【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ジャスランへのお仕置きをどうしようかと迷いましたけど、結局、こっちの路線で……。
*
「ひぎいいいいい」
ジャスランは絶叫した。
まるで股間を引き裂かれたかのような激痛だった。
必死に身体を捩じってそれを拒もうとするが、魔族殺しだという得体の知れない薬剤をたっぷりと身体に入れられてから、まったく身体に力が入らないのだ。
そもそも、付け根から手足を切断されてしまった状況では、抵抗の手段が存在しない。
魔道も同じだ。
魔力が凍りついたように動かないし、魔道も結べる感じがしない。
それは、血紋術も同様だ。
ありとあらゆる抵抗の方法が失われてしまっている。
こんなことは、生まれてから初めてだ。
しかも、怖い──。
怖くて仕方がない。
必死に声をあげて、恐怖に心が縛りつかないようにしているのだが、ともすれば、ジャスランは込みあがる巨大な畏怖心のようなものに取り込まれそうになるのだ。
「ああ、やめろおおっ、やめてくれえ──」
ジャスランは股間の激痛よりも、自分という存在が全く別のものに変えられそうな恐ろしさに悲鳴をあげた。
なにものも畏れず──。
とらわれず──。
本能のようなものに従って行動し──。
自分を蔑むもののすべてを憎み──。
どんなものでも、自分の力でねじ伏せる。
それが、ジャスランのはずだ。
憎む──。
戦う──。
ねじ伏せる──。
もしも、それで殺されても、なんの不満もない。
いや、むしろ、死ぬために生きているといってもいい。
誰にも従わない──。
どんな相手にでもだ──。
しかし、いまは怖い。
押し潰されそうな心が怖い。
屈服しそうな自分が怖い。
サキには表向きには従ったが、それは向こうの力がジャスランよりも上だったからであり、心の底から服従したわけではない。
いつの日か機会さえあれば、寝首さえもかいてやるつもりだった。
サキは、そんなジャスランを受け入れ、いつでもかかってこいと尊大に返すくらいの大様さはあったので、だったら、しばらく仕えてやってもいいかと思っただけだ。
だが、この人間族がジャスランにやろうとしていることは、まったくそういうこととは次元が違うことだ。
こいつは、ジャスランになにかをして、ジャスランをジャスランでなくそうとしている──。
いやだ──。
いやだ──。
なによりも、それは嫌だ──。
ジャスランがジャスランでなくなるくらいなら、殺された方がましなんだ──。
「いやだああああ」
ジャスランはまたしても、絶叫した。
ロウの律動は続いている。
いつの間にか痛みは小さくなっていた。
しかし、それにより困惑が襲ってもいた。
身体の芯から沸き起こるような激情にジャスランは戸惑い始めている。
なんだこれ──?
この痺れるような大きな疼きはなんだ?
なんなんだ、これは──?
「生まれて初めて味わう男の性器はどうだ、ジャスラン? 思ったよりも悪くなかったか?」
ロウがジャスランの股間を性器で抽送しながら、からかうように言った。
ジャスランはかっとなった。
「ふ、ふざけるな──。も、もういい、抜けえええ──。やめろおおっ、あっ、あああっ」
悪態を突こうと思って、自分でも信じられないような甘えるような鼻声が自分の口から迸って驚愕した。
ジャスランは慌てて口を閉ざす。
しかし、得体の知れない激情は次から次へと肉体の内側から沸き起こっては全身に拡散していく。
気持ちいい──。
怖い──。
気持ちよさが怖い──。
「もういやああ、頼む──。殺してくれ──。怖い──。怖いいい──」
ジャスランは泣き叫んだ。
自分の身体が変わろうとしているのが怖ろしい──。
心が作り変えられようとしているのが怖い──。
嫌だ──。
嫌なのだ──。
「ご主人様、いま、こいつが初めてって、言いましたか?」
離れた場所から声がした。
すぐにはわからなかったが、確か、コゼと呼ばれていたロウにずっとついていた小さな女だろう。
「ああ、こいつは正真正銘に生娘だ。意外だろうけどね」
ロウがジャスランを犯しながら言った。
当然だ──。
魔族であろうとも、ジャスランにそんな目を向けてきたものは八つ裂きにしてきた。
どんな相手であろうとも、ジャスランの子宮に精を注ぐのを許すつもりなどなかった。
よく、女が子を産もうとするのは、生まれるときから与えられている本能のひとつと言われたこともあったが、ジャスランはそうは思わなかった。
ジャスランは、人間族に奴隷として見世物にされていた魔族女が人間族に犯されて生まれた子だ。
そんな子を作ることが本能であるならば、ジャスランは神でさえ呪ってやると思った。
生まれない方がよかったと思う子供だって大勢いるのだ──。
