【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ジャスランをひとまず傭兵たちに引き渡してから、一郎が向かったのは、ジャスランに身体を痛めつけられた女たち、つまりは、イライジャとスクルドとアルオウィンが養生している天幕だ。
一郎たちがモーリア男爵からあてがわれた天幕は、大き目の天幕が十張ほどであるが、そのうちの六張をブルイネンたち親衛隊が使用し、残りはさっきの天幕が一郎用、これから向かう天幕を養生用として使うほか、残り二つを女たちに分けて使ってもらうことにした。
とはいっても、いつもそうなのだが、夜になると女たちは一郎の天幕に集まって寝る傾向があるので、天幕をあてがっても使わない女たちは多そうだ。
一郎が把握している限り、自分の天幕に戻ったのはユイナだけであり、さっきの天幕にいなかった残りの女たちは、こっちの養生用とした天幕に集まっているはずだ。
また、一郎たちが宿営している天幕は、モーリア隊の中心にあり、モーリア男爵隊と彼が雇った傭兵たちによって囲まれているが、この場所そのものについては、呼ばれない限り立ち入らないように、男爵が全員に申し渡した。
従って、一郎たちが歩くほかには、人の気配を近くに感じない。
辛うじて、遠くの樹木の外側から、男爵の兵や傭兵たちが夕餉を支度する声が聞こえてくるだけだ。
あの遠くの喧噪の中に、傭兵隊長に連れていかれたジャスランも混じっているのだろう。
一郎が養生用の天幕に向かうと言うと、当然のように、三人娘とガドニエルもついてきた。
ガドニエルなど、性交の余韻で足元がふらついていたので、そのまま休んでいろと言ったが、断固として一緒に来るときかなかった。
本来であれば、エルフ族の親衛隊に世話をされるべき女王なのだが、それらを断わり、逆に一郎に家人のようにかしずいてくる。
まあ、可愛いものだ。
周囲はすでに夕方の薄暗さを迎えていた。
夜のジャスランとの対決に続き、昼間のうちに男爵との交渉を終え、さらに、ジャスランへのお仕置きを長々とやって、いまはもう夕方になっていた。
その時間のあいだに、モーリア男爵は、すでに隊を半分に縮小し、国境内の自領に向かわせていた。
一郎の求めに応じて、王国内の情報を集めるためだ。
ジャスランに操られて、ずっとこの森に入りっぱなしだった男爵は、国境の内側であるハロンドール国内のことを全く掴んでいなかったのである。
男爵が知っている最後の情報は、アネルザの実家であるマルエダ辺境候が近隣の貴族軍を集める傍ら、一郎の身を確保すれば、すぐさまに辺境候に知らせて、必ず一郎を合流させて欲しいという要求を受けたことだそうだ。
十中八九、辺境候がチャルタとピカロに操られた影響だと思う。
さもないと、一介の冒険者上がりの下級貴族でしかない一郎の身柄を辺境候が欲しがるわけがない。
「入るよ」
一郎は女たちとともに、養生用天幕に入った。
一郎たち用の四個の天幕については、他人が勝手に出入りできないように、各天幕には施錠としての結界をガドニエルに作らせてはいるが、一郎たちについては問題ない。
出入口になっている覆いを開いて中に入る。
内側は、一郎の亜空間収納で運んでいた簡易寝台が五個ほど並んで、さらにさっきの天幕同様にソファが並べられている。
食べ物、飲み物、無論、病人が口にできるような柔らかいものもふんだんに揃えて置いていた。
ここに集まっていた女たちも、それなりに口にしたようである。
ちょっと安心した。
「ロウ様──」
「ご主人様──」
最初に気がついたのは、ソファに腰掛けていたミウとイットだ。
アルオウィン、イライジャ、スクルドについては、寝台に横になっていた。もっとも、三人とも、もうかなり回復していると思う。
ガドニエルほどではないが、ミウもすでに、かなりの治療術の遣い手だ。
横になっていはいたが、三人ともすでに元気になっているように思えた。念のためのステータスを覗くが問題はなさそうだ。
まあ、アルオウィンはジャスランにうまく立ち回って、ほとんど身体の故障はなかったから、そもそも元気だ。
衰弱していたのは、失明と合わせ、熱気の中で幾日か不眠に近い強制労働を強いられたイライジャと、唐辛子汁で内臓まで痛めつけられたスクルドなのだが、なんとか回復したようだ。
もっとも、スクルドの両腕だけはまだない。
