※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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596 飛んで火にいる……魔道遣い

「スクルドおおおおお──」

 

 ジャスランが咆哮のような声をあげる。

 エリカは、考えるよりも先に動いていた。

 比較的そばにいて、さっきからエリカたちを卑猥な見世物にする手助けをしていた係員の傭兵男に飛びかかり、腰の剣を抜く。

 

「うわっ、なにを──、ふごおおっ」

 

 邪魔しようとしたので、股間を蹴りあげて悶絶させた。

 視線を向ける。

 

 ステージの下のジャスランに対して、スクルドはこの大天幕の入り口側だ。

 また、この天幕には、五十人ほどの男女の傭兵が集められていたが、彼らはいきなり始まった騒乱に、呆気にとられて、ほとんど動いていない。

 

「スクルド、そこにひれ伏せえええ──」

 

 ジャスランが洗脳球をかざしたまま絶叫した。

 しかし、スクルドもなにかを感づいたのだろう。その一瞬前に、大きく目を見開いたかと思うと、突如として姿を消滅させた。

 移動術だろう──。

 

「くそうっ、どこに行った──」

 

 ジャスランが立ちあがって、スクルドを探すような素振りをしている。

 つまりは、さっきの言葉だけでは、まだスクルドの支配には至っていないのだろう。

 

 だが、エリカもやられたが、一度、洗脳球を突きつけられて命令をされると、それで逆らうことができなくなる。

 どんなことでも、洗脳球を通して命令されたことは身体が実行させられるし、逆に、禁じられたことについては一切、行動することができない。

 それは意思とは無関係であり、手足や肉体だけが洗脳球に従ってしまうのだ。

 怖ろしい肉体支配具なのだ。

 

 しかし、それを手元から離してしまうと、効力がなくなるのに違いない。

 いまのエリカは、自由を取り戻している。

 ジャスランは、おそらく、スクルドを刻んでいると思う洗脳球を握って、懸命にスクルドを探す仕草はしているが、地面に転がっているエリカの洗脳球には、意識は向けていない。

 

 それにしても、これはとれないか?

 エリカの口には、革の口覆いが装着されており、口の中には男根のディルドが突っ込まれていて、口覆いの外側にもディルドが装着されている。

 たったいままで、それでシャングリアを犯させられていたので、ねっとりとシャングリアの愛液で濡れていた。

 外そうと思ったが、顔の後ろで金具のようなもので何箇所も固定されていて、簡単にはいなかい。

 また、足首にあるアンクレットを見た。

 これは魔道封じであり、あの檻車に入れられるときに嵌められたものだ。

 ちょっと見たが、金属であり、これも簡単には切断できないだろう。

 

 仕方ない──。

 そのままだ。

 エリカは飛び出した。

 

「なに──?」

 

 ジャスランが気がついた。

 こっちを向く。

 

「エリカあああ──」

 

 ジャスランが叫ぼうとする。

 そのときには、エリカはもうジャスランの目の前だ。

 剣をジャスランに向かって叩きつける。

 だが、ジャスランが腕を出すとともに、咄嗟に真後ろに跳躍した。

 

「んがあああ」

 

 ジャスランは洗脳球を握って離さない右腕でエリカの剣を受けとめて弾いた。まるで金属の塊に叩きつけたような感触に驚いたが、すぐに身体強化魔道だろうと悟った。

 滅多には接することはないが、まれに、身体を金属のように固くする魔道を遣う者があると耳にはしたことがある。

 

「く、糞ったれが、いいから……うわっ」

 

 なにかを喋ろうとしているみたいだが、それはさせない。

 さらに、距離を詰める。

 身体が金属のように固いならば、金属として切断するだけだ。

 剣を構えて跳躍する。

 

「ほごおおっ」

 

 そのとき、いきなり、ジャスランがこっちに向かって跳ね飛ばされてきた。

 たったいままでジャスランがいた場所の真後ろにスクルドが立っている。

 移動術で再出現したのだろう。

 両手を掌底打ちのように構えているので、至近距離で背中から衝撃波でも叩きつけたいに違いない。

 エリカは、体勢を完全に崩しているジャスランの首に剣を叩きつける。

 

「あがああっ」

 