人間族に復讐をして、そして、死ぬために生きていた──。
サキに従った素振りをしたことだって、魔族の世界の中で居場所を作るために仕方なくしたことだ。本当は、誰にも従うつもりなどなかった。
従いたくもなかった。
だが、いま……。
いま、ジャスランは、この人間族の男の得体の知れない能力によって、支配されそうになっている──。
いやだああ──。
「ふっ、心配するな。お前を支配することはない……。ちゃんと、お前はお前のまま処刑してやる──。ただ、快感か苦痛かによって、お前が勝手に屈服したら知らんけどな」
そのとき、ロウがまるでジャスランの心を読んだかのように言った。
一方で、ロウの怒張はジャスランの膣を突き続けている。
いまや、耐えようとしても、ジャスランの全身は火のような欲望が燃え拡がっている。
さすがに、ジャスランも、これが女の快感と呼ばれているものだということは理解するしかない。
愛撫らしい愛撫もない。
ただ、股間を乱暴に突かれているだけだ。
それなのに、ジャスランは生まれてはじめての性の快感というものに追い詰められていた。
「あ、ああああっ、や、やめろおおお──。あああああ」
ジャスランは声をあげた。
込みあがる……。
激情が沸き起こり、それが全身を席巻して、脳天を貫く。
「締めつけるなあ。さすがは身体の丈夫な魔族だ……。もう痛みを脱したか……。そういえば、俺が銃弾を撃ち込んだ左目はもう回復しかけているな……。つくづく、魔族というのは丈夫なんだな。それとも、お前が特別なのか……?」
ロウがジャスランの股間を激しく突きながら言った。
はっとした。
そういえば、確かに、左目はもう少しは見えるようになっている。意識していなかったが確かに回復もしている。
だったら、もしかしたら、切断された手足だって、時間はかかるが、いつか復活させることもできるかも……。
こいつらに復讐をするのを諦めなくてもいいのか……?
少しばかりの希望が湧く。
「んはあああっ」
だが、そのときどんと気持ちのいい場所を強く怒張で押されて、快感が迸った。
「気持ちよかったか? こんなのはどうだ?」
「ひあああっ」
さらに、ロウに子宮を揺さぶられるほどに強く抽送されて、またもやなにも考えられなくなる。
口惜しい……。
人間族などに……。
しかし、気持ちいい……。
これが快感というものか……。
「……だが、これ以上はご褒美になるしな……。心はいらんが、身体は支配させてもらう。二度と悪さができんようにね……」
ロウの怒張の先端がジャスランの子宮の深い部分をぐいぐいと押しつけた感じがした。
その瞬間、なにかが爆発した。
いや、しそうになった。
ジャスランは存在しないはずの脚を跳ねあげ、胴体だけの身体を限界まで弓なりにした。
「んふうううう、うあああああ」
全身ががくがくと震えて、ジャスランは飛翔していた。
いや、実際には天幕の中の地面の上の布で、人間族の男に犯されているだけなのだが、身体の芯から激しく噴きあがる甘美な陶酔のうねりに、ジャスランは忘我の世界に取り込まれていきそうになっている。
「んはあああっ、え、ええっ?」
いや、その刹那だった。
突如として気持ちよかったものが消滅して、ジャスランは現実に引き落とされた。
違う……。
そうではない……。
完全ではないが、まだ快感は続いている。
ただ、さっきまで到達しようとしていた快感の向こう側から、一気に転落して引き落とされていた。
ジャスランが飛翔しようとしていた高みは、いつの間にかずっと上にある。
そんな感じだ。
「……どうした? 俺に絶頂させて欲しかったのか? 哀願すれば、死ぬ前に一度くらいいかせてやってもいいぞ」
ロウが笑った。
我に返ってかっとした。
「ふ、ふざける……くあっ、あああっ」
しかし、怒鳴ろうとすると、律動を強くされて喋れなくされる。
口惜しい――。
こんな、人間族ごときに――。
そして、股間の中でロウの怒張が膨らんだが感覚がやってきて、子宮に熱いものが迸る感覚が襲った。
精を放たれたのだ──。
屈辱よりも憤怒が全身を支配した。
だが、いきなり心臓をわし掴みされるような切迫感がやってきて、怒りなど吹っ飛んだ。
ジャスランは自分の顔が引きつるのがわかった。
「ひ、ひいいいいっ」
今度こそ、ジャスランは絶叫していた。
本物の恐怖だ──。
絶対に逆らってはならないものに逆らった──。
そんな激情に襲われた。
ジャスランは慌てて、ロウから身体を離れさせた。
ロウはジャスランの腰を両手で押えて犯していたのだが、精を放ち終わったときには、手を離していたので、簡単にジャスランはロウから怒張を抜くことができた。
抜いた瞬間、かなりの体液がジャスランの股間から出たのがわかった。
ロウのものか、それともジャスラン自身のか?
