【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「じゃあ、ぼくもいくよ、ご主人様。また遊びのときは呼んでね」
クグルスが宙を跳んで、一郎の前までやってきた。
「ああ、クグルス。またな」
一郎は声をかけた。
性奴隷たちだけの場所ならともかく、副ギルド長のミランダの前では、魔族の一種であるクグルスの存在は都合が悪い。
とりあえず、クグルスは異界に戻ってもらうことにした。
また、屋敷妖精のシルキーは、屋敷にやってきたミランダへの対応のために離れ、エリカ、コゼ、シャングリアの三人は地下の浴室だ。
この屋敷の素晴らしいところは、前の主人の趣味で、豪華で大きな浴室があることだ。
濾過をした川の水を引き込んで、シルキーの魔道で湯温と湯のきれいさを保持しているものであり、シルキーに訊ねると、まったく負担でなく、ずっと適温の湯を湛えておいても、なんの問題もないと笑っていた。
だから、そうしてもらってる。
いつでも使用できる「二十四時間大浴場」ということだ。
すでに、昨日に使ってみたが、十人ほどが入ってもゆっくりと浴槽に浸かれるほどに広い。また、嗜虐好きの前主人が浴場でも「プレイ」ができるように設計されていて、洗い場になる場所もゆったりとある。
一郎はひと目で気に入ってしまった。
とりあえずは、エリカたちは、先に向かって自分たちの身体を洗っているはずだ。
もっとも、一郎の思いつきでエリカとシャングリアは、革帯で後手に拘束したままだ。洗うといっても、コゼが洗うしかないのだが、あのコゼのことだ。エリカとシャングリアの身体を洗うついでに、悪戯もしていることだろう。
「そういえばさあ、ご主人様。最近、ぼく、気がついたことがあってね。前から、ご主人様に教えようと思っていたことがあるんだよ」
クグルスが不意に思い出したように言った。
「教えようと思っていたこと?」
「うん……。ほら、この王都にご主人様たちがやってきたばかりのとき、みんなで大ラット狩りをしたよねえ」
「ああ、やったな」
それは、新人冒険者として、まだデルタ・ランクの冒険者扱いだったときの王都の地下下水に棲みつく大ラットという小型猛獣の狩りをするというクエストだった。
このクグルスに協力してもらって、クグルスの力で大ラットをおびき寄せるための異性のフェロモンを発散させ、次から次へと罠に飛び込ませるというやり方で狩りをしたのだ。
後で聞いたところ、後にも先にも前代未聞の捕獲数であり、その大量捕獲が評価されて、一郎たちは二階級昇進して、一気にブラボー・ランクの冒険者となったのだ。
「あのとき、ご主人様に教えてもらった“ふぇろもん”というやつさあ……。ぼくも、いろいろと勉強したんだ。それでわかったんだけど、ご主人様も、そのふぇろもんを発散しているよ。それも、かなり強いやつ。それを一度教えておこうと思ってね」
「おれがフェロモンを?」
一郎は驚いて声をあげた。
「うん。人族の女なら、ご主人様の前にやってきたら、必ず影響されてしまうようなものをずっと出し続けている。ご主人様は、それを知らないようだから、教えておこうと思ったんだ」
クグルスの言葉に一郎は呆気にとられた。
つまりは、一郎はただ存在するだけで、異性が寄ってくるような匂いのようなものを発散させているということになるのだろうか。
一郎は当惑した。
「じゃあ、またね、ご主人様」
だが、そんな一郎をそのままにして、クグルスは別れの言葉とともに姿を消滅させてしまった。
*
やはり、侵入経路はここしかない。閉じている門をぶち破るか……。
ミランダは決心した。
この屋敷全体が得体の知れない魔道に包まれていることはすぐにわかった。ミランダも魔道を操る魔道使いの端くれだ。
魔道の存在を肌で感じることができる。
この屋敷は大きな結界のようなもので包まれていて、この門の場所でなければ、中に進めないようになっていた。
ほかの場所から侵入しようと思えば、いつの間にか道に迷って、屋敷の敷地の外に出ているというような魔道の結界がかけられている。
屋敷内に入ろうとすれば、目の前にある門から前庭の小路を進むしかない。
だが、目の前の門は堅く閉ざされている。
ミランダは、片手に持った二本の大斧を握る手に力を入れた。
