※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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657 仮面女の依頼(その1)

「ロウ=ボルグ……。いや、あんたらがボルグ殿の知り合いなんてねえ」

 

 仮面の女のターナーが驚いたように声をあげた。

 カロリック郊外の農村の中にある廃屋だ。

 

 シズたち九人は、ターナーたちの案内でこの場所に来ていた。

 この農村は、シズが最初に誘拐された廃墟となったシャロンの城郭付近に近い位置にあるらしい。

 そして、ここにいる九人というのは、シズとゼノビア、仮面の女のターナーとその連れのミリアとケイト、闇娼館で知り合った逃亡中のロクサーヌ女大公ことローヌ、そして、ローヌの護衛騎士だと判明した獣人戦士のルカリナ、さらにテレーズ=ラポルタ女伯爵とその令嬢である。

 

 救出した女伯爵のテレーズ=ラポルタとその令嬢には、闇娼館を脱走した後で、移動術の転送先で初めて合流したが、随分と大人しくて、不安そうにおどおどしていた。

 さらに、なぜか逃亡するのを嫌がり、もう闇娼館に戻して欲しいとターナーに言い寄り、頬を引っ叩かれていた。

 しかも、叩かれるとふたりとも、なぜかうっとりとターナーにすがるような眼になり、布に包んだ裸身を悶えさせるような仕草をした。

 横にいたシズは、少々鼻白んだ。

 

 それはともかく、この農村は、タリオ軍がカロリックを征服したあとに、タリオ軍に叛乱を起こそうとしたシャロンの領主域に属する地域であり、カロリック新政府によるシャロン攻撃において、ここも軍の略奪を受け、ほとんどの者が殺されるか、奴隷として連れて行かれてしまったみたいだ。

 つまりは、村としては、もう滅んでしまっている場所とのことだ。

 

 だから、そこにあった家を勝手に借りて、一時的にシズたちが休むことにしたというわけである。

 この場所を準備していたのもターナーであり、闇娼館の地下から転送装置で公都の地上に出ると、すぐにターナーが準備していた移動術の「魔道紙」で公都の外に出た。

 

 「魔道紙」というのは、あらかじめ特定の魔道を刻んだ羊皮紙であり、それに魔力を注ぐと、その魔道が発動するというものだ。

 例えば、移動術のような高等魔道は、通常の魔道遣いでも術を刻むことはできないので、それができる高位魔道遣いが、ほかの者でも術を発動できるように紋様を刻むというものである。

 当然に高価であり、移動術ほどの魔道紙ともなれば、信じられないくらいの値段のはずだ。

 しかし、ターナーは、大して惜しむ様子もなく、それを逃亡の手段として提供してくれた。

 とにかく、そのおかげで、シズたちは闇娼館から追われることなく、ここまで逃亡することができたというわけだ。

 今回については、なにからなにまで、ターナーという不思議な女に世話になったという感じである。

 

「知り合い……というのは間違いないねえ……。もしかしたら、なにかの術で支配されているのかも……。まあ、この前、気がついたんだけど」

 

 ゼノビアだ。

 救出したときには、全身が傷だらけで、しかも、股間に媚薬を塗られていたりして、苦悶に苛まれていたゼノビアだったが、これについてもターナーの手持ちの薬剤で治療してもらうとともに、この廃屋に隠していたらしい治療薬とやはり治療用の「魔道紙」で完全回復をしてもらった。

 

 だが、ゼノビアもシズも、あの闇娼館でなにもかも奪われてしまったので、謝礼として差し出すなにも持っていない。

 なにしろ、まさに身ひとつの全裸で闇娼館から逃亡してきたのだ。

 しかも、(ブラボー)冒険者としての証である首飾りでさえも失ってしまっている。

 ギルドで再発行はできるが、再発行には高額の代金がかかるし、シズたちは今はハロンドールの王都ギルドの所属になっているので、原則的には、そこにいかないと再発行ができない。

 まったく無名の別人としてなら、冒険者試験を受けて、新登録ということもできるだろうが、とにかく、痛い出費と手間になってしまった。絶対にミランダには補填させたい。

 

 いずれにしても、冒険者証明がないことには、ハロンドールに戻るにも国境越えが大変だ。

 どうしようかと考えていたら、ターナーが乗りかかった縁なのであり、少しであれば、当面の路銀と国境越えに必要な偽手形を提供してくれると言ってくれた。

 

 あまりにも、申し訳ないので、ハロンドールの冒険者ギルドに戻れば返礼もできると話し、いま、シズとゼノビアの身の上について説明していたのだ。

 

 ここまで世話になったのだから、ある程度のことを正直に伝えようと、もともと、シズたちがハロンドール王都の冒険者ギルドのミランダからの特別クエストでラポルタ女伯爵の救出に訪れたのだと語ったところ、シズたちがミランダと親しいことにターナーが食いつき、話の流れでロウのことになったのだ。

 すると、ターナーの口調が一変し、謝礼金などいらないので、そのうちにロウを紹介して欲しいと言ってきたのである。

 

 また、いまこの部屋にいるのは、仮面の女のターナーとシズとゼノビアだけだ。

 椅子などないので、床の上に三人で直接座り、部屋の真ん中にある囲炉裏を囲んでいる。

 ほかの者は別室だ。

 こっちの事情と向こうの事情をすりあわせようと言うことになり、ターナーがほかの者には席を外してもらいたいと告げたのだ。

 ロクサーヌ大公とルカリナ、女伯爵母娘はそれに素直に従った。ケイトとミリアも彼女たちの世話と、とりあえずの食事の支度のために、ここからはいなくなっている。

 

 それにしても、ここにいる集まりの中で、もっとも不可思議な存在がロクサーヌ女大公だと判明したローヌだ。

 どうやら、隷属されていないのに、あえて闇娼館に囚われているふりをして隠れていたようだし、大公ほどの地位にあった者が唯々諾々と世話女のようなことをしていたというのが信じられない。

 それに結構、献身的で、シズにも本当に尽くしてくれた。

 彼女が本当に、女大公?