とにかく、ジャスランは必死に芋虫のように身体を捻って、ロウから離れた。
「お疲れさまでした、ご主人様。お掃除しますね……」
すると、さっきのコゼが甘えるような声を出しながら、ロウの股間の前に跪き、大きな口を開いてロウの怒張を咥えるのが視界に入った。
いつの間にと唖然とした。
「わっ、は、早いですわ、コゼさん」
すると、こっちもまた、いつの間にか、すぐそばにいたガドというエルフ美女が残念そうな声を発したのが聞こえた。
この天幕に連れ込まれて四肢を切断されるとき、ほかの女たちが、この“ガド”と呼ばれている女が、エルフ族女王のガドニエルだというようなことを仄めかしていたが、本当だろうか?
エルフ族の女王のガドニエルといえば、何十年間も亜空間に築いたイムドリスという隠し宮に閉じこもって、姿さえ見せることのない絶世の美女という噂のはずだが……。
まあ、絶世の美女には違いないのだが……。
「素早さで、コゼを出し抜くのは難しいぞ、女王」
「まあ、そうね……。わたしは、ロウ様を取り合う競争でコゼとは張り合わないようにしてるわ。張り合わなくても、後で必ずお相手をしてくれるし……」
「でも、動きに無駄がなくて勉強になります。さっきまで一緒に座っていたのに、動いたという気配さえ感じませんでした」
シャングリア、エリカ、そして、人間族の大女だ。大女は四肢のないシャングリアを抱くようにしており、エリカはその横に座っている。
それにしても、ほんの昨夜までは、シャングリアについても、エリカについても、絶望に追い詰められて号泣するくらいに追い詰めてやっていたのに、いまはこうやって立場が逆転している。
呑気そうに会話をしているこの連中に接すると、恥辱に苛まれてしまう。
「そ、そうなのですか?」
呆けた声を出したのは、ガドだ。
この女に接すれば接するほどに、頭の悪そうな印象しかない。こいつが女王だというのは、絶対に言葉のあやか、あるいは、なにかの冗談だと思う。
シャングリアは、女王と呼んだようだが……。
「まあ、そうだな……。さて、じゃあ、今度は調教の時間だ、ジャスラン。覚悟はいいか?」
ロウがコゼの頭をぽんと軽く叩いた。
すると、こっちが唖然とするほどに甘えきった表情のコゼがロウから離れた。
しかし、立ちあがって振り返り、こっちを見たコゼは、一転してジャスランを憎々し気に睨む顔をこっちに向けている。
同じ人物なのかと訝しむほどの豹変だ。
「ところで、ご主人様、ジャスランの足から出ているものなんですか?」
すると、コゼが言った。
足から出ているもの?
なんのことかわからなかったが、ふと見ると、ジャスランの切断されている両方の脚の付け根の部分に、先端が円状になっている白い突起が出現しているのだ。
「うわっ、なんだこれは──」
ジャスランは唖然とした。
「こいつの身体を繋げてぶらさげて吊るすための金具変わりだ。骨を復元して伸ばしながら、形を成形したんだ」
ロウが事もなげに言った。
しかし、ジャスランは目を丸くするしかなかった。
そんなものは、たったいままでなかった──。
少なくとも性交の最中にはなったと思う。
ロウがジャスランから離れた瞬間に、こうなったとしか……。
「えっ、つまりはこれは、ジャスランの骨ということですか?」
コゼがそう言いながら、操作具のようなもので天井から二本の鎖をおろしてくる。
この天幕はかなりの大きさであり、ジャスランを吊るす器機が天井部分に設置してある。
さっきも髪の毛を束ねて吊るす鎖が天井からおりていた。
コゼが二本の鎖をジャスランの脚の付け根にできている丸い円状の部分に金具を嵌めて繋ぐ。
そのまま、逆さ吊りに引きあげられていく。
「うわっ」
胴体に次いで、頭が宙に浮かんだ。
ジャスランは、脚の付け根の突起を使って、大きく股を拡げるように、逆さに宙吊りにされてしまった。
もっとも、拡げられる脚はもう存在はしていないが……。
「うぐっ、は、離せ……」
ジャスランは呻いた。
だが、ジャスランの身体はどんどんと引きあげられ、やっと、立っているコゼやロウの胸の位置に股間があがったところで鎖の引きあげがとまった。