これはジャスランの操りによってエリカが切断したものだが、一郎の指示によって、ミウには回復を許可しなかった。
まあ、シャングリア同様に、スクルドの両腕も一郎が生やすつもりだ。
ただ、しっかりと腕のないスクルドを愉しんでからだが……。
「あっ、ご主人様、こ、今回のことはわたしのせいで……」
そのとき、横になっていたスクルドが起きあがって、寝台の上で正座をして頭を深々と寝台につける仕草をした。
どうやら、今回の騒動の原因の一端が自分にあり、しかも、ジャスランと揉めたことを下手に秘密にしようとしたことから、ジャスランの罠に迂闊に嵌まることになったという自覚はあるようだ。
それはいいが、気になったのは、スクルドが一郎の後ろにいるエリカやシャングリアに、まったく声を掛けようとしていないことだ。
一郎は嘆息した。
スクルドにはこういうところがある。
一郎を一途に慕ってくれるのは嬉しいのだが、そもそも、そのスクルドの性格が今回の騒動を呼んだといっていい。
おそらく、スクルドは、今回のことを隠したというよりは、端から興味がなかったのだろう。
だから、忘れていたというよりは、ジャスランの憎悪など気にも留めてなかったのだと思う。
そして、いまもそれが出ている。
しかし、本来であれば、一郎に謝罪するよりも先に、スクルドは迷惑をかけたほかの女たちに謝らなければならないはずだ。
エリカにもそうだし、シャングリアにもそうだ。
特に、シャングリアなど、ジャスランの炸裂環により寸刻みで両腕と両脚を爆破して千切られるという恐怖を受けた。
一郎がマーズに指示して、シャングリアを連れ出したのは、ここからではなく、一郎たちがさっきまでいた天幕からだ
男爵たちとの交渉があったので、念のためにマーズとシャングリアについては、そっちで待っていてもらっていたのである。
だから、実はジャスンランを捕らえてから、スクルドとシャングリアが顔を合わせるのは、一郎と同様に、これが初めてのはずなのだ。
「アルオウィン、今回のことはありがとう。アルオウィンのおかげで全員の命が助かったと思う」
一郎はわざと声をかけてきたスクルドを無視して、気配で起きたらしいアルオウィンに声をかけた。
「あっ、いえ……」
アルオウィンが顔を赤らめる。
ガドニエルにはすぎた部下であるアルオウィンは、パリスとダルカンから救ってくれたのを恩に思ったのか、自ら一郎を訪ねて性奴隷になりにきた。
しかも、かなりのおしゃれをして……。
当初は、一郎はそんなに真面目にならなくてもいいと断ったのだが、そうではなくて、一郎の女のひとりになりたいのだと、土下座せんばかりにお願いされてしまった。
結局、一郎はアルオウィンを受け入れ、いまは、一郎の女のひとりだ。
あのノルズもそうだが、この百戦錬磨の女諜報員も、一郎の前では
「あのう、ご主人様……」
一郎が移動したために背中側になっているスクルドが再び声をかけてきた。
だが、一郎はまたしても無視した。
もちろん、あとでしっかりと慰めるが、一郎としても罰を与えないと、ほかの女の手前、むしろ歪なしこりを残すことになる。
もっとも、罰とはいっても、少しばかり意地悪に無視することくらいしか思いつかない。
いつもの「調教」だと、そもそも、あれ自体が本来は「罰」のようなものなのではあるが、一郎としては、自分の性癖を剥き出しにした愛し方であり、心情としては罰ではなく、心からの愛情表現のつもりだ。
誰がなんと言おうと……。
だから、本気で罰を与えるときとは、混在したくはないという気もある。
まあ、どうするか……。
とにかく、とことん無視してみるか……。
一郎は、イライジャに視線を向ける。
「見えるようになったか? 具合はどうだ、イライジャ」
イライジャは、一郎がわざとスクルドを無視しているのがわかったのだろう。口元でくすりと笑ったのがわかった。
「問題ないわ……。だけど、まだ身体もだるいわね。ミウによれば、かなり酷かったみたいね。だから、今夜は手を出さないでね」
「残念だ……。だったら、今回の功労賞セックスは、アルオウィンだけにするか。アルオウィン、後でいいな。たまにはふたりきりだ」
一郎は軽口を言った。
「は、はいっ」
アルオウィンが顔を真っ赤にした。
一郎はちょっと笑ってしまった。
「あのう……」
そのとき、またもやスクルドの声がした。
今度はかなり涙声になっている。
結構、無視が効いているのか?
