【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「きゃああああ」
わたしは悲鳴をあげていた。
突然にたくさんの「記憶」が頭に入り込んできて、訳がわからなくなってしまったのだ。
だが、それは一瞬のことだ。
すぐに、冷静さを回復できた。
いや、落ち着きを取り戻せたのは、懐かしい匂いとぬくもりに包まれていたからだろう。
わたしは、椅子に座るお兄ちゃんに横抱きにされていた。
「……
声がした。
視線をあげると、すぐそばに、一郎お兄ちゃんの顔がある。
若い……。
最初に思ったのはそれだ。
最後に心に焼きつけたときのお兄ちゃんの顔は、もう六十をすぎて、男性としての渋みと貫禄を備えた年齢相応の姿だったが、いまのお兄ちゃんは、まだ三十代
まだまだ、若いという年齢の頃だ。すでに、圧倒されそうな頼もしさはそのままのような気もするが……。
「わ、若いのね、お兄ちゃん?」
思わず言った。
すると、お兄ちゃんがくすくすと笑った。
「享ちゃんは、もっと変わったな。年齢も八百歳超えか? まあ、見た目の若さは相変わらずだけどね」
お兄ちゃんが言った。
わたしは、自分の身体に目をやる。
そして、やっと思考が整ってくる。
すぐに、記憶も蘇った。
いまのわたしは、エルフ族王家の女長老……。多くの人格が集まった魂の集合体で……。
いや、それよりも、わたしはお兄ちゃんと、前世でお兄ちゃんと結婚して……。
たくさんたくさん愛されて……。
いっぱいいっぱい調教されて……。
最期には、みんなに看取られながら死んだ……。
そうだった……。
その後、ケイラ=ハイエルという女性に話しかけられた。
あれが、死後の世界だったのか、それとも、死の直前のことだったのかは、わからない。
だけど、そのケイラ=ハイエルという異世界の女性だと名乗る人物は、死後の世界に向かうのではなく、そのケイラという女性の中に入り、すでに招魂している他の女性たちとともに、一緒に生きていかないかと誘ってきたのだ。
わたしは、死の直前にお兄ちゃんが、ケイラという女性が話しかけてきたら、それに従って欲しいと言われていたことを思い出した。
わたしは、頷いた。
否も応もない。
お兄ちゃんの命令だ。
それは絶対なのだ。
こうして、わたしはケイラ=ハイエルという女性の一部になった。
この女性は、エルフ族の王族の女性であり、いまの女王であるガドニエルのずっと前の世代の女性になるらしい。すでに表立った立場から身を引いていて、権威のある役職などにはついていないが、一族に影響のある「大叔母」、あるいは「女長老」として、エルフ族の社会では大変な影響力を持っている人物だった。
ある意味、ガドニエル女王そのものよりも、エルフ族の社会の中で力を持っているといっても過言ではない。
そもそも、長命のエルフ族とはいえ、八百歳という年齢が異例なのだ。
しかも、見た目の若さを保ったまま……。
長く、ケイラ=ハイエルの若さは、エルフ族の中でも謎のひとつでもあった。
だが、その秘密が招魂術なのだ。
ケイラ=ハイエルというエルフ族の女長老は、こうやって異世界から生命力を余らせて死ぬ魂を受け入れることで、ずっと生命力を保ってきたのである。
ただし、魂を奪うとか、生命力を不当に搾取するという性質のものではない。あくまで、お互いの合意のもとに融合するのであり、異世界から招魂された魂も、新しい母体のケイラ=ハイエルの中できちんと生きている。
そういう意味では、ケイラ=ハイエルはたくさんの魂の融合体であり、純粋なケイラ=ハイエルは既に存在しないといっていいだろう。
