※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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650 闇娼館の女たち

 身体を引き起こされた。

 シズは眼を開けた。

 

 視界に入ったのは世話女のローヌだ。

 世話女とはいっても、十九歳のシズよりも年下の少女だ。だが、顔の半分に呪術の火炎に焼かれた痕があって娼婦はしていない。

 そして、シズの個室部屋にいるとき以外は、布で顔を隠している。

 いまも、顔を隠しているから直接には表情は読めないものの、抱きあげているシズを見下ろしているローヌは、とても悲しそうな様子に見える。

 

「大丈夫ですか……。すみません……。水です。お飲みになりますか?」

 

 シズは床の上に正座をしているローヌに、膝枕をされているようだ。

 皮袋の水筒をローヌがシズの顔の前に差し出した。

 

「の、飲むうう──」

 

 シズはローヌが差し出した水筒をもぎ取ろうとした。

 だが、身体が動かない。

 あまりの疲労困憊で手足が動かないのだ。

 

「お待ちください……。どうぞ、シズ様……」

 

 ローヌがシズを抱え直して、水筒を口に咥えさせてくれた。

 シズは流れてきた水をむさぼるように飲んだ。

 おいしい……。

 

「んんっ、んんっ、んんっ」

 

 ずっと飲ませてもらえなかった水分が、身体に染み通る。水を飲みながら、後手に縛られていた縄が横に落ちているのを見た。

 あのマクリーヌ兄弟が解いたとは思えないので、ローヌがここに来てから解いてくれたのだろう。

 さらに見ると、忌々しい媚薬染みの黒い縄も放り投げてあった。

 あっちは、最後に兄弟に犯されまくるときに外されたのを記憶している。

 あれでずっと股縄を施されて、疼きと痒みで気が狂いそうになるまで追い詰められた。

 思い出すと、屈辱と口惜しさが込みあがってくる。

 また、まだ股間などに痒みが残っていることを認識してしまった。

 痒い……。

 それにまだ身体が熱い……。

 シズは水を飲みながら、顔をしかめてしまった。

 

「大丈夫ですか? あのう、部屋に食事を準備しています。お湯も……」

 

 あっという間に革の水筒が空になり、それを離しながら、ローヌが申し訳なさそうに言った。

 この世話女の少女は、いつも謝ってばかりだ。

 シズは苦笑した。

 

「だ、大丈夫じゃないわね……。身体が千切れそうに痛い……。それと、まだ股もお尻も痒いの……。連中に媚薬汁の染みた股縄で苛められてたからね……。なによりも、身体を洗いたいわ。前も、後ろも、口からも連中の臭い精液を浴びせるように飲まされたし……」

 

 シズは自嘲気味に笑った。

 あいつら、今度外で会うことがあったら、絶対に仕返しをしてやると思った。エルフ族への恨みかなんか知らないけど、やりたい放題にやって……。

 

「ご、ごめんなさい」

 

 ローヌが悲しそうな口調で謝罪の言葉を口にする。

 

「だからあ……、なんで、あんたが謝るのよ……」

 

 シズは呆れて言った。

 

「だ、だって、わたしは、こうやって逃げていますから……」

 

「逃げている?」

 

 シズはなにを言っているのかわからずに首を傾げた。

 

「まあいいわ……。避妊薬は……ある……?」

 

 シズは訊ねた。

 調教をされる前も飲んでいたが、一応はいまも飲んでいた方がいいだろう。あれだけの精を子宮にも注ぎ続けられたのだ。

 念のためということもある。

 万が一にも連中の子を孕むなど冗談じゃない。

 

「あります。どうぞ」

 

 ローヌからサビナ薬を差し出された。

 それを受け取ろうと思ったが、やはり、腕を上げることもできなかった。

 とりあえず、シズはそれを口に中に入れてもらい、唾液で溶かして飲んだ。サビナ薬は、サビナ草と呼ばれる雑草に近い薬草で調合する絶対的な避妊薬であり、妊娠したくない男女が当たり前に飲んでいるものだ。

 それはともかく、身体が疲れ切っている。

 

「はあ、はあ、はあ……。とにかく、迎えに来てくれたのね……。ありがとう……」

 

 少し落ち着いてきた。

 シズがいるのは、マクリーヌ兄弟にずっといたぶられていた部屋である。

 彼らはすでに立ち去ったみたいだが、シズはここで放り投げられるように置き捨てられていたのだろう。

 それを世話女として出迎えにきたローヌに、起こされたということのようだ。

 服は着ていない。まだ全裸のままだ。シズが身につけているのは、首輪と四肢の革枷だけである。

 

「あのう……、それでコンシェル様から、伝言を受けています。次の仕事は夜からです……。それまでに身体を回復させろと……。すみません……」

 

 すると、ローヌが申し訳なさそうに言った。

 

「よ、夜から……?」

 

 さすがに、シズも鼻白む。

 ほとんど一昼夜、寝ることどころか、水もなしに責められ続けて、指一本動かないほどに疲労困憊なのだ。

 これを夜までに回復させろと……?

