※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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647 憂さ晴らし用娼婦(その1)

「今度はどんな客なの?」

 

 シズは闇娼館の廊下を歩きながら、シズの前を歩く「世話女」のローヌに訊ねた。

 世話女というのは、言葉の通り、この闇娼館に囚われている女たちの世話をする女であり、客をとるとき以外は個室に監禁されている娼婦たちの生活の面倒の一切を看る役割の女たちだ。

 つまり、食事を運び、衣類の洗濯をし、部屋にある便壺の交換などをするのだ。頼めば、生活必需品などをどこかから持ってくてくれる。娼婦の身体の手入れや、必要により治療などもする

 さらに、こうやって客をあてがわれるときには、女たちの部屋にやって来て、客室まで連れ出す役割もしている。

 

「マクリーヌ兄弟というお方々です。多分、商人だと思います……。あのう……。昔、エルフ族に小馬鹿にされたことがあって、エルフ族を苛めたいという申し出だそうで……。申し訳ありません、シズ様……」

 

「別にあんたのせいじゃないでしょう。つまり、また、憂さ晴らしとしてあてがわれるのね」

 

 シズはローヌの後ろを進みながら苦笑した。

 これから客をとるシズだが、身につけているのはまったくの裸身に、袖のない一枚のローブという格好だ。他には首にある「奴隷の首輪」と、四肢の手首足首にある革枷である。

 いまのところ、拘束はされていないが、「命令」により逃亡は禁止されているし、前を歩く世話女の指示に従うようにも「命令」を受けているので、シズにはなんの自由もない。

 

 ここで客をとるようになって三日になる。

 三日のあいだにシズが客をとったのは六組だ。相手がひとりのときもあるし、今日のようにふたりということもあった。

 共通するのは、誰も彼も、エルフ族が嫌いということだ。

 シズは、エルフ族と人間族のハーフだが、見た目はエルフ族なので、この娼館の連中はシズをエルフ族の令嬢ということで触れ込んでいるようだ。

 

 エルフ族と宣伝することはともかく、シズのような孤児あがりの女冒険者を「貴族令嬢」というのは無理があると思うが、別に貴族としての振るまいを要求されるわけでもないし、もともと、エルフ族には人間族の貴族のようなややこしいマナーなどはない。人間族は階級意識が高い者が多いが、エルフ族はもともと狩猟民族なので、身分的な階級差が薄いのだ。

 貴族といっても、エルフ族社会では、そんなに生活に変わりがないので、シズのような者でも、十分に「エルフ族の貴族令嬢」で通用するのだそうだ。

 もっとも、こんな闇娼館でわざわざエルフ族を苛めにくるような男たちだ。シズが本物のエルフ族の貴族令嬢であろうが、そうでなかろうがどうでもいいのだろう。

 

「で、でも、申し訳ありません。あっ、こっちです」

 

 ローヌが頭をさげた。

 彼女がどんな表情をしているのかは見えない。ローヌは顔と頭の半分が焼けていて、醜い火傷があるので、ここの男たちの指示で顔を隠しているのだ。

 娼婦部屋にいるときには布を外しているので、シズは布の下の顔を知っている。

 確かに醜い顔だった。

 髪の毛も半分近くがなくなって、火傷の痕に覆われている。酷いものだ。

 

 タリオ軍がカロリックを征服した今回の戦いの戦場になった都市で、焼け出された住民に対する戦場狩りで捕らえられたらしいが、戦闘に巻き込まれて魔道の火炎で顔を焼かれ、死にかけていたところを一緒にいた女とともに連れてこられたらしい。

 だから、シズ同様に、この娼館に来て間もないようだ。

 

 彼女の話によれば、もともと、この闇商館で客をとらせるために連れてこられたらしく、ローヌを連れてきた男たちは、顔の治療さえすれば客を取らせることができると判断したという。

 顔は焼けているが、ローヌはまだ十代の少女であり、身体も綺麗だ。残っている顔半分を見れば、焼けていなければ美少女だということもわかる。年齢的にも十五、六だろう。十分に客をとれる身体はしている。

 

 ところが、火炎には呪術がかかっていたらしく、治療術でも戻せないとわかって、娼婦ではなく世話女として使われるようになったということらしい。

 ちなみに、ローヌと一緒にいた女は獣人族の女戦士らしいが、ここで闇娼婦として働かされているようだ。

 

 ローヌも、シズのような娼婦と同様に女奴隷だ。

 しかし、客の相手をする以外にはなにもしなくてもいいシズたちとは異なり、世話女は朝から晩まで働かされて、食事も粗末である。

 まあ、どっちがより不幸なのかは知らないが……。

 

 ともかく、娼婦のシズたちは、客以外に暴力を振るわれることはないが、世話女たちは、男衆たちに鞭打たれたり、殴られたりすることも、日常茶飯事のようだ。

 だから、ローヌには、いつも新しい傷がある。

 また、客はとらない世話女だが、男衆たちの性の対象にはなるらしく、犯されたような裂傷が女陰や肛門にあったりもした。

 