ともかく、こうして、わたしはケイラ=ハイエルになった。
もっとも、正確には、まだ完全には溶け込んではおらず、ケイラ=ハイエルの一部になりつつも、田中享子という人格を保持しているという状態だ。
だが、これも、ゆっくりとした時間の中で、もともとのケイラ=ハイエルという人物の中に溶け込んでいく。
そうやって、これまでに招魂された女性たちも、完全にケイラ=ハイエルになっていたのだ。
そして、あれから、もう二十年くらい経っている……。
わたしは、なぜか、大事な大事なお兄ちゃんと暮らした前世のことを、いまのいままで忘れていて、たったいま思い出したのだ。
どうして、忘れていたのかさえ、わからない。
いや、あれほどの充実した幸せの日々を、なぜ思い出さないでいられたのは不明だ。理由などまったくわからないが、なぜかわたしは、ケイラ=ハイエルに招魂されたのが、十二歳の自分だと思い込んでいて、その後のお兄ちゃんとの人生のことをこれっぽっちも、なかったとこにしていたみたいだ。
わたしは、そのことに愕然としかけた。
そして、ふといま思ったが、改めて認識すると、いまのわたしは、融合されたケイラ=ハイエルの人格よりも、田中享子という意識の方がどちらかというと強い気もする。
これもまた、理由も不明であるものの、もしかしたら、それがわたしが記憶を取り戻した要因なのだろうか?
いや、そんなことはいい。
それよりも、お兄ちゃんだ。
「お、お兄ちゃん、わたし、ごめんなさい……。わ、わからないけど、いまのいままで忘れていて……」
わたしは呆然としつつしながら言った。
こんなことは許されないことだ。
わたしが、お兄ちゃんのことを忘れてしまっていたなんて……。
そして、いまのいままで、お兄ちゃんのことを大切な人であるが、幼いころの小さな恋心の中程度の男のようにしか、見なしていたのである。
まあ、それなりに敬意は示したし、ガドニエルの伴侶として、とりあえず受け入れるつもりではいたが、本来のあるべき姿のわたしの態度としては、随分と冷たい態度だった気も……。
「享ちゃんの困った顔は久しぶりだな。俺が好きな顔だ。だが、再会してすぐに俺のことを思い出さなかったのは残念だ。お仕置きだな」
はっとした。
やっぱり、お兄ちゃんは怒っているに違いない。
だけど、お兄ちゃんがわたしをお仕置きすると言った──。
わたしは、その言葉だけで、股間がじゅんと熱くなるのを感じた。
「もう感じたのか。さすがは、淫乱妻どのだ。さあ、お仕置きのときはどうするんだ? いつまでも服を着てていいのか?」
「わ、わたしをまだ、妻だと呼んでくれるの?」
「妻だろう。左手を見てみろ」
お兄ちゃんが笑った。
自分の薬指を見る。
高校三年生のときにプロポーズされたときにもらったガーネットの結婚指輪……。前世では、ただの一度もそのとき以降外さなかった。
それがある。
わたしは眼を見張った。
「享ちゃんにいまの立場あるように、俺にもいまの立場がある。だから、同じ関係というわけにはいかないが、享ちゃんと俺の絆には変わりない。享ちゃんはすでに妻だ」
かっと身体が熱くなる。
嬉しい。
嬉しい……。
嬉しい──。
お兄ちゃんの妻──。
わたしは、まだお兄ちゃんの妻……。
「わたしの持っている全力を使って、お兄ちゃんを幸せにするよ。ガドニエルとの結婚だってすぐに認めさせてあげる。あらゆるものを使って、お兄ちゃんを助けるわ」
わたしは胸を叩いた。
前世では、ずっとお兄ちゃんに助けられていたばかりだった。わたしはお兄ちゃんに頼ってばかりで、なにひとつ恩を返せなかったけど、このケイラ=ハイエルならお兄ちゃんに少しは役に立てる。
