【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「いっ、いいっ、いいいっ」
がに股で立っているスクルドがおかしな声を出しはじめた。
おそらく、放尿を我慢しようとしているのだろう。がに股ながらも内股に内腿を曲げ、懸命に歯を喰いしばっている。
その喰い縛っている口から苦悶の声が漏れ出ているのだ。
眼は涙目だし、あっという間に脂汗が裸体の肌に流れはじめている。
「おうおう、一応は我慢したじゃないか。私は洗脳球の縛りを解除した瞬間に、小便をおっぱじめると思ったけどねえ」
ジャスランはあまりにもみっともないスクルドの姿に大笑いした。
「あ、ああ……。が、我慢できません……ぶひっ……。は、早く……」
スクルドがすでに限界を越しているはずの尿意の苦痛に震えながら言った。
許可なく粗相をすれば、エリカの腕を片方ずつ吹っ飛ばすと言っている。だから、スクルドは必死の様子だ。
また、周囲の傭兵たちも、スクルドのような人間族の美女の破廉恥な見世物に大喜びだ。早く出せとか、もっと頑張れとか、無責任な揶揄をかけまくっている。
ジャスランは愉しくなってきた。
「じゃあ、なにをしてもらおうかねえ……。それじゃあ、歌でもうたってもらおうか。歌い終わったら、小便を許可してやるよ。だけど、もしも、途中で洩らしたら、エリカに仕置きだからね……。ああ、そうだ。歌を歌っても、豚の鳴き声は忘れんじゃないよ」
ジャスランは笑いながら言った。
ちょっと離れているエリカが抗議するように、大きく呻くような声を出しているが、張形付きの口覆いのために、くぐもってよく聞こえない。
ジャスランは無視した。
「主……主よおおお、ぶひっ、みもとに……、ち、近づかん……。く、苦痛にま、まみれても……あなたに心を……さ、ささげます、ぶひっ……。こ、この歌を……」
スクルドが涙を流しつつ、旋律に乗せて言葉を吐きだした。
よくわからないが、きれいな歌だと思った。まあ、あんな恰好で歌っても滑稽だが……。
「そのまま歌いな。ああ、ただ、がに股のまま、代わる代わる足踏みをするんだ。がに股踊りだ。膝を水平よりも高くあげるんだよ。低かったら、エリカの腕の炸裂環を作動させるからね……。よし、がに股踊りだ──」
ジャスランは気まぐれにさらに注文を付け加えた。
聞いていた傭兵たちは、面白がって拍手喝采だ。
スクルドが涙目のまま、がに股で脚をあげ始める。
「や、闇に……石を……背に眠り、ぶひっ……。夜闇を被り……、ああ、主のもとへ……。主のもとへ……、ぶひっ」
スクルドはうなじを浮き立たせるように首を曲げ、懸命に放尿を我慢しつつ、馬鹿みたいな踊りをしながら歌を歌い続ける。
ジャスランは腹を抱えてしまった。
やがて、歌い終わった。
「よし、小便していい」
その言葉とほぼ同時に、しゅっと音を立てるように、スクルドの股間から尿が迸った。
すごい勢いだ。
ただ、色はかなり赤い。
唐辛子汁の影響が尿にまで及んでいるのだろう。
「い、いたい……いい、いいっ」
もしかしたら、辛子の影響で、おしっこが痛いのかスクルドが呻き声のような声をあげている。
一方で、スクルドが放尿を開始したことで、割れんばかりの男たちの哄笑が渦巻いて、周囲が大喜びした。
「ああっ」
スクルドの顔が汚辱に曲がる。
ジャスランはほくそ笑んだ。
「じゃあ、一度停止よ。おしっこを中断するのよ。できなければ、エリカの腕を爆裂させるわ──」
ジャスランは怒鳴った。
スクルドが歯を喰いしばる仕草をしたが、堰を切ったように号泣を開始して首を横に激しく振る。
「ああ、できない……。と、とまりません、ぶひっ──。や、やってます。やってるんです、ぶひいいいっ」
スクルドが悲痛な声を出す。
だが、確かにおしっこはとまってない。
中断する気配もなく、激しく迸り続けている。
「……仕方のない豚だねえ。じゃあ、約束だ」
ジャスランは爆笑しながら言った。
指を鳴らそうと手を前に出す。
別に、指を鳴らさなくても念じるだけで爆裂させることはできるが、合図をする瞬間をスクルドに見せつけようと考えただけだ。
「ああ、やめてええええ、とめます、とめますからあああ、ぶひいっ、とめてます。とめようとしてます、ぶひい」
スクルドが絶叫した。
ジャスランは口を開く。
「じゃあ、待ってやる。三……二……」
「ひいっ、ひいいっ」
スクルドが腰を前に出すように背中を逸らす。
その必死さが愉快だ。
エリカの腕を飛ばそうが、飛ぶまいがどうでもいいけど、あのみっともないスクルドの恰好を見れただけでもよかったと思った。
「一……」
しかし、結局、おしっこはとまらなかった。
そろそろ、膀胱に溜まった分が終わりそうで、緩くはなっているが……。
「残念だね。友達がいのない女さ。さあ、エリカ、恨むなら、スクルドを恨みな」
ジャスランは指を鳴らした。
だが、その瞬間、突如としてエリカの炸裂環がエリカから離れて、すごい勢いで飛ぶとジャスランの手首に密着してしまった。
はっとしたときには、遅かった。
すでに、炸裂環に魔道を送ってしまった後だったので、ジャスランの片側の手首が吹っ飛んでしまった。
「あがあああああっ、いたいいいいい、いたあああああ」
ジャスランはその場に跪いた。
飛んだのは左手首だった。
魔力を念じて、必死に血をとめる。
しかし、なにが起こったのだ?