 鞭打ちなどを好む客もいるので、シズには回復用の高級治療薬があてがわれていて、ローヌにはこっそりとそれを使わせてもいる。

 恐縮して遠慮するローヌだが、シズはなかば強引に彼女の治療をしてやっている。

 それだけでなく、シズ用の食事は栄養もあって、量も十分なので、それをローヌにこっそりと分けたりしている。

 ローヌはお仕置きされると拒むが、黙っていればわからないと、これも強引に食べさせている。

 

 やはり、世話女に与えられてる食事では、若いローヌには十分でないのか、食べるとなれば、ローヌはおいしそうに食べ物にむしゃぶりついていた。

 そんな経緯もあり、まだ三日だが、ローヌもかなりシズに懐いてきた。

 

 シズがローヌを大切にしているのは、もちろん思惑がある。

 なにしろ、首にある「奴隷の首輪」によって、隷属の魔道の支配下にあるシズには、この娼館内を動き回る一切の自由がないのだ。部屋は狭い個室で、ほかの娼婦と遭う機会もほとんどない。

 こうやって、個室から客室に移動するときに、運がよければすれ違うだけであり、向こうも世話女を連れており、会話をする機会も皆無である。

 

 だから、世話女だ。

 世話女は労働もするし、娼館を管理している男たちとも会話をするので、個室と客室の往復以外を「禁止」されている娼婦に比べれば、遙かに自由である。

 だから、治療をしたり、食事を分けたりして恩を売り、ローヌに娼館内を探ってもらっているのだ。

 

 もちろん、ローヌが必要もなくうろうろしていることがばれれば、とんでもない折檻を与えられることはわかっているが、昨日、一緒に捕らわれた仲間の居場所を知りたいと頼んだら、ローヌは自分のできる範囲で探してみると、快く応じてくれた。

 

 ローヌに頼んだのは、もちろんゼノビアのことである。

 あの「お披露目会」のときの記憶は半分以上、飛んでいるので、シズもよく覚えていないが、シズ同様にゼノビアも捕らえられて、一緒にいたぶられたのは、辛うじて記憶していた。

 あれから三日……。

 ゼノビアにはまったく遭っていない。

 居場所もわからない。

 

 しかし、激しく輪姦されているあいだに、連中がしゃべっていたことを懸命に思い出す限りでは、確か、ここの連中はゼノビアを奴隷の首輪で、娼館を仕切っているブレイドに隷属させようとしたが、なぜか果たせず、そして、ゼノビアを「主人」とする隷属にかかっているシズをブレイドに譲渡させようとしたが、それもできずに終わっていた気がする。

 媚薬で正体を失わされていたが、シズは連中に輪姦されながらも、見聞きしたことを記憶に残す理性を保っていたのである。

 

 あれから、ゼノビアには遭っていないものの、その記憶が正しければ、シズはまだゼノビアの隷属にあるということと思う。

 しかし、現段階では確かめる手段はない。

 ゼノビアが「ここの男たちに絶対服従。決して逆らうな」と命令をしたので、その命令によって、シズには男たちの命令に逆らえなくなっていると思うのだが、実際に隷属の根源が誰なのか、区別がつかない状態なのである。

 

 確かに、命令は効いており、シズはこの娼館で客をとることや、世話女の案内なしに移動をしないこと、男衆や世話女の指示に従うことなどを改めて命令されたことで、まったく自由を失ってしまっていて、それで「命令」が有効になっているのはわかる。

 だから、シズの記憶のとおり、シズがゼノビアの隷属効果で奴隷状態にあるのであれば、それが有効なのは、ゼノビアがまだ生きているという証にはなる。

 もしも、ゼノビアが殺されていれば、その時点でシズを縛っているゼノビアの「命令」や「隷属」は消失し、それを根源としてシズの自由を奪っている男衆の「命令」も消えるはずだからだ。  

 ただし、すでにシズの隷属がブレイドに譲渡されていたら、それもなんの保障にはならない。

 もっとも、奴隷の譲渡は、対象の奴隷であるシズを前にしなければ不可能だ。シズに対して、「主人が譲渡になる」と命令し、シズがそれを認識してはじめて、譲渡になるからだ。

 シズはまだ、主人の譲渡を認識させられていない。

 だから、ゼノビアはどこかで生きていると信じてる―。

 

 しかし、ローヌによれば、シズと同時期にやってきた女で、ゼノビアにあたる女はいないそうだ。

 娼婦用のどの個室にも、それらしい女性は見当たらないという。

 

 これからも探し続けると言ってくれているが、シズはお願いするしかない。

 また、シズがこの娼館にやってきた本来の対象……。

 すなわち、テレーズ=ラポルタ女伯爵たちについても、情報を探ってもらっている。

 これについては、それらしい女が、この闇娼館のもう一層下にいるそうだ。

 ローヌには、無理のない範囲で容貌や名前を探って欲しいとお願いをしていた。 

 

「こちらになります、シズ様。終わればお迎えに参ります。それ以外は部屋をお出にならないように……。命令です……。すみません」

 

