【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ほげええええ」
森の中にジャスランの絶叫が響き渡っている。
周りには、昨夜からずっとジャスランへの刑罰に関わっている傭兵たちが集まっていて、一郎はその一角にテーブルクロス付きのテーブルと椅子を運ばせ、少し離れた場所から、女たちの幾人かと、刑罰執行を監視する態勢をとっていた。
ジャスランへの刑は、二日目の夕方を迎えている。
一日目については、一郎が直接に、報復としての三個の苦悶を与えたが、四個目の輪姦の刑を行った昨夜からは刑執行の主体は大勢の傭兵たちに変わっていた。
つまり、一郎の役目はジャスランに拷問を施すことではなく、刑罰の要領を傭兵たちへ指示することになったのだ。
いまもそれが続いている。
どうしてそうなったのかというと、四個目の輪姦でジャスランの凌辱にすっかりと味をしめた傭兵たちが、是非とも自分たちも直接にジャスランに復讐したいと言ってきたのだ。
ジャスランというどんなに凌辱しても心も折れないし、決して死ぬことのない対象を性的にいたぶるのが愉しくて仕方がなくなったのだろうと想像しているが、一応は傭兵隊長は、操られて一郎たちと戦った自分たちもジャスランの被害者であり、是非とも報復に参加したいという大義名分を準備してきた。
一郎はそれを許し、いまも続いているというわけだ。
いまは、七個目の刑の準備だ。
三個目の刑罰のときにジャスランに刻んだ隷属の魔道の主人は、一時的に傭兵隊長に移していたが、その傭兵隊長の「命令」で地面に置いた木製の台でジャスランに舌を出させ、たったいま、大きな釘がジャスランの舌の真ん中に打ち抜かれたところである。
もっとも、血は出ない。
封印しているとはいえ、血紋術の遣い手のジャスランには、出血を伴う刑罰は危険だ。
どんな方法で生命を繋いで、逃亡するかわからない。
ジャスランが苦しがって、釘の刺さった舌を引き抜いても、舌が裂けるだけで血は流れないようになっている。
そんな風にガドニエルに魔道をかけさせているのだ。
傭兵たちには、離れている一郎たちから、ジャスランの姿が見えるように、前を遮らないようにさせているが、ジャスランは号泣しながら悲鳴をあげている。
あの悲痛な姿が、時間が経ってほとぼりが過ぎれば、うって変わって剥き出しの憎悪を周りにぶつけてくるのだから、なかなかに心が強い女魔族だと思う。
だから、傭兵たちも面白がっているのだろう。
「んがああああ、んげええええ」
太い釘を打っている舌に、さらに釘が打ちつけられている。
それだけでなく、金属の細い杭を両肩と腿に打たれようとしていた。あれは指示していないので、傭兵たちの責めの追加だろう。
あれで血が流れると、さすがに鼻白む光景かもしれないが、どうやっても血は出ないので、凄惨な状況でも少しは耐えやすい気がする。
いずれにしても、こうなってしまえば、傭兵たちに刑の執行役を変わってよかったと思う。
昨日の状況では、一郎の女たちに与えたジャスランの仕打ちに、怒り心頭に達していたので、およそ考えられないくらいに残酷に殺してやるつもりだったが、ひと晩がすぎてしまうと、憎悪も長続きしない気持ちになってきた。
さっさと殺して、もう始末をつけたくなったが、傭兵たちが代わってくれたので、予定通りに「十大地獄巡り」を継続することにしている。
そういう意味では、一郎も随分とこの世界に染まって、冷酷になったつもりだったが、まだまだだと思う。
女を嗜虐して愉しむくせに、単純な拷問は嫌いみたいだ。
ジャスランに対する仕打ちを眺めても、まったく性欲は湧いてこない。
いまは、責任者として立会はしているものの、ジャスランの悲鳴は聞こえても、喋る言葉は聞こえないくらいに、このテーブルの距離も離している。
