【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「いいから、先にこっちを始末しなさい──」
侍女のひとりが不機嫌そうに怒鳴りあげた。
その剣幕にもびっくりしたが、ジェシーは内容にも驚愕した。
始末──?
殺すということ──?
言葉を失うとともに、ジェシーはたったいま、目の前のコットンがこれから、クレオンを殺すという大罪を犯すと口にしたことを思い出した。
もしかして、この辺境候家の主治医は、クレオンを裏切っているのか? コットンの父親の代から、ずっとマルエダ家に仕えているはずだが?
しかも、辺境侯家から連れてきているはずの侍女たちまで?
「いやいやいや、そうはいかん。この女は連れていく。それが私の条件だ。いいから、夜のうちに持ち込んだ箱と台車があるだろう。それを出せ」
コットンが侍女たちに振り向いて言った。
持ち込んだ箱と台車というのがなんのことかわからない。
だが、侍女のひとりがぶつぶつとなにかを口にしながら、奥間の方に入っていき、すぐに台車に乗せた木箱をジェシーたちのところに運んできた。
すると、コットンが箱の蓋を開けて、中からなにかを取り出した。
手のひらを広げたほどの大きさの金属の缶だ。
それはともかく、やっとコットンがスカートから手を離したので、ジェシーは腿まで捲れあがったスカートの裾を元に戻そうとした。
しかし、手には全く力が入らない。
また、やはり、舌が痺れきってしまって、声が出せない。
「多分、箱から出してあげられるまでに、一日以上はかかると思います。それまでのおむつ代わりです。特別の細工を施した粘性生物ですよ。少し気持ち悪いかもしれませんが、おしっこも大きいものもちゃんと食べてくれます。それに、箱の中は防音結界もきざんでありますので、悲鳴はあげ放題です。いくらでも騒いでください」
コットンが缶の蓋を開けて、なにかものを自分の手の上に乗せた。
ぎょっとした。
ぶよぶよとした青色の粘性体だ。
気味の悪い蠕動運動を続けている。
ジェシーは目を見張った。
生き物なのか──?
だが、コットンが再びジェシーのスカートをまくり、仰天することに、このおかしな粘性物をジェシーの股間に近づけてきた。
「なっ、がっ、あがっ」
必死に抵抗しようとしたが、あっという間に下着を露わにされた。
しかも、下着の中に、その粘性物を入れられてしまった。
「ひっ、くっ」
ジェシーは慌てて、それを出そうとしたが、すぐに腕を背中に回されてしまい、紐できつく縛られてしまった。それだけでなく、両脚を揃えて膝を束ねられ、その紐を首に回されて、首と膝を密着させられる。さらに足首も縛られた。
あっという間だ。
ジェシーは、なにもできない口惜しさに歯噛みした。
しかも、下着に入れられた粘性体が気持ち悪い。
股間に向かって動き回り、股間とお尻の穴に張りついて、ぶるぶると動きだしたのだ。
しかも、さっき飲まされたポーションの影響で、身体が熱くおかしな疼きが全身に走り回っている。
さらに、心なしか、いままで味わったことのない掻痒感が身体の奥底からじわじわと湧き出してきた気がした。
「くあっ、ああっ」
そして、突然に異変が襲いかかって、ジェシーはもがいた。
股間とお尻が内側から燃えだした感じになったのだ。
「いい加減にしなさい──。こっちが先よ」
侍女が怒鳴りつけた。
コットンがやっとジェシーから視線を離す。
「やれやれ、気の短い諜者さんたちだ。仮にもあんたらのいままでの主人だろうに。早く殺せなどと、主人殺しの罪悪感はないのですか?」
くすくすと笑って、治療具を入れている鞄に向かっていく。
「あんたに言われたくはないわね。報酬の金に目がくらんで、長年報酬を受けていた辺境候を裏切るあんたにはね」
もうひとりの侍女が呆れたように言った。
「金だけじゃありません。金と色ですよ。このジェシー様と婚姻させて欲しいと、伯爵様には一度お願いしてみたんですけどね。相手にもされませんでしたよ」
婚姻の打診をした?
このコットンが?
そもそも、ジェシーは面識すらないが……。
いや、もしかして会ったことがあるか?
