※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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【お断り】
 本回と次回には、SMの領域を多少?越える残酷シーンがあります。


 *




593 恨み骨髄に達して

「くっ」

 

 エリカははらわたが煮え返る思いをしながら、ジャスランの足を舐め続けた。

 ロウに支配されていることによる護りを無効にする支配具というのが信じられないが、現にエリカは、ジャスランが手に握っている「洗脳球」という支配具によって操られ、ジャスランの言葉に従い、彼女が自分の足に落とした水を舐め取るという作業を延々とやらされている。

 

 いや、これは操りによる支配とは違うかもしれない。

 エリカの頭は、まったく操られていない。

 操られているのは、首から下の身体の部分だ。

 ジャスランの言葉の通り、あの洗脳球は、ジャスランの言葉をエリカの脳からの指示として肉体に伝える道具なのだと思う。

 だから、ロウの護りが無力化されているのだ。

 なにしろ、ロウに守られているエリカの「心」の部分には、まったく影響を与えてない。

 影響を受けているのは、身体の部分だけだ。

 それにしても、魔力を持つ存在限定とはいえ、こんなに危険な魔道具が存在するとは……。

 

「うまいじゃないのよ。ご主人様に仕込まれているのかい? ほら、今度はここよ。お舐め」

 

 ジャスランが座っている自分の椅子の脚のあいだに、新しい水を垂らした。

 一瞬だけ、顔をあげる。

 すると、ジャスランの顔には酷薄な笑みが浮かんでおり、相変わらず手に水晶玉のような洗脳球を握っている。

 

「うくっ」

 

 ぐんと首が引っ張られるように、顔が床に貼りついた。

 顔が床にくっついて、舌が勝手に床の水を舐め始める。

 

「ふふふ、みっともないエルフの姿だねえ。だけど、美人は得だねえ。お前が尻をあげて床を舐める姿を人間族の男たちが見て欲情しているよ。もっと見せつけてやりな。膝を曲げずに伸ばすんだ」

 

「な、なにを──」

 

 抗議の声を出そうと思ったが、顔が床についたまま、ぐいと膝が伸びて、極端に身体を曲げ倒した前屈の姿勢になる。

 こんな下着同然の格好で、こんな破廉恥な姿を晒させられるなど……。

 おおという喚声があちこちから起こって、エリカは屈辱で身体が真っ赤になるのがわかった。

 

「いやらしい恰好じゃないかい、エリカ。私の性奴隷になるかい? だったら、事が終わるまで檻車に閉じこもっていることを許すけどね」

 

「ふ、ふざけんじゃ……。わ、わたしの……、ご、ご主人様はロウ様だけよ……」

 

 エリカは床を舐めながら吐き捨てた。

 

「ははは、まあいいさ。とにかく、お前の任務は、そのご主人様を殺すことだからね。いまから命じておく。必ず殺すんだ。スクルドのいる前でね」

 

 すると、ジャスランの笑い声が響いた。

 エリカは鼻白んだ。

 だが、これはなんとかしないとならないだろう。

 あの「洗脳球」がある限り、エリカの手足は、ロウを殺すために動くに違いない。それをエリカの頭は阻止できない。

 すでに自死も、ジャスランに抵抗することも、檻車の位置で、この洗脳球を使って禁止された。いまのところ、それを打ち破る有効な方法を思いつかない。

 床を舐めているエリカの背中に冷たい汗が流れる。

 

「お待たせしました、ジャスラン様」

 

 そのときだった。

 誰かが近づき、ジャスランとエリカのいるテーブルの横に立つのがわかった。

 声からすると年配の男風であり、身につけている靴とズボンから、傭兵ではなく男爵軍の正規軍人ではないかと思うが、エリカの視線では、それ以上はわからない。

 

「おう、準備できたのかい。じゃあ、座っていい、エリカ。お前の食事だよ」

 

 ジャスランの言葉により、エリカは窮屈な姿勢からやっと解放された。

 与えられた屈辱にかっと血が昇るのを自覚しながら、エリカはジャスランを睨みつけた。一方で、エリカの身体については、大人しくジャスランが指さした向かいの席に座っている。

 

「あっ、男爵」

 

 そこにいたのは、モーリア男爵だった。

 まるで給仕をするように、テーブルの横で皿を持って立っている。

 