それが嬉しい。もちろん、わたしであるケイラ=ハイエルも喜んでいる。
いずれにしても、わたしも、ケイラ=ハイエルも、狂おしいほどの歓喜に包まれている。
だって、ここにわたしがいて、お兄ちゃんがいる。
わたしは、この世界でもまた、お兄ちゃんと恋ができる。
愛することができる。
二度目の恋――。
二度目の愛――。
いまのお兄ちゃんには、ガドニエルだけじゃなく、たくさんの恋人がいることは知っているが、わたしだって、お兄ちゃんをまた好きになることが許されるのだ。
なんて、素晴らしいのだろう。
「享ちゃんは享ちゃんであればいいよ。ケイラ=ハイエルでもなんでもいい。再会してあの時間の思い出を共有できただけで、すでに幸せだ。改めて、これからの関係を作っていこう」
「うん──」
わたしは大きく頷いた。
そして、ふと気になったことがあった。
「……そういえば、わたしが死んでからどうなったの? 祥ちゃんは? それよりも、お兄ちゃんはどうして?」
訊ねた。
だが、訊ねた直後に、お兄ちゃんは、ラザニエルの魔道によって召喚されて、この世界にやって来たのだったということを思い出した。
ガドニエルの姉であり、随分と長いあいだ行方不明になっていたラザニエルだが、実のところ、彼女こそ、あの希代の闇魔女として悪名を轟かせていたルルドの森のアスカだったことをわたしは知っていた。そのアスカと名乗っていたラザニエルがお兄ちゃんをここに呼び寄せたのだ。
それは偶然だったのかもしれないが、もしかしたら、そうでないのかもしれない。
一度、異世界との繋がりが特定の魂にできると、その近似の魂がこっちの世界に繋がりやすくなる。
わたしが先にこっちに来ていたので、あるいは、わたしと魂が結びついてたお兄ちゃんが、アスカに呼ばれてしまったのかもしれない。
いずれにしても、ラザニエルがアスカだったことは、いまのエルフ族の中では、ほとんど知られていないことだ。
ガドニエルもラザニエルも秘密にしているみたいだが、ケイラ=ハイエルの情報網を舐めてはならない。
わたし、ケイラ=ハイエルは、特別の情報網を使って、それを知った。
そして、その秘密をもって、ガドニエルたちを脅そうさえと思っていた。ガドニエルが恋狂いした人間族の男から、場合によっては、ガドニエルを離そうと考えてもいた。
一族のためだ。
しかし、その相手がお兄ちゃんだったから、その考えは捨てたが……。
「……思い出したわ……。お兄ちゃんはアスカ、いえ、ラザニエルに召喚されたのよね……。でも、若い……」
「異世界を越えた影響かもな。それと、祥子は元気だよ。少なくとも俺が死ぬときには……」
「お兄ちゃんは死んだの?」
「しばらくして病気でね。そして、ラザニエルに呼ばれた」
そうだったろうか……?
なんか、記憶と違うような……。
まあいいか。
お兄ちゃんがそう言うなら、そうなのだろう。
お兄ちゃんの言葉は絶対だ。
それは、いまも前世も変わらない。
「あれ? そういえば、いま、お兄ちゃんは祥ちゃんのことを“祥子”って呼んだ?」
わたしが生きていたとき、お兄ちゃんはずっと祥ちゃんのことを苗字の“丹羽さん”で呼んでいた。
だから、なんとなく違和感があった。
「実は、あれから結婚したんだ……。そのう、祥子に財産を遺したくて……。結婚しないと遺せないしね……。子供たちも賛成してくれたし……」
兄ちゃんがちょっと、ばつが悪るそうに言った。
もしかしたら、お兄ちゃんはわたしがやきもちでも焼くと思ったのか?