それはともかく、いまテーブルクロスをかけられているこのテーブルに同席している女たちは、ガドニエルとシャングリアとコゼとエリカだ。
それに、「雌犬」が一匹……。
ほかの女については、天幕で休んでもらっている。
……というよりは、ほかの女たちについては、合間合間に抱いているうちに、抱き潰れてしまったのだ。
特に、昨夜のうちにひとりずつ抱いたアルオウィンとユイナについては、前半夜に抱いただけなのだが、さっき覗いたけど、いまだに足腰が立たなくて怠そうにしていた。
最近では仮想空間の中で、しかも複数人同時に抱くことが多く、まともに現実空間で、さらに、一対一で相手をしてもらったのは久しぶりだった。
しかし、一郎の本気を集中的にぶつけると、あれだけダメージがあるのだと、改めて知ってしまった。
気をつけようと思った。
とにかく、ジャスランを捕らえて挨拶代わりの窒息責め、痒み責め放置、歯を溶かして拷問訊問、奴隷の首輪の装着のための拷問……。
そのうち、訊問については十大地獄には数えなかったので、昼間のあいだに三個の刑の執行──。
次いで、四個目の刑としての人間族の傭兵たちによるひと晩がかりの輪姦……。
その前半夜のあいだにアルオウィンとユイナを抱き潰した……。
これが一日目だ。
そして、二日目の今日については、まずは明け方に、輪姦の見張りをしていたエリカとコゼに失禁プレイの悪戯を仕掛けて抱き、その足で一度、ブルイネンのところに向かって、数名ずつ仮想空間に連れ込んで、親衛隊たちの全員を順番に抱かせてもらった。
彼女たちも、ジャスラン戦のときには活躍してもらった功労者だ。
そのご褒美だ。
一郎ごときが抱きにいくのが嬉しいというのは恐縮するが、彼女たちがそれで心から喜んでくれるので、しっかりと相手をした。
それに、一郎としても定期的に大量の淫気を吸入する必要があるという、切実な都合もあるし……。
ともかく、こっちについては、仮想空間の力で現実時間を使わないようにしたので、ブルイネンを含めた三十一人の全員に精を放った割には、実際の時間経過はほとんどないし、親衛隊たちに体力的な影響もあまり残らなかった。
次いで、天幕に戻り、女淫玉を挿入放置されて、狂いそうになっていたスクルドの相手をした。
すなわち、発狂しそうなほどの性の疼き地獄から彼女を開放し、さらに目の前で小便と大便をさせたのだ。
犯しただけでなく、放尿と糞便をわざと目の前でさせ、さらに、お尻の穴を指で洗ってやったときには、すっかりとスクルドも甘え切ってしまったみたいになった。
その後、スクルドを改めて、たっぷりと犯した。
スクルドが一度失神してしまう頃には、やっと完全に夜が明けたので、輪姦を終了させるためにジャスランを受け取りに行った。
そのときに傭兵隊長からジャスランの刑執行を手伝いたいと申し出があったのだ。
そして、彼らに任せることにしたというわけだ。
だから、そのまま五番目の刑の執行となった。
五番目の刑は、ジャスランに電撃の魔道を浴びせることが可能な張形付きの貞操帯を嵌めての運動責めにしたが、それは一郎たちではなく、傭兵たちに委ねることになった。
すなわち、口で咥えることのできる球体を放り投げ、犬のように口で取りに行かせるのだ。
しかも、ジャスランがその仕打ちに怒って行動を拒否したら、操作盤を押しさえすれば、いくらでも強い電撃が張形から流れるという仕掛けである。
気の強いジャスランのことだから、電撃くらいでは言うことを従わないことも予想したが、案外に意気地がなくて、見学していると数回電撃を股間に流されただけで、必死に球体を追うようになっていた。
ただ、輪姦から開放されて、休むことも許されずにさせられる運動責めだったので、それはそれはつらそうだった。
だが、汗みどろになりながらも、球体を追い掛け、張形を振動されたり、わざと口で咥え難い場所に球体を投げられたりして、電撃を浴びせられるジャスランの姿に、一郎も満足した。
