※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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599 エルフ女の陰謀

「秘策?」

 

 ジャスランは、身体の下から裸体を密着させて、ジャスランに抱きついているアルウィンに耳を傾けた。

 秘策とはなんだろう?

 すると、アルオウィンは、小狡そうな笑みを浮かべ、ジャスランの耳元に口を寄せてきた。

 

「ロウの秘密を知っています……」

 

「秘密って?」

 

 ジャスランは身体を起こした。

 すると、アルオウィンも起きあがり、果物や飲み物などを置いている台から乾いた布をとり、ジャスランの身体の汗を拭き始める。

 

「先ほども言いましたが、ロウを洗脳球で支配してしまいましょう。サキ様というお方に対しても、それで申し開きが立つのでは?」

 

 アルオウィンがジャスランの裸体をかいがいしく拭きながら言った。

 なぜ、サキのことを知っているのだと一瞬思ったが、すぐに、ジャスラン自身がアルオウィンとの女同士の情交の中で喋ったのだということを思い出した。

 色々と訊き上手な女であり、ついつい口が滑って、色々なことを語ってしまった気もする。

 

 洗脳球の支配は、実は大量の魔力消費が弱点であることも言ったし、スクルドとエリカをロウの一隊にぶつけるときには、座ったままできるだけ魔力を消費しないようにして、彼女たちの目を通じた「遠目」という術で、監視しようと考えていることも話した。

 さらに、遠目のときには、近くが無防備になるので、この亜空間の隠れ処に座っているつもりだとかも……。

 

 だから、サキのことも、ジャスランはある程度は語ったのだろう。

 そもそも、ここに来たのは、妖魔将軍のサキの命令であり、サキはあろうことか人間族のロウを慕っていて、いまは恋人のように接している。

 従って、実際には、ジャスランがロウをスクルドに殺させてしまえば、おそらく、烈火のごとくジャスランのことを怒りまくるはずなのだ。

 できるだけそのことを忘れようとはしているのだが、つい思い出してしまうと、我に返ったように心配になってしまう。

 スクルドとエリカには、ロウを殺せと洗脳球で命令をし終わっているが、実際には、どうしようかなとは、ちょっと思っていた。

 

「まあ、サキ様はロウを殺すよりは、支配して渡す方が歓ぶとは思うけど……」

 

 ジャスランはアルオウィンが身体を拭くのを制して、散らばっている自分の服を身につけだす。アルオウィンが布を置いて、それを手伝い始める。

 本当に気が利く女だ。

 その健気さには、思わず微笑んでしまう。

 

「もちろん、喜びますよ……。ああ、そうだ――。もしかしたら、サキ様というお方も、ロウの魅了術にかかっているのかも――。そうであれば、それを解いたジャスラン様の大手柄です。ロウをスクルドによって殺させるのは、そのときでもいいのでは? サキ様から受ける褒美として、それを願えばいいですよ」

 

「なるほどねえ……。だが、本当に、サキ様が洗脳されているのか? 妖魔将軍ほどのお方よ。一介の人間族が魅了術などかけられるの……? まあ、そうだとすれば、辻褄は合うけど……」

 

 ジャスランは、妖魔将軍のサキが……そもそも、サキではなく、リンネ様なのだが、ある時突然に、人間族の男から新しい名をもらったので、今度からそう呼べと宣言され、従わない者は八つ裂きにすると脅されているので仕方なく、そう呼んでいるのだが……、ロウに従うことが愉快でなくて仕方がなかった。

 どうして、あんな人間族を優遇するのだろうとは思っていたが、ロウに魅了術をかけられているということであれば、納得はできることだ。

 

「ロウがエルフ女王のガドニエル様に魅了術をかけてしまえるのですよ。妖魔将軍と呼ばれるお方でも、油断してしまったのですね……。お可哀そうに……。ならば、ジャスラン様が動かれるべきです」

 

「私か? ああ、もちろん、ロウは殺すけど……」

 

「殺してはなりません。洗脳球で支配するのです。ロウは魔術遣いですから、洗脳球であれば支配できます。もっとも、魅了術しか遣えないどうしようもない男ですけど。それでも、魅了術だけはすごいのです」

 

「ならば、むしろ殺せばいいのでは?」

 

 ジャスランは言った。

 とりあえず、具足もつけ終わり、ジャスランはソファに背もたれる体勢になる。アルオウィンはいまだに素裸のままだ。

 その乳房を押しつけるように、ジャスランにしだれかかってくる。

 性愛の対象が男ではなく、女であるジャスランは、おかげでまたおかしな気分になるのだが、それを知ってか知らずか、アルオウィンは媚びを売るような潤んだ眼をこっちに向けている。