「へえ、エリカやスクルドに性的な公開苛めをしたってくらいなのに、ご主人様が初めてというのは信じられなかったけど、本当だったのね……」
「そうなのですね……。確かに血が混じってますね」
揶揄すよう口調でジャスランの股間をの覗き込むようにして言ったのはコゼ、そして、いつの間にかそばに寄ってきているガドだ。
犯されたばかりの股間を見られる屈辱に、ジャスランはまたもや憤怒に襲われた。
「く、くそおお──。も、もういいだろう──。殺せよおお──。いい加減にしろおお」
ジャスランは絶叫した。
「あんた、そればっかりね。頭の悪さが出ているわよ」
コゼが呆れた感じで馬鹿にする。
ジャスランは歯噛みした。
絶対に殺してやると思った。
どうやって殺していいかわからないが、こいつは許さない。
「面白いな。さっきまで死にたいような感情に襲われているかと思ったら、いまは心が怒りで充満している……。本当に気分屋なんだなあ」
「ひいっ」
ロウが話しかけてきた。
しかし、その瞬間にロウを意識してしまい、またもや全身を恐怖に席巻されてしまった。
「ご主人様、この白い金具のようにジャスランの脚の付け根の切断部から出ているものが、彼女の骨というのは本当でしょうか……? こんな複雑な回復術は、わたしにも……」
ガドだ。
こいつもまた、ジャスランの股間を覗き込むようにしているのだが、ロウが施した得体の知れない施術にびっくりしたみたいだ。
「まあ、練習だ。やれるんじゃないかと思ってやってみたら、あっという間だった。これなら、俺が責任をもって、新しい手足を贈ってやれるからな。愉しみにしてろよ、シャングリア」
ロウが笑った。
「なんでもいい──。早く回復をしてくれ、ロウ──」
すると、大女に抱かれてソファーにいるシャングリアから抗議するような声が戻ってきたのが聞こえた。
しかし、ロウは笑うばかりだ。
その余裕ありそうなやりとりが気に入らない。
「お前を三日後に処刑するまでには、色々と趣向を凝らして苛め抜いてやるから、愉しみにしておけ。お前に泣きべそをかかせるための遊びは、少なくとも十個は準備してる」
すると、ロウが言った。
「うわっ」
意味もわからなかった。
しかし、とにかく、ロウに話しかけられるたびに、恐怖が襲う。
すぐに我に返るのだが、それが口惜しい。
「……さて、じゃあ、まずはひとつ目だ……。人間族の男に小便をかけられて死ぬという屈辱を与えてやろう」
しかし、ロウが宙から白くて薄い布のようなものを取り出して、不意に屈んでジャスランの顔に被せて包む。
「んふっ」
困惑した。
絹……?
おそらく、薄い絹の布だと思う。
どうして、そんなことをするのか意味不明だが、ジャスランは鼻と口をぴったりと絹布を当てられて顔を包まれた。
外れないように顔の後ろで布を縛られ、さらに上から、顔の上下に縄のようなものをかけられる。
「ほら、俺の小便に溺れて死ね」
布越しにじょろじょろと生ぬるい液体がかかり始めた。
それがロウの放尿だと悟ったのは、強い悪臭を感じたからだ。
怒りがジャスランの全身を覆ったが、次の瞬間、それどころではなくなった。
放尿という水分に触れた顔の布がぴったりと鼻と口を塞ぎ、これまではかすかにできた息ができなくなったのだ。
「んがっ、んああああああ」
悲鳴をあげたが、それは大して大きな声にはならなかった。
息ができないことが、ジャスンランが大きな悲鳴をあげることを妨げたのだ。そのあいだも、まだロウの放尿らしきものはかけられ続ける。
やっとそれが終わったと思ったときには、完全にジャスランの顔の布はたっぷりと水分を吸ったまま、ジャスランの鼻の穴と口を塞いでいた。
「んはあっ、はっ、はああ」
ジャスランは必死で息をしようともがいた。
だが、どうしても濡れた布がそれを妨げる。
「暴れ出したな。しかし、苦しくても死ねないのだろう……? だが、死ねなくても、死の恐怖はしっかりと身体に刻まれる……。お前に与える十の罰のうち、最初のひとつは、死の恐怖だ。たっぷりと味わって束の間の死を味わえ」
ロウの声がした。
だが、それよりも息だ。
ほどなく、身体が激しく痙攣をはじめたのがわかった。
「んんんっ、んんんんっ、んんっ」
必死に顔の布をむしり取ろうとしたが、よく考えればその手はすでにないことを思い出した。