かつては、怪力ミランダの二つ名で鳴らした
こんな門くらいは、簡単にぶち壊せる。
それにしても……。
ミランダは、自分の犯した失策に歯噛みする思いだ。
よりにもよって、斡旋屋から託された一郎たちに紹介する家の場所を記したメモと間違えて、狂った女ゴーストが棲みついているという王都郊外の幽霊屋敷の場所のメモを渡してしまうなど……。
ミランダが自分の愚かさに泣きたくなってしまう。
忙しい日々が続いていた。
だからといって、すでに大勢の犠牲者も出ている
なんという失態……。
ここは、もう十年近くもずっと冒険者ギルド預かりになっている物件だ。
うっかりと入り込めば、殺人ゴーストに殺されてしまうという幽霊屋敷だが、ゴーストが屋敷の外に出て悪さをするということはなく、入り込みさえしなければ問題ない。
近傍に居住区もないので、危険な幽霊屋敷とされている割には、クエストとしての優先順位は下だった。
だから、ずっと放っておいていたクエストだ。
そもそも、もはや依頼料を支払う者も消えていて、冒険者ギルドとしても持て余していた案件だった。
それでずっと放置されていたのだが、ミランダとしても、本クエストの扱いについて検討するために、場合によっては、自分自身で状況を確認しておこうと思って、場所をメモしていたのだ。
それが、斡旋屋から託されたメモと紛れてしまい、ロウに渡してしまったということだ。
もっとも、王都に住んでいる者であれば、知らぬ者のない王都郊外の幽霊屋敷である。こんなところに不用意に近づく者などいない。
だが、ロウたちは王都にやってきて一箇月余りの新人だ。
それで、そのメモを信じて、そのまま屋敷の中に入ったに違いない。
今朝になり、斡旋屋から約束の場所にロウたちが昨日やってこなかったと知らされたミランダは、初めて自分の失敗に気づいたのだ。
すぐに冒険者ギルドを飛び出し、ロウたちが宿泊しているはずの宿屋に向かった。
ブラボー・ランク以上のギルドに所属する冒険者は、ギルド側から連絡が可能なように、常に連絡先を明確にする義務がある。
ロウたちの連絡先も教えられていた。
果たして、ロウたちはいなかった。
荷はそのままだったが、宿屋の亭主によれば、昨夜は戻っていないということだった。
ロウたちが幽霊屋敷に捕らわれたのは間違いないと確信した。
ミランダは、そのまま、かつて冒険者として名を響かせたときの二本の大斧の得物を担いで、その足でここにやってきたというわけだ。
ロウたちを助けなければ……。
これはミランダの責任だ……。
もっとも、ロウたちが屋敷に入ってから、ひと晩以上が経過している。
手遅れになっていなければいいが……。
ミランダは、門を壊そうと大斧を構えた。
怪力で知られるドワフ族の男でも、両手で扱う大斧だ。
ミランダは、それを左右の両手で一本ずつ遣う。
同胞のドワフ族さえも驚く筋力だ。
これでぶち壊してやる……。
そのとき、突然、音もなく閉じていた門がすっとひとりでに開いた。
ミランダは訝しんだ。
どうすべきか迷ったが、ここは進むしかないだろう……。
ロウたちは、前庭の向こうに見える石造りの屋敷の中にいるに違いない。
ミランダは用心深く前庭を貫く路を進んでいった。
懐には、ギルドから持ち出した転移魔具を仕込んでいる。
使い捨てだが、それを作動させれば、移動術が働いてミランダの身体は冒険者ギルドの事務室に一瞬に戻ることができる。
捕らわれているロウたちを見つけて、その魔道具で全員で逃亡する。
それがミランダの考えていることだ。
だが、それには、ロウが生きていてくれていなければどうしようもない。
屋敷の玄関の前に着いた。
すると、向こう側から屋敷の戸が開いた。
身構えるミランダの前に現れたのは、ひとりの可愛らしい童女だ。
ドワフ族の特徴により、人間族やエルフ族の子供の丈しかないミランダだが、そのミランダよりも背が低い。
紺色のワンピースに白いエプロンを身に着けている。
いわゆるメイド服だ。
怖ろしい女ゴーストの登場を予測していただけに、その童女の出迎えに、ミランダは意表を突かれた。
「……屋敷……妖精か?」
ミランダは言った。
一瞬、当惑したミランダだが、目の前に現れたのが、人族でないことはすぐにわかった。
これは妖精族だ。
しかも、屋敷妖精に違いない。