 

 どうせ、あのコンシェルが、またエルフ族嫌いの客を予約で仕込んだのだろう。

 「コンシェル」というのは、男衆の頂点に位置する者であり、闇娼館の女たちを仕切る役割の男である。商品である娼婦を含む階層の娼館施設の全部の管理をそのコンシェルが行っていて、階層ごとに分割している各層ごとの経営を任されているようだ。

 当然に娼婦たちに客を配分するのもコンシェルの役割である。

 

 この闇娼館は、複数の地下層が分離されている形式であり、その層ごとに、娼婦の管理や客のとらせ方が違っていて、それか売りになっているらしい。

 例えば、ここの層は、女の新鮮さを目玉にしていて、シズのような新しい女を性技も仕込まずに客の相手をさせる。

 だから、しばらくすると、性技を覚えさせられて、別の層に移されるという。

 

 これが一層下になると、ショー形式の見世物を主体にする娼館らしい。こっちは芸事をするので、しっかりと仕込まれた女しか入れない。まあ、芸といっても、躍りや楽器だけでなく、膣で卵を割るとか馬鹿げた技も入るようだが……。

 

 着飾った女が普通に客の相手をする層もあって、まあ色々だということだ。

 娼婦側の女が男を虐めるタイプの層もあるそうだ。本当かどうかは知らないが……。

 

 だから、各層ごとに管理者のコンシェルがいて、その複数のコンシェルの上にいるのが、総責任者のブレイドということだ。

 また、さらに上が、他にもある各地の娼館全部、すなわち、“クルチザン教会”の頂点のヴィトー総帥ということになる。

 いずれにしても、シズが所属しているこの層のコンシェルは、この状態のシズに、夜の仕事をあてがうつもりのようだ。

 

「とにかく、部屋に戻りましょう、シズ様。少しでも、お食事をして睡眠を……」

 

「そうね……」

 

 ローヌの言うとおりだ。

 いまが昼近くとすれば、夜の客取りまでそれほど時間があるわけではない。

 そのあいだに、睡眠と食事を少しでもとらないと、さすがに夜も、同じことをされれば死んでしまう。

 

 それにしても、夜も、まさか、あのマクリーヌ兄弟じゃないでしょうねえ?

 今夜も挨拶したときに、マクリーヌ兄弟がいたらどうしよう……。

 金だけはたくさん持っている雰囲気だったし……。

 ちょっと想像しただけで、シズはうんざりしてしまった。

 シズは、裸身をローヌが持ってきたローブで包んでもらい、ローヌの肩を借りて立ちあがろうとした。

 

「きゃああ」

 

「くっ」

 

 しかし、身体を預けるようにして、シズはローヌを巻き込んで、その場に倒れ込んでしまった。

 ローヌの力では、シズを支えきれなかったのだ。

 

「……も、申し訳ありません……。いま、男衆の方を……」

 

「それは、やめて──」

 

 シズは慌てて言った。

 男衆というのは、この闇娼館で働いている男たちのことだが、この層では普段は、男衆たちは娼婦たちの前にあまり出てこない。

 コンシェルがそう指示しているようだ。

 しかし、実際には娼婦たちと客の「行為」をこっそりと監視し、客と娼婦のあいだで起きる面倒事の解決などの仕事をしている。

 だが、奴隷身分の娼婦たちに対する「命令権」も、女たちに刻んでいる隷属の魔道を活用して与えられており、なにか隙をみせれば、すぐに理由をつけて、身体に手を出したり、懲罰の理由を作っていたぶってきたりする。

 

 シズのような娼婦は商品なので、男衆が勝手に手を出すのは厳禁とされているのだが、連中はすぐにそれをするのだ。

 この三日で、シズは十分にそれがわかった。

 それに、なにをされても、隷属魔道を掛けられているシズには、抵抗することなどできず、泣き寝入りするしかない。

 足腰が立たないことで、部屋に運んでもらうようなことをしてもらい、連中に借りを作れば、きっと後でそれに対する見返りという名の「遊び」を要求されるに決まっている。

 シズはすでに男衆の「遊び」の洗礼を受けているので、もう男衆には関わりたくない。初日のことを思い出しただけで、ぞっとする。

 

