※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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591 国境からの帰還者

「んあっ、なっ、なに、なあっ、ああっ」

 

 鼻が一瞬塞がれて、息が苦しくなった享子がもがきだし、そして、やっと目を覚ます。

 だが、拘束に阻まれて、手首を首から動かせないでいて慌てている。

 一方で、一郎は、その享子が混乱している姿を眺めながら、自分の服を出現させて、身に着けていった。

 そして、享子がやっと完全に意識を取り戻す。

 

「きゃあああ、な、なにこれ──。これなんなの──? もしかして、お兄ちゃん?」

 

 まだ、床にお尻をつけたままだが、自分の身体に書かれているたくさんの卑猥な文字に、享子は仰天して悲鳴をあげた。

 一郎は大笑いしてしまった。

 そして、一郎自身は完全に服を整え、あられもない姿のうえに、あり得ないような恥辱的な仕打ちに全身を真っ赤に染めている享子の首輪に、仮想空間術で取り出した鎖を繋げた。

 

「さあ、みんなのところに戻るぞ、享ちゃん」

 

 一郎は首輪の鎖を引っ張って強引に立たせる。

 享子はあまりの羞恥に、うまく頭が働かないみたいだ。「ひっ、ひっ」と声を出すだけで、言葉らしいことをなかなか喋らない。

 だが、一郎が仮想空間の外に出ようとしているのを悟ったのか、すぐに焦ったような顔になって口を開いた。

 

「ま、待って、お兄ちゃん──。こ、こんな格好じゃあ、戻れない──。そ、それに、この変な落書きって……」

 

「戻れないことはないだろう。それに、俺は言ったはずだぞ。服を破ったら、裸で帰るしかないってね。服を切断してぼろ切れに変えたのは享ちゃんだ」

 

「そんな問題じゃあ……」

 

 必死に拒絶しようとしている享子だが、一郎は享子の股間からかなりの量の愛液があっという間に噴き出て、すでに膝近くまで伝い垂れていることに気がついていた。

 仮想空間の中でやった数十年の調教は、しっかりと彼女の身体に染みついてしまっているたみたいだ。

 口では色々と言うが、享子は一郎のこういう恥辱的な責めが大好きなのだ。いや、頭では拒否するが、身体は淫らに反応するように何十年もかけて調教した。

 それが、享子という女だ。

 

 一郎は、仮想空間を脱して、現実空間に戻った。

 仮想空間の中でどんなに時間が経っても、元の時間と空間に戻ることができる。一郎は、仮想空間の中に転移直後の小面談室に帰ることを念じた。

 

「あら、お帰りなさい、ご主人様……。お早い、お帰りで……。ええっ?」

 

 戻ったとき、目の前にいたのはスクルドだった。

 スクルドは、全員分のお茶を入れようとしていたみたいで、部屋の隅でその作業をしていた。

 一郎が転移の場所を部屋の隅にしようと考えたので、すぐそばになったのだ。

 また、ほかの女……ガドニエル、ラザニエル、コゼは部屋の中央側のソファに腰掛けている。

 

「ええっ、ええっ、ええっ」

 

 スクルドは目を丸くしている。

 また、向こうにいる女たちも、驚きの声を出した。

 

「きゃあああ、見ないでください──」

 

 享子が悲鳴をあげてしゃがみ込もうとした。

 だが、一郎がそれを許さない。

 しっかりと首輪についた鎖を握って、それを阻む。

 すると、享子は身体を曲げて、全身を隠そうとした。

 

「じっとしてろ、命令だ──」

 

 一郎はちょっと強く一喝した。

 享子が驚いたように身体をびくりとさせ、次いで、抵抗の力を抜いた。

 やっと、素直に身体を前に向ける。

 

「うう……。お兄ちゃんの意地悪……」

 

 享子が顔を俯かせたまま、恨めしそうに言った。

 だが、実はさらに欲情している。

 一郎は淫魔術でそれを見抜いていた。

 さすがは、一郎が躾けたマゾ女だ。

 それにしても、物言いも完全に享子の口調だ。女長老としてのケイラ=ハイエルだったら、さっきの悲鳴ももっと違う感じだったと思う。

 

「ええ、大叔母様──?」

 

「ふっ、しっかりと調教して戻るとは持ってたけど、こりゃあ……」

 

「ご主人様……」

 

 ガドニエル、ラザニエル、コゼも寄って来て、一郎たちを囲む。

 享子がますます恥ずかしそうにした。

 