人族社会に同化している妖精であり、屋敷の主人と契約して、屋敷の手入れや主人たちの世話を魔道で行ってくれるという召し使い妖精だ。
便利な存在だが、屋敷妖精を繋ぎとめるのは、極めて高い魔力が必要とされており、そう簡単に目撃できるものではない。
なにしろ、屋敷妖精は仕える主人そのものが、高い魔力を保持していなければならないので、王侯貴族であっても屋敷妖精を飼うことは難しい。王侯貴族が自分の屋敷に屋敷妖精を飼おうと思って、高い能力の魔道遣いを屋敷内に住まわせても駄目なのだ。
あくまでも、屋敷妖精は、「屋敷の主人」と「高い魔力の持ち主」が一致するときでなければ棲みつかない。
結果的に、非常に珍しい存在ということになる。
その屋敷妖精が目の前にいる。
だが、それでわかったのは、こんなに強い警戒の結界の魔道がかかっているのは、屋敷妖精の存在が理由だということだ。屋敷妖精は屋敷の管理に関することに限定して、ほぼ無限の魔道を駆使できる。
そういう存在なのだ。
これだけの強い結界の存在は、屋敷妖精ならでに違いない。
とにかく、この屋敷に巣食う女ゴーストは、屋敷妖精を繋ぎとめるくらいの魔力を持った魔道遣いでもあるということだ。
単なるゴーストではなく、魔道まで遣うとなれば、それはミランダの予測外だ。
これは危険だ。
ミランダは判断した。
ここはいったん退いて、もう少し人数の態勢を整えてから出直すべきかもしれない。
ミランダは思った。
だが、時間が経てば経つほど、ロウたちの救出は望みのないものになるだろう。
もっとも、それは、いまだにロウたちが生きているとした場合の話しだが……。
「屋敷妖精のシルキーです。旦那様がお待ちです。どうぞ、ミランダ様」
シルキーがにこにこしながら言った。
ミランダはびっくりした。
「なぜ、あたしの名を?」
「旦那様から教えられました。そろそろ、ミランダ様がやってくるだろうから、お通しするようにと……。どうぞ中にお入りください」
予想とまったく違う応対に、ミランダは呆気にとられた。
さすがに躊躇する。
最初の予定通りに、強引に入り込んでロウたちを見つけて屋敷の外に逃亡するべきか……。
それとも、一時的に退却すべきか……。
「どうぞ、遠慮なく、ミランダ様。エリカ様もコゼ様もシャングリア様も、旦那様と一緒にお待ちですよ」
シルキーが言った。
ミランダは今度こそ、本当に驚いた。
「ちょ、ちょっと待て。旦那様というのは誰のことよ?」
屋敷妖精が“旦那様”と呼ぶのは、てっきり女ゴーストのことだと思い込んでいた。
だが、エリカたちの名が出たということは……。
「もちろん、旦那様はロウ様です」
シルキーがにこにこしながら嬉しそうに答えた。
ミランダは呆気にとられた。
「さあ、どうぞ」
シルキーがさらに言った。
ミランダは不審の念に襲われながらも屋敷の中に入った。
入ったところは、大きなホールだ。
「よろしければ、武器はお預かりします」
「いや、これは持っていく」
ミランダははっきりと言った。
なにかの罠だと思った。
これは絶対に手放してはならない。
強く思った。
「そうですか……。では、そのまま、どうぞ」
しかし、シルキーは呆気なくそう言った。
シルキーはをどんどんと進んでいく。
ホールのような場所を通りすぎた。
さらに奥の廊下に進む。
「どこに行くのだ、シルキー? ロウはどこにいる?」
ミランダは歩きながら声をあげた。
「地下におられます。ほかの方々もご一緒です」
シルキーがにこにこと応じる。
特に、ミランダを罠に嵌めようとしているような怪しい気配はない。
むしろ、自然体すぎるくらいだ。
ただ、シルキーのいまの言葉に気になるものがあった。
「地下?」
ここには地下があるのかと思った。
ミランダは胸の下に隠している転移魔具を確かめた。胸を強く叩けば、瞬時に魔道が発動して、両手を拡げた大きさくらいの円周内に存在する者を巻き込んで、この屋敷から脱出することができる。
それはちゃんと機能している。
ミランダは、魔道の力で探ったが、その転移魔具の効果までを打ち消すような結界は感じない。
これなら、いまのところ大丈夫だが、地下となればわからない。
地下があるとすれば、ロウたちが捕らわれているのは、地下の可能性があるが、もしも、地下室に罠があるのであれば、ミランダ自身の危険もそれだけ増すということだ。