 

「まさか。ロウの魅了術は特別なのです。殺して魅了術が解けるようなら、わたしたち善良な由緒正しいエルフ族が手をこまねくわけがありません。ロウを殺せば、そのまま魅了術が定着してしまい、ガドニエル様も、サキ様も、おそらく、ロウに心を奪われたままになってしまいます」

 

「死んで術が持続するなどあり得るの? もしかして、呪術?」

 

 どんな術であれ、かけた者が死ねば魔道は解ける。例外は呪術だろう。しかし、呪術には代償が必要だし、大抵は術者の生命を代償に求める。だから、効果があっても、あまり手を出す者はいない。

 

「もしかして、魂の術で、命の欠片をどこかに隠しているのかも……。だったら、なおさら支配して、それを吐かせないと」

 

「命の欠片ねえ……」

 

 それは耳にしたことがある。

 さすがにジャスランも、その術は遣えないものの、魔族の一部には、そういう高位魔道が知られていて、それで身を守る者もいると耳にする。

 確か、自分の命の一部を他人の身体に隠しておき、本体が死んだときに、一部を預けている身体を乗っ取って生き返るという術だと思う。

 魔道の区分としては、闇魔道に属するはずだ。まあ、考えてみれば、魅了術も闇魔道か……。

 

「洗脳球で支配して、命の欠片の場所を吐かせましょう。洗脳球では身体は支配できても、心は支配できませんが、それこそ、人質を使えばいいでしょう。ロウは一応は女を大切にしますから、彼女たちの命を代償にすれば、吐かせられますね。やっぱり、生かしておいてよかったです……。さすがはジャスラン様」

 

 なにがさすがなのわからないが、褒められれば嬉しくはないことはない。

 そうか……。生かしておいてよかったのか……。

 

「だが、洗脳球で支配できる? あれは、血紋術が必要よ。私が直接にかけないとならない。スクルドとエリカに攻撃をさせるが、私自身はここにいるつもりよ」

 

「スクルドとエリカに、戦わせることはやめましょう。それよりも、ロウたちがやってきたら向こうに返すのです。それがチャンスです。ロウは魅了で操っているとはいえ、自分の女には優しいですから、絶対に、戻った彼女たちを自分で訊問をしようとします」

 

「戦わずして返すですって──? それはだめよ──。スクルドには、自分の仲間を裏切らせる汚辱を味わわせるのよ──」

 

 ジャスランは怒鳴った。

 それは絶対だ。

 あのスクルドには、あらゆる汚辱と侮辱を与えてやる。自分の仲間を裏切らせるのもそのひとつだ。

 

「ならば、戦わせましょう。裏切らせて、自分たちの仲間にやられさせればいいのです。攻撃しても致命傷を与えないことを命令して、ロウたちに一方的に攻撃させるのです。そっちの方が屈辱でしょう」

 

「それはいいかもね。味方に痛めつけらるのね。まあ、あいつらに活躍させるよりはいいねえ」

 

 ジャスランは味方に冷酷に痛めつけられるスクルドの姿を想像して、ちょっと溜飲がさがった。

 

「では、それでいきましょう。スクルドとエリカには、味方を攻撃させる。でも、致命傷は与えないことを命令して、やられさせる。そして、捕らえさせます。捕らえれば、ロウは必ず自分自身で彼女たちを訊問します」

 

「わかった。そして、どうするの?」

 

「スクルドたちに、口の中に昏睡薬を忍び込ませるのです。ふたりとも、ロウのお気に入りです。ふたりが口づけを迫れば、ロウは受け入れます。訊問の最中でも……。ロウは好色ですから……。それが最大の弱点なんです。女に甘くて……。その役目はスクルドがいいでしょうね。スクルドの得意技ですよ。ジャスラン様も仕掛けられたのでしょう?」

 

 アルオウィンがちょっと笑った。

 先日、スクルドに不覚をとったとき、あいつに突然に口づけをされ、身体が弛緩する媚薬を飲まされて失敗したことを思い出した。

 あのときのことを思い出すと、腹が煮え返る。

 どうやら、自分はそんなことまで、アルオウィンに寝物語で語ったらしい。

 