その場はしばらく傭兵たちに任せ、五番目の刑の見張りについては、ミウとイットとマーズの“童少女トリオ”を呼んで託した。
これが今日の午前中の半日だ。
その半日のあいだに、シャングリアを抱き、エリカとコゼをまた抱き、イライジャを抱き、ガドニエルを抱き、またスクルドに悪戯をして、もう一度、シャングリアとエリカとコゼを抱くという感じで、ひたすらに女たちを代わる代わるに抱きまくった。
陽が中天に達する頃には、運動責めを終えたジャスランを檻に入れて、マーズたち三人が戻ってきたので、その三人も抱いた。
すると、気がつくと、女たちの全員が動かなくなってしまっていた。
仕方なく、ブルイネンを呼び出して一時的に一郎の護衛を代わってもらい、六番目の刑執行の監督を一郎と一緒にする役目を親衛隊に頼んだ。
六番目は、ジャスランを樹木の枝に宙吊りにしての延々に続けるくすぐり責めだ。
ジャスランの全身を淫魔術で、極限まで敏感にさせ、傭兵たちに四方八方から羽根でくすぐらせたのだ。
全身からあらゆる体液を垂れ流しながら、憐れみを乞いながら、ひたすらに笑い狂うジャスランは、まさに残酷なショーだった。
もっとも、こっちについては、一郎の性欲も刺激された。
だから、刑罰を見物しながら、ブルイネンとふたりの護衛を交代で仮想空間で抱くということをした。
仮想空間ですることは、現実空間の時間経過をほとんどなしにできるので、そういうこともできる。
だが、仮想空間での性交も、女たちの疲労はかなり軽減できるものの、まったくなくなるわけじゃない。それに、時間が関係なくなると、ついつい、一郎の責めもしつこくなってしまう。
三巡もすると、ブルイネンたちも動かなくなった。
その後は、少しばかり自重した。
そして、いまが七番目の刑執行というわけだ。
天幕に戻ると、三人娘についてだけは復活していたので、一郎の護衛として同行してもらい、ついでにガドニエルとスクルドを強引に連行してきて、いまに至っているというわけだ。
「ふう……」
ガドニエルが気怠そうに大きく息を吐いた。しかも、まだ身体がつらそうで、椅子の背もたれに身体を預けるような体勢をしている。
一郎は苦笑した。
「しっかりしろよ、ガド。外ではしっかりと女王をやってもらう約束だ……。傭兵たちも見ているぞ。エルフ族の女王なんて存在がそばにいるなんて珍しいからなあ」
一郎はガドニエルに声をかけた。
「あ……はい、ご主人様……」
ガドニエルが背筋を伸ばす。
だが、まだまだ一郎に犯された性の余韻に浸って、ちょっと気疲れしたようなガドニエルは、ぱっと見ると妖艶すぎて怖いくらいだ。
まあ、一郎の女たちは、ガドニエルに限らず、全員が美人、美少女であり、男の性欲を刺激する色香を発揮する。
最年少のミウでさえ、最近は色っぽくなってきた。
こうやって、距離を置いて座っているだけで、傭兵たちもちらちらとこっちを見ているのがわかる。
やはり、注目を集めるのだ。
「やっぱり、女王は休ませてやったらどうだ? しばらくは蘇生が必要なことはないのだろう?」
「そうね。魔道については、ガドやミウほどではありませんが、ある程度は、わたしでも対処できますよ。それに……」
横から声をかけてきたのは、シャングリアとエリカだ。
そして、エリカは声をかけたあとで、ちらりとテーブルクロスの下に視線を送った。
また、三人娘については護衛として来てもらったが、ガドニエルと一郎と同じテーブルについてもらっている。
コゼも含めて、大き目の丸テーブルを囲んでいる態勢だ。
配席は、ジャスランに向かう正面にガドニエルと一郎。
一郎のすぐ右はいまは空席で、さらに右にコゼ。
ガドニエルの左にエリカとシャングリアというかたちである。
一郎のすぐ右隣が空席なのは理由がある……。
「そうだな……。蘇生が必要になってくるのは、この後の八番目の刑だしな。それまでガドは休んでいるか……。シャングリア、ガドを天幕に送っていって……」
