて、突然に、「先生って、オナニーって、週に何回くらいするの? 女にも性欲があるって本当ですか」と訊ねてきたのだ。
『女にも性欲があるのは当たり前でしょう。自慰は基本的にはしないわね』
子供を相手に恥ずかしがる感性は、残念ながら持っていなかったので、わたしははっきりと答えた。
すると、なぜか、五人が爆笑した。
『ええ──。オナニーしないと我慢できるわけないじゃん。俺なんか、毎日してるぜ』
『性欲あるんなら、オナニーはするでしょう。先生、正直に言ってよ』
すると、連中が笑いながら大声ではしゃいだ。
そのときには、すでにだんだんと面倒くさくなってきていた。
それに、こういう男の子たちは、毎年のように現れる。性に興味があるというのもあるが、そもそも、若い女教師が自分たちの言葉に反応して、恥ずかしがったりするのが愉しいだの。
だから、わたしはいつも正直に淡々と対応することにしている。
そっちの方が、こういう連中はつまらなくて、次にやって来なくなるのだ。
『大事な旦那さんがいるから、自分ではしないわ。目の前でやれって、命令されればするけど、そういうプレイのときだけね』
『え? プレイ?』
すると、なぜか急に男の子たちが顔を赤くしたのだ。
わたしは嘆息した。
そして、立ち去ろうとすると、さらに一緒にいたほかの男の子に呼びとめられた。
『じゃ、じゃあ、初体験はいつ? どんな風にしたんですか?』
『高一のときね。その一年前から準備していて、わたしの方から迫ったかな』
わたしは言った。
そして、ふと考えた。
いや、自分から迫ったわけじゃないか……。一緒に泊まった海辺のホテルで処女を奪ってもらったんだった。
しかし、なぜか、頭の隅に自分から「わたしとセックスしない?」と迫った記憶もある。それだけじゃなくて、「男とセックスするたびにいちいち恥じらいもしないわ。まあ、愉しくて気持ちのいい運動の一種という感じかしら」とまで言った気が……。
だが、そんなことを喋るわけもないから、多分、記憶違いか?
まあいいか。
『旦那さんよりも、俺としようぜ。きっと満足させてやるよ。俺の方がでかいからな』
ひとりが腰を突き出して、自分の股間をひけらかすような仕草をした。
わたしは吹き出してしまった。
『大きさなんて、女の気持ちよさに関係ないのよ。それに、わたしの旦那さんは、毎日わたしとセックスをしてくれて、いつも気絶するまで抱いてくれるわ。残念だけど、経験もないあなたが、わたしの旦那さんよりも上手というのはあり得ないわ。ごめんね。わたしは旦那さんで満足しきっているの』
わたしは言った。
さらに、男の子たちが経験くらいたくさんあると真っ赤な顔になったので、だったら、ちゃんと避妊はしているのかと、こっちから詰問した。
避妊は相手の女のために絶対にやらなければならないし、そもそも、大勢というが不特定多数とすればするほど、性病の危険も出てくる。
性病になったまま、女の相手をするのは、こんな失礼なことはないし、一度病院にいけとまで諭した。
すると、やっと男の子たちが立ち去ってくれた。
ただ、それだけのことだった。
「先輩が連中をやり込めてくれたから、あれから、ずっと彼らが大人しんです。本当に感謝ですよう」
彼女が笑った。
「やり込めた気はないんだけどね」
わたしは苦笑した。
すると、横の彼女がなぜか、すっとさらに距離を詰めてきた。
ほとんど密着しているほどだ。
「……さて、本題です……。ねえ、先輩、さっきの話で、あれ……本当ですか……? 先輩の旦那さんに毎日抱かれてるって……。しかも、気絶するまでって……」
彼女がほとんどささやくような声で言った。
「ああ、本当……、んくっ」
しかし、応じようとしたとき、突然に股間に嵌まっている貞操帯の張形が振動を開始した。
どこか遠くにいる一郎お兄ちゃんだ。
携帯電話用の電波を使って、お兄ちゃんはわたしの股間に嵌まっている張形を自由に振動させることができる。
毎日、わたしが学校に出かける前に、張形付きの貞操帯を嵌めるのがわたしたちの日課だ。
当然、鍵はお兄ちゃんしか持ってない。
小さい方は貞操帯にある小さな穴からできるが、大きいのはできない。
泊りがけの出張がたまにあるが、そのときには大きい方を出せない苦しさに、七転八倒しなければならないが、これも調教だと思えば、つらいということなどはない。
「どうしたんですか?」
横の丹羽先生が驚いている。
わたしはしばらく歯を噛みしめたまま、なんでもないと首を横に振った。
しばらくすると、振動がやむ。
わたしは脱力した。
こうやって、四六時中、張形の振動に怯えなければならないわたしだが、お兄ちゃんはわたしが困るような時間帯には、あまり悪戯はしてこない。
やったとしても、ほんの短い時間だ。
わたしの行動予定は、かなり詳しいものをお兄ちゃんに渡しているので、それで、わたしが破滅するようなことにならないように判断しているのだと思う。
優しいのだ。
「な、なんでもない……。とにかく、さっきのは嘘じゃないわ……。お兄ちゃんは、すごいから……」
「お兄ちゃん?」
彼女が面食らった。
人前ではそう呼ばないが、貞操帯で悪戯をされたばかりで、余裕がなかったので、つい頭に思い浮かべている言葉を使ってしまったようだ。
まあ、問題はないが……。
「……まあいいか……。でも、いいですよねえ。気絶するまでって、本当ですかあ? はったりじゃなくって? あたしって、一度もセックスでいったことないんですよう。経験だけは二十人以上とあるけどう……。まあ、気持ちはいいですけどね」
「えええ?」
今度はわたしがびっくりした。
セックスで達したことがない?