 ジャスランはまたも腕で避けたが、今度はわずかだが傷をつけることができた。また、その衝撃でジャスランが持っていた洗脳球を取り落とす。

 

「あっ、しまった──」

 

 ジャスランが身体を伸ばして、手を伸ばす。

 だが、エリカはすかさず、球体を蹴り飛ばした。

 

「貴様あああ──」

 

 洗脳球を握り直そうとしていたジャスランは、跪いている状態だった。憎悪の表情でこっちを見る。

 しかし、怒っているのはこっちだ。

 エリカは、ジャスランの喉を目掛けて、剣を力の限り叩きつけた。

 

「んごっ、がああっ」

 

 またもや金属のような音──。

 ジャスランの首には、赤い線が走っただけで、エリカの剣技をもってしても切断できなかった。

 これは、魔道じゃないと殺せないか──。

 エリカはジャスランの顔を蹴り飛ばしてひっくり返す。

 

「あがっ、げほっ、がっ」

 

 ジャスランが喉を押さえて、仰向けに倒れた。

 

「操り具を使った支配術のようですね。ジャスランの言葉を封じましょう。それで命令はできませんわ」

 

 スクルドがそう言って、ジャスランに魔道を放つ。

 ジャスランの口が固く閉まった。ジャスランが目を見張っている。

 

 なにを甘っちょろいことを……と思ったが、いまだにエリカの口には、屈辱的な口覆いをされたままだ。言葉を発せない。

 いずれにしても、殺せるときに殺さないと、なにを仕掛けているかわからない。

 エリカは、親指で首を斬り裂く真似をして、すぐに息の根をとめろと、スクルドにエリカの考えを発する。

 

「……でも、可愛い顔をしてますもの……。調教はご主人様にお任せしましょうよ。せめてもの、お詫びですから……。ふふふ……」

 

 スクルドがくすくすと笑いながら、ジャスランにさらに魔道を放つ。

 ジャスランの手足がひとつになり、集まった四肢に魔道の輪っかが出現した。

 

「んんんんんっ」

 

 ジャスランがすごい形相をして暴れているが、スクルドがさらに魔道を放つと、重い枷でもつけられたように、拘束された四肢の部分が動かなくなった。

 見えない重りを増加する魔道か?

 

「多分、二日……、もしかしたら、一日半ほどで、ご主人様たちはこっちに来られるでしょうか……。ひとりでやって来たわたしと違い、ご主人様はあのエルフ族の護衛隊を率いてこられるでしょうし、いくら移動術でも、集団移動するには、どうしても、それくらいの時間が必要でしょうしね」

 

 スクルドがにこにこしながら言った。

 次の瞬間、エリカの口を覆っていた革覆いの留め具が頭の後ろで外れた。

 スクルドだろう。

 エリカは、忌々しい淫具を口から取り去って放り投げる。

 

 周囲を見渡す。

 天幕に集まっていた五十人ほどの傭兵は、誰も彼も呆然とした感じになり、どうしていいかわからない雰囲気でこっちを見守っている。

 しかし、操られている表情に変化はない。

 おそらく、まだジャスランの支配下にあるのだろう。

 エリカは舌打ちした。

 

「どいつもこいつも、とりあえず、じっとしてなさい──。こいつはもう無力よ。逆らえば、皆殺しにするわよ──」

 

 叫んだ。

 傭兵たちがぎょっとしたように硬直するのがわかった。また、思い出して、両手で裸体を隠す。

 

「あらあら、皆殺しは物騒では?」

 

 スクルドがくすくすと笑った。

 エリカはかっとなった。

 

「なに言ってんのよ。それよりも、シャングリアを──」

 

 シャングリアは、まだステージでもがいていた。

 スクルドが両手を向ける。

 

「ああ、そうでした……。シャングリアさんは、とりあえず、痒み剤の毒消しと体力増加の快復術だけはかけますね……。申し訳ありません。さすがに、切断された手足の復活までは、わたしではできないのです……。ガドさんか、ミウならできるのでしょうが……。あら、骨も折れているのですね。それは治します……」

 

 スクルドがステージでもがいていたシャングリアに向かって、魔道を放った。

 暴れていたシャングリアが脱力して静かになったのがわかった。

 エリカはほっとした。

 

「……ガドが、手足の復活だってできるほどの光魔道を遣うことができるのは知っているけど、ミウにもできるの?」

 

 パリスの部下だったダルカンによって、イムドリス宮を占拠されたとき、あのアルオウィンは、手足を切断されて惨い拷問を受け続けていた。

 それを復活させたのはガドニエルだ。

 しかし、ミウにもそれができるのか?

