【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
『女魔族の話は、アルオウィンから概略を聞いたよ。災難だったみたいだねえ……。まあ、魔族というのは、憎むのも、愛するのも一途なものさ。表面では友情を繕うけど、実際には憎悪しているとか、本当は好きなのに、ついつい意地悪をするとか、そういう複雑なものはないんだ。だから、付き合い方さえ間違わなければ、いい連中なんだけどねえ……』
映像のラザニエルが声をあげて笑った。
魔道通信で繋げているラザニエルの姿は、煙の中に浮かんでぼんやりとしていてゆらゆらと揺れている。
辛うじて輪郭がおぼろげになっているだけで、はっきりとした姿は映っていない。ガドニエルとラザニエルが両方にいるのだから、ちゃんとした映像を繋ぐこともできるらしいが、それには大量の魔道が必要だし、それをする必要はない。ただ、話をしたいだけなのだ。
だから、声はしっかりと聞き取れているが、こっちから見えるラザニエルはただのぼんやりとした陰という状態だ。
まあ、向こうに映っている一郎の顔も同様だろう。
「とにかく大変だったよ、ラザ」
一郎は頬を緩めた。
男爵邸で借りている別宅内のうち、書斎のような場所である。
一郎にあてがってもらった大部屋でないのは、やっぱり一郎のところに夕べは全員集合になり、いつものように、一郎は一切の節操をすることなく、明らかに一郎に相手をしてもらいたがっている女を次々に抱きまくった。
その結果、夜が明けて朝になっても、まだ死屍累々という感じの女たちのあられもない姿が大部屋には転がっているという状況だ。
なんとなく、あそこからは水晶宮と通信をするには気が引けて、ガドニエルだけを連れて、この書斎と水晶宮側を魔道通信で繋いでもらったというわけだ。
こっちの男爵別邸の書斎側には一郎とガドニエルがいて、向こうの水晶宮側の太守執務室には、ラザニエルがいるという状況である。
また、ラザニエルが魔族について詳しいのは、アスカ時代に、パリスを通じて大勢の魔族と接触があったからだろう。
そういう意味では、ルルドの森の中にあったアスカ城に二年ほどいたエリカも、そこそこ魔族や魔物の性格や生態に詳しい。
『とにかく、いまのところ、お前もガドニエルも無事ということで確認したよ。ところで、アルオウィンとノルズから受けたんだけど、そっちの状況はどうなんだい? 本当にお前たちに処刑命令が?』
「確認中だよ。ただ、ここのモーリア男爵は信頼のおける人物だ。王家から俺への捕縛隊が来ても引き渡すようなことはない。王家の軍であっても、身体を張って阻止してくれると思う」
『まあ、簡単にお前たちが捕まるとは考えてないよ。お前の女は、みんな強いしね。そこにいる魔道馬鹿もうまく使いな。それこそ、お前の命令なら山でも吹っ飛ばしてくれるさ』
ラザニエル側から笑ったような声がした。
ハロンドール王宮から一郎に対する処刑命令のことや、一郎の女……に加えるかは微妙なところだが、眷属であるピカロとチャルタのことを水晶宮に伝えてもらったのは、昨日のうちに水晶宮に、移動術の設備で戻っていったアルオウィンとノルズだ。
ノルズは一日くらい泊まっていけというのを振り切って一度水晶宮に帰るといって出ていった。あれだけ抱き潰したつもりだったが、夜になれば回復したみたいだから、大したものだ。
アルオウィンはもともと、先発したエリカたちを移動術設備で送るために一緒に来たのであり、本来すぐに戻る予定だったのだ。
だが、折角なので、男爵邸で得た情報と一郎の伝言を水晶宮に持っていってもらった。
その報告が水晶宮に着いたのだと思うが、さっそく話したいと、ラザニエルから連絡がきたということだ。
「もちろんですわ。ご主人様。どの山でも吹っ飛ばしますわ」
ガドが飛びついてきた。
というよりは、もともと横長のソファに並んで座っていたのだが、こういう映像型の魔道通信はひとりの映像しか結ばない。
だから、あっちにはガドニエルの姿は入っていなかったと思うが、ガドニエルが一郎の膝に乗ってきたことで、初めて向こうのラザニエルにガドニエルが見えたと思う。
すると、白いもやの中にいるラザニエルが溜息をついたみたい見える。
『愉しそうでいいねえ、ガドニエル……。もしかして、ロウに抱きついたかい? こっちは、お前の不在を隠すために、色々と面倒だというのに……。そういえば、そっちではお忍びとはいえ、ガドニエルがハロンドール王国内にいることを大っぴらにしているようだねえ。話と違うんじゃないかい、ロウ?』
ラザニエルが苦笑しているような口調で言った。
一郎は頭を掻くしかなかった。
確かに、ガドニエルは連れていくが、魔道具で外観を変えて、ただのエルフ女として連れていくという話をしていた。