一郎は思った。
「ふ、ふたりきり──。ア、アルオウィン、ちょっとその権利を……」
「こんなときに、女王権力を使わないのよ、ガド──。慎みなさい。大して活躍できなかったんだから」
「活躍しましたわ、コゼさん。わたしなりに……」
「はいはい」
ガドニエルとコゼが軽口を言い合った。
それにしても、人見知りの強いコゼが、このガドニエルとはあっという間に仲良くなったものだと思った。
まあ、それも、ガドニエルの魅力なのだろう。
「ロウ様、イットをマーズのところに送るんですよね」
そのとき、エリカが不意に声をかけてきた。
「ああ、そうだった。イット、頼みがある……」
一郎は簡単にイットに説明した。
ジャスランには、一郎たちに対する復讐の見返りに、十の難行として、いまは四番目の輪姦をさせているということ……。
そして、傭兵たちが暴発しないように、一応の見張りをする必要があるが、いまはマーズが行っていて、一緒に見張りをして欲しいと説明した。
これは夜通しの仕事になるということも付け加える。
「了解しました」
イットはすぐに立ちあがった。
「待って、ミウも一緒に行って。後でわたしが代わるから……。魔道を遣う者が必要になるかも……」
すると、エリカが横から口を挟む。
魔道遣いがいた方がいいことについては、確かにもっともだと思ったが、夜通しの仕事にミウを巻き込むつもりがなかったために、ちょっと一郎は躊躇した。
しかし、なんとなく、エリカの口調に断固としたものがある気がして、一郎はそのままにさせた。
イットとミウが天幕を後にする。
すると、つかつかとスクルドの座る寝台に歩いていったエリカが、スクルドの胸倉を掴んで力いっぱいに平手打ちをした。
「あびいっ」
容赦のない打擲だった。
吹っ飛ばされたスクルドは、腕がないので庇うこともできずに、そのまま寝台の下に転げ落ちた。
そのスクルドをエリカは片手で掴んで引き起こし、再び平手打ちにする。
「ひぶうっ」
今度は寝台に飛ばされたスクルドが寝具の上に横倒しになる。
「いい加減にしなさいよ、スクルド──。あんた、ロウ様に謝るのはいいけど、シャングリアにひと言もないというのはどういう了見よ──。そもそも、ここで待っているあいだ、イライジャやアルオウィンに謝ったんでしょうねえ──。あんたが、ジャスランとのことを黙ってなければ、彼女たちはあんなことにはならなかったのよ──」
ものすごい剣幕だ。
そして、一郎は、エリカがこのために、イットだけでなくミウも天幕から追い出したのだと悟った。
ミウにとってスクルドは魔道の師匠だ。
その彼女の前で、スクルドを叱り飛ばしたくはなかったのだろう。
「あっ」
寝台に倒れていたスクルドがやっとはっとした顔になった。
その顔には、エリカの平手による痣で赤くなっている。
スクルドは慌てたように、シャングリアやイライジャたちに向かって、寝台の上で頭をさげる。
「シャングリアさん、どうか……」
スクルドが頭をさげたが、そのスクルドの襟首を後ろから掴んで、エリカが地面に放り捨てた。
「きゃああああ」
スクルドがひっくり返る。
しかも、丈の短くない貫頭衣が捲れて、スクルドの白いお尻が露わになった。
一郎は不謹慎ながらも、ちょっと欲情しそうになった。
それにしても、すごい剣幕だ。
怒ったときのエリカは、こんなに怖いのかと、一郎は改めて認識してしまった。
「高いところから、謝るってなによ──。地面におりなさい──」
エリカが怒鳴った。
あまりのエリカの激怒に、いつもの人を食ったような天真爛漫さは影をひそみ、スクルドも顔を蒼くしている。
そして、スクルドが姿勢を整え直して、その場に正座をして頭をさげる。
「ま、まずはシャングリアさん……。申し訳ありません。全部わたしが悪いんです……」
スクルドが申し訳なさそうに言った。
本質的には優しいし、思いやりもあるスクルドだ。ただ、一郎が絡むと、どうにもほかのことがみえなくなるだけのことなのだ。