いや、だいたい、女が達しないセックスなんてあるのだろうか?
我を忘れるような調教の末のセックスしかしたことがないので、彼女の物言いには驚いてしまった。そもそも、二十人以上とセックスしたのに、達したことがない?
「わたしも、先輩みたいに、気絶するようなセックスしてみたいですう……。実を言いますとね、ここの先生たちとも、ふたりほどやったんですう。だけど、駄目でしたね。あっという間に終わっちゃって……。あーあ、あたしも、先輩みたいに気持ちのいい、夢のようなセックスしたいですう」
彼女がくすくすと笑った。
ふたりとやった?
誰と誰なのかを訊ねる気にはならなかったが、可愛い感じだけど、結構、やっているみたいだ。
いずれにしても、やっぱり、そこそこ酔っているのだろう。だが、正気を失っているというわけでもないだろうし……。
だったら、いいかなと思った。それに、お兄ちゃんなら、彼女でもなんとかしてくれるような気がした。
「定期的な検診はしてる? 性病とか」
「性病? 大丈夫ですよう──。先輩って、固いんだか、進んでいるのか……。まあ、問題ありません。検診には行ったばかりです。ピルも処方してもらってますし。そのついでに、いつも診てもらってますから」
彼女が笑って、ぐびぐびと自分のビールを飲んだ。
わたしは決心した。
少し以前から、そういう機会を作ってもいいと、お兄ちゃんに言われていたのだ。つまりは、わたしたちのプレイに、セックスフレンドを参加させることについてである。
そもそも、お兄ちゃんがかなりの絶倫だということには、さすがに気がついている。
中学生のときから、お兄ちゃんひと筋のわたしだけど、毎日のように精を放ち、しかも、一日に六回も、七回も平気で出せるというのは、かなり特別なこととは、気がついている。
だからこそ、わたしだけというのは、申しわけないし、なんとかしなければならないとも考えていた。
話を聞く限りにおいて、もしかしたら、彼女はうってつけではないだろうか。
「ねえ、だったら、お兄ちゃん……つまり、わたしの旦那さんに聞いてみようか? よければ、年末旅行に一緒に行かない。会社の厚生施設の温泉別荘を三日間貸し切っているんだって」
「え? 一緒に?」
彼女は目を見開いた。
そのときには、わたしは、お兄ちゃんの許可を受けるために、携帯電話を取り出していた。
「もともと二人でいく予定だったけど、よければ一緒に行かない? ねえ、どうする? 気絶するようなセックスしてみたいんじゃないの?」
「えっ、えっ? ええ?」
「わたしのお兄ちゃんが、夢のような快感に案内してくれるわよ。お兄ちゃんの調教を受ければ、絶対に忘れられなくなるわ」
わたしは言った。
「調教?」
彼女が面食らったようになった。
「痛いことはしないように頼んであげる……。でも、最後は満足させてくれると思うよ」
すると、ちょっと呆けた感じった彼女が、にんまりと微笑んだ。
「へえ、先輩って、そんなんだったんだ。調教されてるんですか? 意外いい」
「それで、お兄ちゃんに、電話する? それともやめる?」
「お願いします」
彼女が頬を染めたまま、ぺろりと自分の口の周りを舐めた。