「いえ──。大丈夫です。問題ありません。自分にもう一度、魔道かけますね」
ガドニエルが慌てたように顔を引き締めて、なにかの魔道をかける仕草をした。
ちょっとガドニエルが元気を取り戻す。
おそらく、体力増進の魔道でも自分にかけたのだろう。
「そろそろ、始まるみたいですよ」
そのとき、コゼが声をかけた。
一郎は視線を前に向ける。
地面の上の木製の台座に、舌とともに切断されている四肢の付け根を打ち付けられているジャスランの近くに、大きな樽が運ばれてきたところだった。
樽の中身はわかっている。
唐辛子汁だ。
それをこれから、ジャスランの尻に注ぎ込むのだ。
これが、七番目の刑なのだ。
もともと、地面を這うようなくらいの長さしかない手足のジャスランに抵抗など不可能だが、舌を釘で床の台に打たれてしまっては、さらに身動きはできないだろう。
傭兵隊長には、その状態でジャスランに唐辛子浣腸を施して、激しく振動をする魔道具のアナル栓としての張形で肛門を封印し、少なくとも一ノスは唐辛子で苦しめてから排泄をさせるように言っている。
その通りにするはずだ。
「ひべえええええ、んべええええ」
ジャスランの泣き叫ぶ声が響く。
おそらく、傭兵たちがジャスランに、これからなにをされるのかを説明したのだろう。
一郎が渡した大きな浣腸具には、順番に真っ赤な唐辛子の液汁が吸引されていき、傭兵たちがこれ見よがしに、ジャスランの視界内に持っていき、ジャスランに見せている。
また、昨日のエリカたちにやらせた拷問のときに、エリカが眼を潰したジャスランだったが、今日の午前中には薄っすらとだが視界も回復してきたようだ。
つくづく、魔族というのは丈夫な種族なのだと、改めて知った。
そういえば、あのパリスについても、完全に殺すのは手間をかけたのを思い出す。
それははともかく、傭兵たちが持っている巨大浣腸具は五本だ。
それを使って、途中の排泄を許さずに、樽いっぱいの唐辛子汁をジャスランに注入するのだ。
あれだけ尻に注げば、臨月の妊婦ほどにも腹は大きくなるだろう。
同じようなことをスクルドにもしたのだから、この刑罰はジャスランに与える“地獄巡り”には絶対に入れようと思っていた。
「へげええええっ、んべえええええ」
ジャスランがひたすらに泣き叫んでいる。
しかし、傭兵たちが笑いながら、杭を打たれている手足の短いジャスランを寄ってたかってさらに押さえ、ジャスランの尻に、まずは最初の浣腸が注ぎ込まれ始めた。
ジャスランが舌が千切れるのを厭わないほどに暴れだしたが、一本目の唐辛子汁はジャスランの尻に注ぎ込まれていく。
「へぎゃああああああ──」
凄まじいジャスランの絶叫が響いた。
ジャスランの身体を押さえる傭兵の数が増える。
一本目の途中だが、一度抜かれて、先に尻にアナル栓代わりの張形をぶち込むことにしたようだ。
あの張形にも特殊な仕掛けがしてあり、底の部分に管を繋げば、それを嵌めたままでも薬液を尻穴に注入できる。
さらに、張形には振動させる機能があり、腹が大きく膨れるほどの唐辛子汁をジャスランの腸内に注いだら、一ノスは注いだ唐辛子汁を
ジャスランは狂ったように暴れるだろうが、舌を釘で台に打たれているので、ほとんど動くこともできないと思う。
それとも、舌を引き千切るだろうか……。
「ほら、もう奉仕はいいぞ。こっちに座って見ろ。お前がやられた仕返しだ。少しは溜飲がさがるといいんだけどね」
一郎はテーブルクロスの下に繋がっている鎖を軽く引っ張った。
実は、一郎の股のあいだには、スクルドがいて、ずっとテーブルクロスの下でフェラチオをさせていたのだ。
「んんっ、はい……」
スクルドにさせている首輪には、一郎が手に持っている鎖が繋がっている。一郎が鎖を引いたので、ちょっとえずいたみたいだ。