「お、男衆は呼ばないで……。じ、自分で戻るわ……」

 

 シズは、なんとか立ちあがろうとした。

 だが、やはり腰が砕けて立てない。もう少し立てば回復するかもしれないが、やはり、無理そうだ。

 

「ちょ、ちょっとお待ちください、シズ様」

 

 すると、ローヌが部屋を走り出ていった。

 どこに行くのかと思ったが、すぐに戻ってくる。

 しかも、童女と一緒だった。人間族の子供であり、十二、三歳というところだろう。服装から察して、おそらく、ローヌ同様の世話女と思う。

 

「シズ様、世話女仲間のミリアちゃんです。ルカリナの世話女の担当をしている子で……。お願い、ミリアちゃん、手伝って……」

 

 どうやら、ローヌはひとりではシズを運べないと判断して、手伝う者を連れてきてくれたみたいだ。

 だが子供だ。

 この年齢では客を取ることはできないと判断されて、世話女として働いているのだろうか。

 また、“ルカリナ”というのは、シズたちが戦場跡でここの闇娼館の奴隷狩りで捕らわれたとき、一緒に捕まった獣人の女戦士のことだ。ローヌとルカリナは、連れだって別の都市に避難しようと旅をしていたらしいが、運悪く、クルチザン教会の奴隷狩りに遭難したようだ。

 そういう経緯も、シズはローヌから聞いていた。

 

 とにかく、ふたりは一緒に捕まったが、ルカリナという獣人女は、シズ同様に奴隷化されて闇娼婦をして働かされることになり、醜く火傷をしてしまっているローヌは、世話女として働くことになったそうだ。

 そのルカリナの世話女がこのミリアという童女のようだ。

 

「うわあ……、お姉さん、大丈夫ですかあ? こっちにも掴まって……」

 

 ミリアがローヌの反対側に行き、シズを支える。

 ふたりがかりで抱えられて、なんとか立たせてもらう。

 

「……ごめんなさい、ミリアちゃん……。助けてくれて……。どうしても、ひとりじゃ支えきれなくて……」

 

 ふたりに抱えてもらい、ゆっくりとだが歩くことができた。

 すると、シズの身体越しに、ローヌがミリアという童女に謝罪の言葉を口にした。

 

「お互い様ですよ……。それに、ローヌさんには、わたしの連れのケイトのことも面倒看てもらっているし……」

 

 ミリアが応じた。

 ケイトというのは、ローヌがシズのほかに担当している奴隷娼婦のことである。

 シズ自身は会ったことはないのだが、シズはなんでも語ってくれるので、ローヌが知った娼館のことは、全て話してもらって、シズの頭に入れている。

 ローヌによれば、ケイトというのは、生真面目そうな人間族の十六歳の少女だと言っていた。

 やはり、最近になって闇娼館に連れてこられた新入りの娼婦だそうだ。新入りはまずはこの層にあてがわれることが多いのだ。

 

 それはともかく、いまの話によれば、ローヌのもうひとりの担当のケイトは、目の前のミリアの知り合いみたいだ。

 そして、ローヌの連れのルカリナという獣人族の世話女をミリアというこの童女がしていて、ミリアの連れのケイトという娼婦の世話女をローヌがやっているということのようだ。

 まあ、世話女の担当娼婦など、コンシェルが勝手に決めるのだから、知り合いかどうかなど斟酌しないのだろう。

 それとも、あえて、知り合い同士では組ませないようにしているのだろうか。

 

「あ、あんたとケイトさんも……奴隷狩りで?」

 

 シズは訊ねた。

 すると、ミリアはそうだと答えた。

 ただ、借金や犯罪理由で奴隷にされるのではなく、なんでもない女たちを誘拐して、強引に性奴隷にするなど、どこの土地でもご法度だ。

 だから、闇奴隷なのだろうが……。

 

「だけど、ありがとう……。男衆に声を掛けることも考えたんだけど……」

 

 ローヌがさらに言った。

 

「それはやめた方がいいですよ。わたしがルカリナ様を運んでもらうときに、手伝ってもらったら、わたしは連中の珍棒を三人もしゃぶらされましたから……。それだけでなく、ルカリナ様もやられて、可哀想なことになってしまって……。とにかく、代償になにをさせられるかわかりませんよ……」

 

 ミリアが思い出すような口調で憎々しげに言った。

 だが、シズはその内容に驚いた。

 ミリアはどう見ても、まだ大人の身体になっていない童女だ。だから、娼婦にはなっていないはずだ。

 それなのに、男衆はそのミリアに手を出したのか?