頭が沸騰したように熱くなった。
またしても悲鳴をあげかけたが、今度は声が出なかった。
「かっ、はっ、かはっ……」
舌が口いっぱいに拡がる。
意識がだんだんと灰色に包まれていく。
身体の痙攣がさらに激しくなったと思った。
温かいものが全身に流れたと思った。
「失禁したな……。魔族というのは丈夫なんだろう? 死ぬまでにどれだけ苦しめば息がとまるんだ?」
これ以上ないというほどの冷たいロウの声がした。
苦しい──。
怖い──。
息が……。
これが死……。
死ぬということ……。
かなり長いあいだジャスランは、その絶望的な苦悶の中でもがき続けた……。
しかし、意識は突如に切断された。
それでなにもなくなった。
*
はっとした。
ジャスランは、突然に明るいものに包まれた。
視界が不自然だったが、どうやら逆さ吊りになっているからだということを悟った。
急速に記憶が蘇る。
味わった絶望的な苦しさも……。
「はがっ、がっ」
叫ぼうと思ったが、口になにかを嵌められていた。
顔の布はなくなっていたが、その代わりの球体のようなものを口に入れられて、頭の後ろで外れないように固定されているのだ。
「案外に蘇生まで早かったな。もっと時間がかかるものかと思ったぞ、ガド?」
ロウの声──。
今度は背中側にいるみたいだ。
逆さ吊りの視界には、三人ほどの人間の脚がある。
おそらく、ロウとガドとコゼだろう。コゼだけは前側で、残りのふたりは背中だ。
三人の位置は、そのままなのような気がする。
もしかしたら、あの“死”から、本当にそれ程の時間は経っていないのだろうか……。
「完全な死ではないのですから、肉体が死んでも蘇生のための光魔道をかければ、あっという間ですわ、ご主人様」
ガドの嬉しそうな声がした。
どうでもいいかが、どうして、このエルフ女はいつもこんな能天気な話し方をするのだろう。
「まあ、頼むぞ、ガド……。拷問の手伝いなど、女王陛下にさせるようなことじゃないけど、こいつに罰を与えるためには、ガドの蘇生の力が必要だ。その代わり、次はガドから最初に相手する……。ジャスランへの罰の二つ目には、今度は時間もかかるしな……。だから、それまでの時間潰しが必要だ。そのあいだに、みんなを抱かしてもらっていいか? 実はすでに、かなりの淫気を使ってしまってな。補充も必要なんだ」
ロウが笑った。
すると、「んんん」と嬉しそうな奇声をだしながら、顔の下のガドの脚がいきなりばたばたと数回足踏みをした。
「も、もちろんですわ、ご主人様──。ご褒美などなくても、ガドはご主人様のために何でもします。あっ、だけど、ご褒美があれば、嬉しいです」
そして、ガドが嬉々とした口調で声をあげる。
「だ、だったら、次はあたしに──。あたしもご主人様のために何でもします。こんな魔族いくらでも残酷に殺してみせます。なんでも言いつけてください」
すると、コゼが焦ったように声をあげた。
ロウがまたもや声をあげて笑う。
「わかっているよ。言っておくが、お前たちもだからな。向こうの連中は連中で、後で抱きに行くが、ここで相手をしてもらうぞ」
ロウが声をあげた。
どうやら、ソファに座っている女たちに声をかけたみたいだ。
「そ、それはいいけすけど、ロウ様も、昨夜から全く休んでないのではないですか? 大丈夫ですか?」
エリカの声だ。
「問題ない」
ロウが言った。
そのとき、突然に股間になにかをかけられた。
いきなりでびっくりしたが、その独特の臭気に覚えがあった。
ジャスランははっとした。
「その感じだと、なにを股ぐらにかけられたのかわかったのか? お前が亜空間にしまっていたものだ。これをスクルドにかけて、いたぶったらしいじゃないか。同じ苦しみを味わってもらうぞ。死ぬまでに、お前にやりたいことの二つ目は、痒み放置責めだ。多分、うるさいだろうから、ボールギャグを事前に装着してやったんだ。たっぷりと愉しんでくれ」
ロウが言った。
そのときには、猛烈な痒みが股間に襲い掛かってきていた。
痒い──。
痒いなんてものじゃない──。
痒いいいい──。
「んがああああ」
ジャスランは口に嵌められているボールギャグらしきもの越しに絶叫した。