「……スクルドにロウを昏倒させ、エリカに刃物で脅させればいいのです。それで、ロウの女たちは手が出せません。そして、スクルドにこっちに転送術で連れてこさせればいい。ロウの身柄さえ確保すれば、あとはやりたいことができます。とにかく、スクルドとエリカを向こうに返すことです」

 

 さらにアルオウィンが言った。

 

「うーん、殺させるよりも、そっちがいいのかあ……」

 

 ジャスランは腕組みをした。

 しかし、殺すとサキの魅了が解けないというのであれば、迂闊に殺すわけにもいかないし……。

 

「考えることは、わたしにお任せを……。それよりも、ジャスラン様は、スクルドにはどんな仕返しをなされるのですか? でも、くれぐれも殺さないでくださいね。そして、スクルドには戦わせる必要もあるので、五体満足ではいさせてください」

 

「五体満足か……」

 

 ちょっと困った。

 すでに、スクルドの両手は切断してしまった。シャングリアに至っては、残っているのは、脚一本だけだ。

 それを白状すると、アルオウィンが眼を大きく見開いた。

 

「そ、そんな……。も、もう傷つけてはいけません。策戦が台無しになります。どうか、もう……。ジャスラン様の手柄をあげてもらうことが難しくなってしまいます」

 

 アルオウィンが懇願するように言った。

 そんなにも、ジャスランの手柄を大切にしてくれるとは、感じ入ってしまった。エルフ族のくせに、なかなかに可愛い女だと思った。

 

「お前、なかなか、可愛い女ね。事が終わったら、私の飼い猫になる?」

 

「ほ、本当ですか──。嬉しい──。お慕いしています、ジャスラン様。わたしは、ジャスラン様のようなお強い人には会ったことはありません。心からお慕いしています」

 

 アルオウィンが心の底から嬉しそうに笑って、ジャスランに抱きついてきた。

 ジャスランは、アルオウィンを抱いて頭を撫ぜる。

 すると、さらに、アルオウィンがジャスランの頬に自分の頬をすり寄せて甘えてきた。

 本当に可愛い女だ。

 存外にエルフ族というのも、可愛らしいのだと思った。

 

「……ところで、ロウを洗脳球で支配するとなれば、ジャスラン様の魔力が問題ですね。少し節約しましょう。いまはわたしを含めて四個を使ってますので、一個減らしましょうよ。そうすれば、ロウを支配する余裕ができます」

 

「一個減らすのか? つまりは、お前の支配を解くということね?」

 

 ジャスランは笑った。

 まあ、それもいいだろう。

 しかし、アルオウィンは、首を横に振った。

 

「そこまで、わたしを信用なさるのは嬉しいですけど、減らすというのはイライジャです。彼女はもう無力でしょう。洗脳球を使うのは無駄に違いありません」

 

「あいつか……」

 

 もう半分忘れていたと言っていい。

 アルオウィン同様に、この亜空間の隠れ処に収容しているが、地上部分に置いているアルオウィンに対して、イライジャはここの地下に拷問で弱らせながら監禁している。

 エリカやシャングリアとは異なり、武芸には秀でないし、魔道も大したことはない。

 その魔道も、アンクレットの魔道封じで封印しているので、魔道も遣えない。

 まあ、どうでもいい存在であることは間違いない。

 

「じゃあ、処分するか?」

 

 ジャスランは言ったが、アルオウィンは、慌てたように首を横に振った。

 

「ロウに命の欠片の場所を自白させる切り札です。それはお待ちください。とにかく、考えるのはお任せを。全身全力で、ジャスラン様のお役に立つ策を考えますので」

 

 アルオウィンが必死な口調で言った。

 ジャスランはあまりにも、真剣な表情なので笑ってしまった。

 

「わかった。わかった。だが、自分自身の開放を願わないとはねえ。ますます、お前を信用できる気持ちになったよ」

 

「わたしは、ジャスラン様に支配されるのが嬉しいのです。けして、支配を解かないでくださいね。できれば一生……」

 

 アルオウィンが口づけをしてもらいたさそうに、ジャスランに口を寄せてきた。

 ジャスランはアルオウィンに唇を重ねる。

 身体を離すと、アルオウィンが愛おしげにジャスランを見つめてきた。

 やっぱり、可愛い女だ。

 

「ちょっと、イライジャを見てくる。そして、洗脳球も解除してくるよ」

 

 ジャスランは立ちあがった。

 そして、天幕の中を移動する。

 この天幕は四個の天幕を連接するかたちになっていて、イライジャを閉じ込めている地下への入り口にある天幕は、そのひとつだ。

 もちろん、首輪を鎖で繋いでいるアルオゥインには届かない場所になる。

 