 シズは驚いて訊ねた。

 すると、ミリアが首を横に振った。

 

「……手は出してない範疇だそうです。犯してないんですから。それはこの娼館と奴隷契約をするときに魔道契約しましたし……。わたしが十五歳になるまで、わたしの貞操は守られます。魔道契約が破棄されない限り、この娼館の男衆はわたしに手は出せません。だけど、口の奉仕は契約の外らしいですね……。二年後のための練習だと言っては、男どもは、なにかにつけ、わたしにそれを強要するんです。反吐が出ます」

 

 ミリアが言った。

 そんなことになっているのかと、シズも唖然とした。

 すると、ミリアがシズに向かって、心配そうな視線を向けた。

 

「……だけど、大変ですね、お姉さん……。エルフ族への憂さ晴らし専門の娼婦として客をとらされているんですよね……。うちのルカリナ様も同じように折檻娼婦をやらされているから、わかります……」

 

 ローヌとともに、シズを抱えて歩かせてくれているミリアが心配そうに声を掛けてきた。

 いまは、なんとか少しずつ部屋に向かって、廊下を進んでいる。

 

「えっ、ルカリナも折檻娼婦──?」

 

 すると、ローヌが驚いたように声をあげた。

 よくわからないが、「折檻娼婦」というのは、シズのようなやり方で、客の嗜虐めいた責めを受けることを特に強要されている娼婦のことのようだ。

 美しく長命でもあるエルフ族は選民的で、他種族を蔑む傾向があり、実はエルフ族を毛嫌いしている者は人間族を中心に多い。

 その憂さを受け入れる奴隷娼婦として、シズはこの三日間をすごさせられていた。

 どうやら、このミリアの受け持ちの娼婦で、ローヌの知り合いの獣人戦士のルカリナも、シズ同様のことをさせられているらしい。

 そして、ローヌはそのことを初めて知った感じだ。

 

「えっ、知らなかったのですか、ローヌさん? まあ……ですけど、ルカリナ様も獣人族ですし、このところの獣人隊のおかげで、獣人族に恨みを持つ者も多いんですよ……。獣人族ということで、コンシェルもかなりのことをすることを許可していますし、毎日、大変なことになっていて……」

 

「え……、ど、どうしよう……、どうしたら、いいのでしょう……。どうしたら……」

 

 ローヌは目に見えて狼狽えだした。

 

「あ、あたしを部屋に置いたら、ルカリナという獣人女と会ってきたら? あたしはいいよ……」

 

 シズは声を掛けた。

 ローヌがあまりにも動揺している感じだったからだ。

 

「い、いえ、こんな状態のシズ様を放っておくわけには……」

 

 ローヌは首を横に振った。

 

「あっ、だけど、ルカリナ様と話をしてないなら、ローヌさんも話だけでも聞いてあげたら……。ルカリナ様って、お客様は仕方ないけど、男衆にも目の敵にされてるんです。獣人族だから……」

 

「えっ、ええ?」

 

 ローヌが大きく動揺したのがわかった。

 だが、もともと獣人族に差別的なのが、カロリックという土地の気風だ。

 そして、征服将軍のランスロットの施策で、タリオ軍の統治に批判的な者たちを取り締まるのに、ランスロットは獣人たちを軍として組織した「獣人隊」を使っているのだ。

 獣人たちも、これまで自分達を蔑んできた人間族たちを取り締まると役目ということで、容赦なくあちこちで暴れているらしい。

 これが、さらにカロリックの人間族たちの獣人族嫌いに拍車をかけているようだ。

 それを思い出した。まあ、ゼノビアの受け売りだが……。

 だったら、確かに、獣人族女の奴隷娼婦など、その風当たりは強烈かもしれない。

 

「ルカリナ様は昨夜の深夜あがりで、いまはお部屋です。だけど、ルカリナ様も今日の夕方から仕事が入ってます。わたしの担当のもうひとりの方は、今日は昼過ぎまでお客様がついてるんです。それまでなら、シズ様のお世話を交代できます。よければ……」

 

 ミリアが言った。

 すると、ローヌが今度は頷いた。

 

「シズ様の身体の手入れが終わったら、少しだけお願いできますか? ルカリナのところに行ってきます」

 

「わかりました」

 

 ミリアが言った。

 そして、しばらく歩いて、やっとのことシズがあてがわれている個室に着いた。なんとか男衆とすれ違わなかったのはよかった。

 シズは一度寝台に横たえられた。

 