いまのスクルドは、本気で謝っている。
「いや、待ってくれ、スクルド──。頭をあげてくれ。謝ってもらうことはなにもない。わたしがジャスランに囚われて、ひどい目に遭ったのは、戦士としてのわたしの失敗だ。むしろ、わたしの不面目のせいで人質になってしまって、スクルドにも迷惑をかけた。すまなかった。もちろん、エリカにも申し訳なかった」
すると、シャングリアがスクルドと同じように、地面に膝をつけて深々と頭をさげる。
いわゆる、“土下座ポーズ”だ。
これには、一郎も驚いた。
「そ、そんな……」
逆に謝られてしまい、スクルドは戸惑っている。
「とにかく、お互いだから、謝らなくてもいい……。頭をあげるがいい。さもないと、わたしも、頭をあげられない」
「シャングリアさん……」
スクルドが頭をあげた。彼女は呆気にとられた顔になっている。
しかし、すぐにはっとしたように、今度はイライジャに身体を向けた。
「ふふふ、そう言われると、わたしもスクルドさんに謝ってもらうわけにはいかないわね。もともと、わたしの不手際が原因だものね。男爵が操られると気がつかずに、交渉に応じてしまったのはわたしの判断よ……。みなさん、ごめんなさい。だけど、エリカ、寝台から引きずり落とすのは堪忍よ。まだ身体がだるいのよ……」
イライジャがその場で頭をさげた。
軽口は、周りを和ませるためだろう。
「そ、そんなことしないわよ、イライジャ」
エリカが赤くなっている。
「あっ、だったら……」
スクルドは、今度はアルオウィンの寝台に向かって向き直る。
だが、スクルドが言葉を発する前に、アルオウィンもまた、先に口を開く。
「もちろん、わたしの失敗でもあるわね。プロの諜報員として、あんなにあからさまな罠に嵌まるなんて恥ずかしいわ……。みんなとの最初の仕事だから、絶対に成功させたかったんだけどね……。みなさん、申しわけありません……」
アルオウィンも頭をさげた。
一郎はぱんと手を叩いた。
「じゃあ、これで手打ちとしよう。いずれにしても、俺たちは家族だ。いちいち失敗したことを謝り合うのはやめよう。失敗にはな──」
一郎は大きな声で言った。
頭をさげ合っていた女たちが頭をあげる。
「あ、あのう、でも……」
スクルドは戸惑っている。
しかし、一郎はスクルドに近づいて、短くなった腕に手をやってその場に立たせる。
「終わりだと言っただろう。失敗については謝罪もなしだ。今回のことについてはこれで終わりにしよう。今回のことについてはね……。さっきは無視して悪かったな。今回の一件に対する罰のつもりだったが、エリカが叱ってくれたんで、もうなしだ」
一郎は“今回”という言葉に力を込めて言った。
しかし、スクルドにはなにも伝わらなかったようだ。
「ご、ご主人様……」
スクルドは眼に涙を浮かべている。
「いいえ、まだです──」
そのとき、エリカが横から強い口調で口を挟んだ。
「エリカ、もういいじゃないのよ。ご主人様も手打ちって言ってるんだから」
たしなめの言葉を言ったのはコゼだ。
しかし、エリカは首を横に振った。
「そうじゃないの──。まだ、わたしの謝罪がまだよ。スクルド、操られていたとはいえ、あなたの腕を切断したのはわたしよ。腕がまだないから、わたしの顔でも身体でもどこでも思い切り蹴りなさい。そのために本気で平手をしたのよ。あなたが蹴ってくれなければ、わたしはあなたと元の仲に戻れない。お願い、わたしを蹴りなさい。魔道でもいいわ。好きにして──。ごめんなさい、スクルド──」
エリカがスクルドの足元に土下座をした。
「エ、エリカさん?」
スクルドはびっくりしている。
一方で、一郎はちょっと笑ってしまった。
だが、どこまでも律儀な性格なのだろう。
エリカらしい……。
「……言われたとおりにしてやれ、スクルド……。確かに、エリカとしては、お前に叱られないと気が済まないだろう。なにも思うことがないなら、むしろ、エリカを打ってやれ。電撃でいい」
一郎は躊躇しているスクルドに言った。