もともと、イムドリス宮という隠し宮に閉じこもって、ほとんど他人と会わなかったガドニエルなので、政務としてはいてもいなくてもどうでもいい存在だし、いまは、王宮に復帰したラザニエルが「太守」として存在しているので、女王のガドニエルがいてもいなくても、まったく政務には問題はないという状況だ。
だから、ガドニエルを連れていくことに合意させたが、さすがに女王が国境を越えて出歩いているというのは問題があるので、ガドニエルの身分だけは隠すということになっていたのだ。
しかし、すでに男爵と会うときに、その約束を反故にしているし、今日の午後に会うことになっている辺境候の使者にも、あえてガドニエルの名を使わせてもらっている。
エルフ族女王のガドニエルというのは、やはり、かなりの権威であり、その存在だけで、一郎たちの安全に役立っている。
一郎単独ならともかく、ガドニエルと一緒にいる一郎を狙うことは、エルフ族の王宮と敵対することを意味するからだ。
さすがに、それをしようとする権威者は、ハロンドールにもほとんどいないだろう。
それを理解したので、水晶宮には悪いが、ガドニエルの存在を明かしたのだ。
「悪いね、ラザ。迷惑をかける」
『まあいいけどね……。ただ、一応は対面的には、こっちにいることにさせてもらうよ。問い合わせがあっても、知らぬ存ぜぬでいくからね』
「感謝するよ」
一郎は笑った。
そして、一郎の上に横抱きになっているガドニエルを向かい合うかたちに抱え直して、耳元に口を寄せる。
「……気づかれるなよ」
一郎自身の下半身から衣類を消し、ガドニエルに一郎を正面から跨がせて、スカートの中に股間を入れる。
向こうに映っているのは、ただのぼんやりとした煙の中の映像だ。
ガドニエルが声を我慢できれば、ばれることはないだろう。
「あっ」
ガドニエルが声を出しそうになり、慌てて自分の口を手で押さえた。
一郎が向き合ったガドニエルの股間に怒張を当てたのだ。前戯などなくても、一郎に抱きついてきた時点で、ガドニエルが濡れていることは知っていた。
ガドニエルが一郎の勃起している男根の衝撃に、身体を大きく反らせるような仕草をする。
「くっ、はっ、うう……」
「聞こえるぞ……。ばれたら、ガドの順番は今夜は最後な……。今日は親衛隊も回るしなあ……。ガドの番まであるかなあ……?」
わざと耳元で意地悪く言う。
ガドニエルが「お預け」という罰を一番嫌がることを知っている。だから、こう言うと、ガドニエルは一生懸命に我慢しようとするのだ。
その姿が可愛くて健気だから、つい意地悪をしたくなる。
一郎は、わざと激しく抽挿をする。
「うっ、あっ、はっ」
必死に耐えるような感じだが、残念ながら声は抑え切れていない。
ガドニエルの口からは声が出ている。
『あれっ、突然、声が聞こえなくなったよ。ガドニエル、どうかしたかい?』
すると、向こう側のラザニエルから不審そうな声がした。
どうやら、ガドニエルはばれたくなくて、とっさに声を切断したみたいだ。
「……こら、声を繋げろ。話できないだろう……」
一郎はガドニエルを犯しながら言った。
「は、はいいいっ、いいいっ」
ガドニエルが一郎の胸に顔をくっつけて、一郎が身につけている服を噛んだ。
一郎はそのまま腰を動かして、ガドニエルを追い詰めていく。ばれたらばれたでいい……。
それもまた愉しいかもしれない。
許してやる口実で、さらにガドニエルをからかえるからだ。
『んっ、どうかしたかい?』
ラザニエルの声がした。
ちょっと、こっちの様子がおかしいことに、さすがに気がついたのだろう。
「……それよりも、アルオウィンに託した伝言はどうだ? 協力してくれるか?」
一郎がアルオウィンを通じて持ち返ってもらった水晶宮への依頼とは、エルフ族が各国に輸出しているクリスタル石による経済統制が可能かどうかの打診だ。
クリスタル石というのは、魔石、あるいは、魔道石とも呼ばれて、この大陸になくてはならないエネルギー源だそうだ。
魔道が浸透しているこの世界では、ありとあらゆるものに魔道を使っている。
日常生活のちょっとしたことでも、魔道石を使った魔道具があり、例えば、貴族以上の階級ともなれば、厨房や照明などに魔石を使った魔道具を屋敷内で使うのは常識であり、上水や下水も魔道具に頼っている。
ところが、エルフ族とは異なり、人間族は魔道を使える者が圧倒的に少ない。
だから、それを補完してくれるのが、クリスタル石ということだ。
しかし、良質のクリスタル石、つまりは、魔石はなぜかナタル森林でしか生産できないのだ。
従って、各国が必要としているクリスタル石は、いまはエルフ族が独占状態ということだ。
これを利用しない手はないと思った。
『それなんだけどねえ……』
しかし、煙の向こうのラザニエルは、気乗りのしない口調で返事をしてきた。
「難しいか?」
一郎はがドニエルをねちっこく犯しながら言った。
ガドニエルが身体を震わせながら、一郎にしがみついて必死に声を耐えている。
だが、すでに絶頂に近づいているのはわかる。
ガドニエルの身体が大きくわなないた。