のそのそとスクルドがテーブルの下を這い起きてくる。
「口がべとべとだな。こっち来い」
スクルドの顔を寄せさせる。
王都でやった園遊会のことを一郎に黙っていた罰として、スクルドには両腕の復活を許していない。
明日の昼前には出立する予定なので、それまでは、雌犬の刑ということにしている。
両腕がなくて、なにもできないスクルドは、顔を拭くという単純な行為さえ、すべての世話を受けなければいけない。
これがスクルドへの罰だ。
もっとも、すでに魔道は復活させたので、その気になれば、手がなくても魔道である程度のことはできるだろう。
しかし、こうやって、スクルドの世話をやくことを一郎も愉しんでいるのだ。
「はい」
スクルドの顔が寄る。
一郎は亜空間から布を出して、スクルドの口の周りの涎や、一郎の精液の残滓を拭きあげる。
スクルドは恥ずかしそうにしている。
「や、やっぱり、それは罰じゃないだろう。ご褒美だ──」
「そうですよ。ご主人様、優しすぎますって」
ほぼ同時に声をあげたのは、シャングリアとコゼだ。
「なにをおっしゃいます。まったく問題ありませんよ。大丈夫です。これはわたしの罰なのですから」
すると、スクルドが朗らかそうに言った。
スクルド節もだいぶ戻ってきた。
一郎は思わず笑いそうになった。
「なにが問題ないのよ。まったくわかんないわよ」
コゼがさらに言った。
一郎は、スクルドの首輪に繋がっている鎖をわざと股間を通して後ろにやった。そして、ぐいと持ちあげるように鎖を背中側で引く。
「ひんっ、あん、ご主人様──」
スクルドに身につけさせているのは、召喚される前の一郎の世界で“スモック”と呼ばれていた幼稚園の童女が外遊びのときに着るような丈の短い服だ。
しかも、下着を与えてないので、スモックの裾が捲くれるだけでなく、鎖が股間に喰い込んだはずだ。
スクルドが身悶えるような仕草をする。
「俺にこんなことをされるんだぞ。しかも、遠目だが傭兵たちにも見られている。しっかりとした罰だろう?」
一郎は言った。
確かに、傭兵たちの一部は、ジャスランだけでなく、こっちにも視線を送っている。一郎はスクルドへの悪戯を自重してないので、ジャスラン同様にスクルドのことも注目を浴びだしている。
もっとも、ここでは、スクルドは“ヴェーネ”と名乗っていたみたいだが……。
「ば、罰じゃありませんわ。どうぞ、わたしも雌犬として扱いください。スクルドさんと同じ格好もいたします」
すると、勢いこむ感じでガドニエルが言った。
「だから、だめだと言っているだろう。ガドはエルフ族の女王の芝居をしてくれ。ガドの権威を借りて、俺も地位をあげるつもりなんだから」
一郎は笑った。
「芝居じゃなくて、本当の女王なんだけどな」
すると、シャングリアが軽口を挟んだ。
「でも、ガドには芝居が必要なのよ。ほら、真っ直ぐして……」
エリカも言った。
「ご主人様、あれ……」
そのとき、コゼが急に真面目な口調でささやいてきた。
コゼが視線を促すので、そっちを見ると、モーリア男爵がこっちにやってきていた。家人をふたりほど連れている。
男爵とは、ジャスランを捕らえた直後に、ガドニエルとともに挨拶をして以来だ。
「ちょうどいい……。スクルド、男爵に挨拶してもらうぞ。これも罰の一環だ」
「は、はい」
スクルドがちょっと緊張した感じで頷いた。
とりあえず、スクルドには椅子には座らせずにその場に立たせた。首輪の鎖は一郎が持ったままだ。
男爵がやって来た。
エリカ、シャングリア、コゼが立ちあがる。
しかし、ガドニエルと一郎は座ったままだ。
男爵の挨拶を受ける。
「女王陛下に御挨拶申しあげます。ロウ閣下にも……」
モーリア男爵が頭をさげた。
一郎に、剣の誓いをしてから、モーリアは一郎のことを“閣下”と呼ぶ。
なんだか、こそばゆいのだが……。
「うむ、大義だ」
ガドニエルが短く言った。