 

「あの子の素質は素晴らしいですわ。水晶宮にいるあいだ、ガドさんにも魔道を師事を受けていたようですけど、上級魔道をあっという間に修得してしまうのです。わたしも驚いてしまいました。多分、覚えさせさえすれば、どんな魔道でも再現できそうな気がしますわ」

 

 スクルドがにこにこしながら言った。

 エリカは、ミウが水晶宮でも魔道の勉強をしていたことは知らなかったので感心してしまった。

 だが、我に返った。

 そんなことよりも、こいつだ。

 

「それよりも、ジャスランにとどめを刺しなさい。わたしの剣じゃ、こいつの肉体強化魔道を受け付けないのよ」

 

 エリカはスクルドに怒鳴った。

 

「あらあら、でも、ご主人様へのお土産にいいと思いませんか? 結構、感じやすくて素晴らしい身体をしてますのよ」

 

 スクルドがくすくすと笑った。

 こいつはなにを言っているのだと腹がたった。

 しかし、いまの物言いによれば、もしかして、スクルドはこのジャスランに性的な悪戯でもしたのか?

 それを恨みに思ったジャスランが、ここで復讐を企てた?

 エリカは唖然となりかけた。

 

「いいから、殺しなさい。こいつが、ここで何人の人間族を残酷に殺したと思ってんのよ。ロウ様がこんな女を相手にするわけはないでしょう」

 

「そうですか……。では、お土産を準備する以外に、どんな風に、ご主人様にお詫びをすればいのか……」

 

 スクルドが悲しそうな顔になった。

 この女はと呆れた……。

 

 そのときだった。

 

 エリカははっとしてしまった。

 地面に四肢を束ねられて動けなくなっているジャスランの腕から流れる血が、いつの間にか、スクルドの足元に伸びて、魔道紋様をかたち作っていたのだ。 

 あれは、魔道を逆転する紋様──。

 まずい──。

 

「スクルド、足元──」

 

 エリカは叫んだ。

 スクルドがやっとそれに気がついて、ぎょっとした表情になる。

 

「きゃあああああ」

 

 だが、次の瞬間、スクルドの悲鳴がとどろき、その場にひっくり返った。

 スクルドの魔力が一気に紋様に吸収されて、ジャスランに入ったのがわかった。

 

「スクルド──」

 

 エリカは叫んで、剣を構え直す。

 しかし、そのときには、ジャスランの魔道の拘束が解けて、その場に立ちあがっていた。

 エリカは飛びかかろうとした。

 

「エリカ──。スクルドの両腕を切断しな──」

 

 ジャスランが叫んだ。

 すると、あの身体の硬直感が復活して、エリカの身体が勝手にスクルドに向き直った。

 

「ひっ、に、逃げて、スクルド──」

 

 エリカは恐怖に包まれて声をあげた。

 スクルドもうずくまったまま、目を見張っている。

 そして、そのスクルドは、とっさに手で身体を守るように動いた。

 エリカの剣は、スクルドの両腕を二の腕の真ん中の部分でものの見事に真っ二つにしてしまった。

 

「あがああああっ」

 

 スクルドが両手から血しぶきを出しながら、仰向けに倒れた。

 

「あああ、スクルドおおお」

 

 エリカは泣き叫んだ。

 

「その場に四つん這いに伏せよ」

 

 ジャスランの声──。

 エリカの手足は、またしても、エリカの意思と無関係に動いて、地面に四つん這いになる。

 だが、どうして……?