 シズにはいまだに信じられない。

 まあ、この後で、彼女たちとは改めて話をすることになっているが……。

 

「知り合いというよりは、性奴隷かい? 彼は周りの女を次から次へと性奴隷にして支配に置いてしまうんだろう。さっきのミランダといい、ほかにも、ハロンドールの王太女、国王の正妃、王宮の侍女や女騎士、まあ大変なものらしいじゃないかい。しかも、今度はエルフ王国の幻の女王ときたものだ。まあ、すごいねえ」

 

 ターナーが大笑いした。

 

「ロウ様を知っているの?」

 

 シズは訊ねた。

 

「ロウ……“様”?」

 

 すると、横でゼノビアが呟いた。

 はっとしたが、ターナーがすぐに口を開いて、シズは呼び方を取り消す切っ掛けを失ってしまった。

 だが、自然とそう呼んでしまったのだ。

 そもそも、ゼノビアだって、前は呼び捨てだったのに、いつの間にか“ロウ殿”と呼んでいる。

 お互い様のことだ。

 

「いや、全く知らない。会ったこともない。だが、よく知っている。なにせ、そのロウの女たちとは、敵として戦ってきたからね。あんたらがロウの性奴隷というなら、手打ちを取り持ってくれたらありがたいさ。それをしてくれたら、いくらでも路銀を融通するし、ハロンドールに戻るために必要なものを手配するよ」

 

「わかった。あたしたちに任せときな」

 

 すると、ゼノビアが二つ返事で応じた。

 シズはびっくりしてしまった。

 

「ちょ、ちょっとゼノビア……」

 

 シズは慌ててゼノビアに声を掛けた。

 ロウの女たちといえば、ロウにいつもついている三人娘に、ミランダ、王妃に王女、国王の寵姫なんてのもいた。スクルズは死んだが、ベルズという女巫女も、ロウの女である。

 つまりは、誰も彼もが一騎当千の女傑たちであり、その女傑たちに守られているロウたちに手を出そうとして、シズとゼノビアは手痛いしっぺ返しを喰らったのだ。

 だから、向こうは敵とは思っていても、仲間には見なしてないだろう。

 敵でなければ、玩具だ。

 ロウにはさんざんに苛められてしまっている。

 普通に話ができるのは、エリカくらいで……。

 

「いいから、シズ──。とにかく、なんでもするわよ、ターナー。だけど、ハロンドールに戻ってからのことになるね。そのためには、あたしたちが安全に早く戻れるために、色々と融通して欲しいわ。もちろん、恩を受けた分は必ず返す」

 

 どうやら、ゼノビアはロウに紹介するという空手形を使って、帰りの路銀を十分にせしめるつもりになったみたいだ。

 まあ、確かに、そうでもしなければ、身ひとつしかないシズたちにはなにもできないが……。

 いまは、やっと農村女の格好だが衣服をもらってきているが、これもまた、ターナーが持っていたものであり、それがなければ、下着さえもシズたちは持っていなかったのだ。

 

「なるほど、ありがたいねえ。実は、ロウ殿に頼みたいことがあるのさ。もう諦めていたんだけど、ロウ殿が絶対に取り出しは不可能なはずの魔石をアスカという魔女から取り出したということを耳にしてね……」

 

 すると、ターナーは、おもむろに仮面を外した。

 そこには、別室にいるテレーズ=ラポルタとうり二つの顔が現れた。

 シズはびっくりしてしまった。 

 

「そして、それとは別に、あたしも全ての女を虜にするロウ殿に興味もあってね。一度、セックスもしてみたいんだよ。これについても、とりもって欲しいね」

 

 テレーズ=ラポルタそっくりの女がくすくすと笑った。

 シズは絶句した。






 *

【作者より】

 よく(その1)、(その2)とか題名についているものは、本来は一話にする予定だったものを執筆の途中で中断して、とりあえず投降したというものです。

 予定よりも分量が多くなったために切った場合もありますし、平日に投降する場合は、早朝に打ち込んで、とりあえず出勤の時間になったら投降するというスタイルのため、要は「できあがり分」ということで投降しているというものです。
(時間的に推敲する余裕がないので、一応一度だけ見直して修正して出してます。後でゆっくりと直そうは思っているのですが(言い訳)……。いつも、誤字指摘してくれる方々には、本当に感謝しています。)

 つまりは、私が感想返しや後書きなどで、「あと二話かな」と呟いた場合は、(その1)や(その2)で繋がる部分は、何話使っていても「一話」で数えています。
 よろしくお願いします。
 
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