なぜか、ガドニエルが女王らしい物言いをすると、噴き出しそうになる。こっちが本来なのだが……。
「おう、ところで、シャングリア……。よかった。直ったのだな」
そして、シャングリアを認めて破顔した。
昨日は、四肢を切断された状態のシャングリアだったので、ちゃんと復活したシャングリアの姿に、モーリア男爵も嬉しそうな顔になる。
「ああ、ロウの魔道でな」
シャングリアが微笑むのが横目に見えた。
「ロウ閣下の……? 女王陛下ではなくて?」
しかし、光魔道の遣い手のガドニエルではなく、一郎の魔道だと言われて、モーリア男爵も戸惑っている。
一郎のことは、女扱いが上手だとは思っているだろうが、当然に淫魔術のことは知らない。
だから、一郎の術だと言われても、理解できないに違いない。
「ところで、男爵、彼女を覚えていますか?」
一郎は、話題を変える感じで、背中側で持っているスクルドの首輪の鎖を再び軽く引いた。
まだ、しっかりと股間に喰い込んだままだった鎖がスクルドのスモックの下で股間を擦る。
「ひんっ」
スクルドが身体をぐいと伸ばすようにした。
「え? あっ、これは、ヴェーネ殿?」
モーリアが驚いた声を出した。
実は、昨日はスクルドと男爵は会わせなかったので、スクルドが“ヴェーネ”と名乗って、最初に男爵と会ってから、再会するのは初めてのはずだ。
一郎は、昨日については、ジャスランと一緒にやってきたヴェーネがスクルドと同一人物とは、あえて教えなかった。
スクルドがジャスランに晒し者にされたときには、多くの兵が見ているものの、ほとんど傭兵たちであり、男爵家の家人や兵たち側ではなかったはずだ。
だから、男爵としては、あのときに会った“ヴェーネ”とジャスランに拷問を受けた“スクルド”が同じ女性だと認識していなかったと思う。
しかし、あのやらかしについても、けじめをつけさせないとならないだろう。
すでに、モーリア男爵は、自分たちが操られたのは、ヴェーネが配った魔道具の指輪を通してだと承知している。だから、現段階では、あの“ヴェーネ”もジャスランの仲間だろうと思っているかもしれない。
それを正さないとならない。
モーリア男爵とスクルドを永遠に会わせないわけにはいかないのだ。
いつかは、一郎の連れているスクルドが、あのヴェーネだとばれる。
「俺の女のひとりでスクルドと言います。ジャスランが男爵たちに手を出したときには、ジャスランに操られて、ヴェーネと名乗って近づいたと思いますが、あれはジャスランの仕組んだことです。スクルドはジャスランに操作されていたんです。でも、男爵をジャスランとともに陥れた罪は罪……。だから、こうやって、罰としてに奴隷身分に落としました。これをもって、彼女を許してください」
「男爵様には、申しわけありませんでした」
一郎の言葉に合わせて、スクルドも深く頭をさげる。
モーリア男爵は困惑している。
ジャスランとともにやって来て、モーリア隊を操り状態にした“ヴェーネ”のことは、モーリアは敵認定していたかもしれない。
だから、いきなり、ここで、実は一郎の女だと紹介され、さらに、奴隷にしたと告げたことで、頭の中の情報処理が追いつかなくなった感じになったのだろう。
モーリア男爵の目はかなり混乱した感じで泳いでいる。
それに、いまのスクルドは生脚を剥き出しにして、かなりきわどい姿だ。
煽情的なスクルドの恰好にも、ひどく落ち着かない様子である。
「そ、そうですか……。し、しかし、あのヴェーネ殿が閣下の女性のひとり?」
「本名はスクルドです。ヴェーネとはジャスランが与えた偽名です。とにかく、ジャスランは憎い相手です。俺の女を傭兵たちの前で晒し者にした挙句、こうやって奴隷に落とさざるを得ないことをしたんですからね。両腕を切断されて唐辛子汁の拷問を受けた魔道遣いのことは聞いていませんか?」
一郎は言った。
「ああ、あの……」
男爵が頷いた。