 

 ジャスランは、洗脳球を手放したはずだ……。

 低くなった視線で探すと、二つの洗脳球は、テーブルの脚にとめられて、いまだに地面に転がっていた。

 しかし、ジャスランが歩いていき、それらを回収してしまう。

 

「治療師──。すぐに来い。止血と傷口の治療をしなさい──。回復術もかけるのよ。急げ──。死なせはしないよ」

 

 ジャスランが叫んだ。

 シャングリアの手足を炸裂環で切断していたときに働いていたふたりの治療師が全速力でやってくる。

 そして、スクルドの治療を始めた。

 あっという間にスクルドの手足からの出血がとまる。

 ジャスランが、まだ倒れているスクルドの足首に近づき、エリカが嵌められているのと同じ魔道封じを装着してしまった。

 

「手がなくなっても魔道を遣うには問題はないよね。だが、お前のご主人様のロウを殺す道具として使うつもりだから、足は残してやるわ。魔道もロウがやって来る直前には封印も解いてやる。その代わり、そのエリカと協力して、必ず、ロウを死体にして、ここに連れてきな」

 

 ジャスランの言葉にスクルドが驚いている。

 そのスクルドの首をジャスランが掴んだ。

 片手でスクルドを持ちあげる。

 

「ご、ご主人様を……? んんっ、んぐうっ、ぐ、ぐるしい……」

 

 首を締めあげられて、スクルドの顔があっという間に白くなる。

 身体も痙攣をはじまる。

 

「ふふふ、やっと捕らえたよ、スクルド……。さっきの話によれば、ロウがここに来るまで、一日半か……。時間がないわねえ……。残念だが、エリカへのお仕置きは、すべての始末が終わってからね。まずは、お前よ、スクルド……」

 

「あぎいっ」

 

 ジャスランがスクルドの身体を地面に叩き落した。

 腕のないスクルドは、頭を守る手段もなく、頭を打ってしまったみたいだ。

 

「ああ、スクルド──」

 

 声をあげた。

 しかし、ジャスランに「動くな」と命令されてしまい、身体が硬直されてしまう。見ると、すでに、スクルドとエリカを刻んだと考えられる二個の洗脳球がない。ずっと亜空間から物を出したり、収納したりを送り返していたので、亜空間にでもしまったのかもしれない。

 だが、洗脳球を使うには、必ず、手に持った状態でないとならなかったはずだ。

 それとも、違っていたのか?

 さらに、あのとき、ジャスランは、洗脳球なしにエリカの身体を操ってみせた。そして、スクルドの腕を切断させられたのだ。

 なぜ……?

 

「どうして、さっき身体が操られたのか不思議そうね、エリカ。まあ、教えてやるわ。私の本当の能力は血紋使いよ。お前の体液に血紋を刻んで飲ませてやったでしょう。だから、すでに、お前の身体は洗脳球で支配されているのと同じ状態になっているのよ。もはや、逃げられないからね」

 

 ジャスランが喉の奥で笑った。

 あのときか……。

 

 ステージの上の破廉恥な見世物で、全員の前で自慰をさせらて、試験管に自分の愛液を集めて飲まされた。

 そのときに、ジャスランが自分の血を混ぜたのだが、そういう意味があったのか……。

 エリカは愕然とした。

 

「ち、血紋使い……?」

 

 スクルドが身体を捩じるようにして、なんとか上半身を起こして、呻くように呟いた。

 

「そういうことね。エリカが言ったとおりだったわね。次には、さっさと、息の根をとめることよ。私が血紋を刻むいとまを与える前にね」

 

 ジャスランが大笑いした。

 エリカとスクルドが話し込んで油断したとき、ジャスランは自分の腕から流れる血で、血の魔道紋を地面に刻んで、スクルドから魔力を抜いてしまったのだ。

 不覚だった……。

 

「さあて、エリカ……。お前にさっきの復讐をしたいところだが、まずはこの人間族の魔道遣いをいたぶらなければならないから、いまは見逃すよ。シャングリアを抱えて、檻車に戻りな。次の指示があるまで、檻車でじっとしてるのよ」

 

 ジャスランが言った。

 すると、エリカの身体は勝手に動き出す。

 歩いているのは、まだステージにいるシャングリアのいる方向だ。

 

「いやあああ」

 

 そのとき、背中からスクルドの悲鳴が聞こえてきた。

 

 服がびりびりに破られるような音と、肉を叩くような音とともに……。

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