「男爵、シャングリアをどうしたんです? あなたの養女ですよね。先代の男爵の愛娘ですよ。あんなことをするなんて──」

 

 エリカはモーリア男爵に向かって怒鳴った。

 最初にジャスランに捕らえられたとき、モーリア男爵はジャスランに指示されて、何の躊躇もなく、シャングリアの手足の骨を部下に折るように命じていた。

 それから、そのままどこかに連れていったが、国王の命令によって、ジャスランに従うように指示されているのか知らないが、一族の女であるシャングリアをそんな目に遭わせるというのが信じられないでいた。

 ましてや、モーリア男爵とシャングリアは、親娘の血は繋がっていないが、先代の男爵が早世しなかったら、このモーリア家はシャングリアが婿をとって継いでいた、あるいは、そもそもシャングリアが男だったら、シャングリアこそ、モーリア男爵だったのだという事情についても、エリカも耳にしていた。

 だから、そのことを訴えたのだ。

 

「エリカの前に置きなさい、男爵」

 

「わかりました」

 

 しかし、男爵はエリカの声などまったく聞こえていないかのように、エリカの座るテーブルの前に、皿に載った料理を置いた。

 エリカは、やっと男爵の様子が不自然であることに気がついた。

 

「男爵を操っているの?」

 

 ジャスランを見る。

 すると、くすくすと彼女が笑った。

 

「あいつがいいものを残していったからね。潜伏に役立つ魔道を刻んだ指輪を全員に配る手配をして去っていったんだけど、私は、私の命令に従うだけの物を考えない人形のような状態にする魔道陣に変更してやったのさ。お前たちと親しく交渉しろというような命令を与えておけば、ちゃんと会話はできただろう? しかし、普通の状態では無理だよ。お前の言葉なんか耳に入らない」

 

 あいつが残していった……?

 スクルドのことだと思ったが、なんらかの支配具を男爵たちにさせているのか? 洗脳球とは違うみたいだけど……。

 まあ、洗脳球は、魔道を遣える者にしか効かないと言っていたから、男爵たちや大部分の人間族には効かないのだろうが……。

 エルフ族とは異なり、人間族では魔道が遣えるのは少数だ。

 

 そして、エリカは男爵の指のひとつに、大き目の飾りのついた緑色の指輪があることに気がついた。

 周囲を見渡すと、少なくとも視界に入る全員が同じ指輪をしている。

 あれを使って、このモーリア隊の全部を支配しているのか?

 やっと、なぜ男爵たちが、このジャスランに召し使いのように従っているのか理解した。

 

 だが、だったら、これもまた、スクルドが遠因?

 エリカは、さらにスクルドに対して腹が立ってきた。

 

「とにかく、口にするといい。戦ってもらわないとならないから、戦士たちには飢えさせはしないよ。あの黒エルフは戦場に出すほどの能力はないようだし、死なない程度に弱らせるつもりだから、食い物なんて与えないけどね」

 

 イライジャのことだと思った。

 生きてはいるのだ。

 

「イライジャやアルオウィン、シャングリアは無事なんでしょうねえ。なにかしたら、承知しないわよ」

 

 エリカは怒鳴った。

 すると、ジャスランが大笑いした。

 

「どう承知しないんだい、エリカ? いまここで、自分の首を死ぬまで締めるように命令してやろうか? 首を絞めて死ぬのはみっともないよ。鼻水も涎も小便も、ときには、糞だって垂れ流しながら死ぬんだからねえ」

 

 ジャスランが笑いながら言った。

 エリカは歯噛みした。

 

「それよりも、シャングリアだったら、もうすぐ会えるさ。今日の催しの準主役だしね」

 

「催しの準主役?」

 

 エリカは訝しんだ。

 そして、そう言えば、この大天幕に集まっている傭兵たちの全身が正面に作られているステージのような台に身体を向けるように座っていることに気がついた。

 ほとんどが酒のようなものを前に置いているが、食事はしていない。

 別に食事のために、彼らはここにいるわけではないのだ。

 

 また、エリカとジャスランの座るテーブルは、大天幕のほぼ中央にある。エリカの椅子も、ジャスランの椅子も、ステージに身体を向けるように配置されていた。

 また、ここだけは、周囲のテーブルと距離が置かれていて、ぽっかりと開いている空間にぽつんとテーブルがある感じだが……。

 