「ほら、改めて自己紹介しろ、享ちゃん。俺のなんだ?」

 

 一郎は強く言った。

 享子が真っ赤な顔をあげる。

 

「お、お兄ちゃん……いえ、前世でロウ様の妻だった田中享子……、いまは、ケイラ=ハイエルです……」

 

 享子は言った。

 ケイラ=ハイエルという女長老の中に、田中享子という一郎の従妹の魂が入っていることは、仮想空間に入る前に全員に説明した。

 だから、それについては、誰も驚いてはいない。

 しかし、一郎は、ぴしゃりと享子の尻たぶを叩いた。

 

「きゃっ」

 

「俺のことは“お兄ちゃん”でいい。それよりも、ただの妻か? それとも、また躾け直さないとだめか──?」

 

「ああ、ごめんなさい、お兄ちゃん……。お兄ちゃんの奴隷妻の享子、そして、ケイラ=ハイエルです」

 

 享子が言った。

 周りを囲む女たちが絶句している。

 

「ま、まあまあ、ケイラ様ではなく、享子さんになったのですね。よろしくお願いします。スクルドですわ。改めて紹介させていただきます。ご主人様の雌犬淫乱魔道師です」

 

 スクルドがにこにこして言った。

 雌犬淫乱魔道師か……。

 まあいいか……。

 

「コゼです……。あのう……、前世の妻って?」

 

 コゼがきょとんとしている。

 一郎の昔のことは、コゼにも、エリカにも語っているので、結婚などしていないはずだということを覚えているのだろう。

 コゼは不思議そうな顔になっている。

 

「前世の妻だ。察しろ」

 

 一郎はそれだけを言った。

 なんとなく怪訝そうな表情ながらも、コゼが頷いた。

 

「それにしても、悪趣味な……。仮にも、エルフ族の女長老なんだけどねえ……。お前、ここまでしろとは……」

 

 ラザニエルが享子の全身の身体にある落書きや、まだ顔に残っている一郎の精液をしげしげと眺めて言った。

 すると、享子がラザニエルに視線を向ける。

 急に、しっかりとした強い視線になっている。

 

「ラザニエル──。わたしは、ケイラ=ハイエルでもあるけど、ここにいるお兄ちゃんの奴隷妻だった田中享子でもあるわ。お兄ちゃんの批判は許さない。ましてや、“お前”呼びなど──。ラザニエルこそ、わきまえなさい──。お兄ちゃんに救ってもらったんでしょう──」

 

「えっ?」

 

 ケイラを庇う言葉を使ったラザニエルだったが、逆に、当人のケイラ、つまり、享子に叱咤されて、戸惑っている。

 一郎は思わず小さく笑った。

 それにしても、享子は享子なのだが、やはり、ケイラ=ハイエルでもあるのだと思った。

 いまの叱咤の口調や強い態度は、“田中享子”ではなく、紛れもなくケイラ=ハイエルだった。教師をしていた時代の享子も、ほかの者には態度も強かったようだが、少なくとも、一郎はこういう享子は見たことはない。

 だから、ケイラの方だろう。

 

「とにかく、わたしは、このお兄ちゃん……ロウ=サタルスという人物を受け入れました。全面的に協力しましょう。ガドニエルとの結婚について、エルフ王族だけでなく、エルフ族の高位貴族の者たちの意見をまとめ上げてあげます。任せなさい」

 

 さらに享子がケイラ=ハイエルとしての言葉を言った。

 ラザニエルは、圧倒された感じで、「よろしく頼む」と口にする。それにしても、全裸で首輪手錠で拘束された姿で、さらに、全身に落書きを悪戯をされた状態で告げる言葉ではないだろう。

 折角のエルフ女長老としての貫禄が台無しだ。

 そう考えると、一郎はちょっとおかしくなった。

 

 そのとき、何気なく、がさごそと物音がしたので、そっちに視線を向けた。

 すると、ちょっと離れて距離をとったらしいガドニエルが、なぜか服を脱ぎ始めている。

 一郎は面食らった。

 

「わっ、なに?」

 

「なにしてるんだい、ガド?」

 

 気がついたコゼとラザニエルも驚いたみたいだ。

 

「だ、だって、大叔母様だけ、羨ましいですわ。わ、わたしも辱めてください。その身体に字を書いて……。それ、ご主人様ですよね? ぜひ、お願いします──」

 

 ガドニエルが羨ましそうな表情で頬を染めて叫んだ

 一郎は唖然としたが、一郎の横でぱちんと手を叩く音がした。

 