『わかって欲しいんだけど、確かに、お前のいうとおりに、それぞれのエルフの里で作っているクリスタル石については、水晶宮で厳密に管理して売り先を統制している。ただし、どの国やどの勢力に対しても、基本的に平等に渡すことにしていて、それは、エルフ族を守る安全保障でもあるのさ……。考えて欲しいんだけど、もしも、うちがどこかに偏った輸出をしたりすれば、それを口実にエルフ族への侵略を正当化させるかもしれないし、そもそも、人間族の国に比べて、大きな産業のないナタル森林にとっては、三公国やハロンドールからの自由交易は、エルフ族の生活になくてはならないもので……』
一方で、向こう側のラザニエルが言い訳めいた言葉を紡ぎ始めた。
つまりは、クリスタル貿易で、各国の経済外交を仕掛けようという、一郎の提案はあまり歓迎されないということなのだろう。
まあ、色々と問題もあるのはわかっているが……。
しかし、急に水晶宮を結んでいる画像が揺れた。
誰かが割り込んできた感じだ。
『どきなさい、ラザニエル──。お兄ちゃんの指示よ。やれと言われたら、やるのよ──。その問題をどう解決するかは、わたしたちが考える。それでいいの──。お兄ちゃん、なんでも言って。お兄ちゃんの望むとおりにしてあげるから』
ラザニエルに変わって言葉を送ってきたのは、ケイラ=ハイエルこと、享ちゃんだった。
どうやら、一緒にいたようだ。
『いや、そういうわけにも……』
『うるさわいねえ。ルルドの森を瘴気で充満して魔物を増やしまくった希代の暗黒魔女がなにを常識ぶったことを言っているのよ。あのお兄ちゃんのお願いなのよ。従わなくてどうするのよ。輸出制限でもなんでも、かけるのよ──。それで、お兄ちゃん、どこの正面のクリスタルの移動を停止したいの? なんでもするよ──』
享ちゃんが頑とした口調で言った。
相変わらず、あの仮想空間後は、人が変わったように一郎に対して、盲目的に従おうとしてくれるケイラだ。
だが、それはそれでちょっと困るかもしれない。
一郎も、この世界の国家関係や外交交渉に精通しているわけじゃない。
ただ、経済統制による締め付けということが可能かどうかを打診しただけだ。
もしも、カードの一枚として使えれば、かなり有効に交渉を進めることができると思った程度なのだ。
まともな常識の通じる相手である限り、クリスタル石の輸出制限は、国の繁栄の息の根をとめる行為に等しいはずだ。
タリオ公国でも、ハロンドール列州同盟でも……。
『お、大伯母、それは──』
ラザニエルの声──。
享ちゃんの勢いで、あのラザニエルが圧倒され気味だ。
面白い……。
「ふぐううう」
そのとき悲鳴のような声をあげて、ガドニエルが達した。
話しているあいだ、ずっと制限した律動を続けていたが、ついに我慢できなくなったようだ。
たっぷりと欲情しきった動作で、ガドニエルが身体を痙攣させて絶頂した。
一郎もそれに合わせて精を放つ。
『えっ?』
『ええ──?』
向こうではラザニエルと享ちゃんの呆気にとられたような声が放たれた。
さすがに気がついたか……。
「……とにかく、クリスタル石の輸出統制の強化と、その統制を女王の強い権限下に置くことで、エルフ族の王宮をまとめてくれないか。とりあえず、輸出先に何らかの制限をかけたり、理由もなく交易数を減少させたり、偏らせたりすることは問題があるということは理解した。だから、すぐにはしない。だけど、女王の強固な統制下に置くまでは、すぐにしてもらいたい……。享ちゃんの持っているエルフ族への政治力に期待してもいいか?」
一郎はぐったりと脱力してしまったガドニエルを抱き抱えながら言った。
『それこそ、わたしの仕事ね──。任せておいて、お兄ちゃん──』
一郎に指示を受けるのが、本当に嬉しそうな口調で享ちゃんが言った。
『なあ、大伯母……』
向こうでは、ラザニエルの困惑する声……。
しかし、ケイラ=ハイエルこと、享ちゃんが一蹴する。
『うるさいってばあ――。いいから、やり方を考えるのよ、ラザニエル。あんたがアスカだったことを言いまくるわよ。とにかく、お兄ちゃんの敵は、わたしの敵なの。いいわね――』
*
【クリスタル戦略】
……ロウ=サタルスの英雄認定に引き続き、ナタル森林のエルフ族女王家は、柔らかではあるが、ロウ=サタルスに反意の強い勢力に対するクリスタル石の輸出制限措置を含む交易戦略を打ち出した。
これによって、従来からのクリスタル石の価格が高騰して大陸内の流通に大きな衝撃を与えるとともに、それまで安価なナタル森林産のクリスタル石に依存していた人間族の各国は一気に社会停滞の危険に陥りかける。
必然的に、ロウ=サタルスの存在は、いやがうえにも各国の勢力者にとっても重要なものになっていった。
そして……。
ボルティモア著『万世大辞典』より
(ここに再録した引用文はすべてスクルズ記念国際図書館から許可を受けて初版本から抜粋して採録したものである。