それにしても……。
ミランダは、さっき屋敷妖精がロウのことを旦那様と呼んだことが気になっていた。
それがどういう罠なのかを考えようとした。
だが、わからない。
ここは、少しかまをかけて対応を見てみよう。
ミランダは決心した。
「ここを降ります」
シルキーが指し示した。
そこにあるのは地下への階段だ。
ミランダは進むことを拒否するように、立ち止まった。
「どうかしましたか?」
シルキーが振り返った。
「その前に訊ねたい。お前はロウのことを旦那様と呼んだな?」
「はい。ロウ様は旦那様です。昨日からそういうことになりました」
「だが、それはおかしい。屋敷妖精は、魔力の高い魔道遣いに仕えるというのが本能だろう。しかし、ロウには魔力などない。それなのに、屋敷妖精のお前が支配に陥るわけがない……。なにかの罠なら、ここで白状しろ。ロウは無事なのか?」
ミランダは怒鳴った。
すると、シルキーがにっこりと微笑んだ。
その笑みがあまりにも無邪気で嬉しそうだったので、ミランダは思わずたじろいだほどだ。
「……そうですね。新しい旦那様は魔力はお持ちではなかったです。わたくしめも、ロウ様の支配になれるとは思いませんでした……。でも、なぜか、ロウ様はわたくしめを支配してくださったのです。とっても気持ちがよかったです」
シルキーが思い出し笑いのようなものをしながら、階段をおりていく。
ミランダは仕方なく、シルキーについて階段をおりていった。
階段を降りたところは、燭台が照らす石造りの廊下になっていた。
左右には、幾つかの鉄の扉があり、それが幾つかある。突き当りには扉のようなものがある。
シルキーは、その廊下を進んでいく。
「横の扉の向こうは、どういう部屋なのだ?」
ミランダは前を歩くシルキーに訊ねた。
「調教室です」
シルキーはあっさりと言った。
ミランダは驚いた。
「ちょ、調教室だって──。つまりは、拷問室ということか?」
ミランダは緊張して声をあげた。
「拷問室とは呼びません。調教室です。趣向ごとに分かれた部屋になっています。全部で六個あります。でも、旦那様たちがお待ちなのは調教室ではありませんよ。つきあたりの浴室です。そこでお待ちです」
「浴室?」
次々に出ていくる意外な言葉に、ミランダは混乱気味だ。
「ここです」
シルキーが立ち止まって振り返った。
そこは突き当りであり、両側に横に開く造りの木製の扉がある。
そのとき、扉の向こう側から、確かにロウやエリカたちの声がかすかに聞こえた気がした。
シルキーが扉を開く。
確かに浴室だ。
そこは広い脱衣所のようになっていて、木網の椅子が並べられていた。隅に台があり、清潔そうなタオルも重ねて置いてある。脱衣所の奥にはさらに扉があり、そこが浴槽のある部屋という感じだ。
ロウたちの声は、その奥から聞こえる。
「……あ、うう……」
そのとき、エリカの苦しそうな声が向こう側から響いた。
はっとしたミランダは、大斧を持ったまま勢いよく扉を開いた。
しかし、その中に光景にミランダは硬直してしまった。
扉の向こうは、間違いなく浴室だった。
広い洗い場があり、浴槽もある。
その浴槽も大きい。
一郎とエリカとコゼとシャングリアは、四人でその浴槽に浸かっていた。
だが、その光景に、さすがにミランダもたじろいだ。
その浴槽に浸かっている四人の真ん中が一郎であり、三人の女たちが密集するように一郎にくっついているのだ。しかも、エリカなど、浴槽に座る一郎を椅子にして乗るように座らせられている。
無論、四人が素っ裸なのは明らかだ。
「……あっ、ロ、ロウ様……お、お願い……そ、そんなこと……ああっ……」
エリカが真っ赤な顔をして声をあげている。
さっき苦しそうな声を思ったのは、どうやらエリカの嬌声のようだ。
一郎の両手はエリカの胸を掴んでいて、一郎が手を淫らに動かしているのだ。
しかも、湯の中でよくわからないが、エリカの両手は背中側で括られているように背中側から動かない。
それで抵抗ができないでいるみたいだ。
「わっ、すまない」
思いもよらぬ、淫靡な光景に動揺して、ミランダは慌てて扉を閉じようとした。
「ミランダ、待っていたよ。とにかく、話があるんだ。入ってきてくれ」
そのとき、エリカを前に抱いたままの一郎が顔をあげ、強い視線をミランダに向けた。