「まあ、それは面白いですね。やりましょう」

 

 スクルドだ。

 今度はスクルドも嬉々とした声をあげた。

 一郎は呆れてしまった。

 

 とにかく、訳のわからない反応をしたガドニエルとスクルドをとめる。

 そのとき、不意にラザニエルとガドニエルのあいだに球体が出現した。

 

「伝言球……? しかも、最重要の緊急案件?」

 

 ラザニエルが訝しんだ口調で言った

 伝言球というのは、魔道遣いたちが通信連絡に使う魔道であり、シャボン玉のような球体を通信をした相手に言葉を込めて転送で送るというものだ。

 ラザニエルが球体を指で突く。

 すると、透明の玉が弾けて“声”が発生した。

 

 

“ハロンドール王国の国境に向かっていた護衛隊のふたりが帰還しました。いまは危険なので、処置が終わるまでは処置室に収容させました。映像を出します”

 

 

 声は言った。

 エルフ王宮を警備する女王直属の親衛隊の女のひとりの声だ。

 国境に向かっていた護衛隊のふたりというのは、国境で一郎の帰還を待ち受けて捕獲するという任を帯びたという、シャングリアの大叔父と交渉に行かせたエリカたちと同行をしたエルフ族の女兵のことだろう。

 

 強引に突破することも考えたが、スクルドからの情報により、待ち受けているのが、シャングリアの大叔父というモーリア男爵と傭兵団だとわかり、とりあえず、シャングリアを連れて交渉に行かせてもらうことにした。

 冒険者ギルドを使って、その連絡をつけたのはイライジャだ。

 シャングリアと同行したのは、イライジャとエリカとアルオウィンであり、さらに、親衛隊の女兵ふたりにも一緒に行ってもらった。

 移動には、エルフ族王家だけが密かに管理している移動術の転送施設を使わせてもらったので、それを辿って進めば、一日程度で国境まで辿りつく。ふたりの女兵が同行したのも、ガドニエルの提供した移動術設備の操作に、どうしても彼女たちが必要だったからだ。

 戻って来るには、早いなとは思ったけど、時間的には不自然ではない。

 

 だが、なぜ、女兵の帰還について報告があったのだろう?

 戻ったなら、ガドニエルやラザニエルには、アルオウィンから、一郎には、イライジャたちから説明しに来るはずだが、身の回りの世話役のつもりで同行させた女兵の帰還として報告があがったのはなぜだろう?

 しかも、いま、危険であると言ったか?

 

「とにかく、映像を出せ。あっ、こっちの映像は繋げるな。いま、魔道を送る」

 

 ラザニエルが手に水晶玉のような球体を出現させて、それに向かって叫んだ。

 あれも、通信設備なのだろう。

 

“出します”

 

 再び通信球が出現して、今度は誰も触れることなく声を発した。

 宙に映像が出る。

 

「……どうかしたの、お兄ちゃん?」

 

 享子が小さな声で言った。

 一郎は簡単に事情を説明した。

 ……とはいっても、なにが起きているのか、一郎にも見当はつかない。

 

「えっ?」

「あれ?」

「なに?」

 

 全員から一斉に声が出た。

 映像に現れたのは、あちこちが焦げたり千切れたりしたぼろぼろの軍服ふたりの姿だった。

 ふたりとも、疲労した様子で床にしゃがみ込んでいる。

 大きな怪我はしていないみたいだが、小さな傷は顔や腕など、見える部分にはいくつかある。もしかしたら、見えない場所だともっとあるのかもしれない。

 

「どうしたんだ?」

 

 一郎も声をあげた。

 

「な、なにが起きたのか、あたしたちもわからなくて……」

 

「あたしたちは、アルオウィン様たちから引き離されて、交渉が終わるまで待機していたのですけど、突然に大勢の人間の傭兵たちに殴られて……」

 

 ふたりが語り始めた。

 それによれば、シャングリアやエリカとはじめとする一行は、無事に国境に辿りついて、国境沿いの森林内に一隊を展開させていたモーリア男爵軍との接触に成功したようだ。

 そして、シャングリアとモーリア男爵が面談して、お互いの話し合いになったということだった。

 ただ、女兵のふたりについては、話し合いには参加せず、随行ということで準備された天幕で待たされたらしい。

 その後、それなりの時間が経ち、突然に天幕に傭兵たちが雪崩れ込んできて、いきなり女兵たちを殴りだしたという。

 