わけがわからなくて、ジャスランは辺りを見回す。
周囲の傭兵たちも騒然となっている。
また、もうひとつくっついていた炸裂環は、ジャスランの魔道でなんとか外れる。
しかし、いまの瞬間、明らかに強力な魔道の横入りがあり、ジャスランの魔道が阻止された。
「よくもよくも、俺の女たちを弄んでくれたな……。ただで死ねると思うなよ」
そのとき、傭兵たちの背中の後ろから男の声がした。
さっと、傭兵たちが分かれて、人の道のようなものを作る。
そこには、傭兵ではない人間族の男がいた。その横には、小柄な人間族の女と、見たこともないような美しいエルフ女もいた。
「ご、ご主人様ああ」
スクルドが泣きながら絶叫した。
彼女は自分が放尿して作った尿だまりの上にしゃがみ込んでしまっている。
「スクルド……。言いたいことも、お仕置きもあるけど、それはこの始末をつけてからだ……。とりあえず、まだ無事でよかった。その腕はこいつにやられたか……?」
「あ、あと、エリカさん……。シャングリアさんも……。それに、アルオウィンさんとイライジャさんはどこにいるのかわからなくて……」
「そうだな。アルオウィンとイライジャは俺も感知できない……」
男が困ったように応じている。
しかし、ジャスランははっとした。
「お、お前、どうやってここまで……」
ジャスランは思わず言った。
この陣営には、人避けの罠がびっしりと張りめぐらされていて、簡単には……。
だが、すぐにわかった。
そういえば、あまりにも一般の旅人が罠に引っ掛かって鬱陶しいので、数名程度の旅人なら素通りできるように結界をいじっていたんだった。
この男たちは、だから、ここまで素通りしてきたんだろう。
「あんたらが作った罠はちゃんと回避してきたわ。もっとも、作動しないようにしてくれていたから助かったけどね」
小柄な女が笑った。しかし、その眼は笑ってない。ジャスランに向かって、はっきりとした殺意を込めた眼をしている。
「コゼ様のお手伝いを頼まないとならなかったのは残念ですわ。せっかくの、ご主人様とのふたりきりのデートでしたのに」
今度はエルフ美女が言った。
「なにがデートよ、ガド。ご主人様とふたりで、移動術の門をくぐり続けてきただけじゃないの」
「デートはデートですわ、コゼさん」
ガドと、コゼ?
もしかして、スクルドの仲間?
だとすれば、こいつがロウ?
「さて、覚悟はできてるな、ジャリヌヌス・パセリオント・ボーレスラン」
いきなりその男、つまり、ロウが言った。
真名──?
ジャスランは驚愕して眼を見開いた。
「恐怖で身体を凍りつかせろ、ジャスラン──」
今度は呼び名を使った。
しかし、そのときには、全身を恐怖が襲っていた。
怖い──。
怖い──。
怖い──。
怖くて、仕方がない──。
なんだ、これ──。
こんな恐怖は、サキ様にも……。
わからない。
怖い──。
怖い──。
怖い──。
ジャスランはわけもわからず、その場でがくがくと震えてしまった。
「ああああああっ、なにをしたあああ、なにをしたああああああ」
だが懸命に気力を振り絞る。
こんな人間族に恐怖を感じるなど──。
あり得ない──。
絶対にありない──。
すると、ロウだと思う男が舌打ちした。
「ちっ、血の半分は人間か……。つまり相の子か。真名の支配は不完全だ。ガド、魔道を封じろ──。あいつが洗脳球という魔道具でスクルドやエリカを操っている」
ロウが叫んだ。
「はい──」
目の前の空中に魔道紋──。
ジャスランは咄嗟に魔道砲を飛ばして、それを崩す。
魔道紋が弾ける。
「皆殺しにしろ──。全員かかれええ──」
絶叫して、周囲の傭兵たちに操心術を飛ばす。
傭兵たちが一斉に剣を抜いて、ロウたちに殺到した。
「制圧しろ──」
すると、ロウが怒鳴って、ロウと傭兵たちのあいだを埋めるように、女エルフ兵の集団が出現する。
亜空間術──?
こいつも、それを?
ジャスランは眼を丸くした。
*
【作者より】
短いですができあがった分だけ……。明日の分にしようと思いましたが、あげときます。