とんでもない──。
大賛成だ──。
お兄ちゃんと祥ちゃんが結婚──。
わたしもお祝いしたかった──。
「いえ、よかった。嬉しいよ。お兄ちゃん。本当によかった」
わたしは言った。
すると、お兄ちゃんがわたしをすとんとおろして、床に立たせた
「それよりも、随分と離れていたから、しっかりと躾を忘れたみたいだな。俺はさっき裸になれと言ったはずだ。いつまで服を着ている──」
お兄ちゃんがちょっとだけ大きな声をあげた。
「あっ、はい──。ごめんなさい──」
わたしは慌てて、身にまとっていた服を脱ぎ始めた。
すると、お兄ちゃんが右手を伸ばして、テーブルの上の一輪のモッコウバラを手に取った。
あれは――。
さっき、お兄ちゃんが使った不思議な術……。
そういえば、なぜか、あの花をお兄ちゃんが触ると、わたしの身体が反応してしまい、信じられないくらいに呆気なく昇天させられて……。
「早くしろ。さもないと罰を追加するぞ」
お兄ちゃんが笑いながら、指でばらの花をいじくった。
「ひんっ」
その瞬間、股間から突き抜けるような快感が迸った。わたしは腰が抜けそうになり、膝を落としかけた。
まさに、お兄ちゃんが愛撫する指の刺激に間違いない。
あれだけ、何十年もお兄ちゃんにしつけられた快感は、ちゃんと身体が覚えていた。
「ちゃんと、立て。さっさと脱げ」
今後は、お兄ちゃんは、ぴんと指で茎を弾いた。
「ひぎいっ」
次はクリトリスを叩かれた衝撃が股間を貫く。しかも、下腹部の奥の深い部分を叩かれた感じだ。
強い力ではなかったと思うが、身体の内側から与えられるクリトリスへの刺激は凄まじかった。
わたしは、あまりもの衝撃に、股間を両手で押さえて絶叫してしまった。
「二十数えるあいだに全裸にならないと、この花に電撃を流す。多分、七転八倒すると思うぞ。あっ、魔道は禁止な。自分の手で脱ぐんだ」
お兄ちゃんが笑って、宙から取り出すようにして、一本の指揮棒のようなものを取り出す。
そして、わたしに見せつけるようにして、棒の手元を指で押すような仕草をした。
すると、棒の先でバチンと大きな音がして、一瞬だけ火花のようなものが飛んだと思った。
もしかして、あれは電撃鞭?
そして、あの電撃鞭を花に当てたら、花に加わった電撃が股間に襲いかかるの?
ぞっとした。
「ほらほら、十九……十八……十七……」
お兄ちゃんが数をかぞえだす。
しかし、エルフ族の高位貴族の女の服は簡単に着脱できるようにできていない。わたしだって、ケイラ=ハイエルになってから、ひとりで服を着たことも、脱いだこともない。
それなのに、たった二十のあいだに全裸になれるわけがない。
「ま、待って、お兄ちゃん――。脱ぐ――。脱ぐから、かぞえるのは待って――」
わたしは、必死に手足を動かしながら、お兄ちゃんに哀願した。
しかし、お兄ちゃんは返事の代わりに、にこにこしながら、数をかぞえ続ける。
とにかく、わたしは、引きちぎるように、身につけているものを外し続けた。
「……もう時間がないぞ。一発目はどこに打ち込んで欲しい? やっぱり、クリトリスは王道か? まあ、強さは手加減してやるよ……。さて、十二……十一……」
お兄ちゃんが花と電撃鞭を左右の手に持って、愉しそうに数字を数える。
わたしは必死にドレスの留め具や紐を外していく。
とても間に合いそうにない。
わたしは泣きそうになった。
それにしても、やっぱり、お兄ちゃんは意地悪だ。
本当に本当に意地悪だ。
意地悪で、意地悪で、意地悪だ――。
*
山◯百恵シリーズの次は、中◯明希?
とっとと締めるつもりでしたが、執筆時間として確保できた一時間半で打った範囲で投稿してます。まとめる時間はありませんでした。時間がないと、締めるのはきついです。
従って、もうちょっと続きます。