「その魔道遣いが彼女です。ジャスランは俺の女を操って、男爵たちを陥れただけでなく、見世物にしたんですよ」
一郎は言った。
やっと、男爵がスクルドに同情的な顔になった。
「ならば、彼女も被害者ではないですか……。罪というのであれば、やはり、ジャスランひとりでしょう。彼女に罪はありません」
モーリア男爵がはっきりと言った。
一郎はわざとらしく膝を打つ。
「おう、許してもらえますか。よかったな、スクルド。ならば、奴隷落ちは許してやる」
一郎はスクルドの首輪に手を伸ばした。
だが、スクルドはすっとそれを避ける仕草をした。
「あっ、いえ、このままでも……。わたしは、ご主人様の奴隷で十分で、なんの問題もありませんし……」
「いいから、大人しくしなさい」
エリカが横からぴしゃりと言った。
明日の出立までの予定だったが、まあ潮時だろう。モーリア男爵がなにをしにやって来たかは知らないが、たまたま、話がうまくついたので、スクルドとの奴隷遊びは、ここまでにすることに決めた。
一郎はスクルドの首から首輪を外してテーブルの上に置く。
「あん」
首輪がなくなると、スクルドがちょっと残念そうな表情になった。
一郎は笑ってしまった。
そして、改めてモーリア男爵を見る。
「ところで、男爵はどうしてここに? ジャスランへの刑罰を見にこられましか? いまは、七個目の刑を執行中でしてね……」
一郎はジャスランに視線をやった。
号泣しているジャスランには、やっと二本目の浣腸器を施されだしたところのようだ。さらに、三本目を持っている傭兵が後ろに控えている。
「い、いや、わしは、ああいうのはちょっと……。実は、先に返した者から緊急の報告が……」
「緊急?」
一郎は視線をモーリア男爵に戻す。
明日には、ナタルの森に隣接している男爵領に一緒に入る予定の一郎たちだったが、モーリア男爵は、その一郎たちを迎える準備のために、傭兵と直属の兵の半分の勢力を何人かの家人とともに、昨日のうちに領に戻していた。
どうやら、その家人がなにかの伝言を
「実は辺境候の使者が接触をしてきたそうなのです。男爵領で待ち受けていたようですね。辺境候から閣下への書状を預かってきました」
モーリア男爵が一郎に向かって、紙の書状を出しだした。
辺境候こと、アネルザの実父のクレオン=マルエダは、サキの手配で一郎を旗頭にして叛乱を起こすべく、ピカロとチャルタによる操り状態にあるはずだ。
書状というのは、おそらく、それを促すものだろう。
モーリア男爵によれば、男爵隊が森に入る直前には、一郎の身柄を確保したら、速やかに辺境候領に引き渡して欲しいと依頼もあったようだし、その内容だと思った。
また、向こうには、サキと繋がっているピカロとチャルタもいるのだから、ナタルの森から帰る一郎がモーリア男爵隊と接触する可能性が高いことも認識しているのだろう。
だから、男爵領で待ち受けていたに違いない。
一方で、書状の内容を男爵に訊ねたが、封印されたこの書状を預かっただけで、知らされてないという。
それはいいが、一郎はちょっと困ってしまった。
実のところ、一郎は話し言葉は問題ないが、書いてある文字については、まだ不慣れである。
全く読めないということはないが、貴族が書くような形式ばった手紙を読み下す自信はない。
しかし、一郎が文字も読めないとばれれば、これから成りあがろうとしている王侯貴族社会では、極めて不都合かもしれない。
「あっ、わたしがお受け取りします」
エリカが機転を利かせて、差し出されている書状を横から受け取りに来た。
一郎はほっとした。
「要約して内容を教えてくれ」
一郎は言った。
エリカが書状の封蝋を切って、中の手紙を開く。
だが、しばらく文書に目をやっていたエリカの表情が急に一変した。
「ロウ様、大変です──。ピカロとチャルタが辺境候領で処刑されます」
「処刑?」
一郎はびっくりした。