「シャングリアの出演の支度はできている、男爵?」

 

「い、いつでも……」

 

 男爵が優雅にお辞儀をした。

 改めて観察すると、明らかに態度がおかしい。どうして、最初に会ったときに気がつかなかったのだ。

 森の中で最初に対面したときに、男爵たちの異常さを発見していれば、この雌妖の支配に陥らなくてすんだのに……。

 

「じゃあ、食べなさい、エリカ。お前のために準備した食事よ。精がつくように特別に調理させたのよ。食べ終われば、シャングリアに会わせるわ」

 

 拒否しても仕方がないだろう。

 毒が入っているとしても、ジャスランは簡単に、エリカにこれを食べさせることができる。

 それに、ジャスランは、エリカたちにロウと戦わせて、同士討ちをさせたいという考えがあるみたいだ。殺しはしないはずだ。

 エリカは、とりあえず、目の前の皿に注目した。

 

「な、なによ、これ──」

 

 声をあげた。

 皿に載っているのは、どう見ても、人間の男根としか見えないものだった。茹でた肉の腸詰めのかと考えたが、かたちがペニスにしか見えない。

 エリカの当惑にジャスランが満足そうに笑った。

 

「お食べ。お前のものだよ」

 

 ジャスランの声には、酷薄そうな響きがった。

 

「……こ、これはなによ……」

 

「見ての通り、ペニス料理よ。香草で味をつけて、柔らかく煮させたわ。私はとても味見をする気になれなかったけど、料理を命令した男は結構いけると言っていたわね」

 

 喉の奥に苦いものが込みあがった気がした。

 なんとか平静を保ちながら、さらに訊ねる。

 

「もちろん……動物のものよね……。それとも、魔物……?」

 

 気がつくと声がかすれていた。

 ジャスランがわざとらしく、驚いたように目を見開く。だが、頬には明らかに愉悦が浮かんでいる。

 

「もちろん、人間族の男に決まっているでしょう。この隊の料理人は、これを作るために、部下ふたりを処分しないとならなかったのよ。彼らの死を無駄にしないために、食べないとだめよ、エリカ」

 

 吐き気を催して、エリカは下を向いた。

 顔から血が引くのがわかった。

 

「む、無理……」

 

 エリカは下を向いたまま首を横に振った。

 だめだ……。

 吐きそうだ……。

 

「食べるのよ、エリカ……」

 

 ジャスランが身じろぎした。

 慌てて顔をあげると、手に洗脳球を握っている。

 エリカは顔から血が引くのがわかった。

 

「や、やめて──。命令しないで──」

 

 声をあげた。

 そのとき、ずっと横に立っていた男爵がジャスランに向き直った。

 

「そ、そのことですが……無暗に部下を殺すのはやめてもらいたい。部下はあなたの玩具ではないのだ……」

 

 顔が真っ赤になって、身体が震えている。

 信じられないくらいに汗が全身から滴っている。

 

「へーえ、洗脳の魔道陣を刻み直した指輪の支配から逃れられるの? 気力を振り絞って、理性を取り戻したのね。案外に人間族もやるわね」

 

 ジャスランが感心したように微笑んだ。

 だが、相変わらず、その笑みは冷たい。

 

「男爵、しっかりして──。自分を取り戻して──」

 

 エリカは声をあげた。

 

「だけど無駄よ。強く魔道を込め直すわ」

 

 ジャスランが自分の指にある指輪に反対側の手を置いた。

 大量の魔力が注がれるのがわかった。

 すると、男爵の顔から表情が消滅して、能面のような顔になった。

 

「なにか、言いたいことがあるの、男爵?」

 

 ジャスランがモーリア男爵に視線を向けた。

 

「ありません、ジャスラン様」

 

 今度はまったく感情のこもっていない、抑揚のない口調だ。

 エリカはがっかりした。

 

「いいわ。食事がいやなら、その気にさせるだけね。強引に洗脳球で命令してもいいけど、自分で食べさせるわ。そこに座ってなさい……。男爵、見世物を出しなさい」

 

 ジャスランの言葉に、男爵が一礼をして立ち去っていく。

 なにが始まるのだろうと思ったが、しばらくすると、大天幕の天井から吊るしてある照明が落とされた。

 周囲の傭兵たちの酔った声が鎮まる。

 