「殴りだしたって……。抵抗しなかったのか?」

 

 一郎は横から訊ねた。

 女兵にはすぎないが、一郎の護衛隊には、全員に一郎の精を注いでいる。淫魔師の恩恵によって、全員が一騎当千の戦力のはずだ。

 傭兵程度にやられるわけがない。

 

「し、しようとしたんですけど、アルオウィン様が傭兵たちと一緒にいて、あたしたちに抵抗するなって……」

 

「本当に、わけがわからなくて……」

 

 一郎の言葉にふたりが泣くような声を出した。

 

「アルオウィンが? なんで?」

 

 ガドニエルが呆気にとられている。

 ラザニエルも首を傾げた。

 

 確かにおかしい……。

 向こうでなにが起こったのだ……?

 

「それと、これを……。そして、ジャスランという向こうの傭兵隊長のような女性から伝言も……」

 

「ジャスラン?」

 

 声をあげたのはスクルドだ。

 一郎は、その名前が、スクルドがこっちにやって来るとき、最初に同行していたが、ちょっともめて、国境で別れたというサキの部下の雌妖であることを思い出した。

 ただ、人間族の外観らしく、スクルドと一緒にいたときも、人間族で通したとも言っていた。

 ただ、そのスクルドの言う“ちょっとした揉め事”というのは詳しくは聞いていない。

 何度か訊ねたが、その都度はぐらさかされて、そのままだ。

 

 映像の中に、ふたりが横に置いていたものが動かされて、画像の中に現われた。

 それは、何枚かの女性の服だった。

 

「ちょ、ちょっと、それって──」

 

 コゼの声だ。

 一郎も、それが、ここを出発するときに、エリカとシャングリアとイライジャが身に着けていたものであることがわかった。

 しかも、下着まである。

 一郎が彼女たちに好んではかせている、「紐パン」というやつだ。胸当てまであった。

 それが三人分ある。

 つまりは、その三人のはいていたものということか……?

 

「伝言とはなんだ?」

 

 ラザニエルが声をあげた。

 すると、女兵のうちのひとりが口を開く。

 

「……そのう……、スクルド殿が向こうに来いと……。ひとりで……。さもなくば、スクルド殿の仲間の女の命はないと……」

 

 そのとき、一郎は初めて、ふたりの首に奇妙なものがあることに気がついた。

 細い肌色の首輪だ。

 色が目立たないので気づくのに時間がかかったが、それなりに太い。

 一郎も、プレイで首輪は使うが、あれには見覚えはない。

 

「お前たち、もしかして、それは炸裂環か?」

 

 ラザニエルが映像に向かって言った。

 一郎は、それはなんだと、横の享子に訊ねた。

 すると、魔道具であり、なんらかの仕掛けによって爆発するようになっている首輪だという。

 犯罪者や捕虜などに使うものだということだった。

 一郎は、やっと、そのふたりが直接に報告するのではなく、映像で報告をさせることになった理由がわかった。

 

「まあまあ、ジャスランったら、まだまだ、お仕置きが足りなかったのですね。これは、困りましたねえ……」

 

 スクルドが横で笑い出した。

 だが、その表情は実は真剣だ。にこにこと笑っている顔の裏には、スクルドのいつにない焦りのようなものが隠れていることに、一郎が気がついた。

 

「あんた……黙ってたけど、なにやってきたのよ? 随分と怒らせているみたいだけど」

 

 コゼがスクルドに言った。

 すると、スクルドが顔に満面の笑みを浮かべた。

 

「まったく問題はありません。責任をもって片付けてきます。エルフ王家とは別に、わたしもまた、移動術の仕掛けを作ってきたんです。向こうまでひとっ跳びですわ」

 

 スクルドが胸を叩いた。

 

「待て──」

 

 一郎は叫んだが、そのときにはもう遅かった。

 スクルドの姿は、一瞬にして消滅していた。

 おそらく、連続移動術とやらで、国境に向かったのだろう。

 一郎は舌打ちした。

 

「ちっ、出動準備だ。ガド、支度しろ。コゼもだ。ラザ、護衛隊の全員に出動を発してくれ。準備でき次第に出る……。享ちゃん、悪いけどちょっと片付けてくる。また、そのうちに、来るから」

 

 一郎は一気に言った。

 同時に、享子の身体からおかしな落書きや首輪を消滅させる。

 淫魔術だ。

 

 女たちが動き出した。

 

 

 

 

(第3部・第2話『交渉を待ちながら』終わり、第3話に続く)

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