「シズ様、つらいとは思いますが、まずは湯に行きましょう。身体を洗わないと……。ミリアちゃん、もうちょっとだけ、お願いします。シズ様を浴室まで運ぶのを手伝ってもらえますか」

 

「いいわ」

 

 ミリアが頷くと、ローヌがすぐにこの娼婦用の個室に設置されている浴室に飛んでいった。

 浴室とはいっても、単に湯を溜められる大きな容器と、水を溜めて湯を沸かすことのできる魔道設備があるだけの狭い場所なのだが、それでも各娼婦の部屋に身体の洗浄場があるなど破格の扱いだろう。

 なんだかんだで、この闇娼館における、商品である娼婦の待遇は悪いものじゃない。

 シズがこうやって痛めつけられているのは、折檻を売り物にする娼婦としての役割を与えられているからのようであり、そうでない女たちは、概ね高級娼婦のような扱いを受けていることは知っている。

 

「お待たせしました、シズ様……。では、ミリアちゃん……」

 

 ローヌがすぐに戻ってきた。

 シズは再びふたりに抱えられて、寝台から立ちあがらせてもらう。

 本音を言えば、このまま寝台で横になって寝たいが、まだ媚薬の影響が残っている。それをぬぐってもらわなければ、おそらく満足に休息することもできないだろう。

 

「ありがとうございました、ミリアちゃん」

 

 浴室に到着して、たらいのような湯舟に入れられた。

 ローヌがミリアを促して浴室の外に出す。

 そして、ローヌがシズの身体を洗いだす。

 気持ちいい。

 疲労が湯に溶けていくようだ。

 

「……そういえば、シズ様に頼まれていたこと……。少しわかりました。あの一層下にいるハロンドールの貴族夫人という触れ込みの娼婦の方ですが……、名前はラポルタというそうです。テレーズ=ラポルタ……。本物の女伯爵という売り込みで、娘の女性の方とともに破廉恥なショーに毎晩出演させられているということのようです」

 

 すると、すぐに、ローヌが小さな声で言った。

 ローヌには、ゼノビアの居場所のこととともに、テレーズ=ラポルタ女伯爵の存在を探ってもらっていたのだ。

 この娼館で娼婦にさせられてすぐに、一層下にそれらしい母娘奴隷がいることはわかった。もともと、ゼノビアがこの闇商館に潜入しようとしたのは、それらしい闇娼婦がここにいるという噂を得たからだった。

 だが、彼女たちが、本当にシズたちが捜索クエストを受けた対象の女伯爵なのかどうかまでは、事前にはわからなかったのだ。

 

 どうやら、ローヌはシズがマクリーヌ兄弟の相手をしているあいだに、それを探ってくれていたようだ。

 もう間違いない。

 テレーズ=ラポルタ母娘は、この闇娼館の中にいる。一層下のふたりがラボルタ女伯爵母娘だ。

 

「あ、ありがとう……。や、やったわ……。これで……な、なんとか……。あとはゼノビアね……。ね、ねえ、それでゼノビアのことは……?」

 

 テレーズ=ラポルタ女伯爵の存在がわかったことは、この三日間で一番の朗報だ。

 これで、あとはゼノビアの居場所さえわかれば……。

 

「申し訳ありません……。そっちはまだ……。すみません……」

 

「だ、だから、謝ることじゃ……。一層下のことなんて情報を集めるのにも苦労したんでしょう……。テレーズ=ラポルタのことを調べてくれて、ありがとう……」

 

 シズは言った。

 そのときだった。

 

「えっ、ちょ、ちょっと待って──。どうして、あなたたちも、ラポルタ伯爵様たちを探しているの? どういうこと──?」

 

 ミリアが仰天した口調とともに浴室に入ってきた。どうやら、会話が聞こえる位置にまだいたらしい。

 ミリアは心の底から驚いている表情だ。

 油断して、会話を聞かれたのは、シズとしたことが失敗だ。それだけ、疲労していたのだろうが、言い訳にもならない。シズは内心で舌打ちした。

 しかし、いまは、それよりもミリアが口走った内容だ。

 

「どういうことって……どういうこと……? いま、“あなたたちも”って言った? “も”ということは、あなたも、ハロンドールの女伯爵を探しているの?」

 

「はい、命令で潜入して……。あっ、これって、言っちゃだめなやつだ……。どうしよう……。ターナ様に叱られちゃう──。うわっ、ターナ様の名前を出しちゃった。どうしよう。また折檻されちゃう――」

 

 ミリアが狼狽えた感じになった。

 シズはびっくりしてしまった。






【作者より】

 ミリア、ケイト……。
 初出ではありません。
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