スクルドは、少し迷ったようになっていたが、すぐに意を決したように小さく頷いた。
そして、うずくまっているエリカに電撃を放った。
「うぎゃああああ、ひぎいいいいいい」
土下座をしていたエリカがその場で身体をのけぞらせて絶叫した。
しかし、すぐに電撃はやんだみたいだ。
エリカが脱力する。
「よし──。じゃあ、今回の件は、これで全員が恨みっこなしだぞ。誰も何も悪くない。悪いのはジャスランだ。もう、スクルドにも文句を言うな……。さて、じゃあ、スクルドには改めて訊ねたいことがある。まずは、ここに正座してもらおうか」
一郎はそう言って、亜空間から“拷問用”の特殊な台を出した。
この世界には畳はないが、畳み半分くらいの大きさであり、周囲を金属で囲んだ枠で、床の部分には三本の細い金属の丸い管を横に並べてある。
つまりは、そこに正座をすると、正座をした膝や脛に管が喰い込んで、痛みが走るようになっているというものだ。また、台の周囲には、金属の縦棒があり、それが天井方向に膝下くらいの高さまで突き出ている。
「えっ?」
スクルドがちょっと戸惑ったのがわかった。
しかし、一郎は容赦なく、収納術でスクルドから貫頭衣を奪って全裸にする。
「きゃっ」
いきなり裸にされ、スクルドは本能的に裸体を隠そうとする仕草をする。しかし、腕がないので、片脚を少し曲げて股間を隠すような恰好になった。
「早くしろ、スクルド。一度で命令をきけないのか?」
わざと冷たく言った。
「い、いえ、もちろん、ご命令には……」
スクルドが腕のない裸身を金属管の上に正座させる。
座ると痛みが走るのか、ちょっとだけ、スクルドが顔をしかめた。
「あ、あのう……。手打ちじゃなかったんですか……? これはスクルドの罰ですか?」
エリカが心配そうに口を挟む。
だが、一郎は首を横に振る。
「もちろん、今回のことは終わりだ。一切の罰も改めて与えるつもりもないし、そもそも、全責任は俺にある。ジャスランの件で、スクルドに罰なんて与えるつもりはない」
「だったら……」
なおも口を挟もうとするエリカを制して、一郎は亜空間から大きな石の板を出した。
しかも、スクルドに座らせている金属台の真上にちょうど嵌まるように出現させる。石の板にはかなりの厚みがあり、台の周囲からのところどころから突き出ている縦棒に嵌まるようになっているので、金属台の上から落ちることはない。
そして、石の板と金属台のあいだには、スクルドの脚があり、凄まじい重さをスクルドの正座の脚に加えたはずだ。
「あっ、ぐうううっ」
さすがにスクルドが呻き声をあげた。
だが、一郎は二枚目の石の板をさらに出した。
「ああああああっ」
全身を真っ赤にしたスクルドが途端に、脂汗を身体中から放出し始める。
一郎は構わず、その石の板の上に無造作に腰掛けた。
「あがああああ」
スクルドが全身をのけぞらせて悲鳴をあげた。
だが、一郎は倒れかけるスクルドの首に鎖付きの首輪を出現させると、スクルドが上体を倒せないように、鎖でぐっと首を引き寄せる。
「ロウ様?」
「ご主人様?」
「えっ、ロウ?」
さすがに三人娘がびっくりして声を出す。
ほかの女たちもいきなりの一郎の蛮行に驚いている。
しかし、一郎はそれを制する。
「スクルド、ジャスランの件は終わりだと言ったけど、別件は違う……。お前、俺に隠していたことがあるんじゃないか? ジャスランが訊問のときに口にしてたんだけど、王都で変わったことしたんだってなあ。園遊会で令嬢を集めたとか……。さて、詳しく語ってもらおうか」
一郎は言って、わざと腰掛けている石の板に体重をかけて大きく揺らしてやった。
もちろん、これは本気の罰ではない。
それにかこつけた「調教」遊びだ。
まあ、本気の罰がただの「無視」で、本気でない罰は「石抱きの拷問」とは、やっぱり一郎も随分と歪なのかもしれないが……。
「ひぐううう」
そして、さすがに、スクルドも顔を引きつらせて、苦悶の悲鳴をあげた。