 地下への入り口になっている地面にある蓋を開けた。

 それだけで、むっとする熱気が噴きあがってくる。

 

「こりゃあ、熱いねえ」

 

 ジャスランは苦笑しながら、階段をおりていった。

 すると、地下空洞が出現する。

 そこには、苦役用の器材があり、地面に差してある巨大な木製の車輪をそれについている横材を押して、延々と回せるという作業をさせているイライジャがそこにいた。

 全裸だ。

 

 黒い肌は信じられないくらいに汗をかいており、この熱気の中での重作業に、完全に弱っているのがわかる。

 だが、イライジャの首には、首輪がかかっていて、この木製の横材から離れられない。

 そして、イライジャに届く場所にある壁の容器には、一定数の回転をさせると、少量の水が出てくる仕掛けになっている。

 この熱気の中では水を補給しないと死ぬしかなく、だが、水は重い車輪を横材で回して、百回以上は回転させないと出てこない。

 イライジャは、疲労困憊でも車輪を押し続けるしかないということだ。

 

 それに、休憩をするとイライジャにしている首輪に電撃も流れる仕掛けだ。電撃が流れないのは、真夜中の二ノスくらいだ。

 だから、イライジャは、もう三日くらいは、あまり寝ていないはずだ。

 

「だ、誰──?」

 

 イライジャが人の気配を感じたのか、こっちに向かって声をあげた。

 だが、その眼はなにも見ていない。

 ここに監禁するときに、ジャスランが両眼を潰したからだ。

 それにしても、ここに来るのは、ジャスランだけなのに、毎回、誰だと訊ねてくる。

 面白いやつだ。

 

「私よ。他に誰がいるのよ」

 

「あ、あんたね……」

 

 イライジャが横材を押しながら舌打ちをするような仕草をした。

 ごりごりと巨大車輪が回る音が鳴り響き続ける。

 

「しっかりと押しなさい。さもないと、水は出ないからね」

 

「や、やることが……下衆(げす)なのよ……」

 

 イライジャが言った。

 そして、興味がないとでも言いたいのか、そっぽを向く。

 だが、かなり追い詰めらているようだ。

 ジャスランはほくそ笑んだ。

 

「お前の洗脳球を解くわ。だけど、お前のすることは変わらないけどね」

 

 ジャスランは洗脳球を亜空間から出して、イライジャとの結びつきを解除した。

 

「洗脳球の支配を解く?」

 

 イライジャがちょっと驚いたように言った。

 そして、完全につぶれている目をこっちに向けた。そのあいだも、横材を押して、地面の巨大車輪を回し続けている。

 

「スクルドも捕らえたよ。次はロウね。用済みになれば、お前も殺してあげるけど、その前に死なないようにね。だけど、洗脳球は解除したから、自殺したけれれば勝手に死になさい。じゃあね、イライジャ。とにかく、ここは熱すぎるよ」

 

 すでにジャスランも汗びっしょりだ。

 ジャスランは哄笑しながら、地下を後にした。

 そして、アルオウィンのいる天幕を通りかかった。

 

「あっ、ジャスラン様、汗が……」

 

 アルオウィンには、この一個の天幕くらいは、自由にできる長さの余裕を鎖につけている。

 彼女が布を持って立ちあがろうとした。

 また、アルオウィンはすでに薄物を身にまとっている。

 ジャスランは、アルオウィンを手で制した。

 

「いいよ。座っていなさい。スクルドのところに戻るわ。まだまだ、痛めつけないとね」

 

 ジャスランは布だけを受け取って汗を拭くと、天幕の出口に向かう。

 この天幕の出口から外に出れば、通常空間に繋がるが、それはジャスランだけの仕掛けなので、アルオウィンもイライジャも、ここから外に出ることはできない。

 まあ、心配はしてないが……。

 

「あのう、イライジャは?」

 

 外に出る直前にアルオウィンが訊ねてきた。

 

「まだ、生きてはいたね。そして、洗脳球は解除したさ」

 

 ジャスランの言葉に、アルオウィンが安心したような息を吐いたのが聞こえた気がした。

 

 外に出た。

 モーリア隊の陣営の喧騒に包まれた。

 すでに、ジャスランの意識は、すでにスクルドに戻っている。

 

 小便の途中で放尿を禁止し、しかも、唐辛子水を大量に飲ませて放置していきた。

 どんな風に泣いているのか愉しみだ。

 

 本当に愉しみだ。

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