 客室らしき部屋の前につくと、ローヌがまた謝った。

 この女はいつも謝ってばかりだ。

 いま謝ったのは、シズに「命令」をかけて、勝手に部屋を出るなと指示したからだろう。男衆の指示に従うように「命令」を受けているシズだが、その男衆から「世話女」の命令にも逆らうなと命令を受けている。

 だから、いまのローヌの言葉は、しっかりとシズの自由を奪うのである。

 ローヌはそれを恐縮しているのだ。

 シズはまたもや苦笑してしまう。

 

「謝るなって言っているでしょう……。で、どうするの? 裸? このまま?」

 

 客の要求によって、どんな格好で入るのか違ってくる。

 この三日のあいだ、シズを買った客の全員が、エルフ族への憂さ晴らしとして買ったので、まともな格好で客室に入ったことはない。

 数回すれ違ったほかの娼婦が比較的綺麗な格好をしていたことに対して、シズはいつものように、このローブだけを与えられたことから、今日も破廉恥な格好で来ることを要求されているのだろうなということはわかる、

 

「ローブはここで……。それと腕は背中に……。自分でお外しにならないように……。それとお客様には暴力禁止、絶対服従です……。命令です……。ごめんなさい」

 

 ローヌがまた謝った。

 思わず噴き出してしまう。

 客への暴力禁止や服従については、男衆の「命令」をかけられているシズだが、世話女もまた、客室の前で、改めて「命令」の重ね掛けをするように言い渡されているようだ。

 ローヌは毎回同じように「命令」する。

 そして、シズの世話女のローヌという少女は、何度言っても、シズに「命令」をするたびに謝罪をする。

 

「はい、どうぞ」

 

 シズはローブを脱いで裸になると、ローヌに手渡した。

 さらに、両手首を自分で背中に回して、革枷についている金具と金具を合わせて捻り、自分で拘束してしまう。

 こうやって拘束については自分でできるが、外すのは鍵がないとできない。

 その鍵はすでに客に渡されているはずだ。

 

「お待たせしました。シズ=タレン令嬢です」

 

 ローヌが客室をノックし、返事を待って扉を軽く開いて中に声をかけた。

 タレンというのは、エルフ族の中級貴族出身という触れ込みのシズに与えられている偽物の姓である。

 

 ローヌが客室の扉を開ける。

 シズは頭をさげたまま、直接に顔を見ないように部屋に入った。ローヌについては、部屋には入らず、外から扉を閉める。

 背中でがちゃりと扉の鍵が閉まる音が聞こえた。

 

「シズでございます、よろしくお願いします」

 

 後ろ手のまま、両膝をついて頭を床につける。

 これが指示されている作法だ。

 最初のとき、気にせずに、許可なく直接顔を見たら、それを口実に客に折檻を受け、さらに男衆に懲罰を与えられた。

 娼婦に手を出さない男衆だが、懲罰は別だ。

 懲罰のことは思い出したくもない。

 どうせ、客にはいたぶられるのだが、男衆からは避けたい。

 

「おう、来たか。確かに生意気そうなエルフ族だ。なあ兄貴」

 

「ああそうだな。確かに生意気なエルフ女だぜ。面を見せろ。立ってこっちに来い」

 

 頭をあげていいということだったので、シズは頭をあげて立つ。

 商人のマクリーヌ兄弟だとローヌから教えられたが、確かに顔立ちが似ていて、兄弟だろう。

 年齢は三十代なかばか?

 ふたりとも同じような小太りの人間族の男だ。

 

 また、今回の客室はかなり広い。そして、寝台はない。あるのは家具と椅子だ。壁には責め具のようなものが幾つか並んでいる。

 ローヌによれば、寝台のある普通の客室がほとんどだが、シズはそういった場所ではなく、毎回、こういう部屋に連れてこられる。

 これもまた、シズを望む客が、現段階ではエルフ族を苛めることを望む客ばかりだからだそうだ。

 

 まともに抱くのではなく、できるだけエルフ族を惨めに抱きたいので、あえて寝台が準備されていないらしい。

 シズも、これまでの客には、床の上や椅子の上、あるいは天井から吊られたままだとか、さまざまな体勢で犯されてきた。

 

「まずは生意気なエルフ女には、媚薬汁のたぷっりと染みた股縄をしてもらうぞ」

 

「それをして、いいと言うまで走れ。いいな」

 

 ひとりが表面に汁が染みている黒い縄を取り出し、もうひとりが部屋の真ん中にあった小さな絨毯のようなものに魔道をかけた。彼が魔道遣いという感じではなく、誰でも扱えるように、あらかじめ準備されている魔道具の気配だ。

 すると、その絨毯が床に置かれたまま、図柄だけが一方向に動き出した。

 

「股縄をしてあれに乗れ。絨毯の表面が動くので、絨毯から出ないように走り続けるのだ。“命令”だ」

 

 ひとりが言った。

 あれに乗って走り続ける?

 

 一見して、かなりの速度で図柄が動いているが、あの速度に逆らうように走るということか?

 かなりの全力疾走になると思うが……。

 シズは目を見張った。

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