 次の瞬間、正面のステージ台が明るくなり、裸の女が天幕の外から縄で引きずられて連れ込まれた。

 

「シャ、シャングリア──」

 

 エリカは立ちあがった。

 それは、哀れな姿のシャングリアだった。

 

「座りなさい──。命令よ。指示なく口を開いてもだめ。お前は黙って、見世物を見てなさい」

 

 ジャスランが洗脳球を握ったまま言った。

 エリカの身体がすとんと椅子に座り直す。

 

 全裸のシャングリアは、脚の骨を折られて歩けず、両手首に縄をかけられて、三人ほどの男たちに引きずられるようにして、台上に連れてこられた。

 いつの間にか、ステージには太い柱があり、シャングリアはそこに立たされて、革紐で柱に固定されていく。

 そして、シャングリアには、足首から首まで二十本ほどの革紐がかかり、柱に背もたれしたまま、まったく身動きできないようにされてしまった。

 また、シャングリアの手足は紫色に変色していて、拘束されてない両腕はだらりと垂れるだけでほとんど動いていない。

 それだけではなくて、シャングリアの全身のあちこちには、殴られたり蹴られたりしたような痣がある。

 

 また、それで気がついたが、シャングリアの裸身には、たくさんの白いどろりとした液体のようなものがついている。髪の毛にも……。

 あれは、まさか……。

 

「シャングリア、思ったよりも元気そうね。モーリアの兵に輪姦させようと思ったけど、お前たちの身体にはおかしな護りがあるらしく、残念ながら性器も淫具もつっこめなかったと報告があがっているわ。だから、精液をかけまくれと指示し直したんだけど、やっぱり、それくらいじゃあ、めげないわね」

 

「ふ、ふん……。あ、あれくらい……。ぬるいさ。ロウの調教の方が……堪える……」

 

 ジャスランがテーブルから、ステージのシャングリアに呼び掛け、シャングリアが返した。

 やっぱり、あれは男の精液なのかと、エリかは思った。

 輪姦させようとしたが果たせなかったというのは、ロウがエリカたちに施した、淫魔術による護りのことだろう。

 エリカたちの身体には、ロウの紋様が刻まれていて、ロウ、あるいは、ロウに支配された仲間以外との性行為を受けつけないようになっている。

 それについては、ジャスランも手が出せなかったのだと思った。

 

「ああ、エリカ……。い、生きて……たか……。よかった……」

 

 シャングリアがエリカを認めて笑った。

 しかし、その笑みも苦しそうだ。

 エリカも言葉を返したかったが、ジャスランの洗脳球の影響で口を開けない。

 

「ま、また、操りかい……。卑劣なことが好きだね、ジャスラン」

 

 シャングリアがジャスランを睨んで言った。

 すると、ジャスランが鼻を鳴らした。

 

「それだけ、恨み骨髄に達してんだよ。恨むなら、お前の仲間のスクルドを恨むんだね。始めな──」

 

 ジャスランの言葉でステージの横に待機していたモーリア隊の兵らしき者が動き出す。

 シャングリアが立たされている柱に、さらに横木が取り付けられて、シャングリアの両手が真横に伸ばすように伸ばされ、さらにたくさんの革紐で拘束されていく。

 

「う、うう……」

 

 折られた腕を動かされるのは激痛らしく、シャングリアが大きな呻き声をあげた。

 シャングリアの両腕が真横に伸ばすように固定された。

 そして、最後にシャングリアの右腕の手首、肘上、最後に肩の近くに、肌色の輪っかが装着される。

 

 なんだろう、あれ?

 

「さて、シャングリア、見世物の始まりだ。まずは手首だ……。実は、ここにいるエリカが食事をするのを拒むんだよ。だから、その気になるように、手首をふっとばさせておくれ。それでも、エリカが食べないなら、次は肘、最後に肩から下を飛ばす。それが終われば、反対側さ……。ああ、ちゃんと治療師は準備しているから問題ないよ。あっという間に止血してしまうからね」

 

 ジャスランが言った。

 言っている言葉の意味が理解できなかったが、ジャスランがぱちんと指を鳴らした。

 次の瞬間、肌色の環を巻かれたシャングリアの右手首がどんと音を立てて、吹っ飛んだ。

 

「あがあああああっ」

 

 シャングリアが絶叫した。 

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