そんな気もした。
「当たり前でしょう。伯爵家のお嬢様なのよ。しかも、いくつ歳が離れているのよ」
侍女がせせら笑った。
「だけど、ひと目惚れでしね。ジェシー様は記憶してないと思いますが、辺境候家のパーティや会合などの場で、何度かお目にかかっているんですよ。まあ、相手にされないこともわかったので、それでさらうことにしたんです。決して、金だけで目がくらんだと言わないでいただきたい。私は純粋な動機で、お館様を裏切るのです」
「はいはい、じゃあ、早くしなさい」
侍女がクレオンの口の中に、漏斗を差し込む。
クレオンは抵抗しようという気配を示したが、もうひとりの侍女ががっしりとっクレオンの顎を押さえてしまう。
ジェシーは小さく縛られて床に転がされたままだが、視線はそっちに向けることができているので、クレオンが殺されそうになっているのをまさに目の当たりにしてた。
「いやいや、それは使いません。この注射で直接に血に毒を入れます。その方が効き目は早いですし、数瞬で死に至ります」
コットンは小さな管の先端に針がついているものを持っている。
それをクレオンの首に近づけた。
ジェシーは目を丸くした。
「があっ、ああっ、かっ」
必死に叫ぶ。
だが、口から出るのは、息が漏れるような小さな音だけだ。
「待って──。扉が開いている」
そのとき、侍女のひとりがはっとしたように声をあげた。
確かに、廊下との扉が開いている。
だが、しまっていたはずだ。
「なんで? 念のための魔道で施錠して、防音処置もしていたのよ。どうして……。きゃああ」
なぜか、いきなり侍女が叫んで、床にひっくり返った。
「うわっ」
コットンが持っていた注射とかいうものも、弾き飛ばされたみたいに飛ぶ。そのコットンもうずくまる。
「その場に座れ。おかしな魔道も遣おうとするな。動けば殺す」
クレオンが横たわる寝台の横に、突然に身体にぴったりと密着した黒い服を身につけている黒髪の男が現れた。
歳は三十歳くらいだろうか。
手に黒いものを持っている。
騎士でもあるジェシーは、すぐにそれが短銃を呼ばれる武器であることを悟った。
しかも、火がついていて、いつでも弾を発射できる状態だ。
男は侍女たちとコットンに銃を向けている。
「な、なに、お前──。どうして?」
まだ突き飛ばされていなかったもうひとりの侍女が男に向かって叫んだ。
しかし、その侍女も見えない誰かに突き飛ばされるように、ひっくり返る。
「座れと言われたら、座るのよ──」
今度は女が宙から出現した。
エルフ女だ。
金色の髪をした大変な美女だ。だが、なぜか肌が完全に透けている破廉恥な赤い服を着ている。
いや、服というよりは、赤い膜だ。
ジェシーは、見ていて、こっちが恥ずかしくなった。
「ロ、ロウ様、ふ、服をください──。もういいですよね。認識阻害は崩れましたから」
現れたエルフ女が必死の口調で言った。
ロウ?
もしかして、ロウ=ボルグ?
ジェシーは耳を疑った。
「ははは、その格好も素晴らしいけど、まあ、確かに、俺以外の眼を愉しませることはないよな。しかも、下衆医者にはね」
その男が宙からものを出現させるように、服を手の上に取り出す。
エルフ女に放る。
女用の簡単な貫頭衣だ。
エルフ女が慌てたように、それを身につけて裸を隠す。
さらに、男は服を出した。
なにもない場所にそれを次々に放り投げる。
すると、そこに小柄な人間族の可愛らしい女性が現れ、もう一方の場所には、青色の髪をした清楚そうな女性が姿を現した。
さらに、男が手に短剣と細剣を出す。
それをエルフ女と小柄な女性に手渡した。
この間、ずっと銃を侍女ふたりと、コットンに向けたままだ。
「それにしても、ピカロとチャルタの居場所を探っていて、とんでもない場面に出くわしたな。お前たちふたりは、タリオの間者か? あっ、返事はいい。俺に隠し事は通用しない。まあ、後でゆっくりと、あの手この手で訊問してやろう」
ロウが笑いながら銃を宙に消滅させる。
タリオの間者?
その瞬間、侍女たちはびくりと跳ねあがりかけたが、エルフ女と小柄の女ふたりに殴られて床に倒れた。
「そのふたりは裸にしろ。いろいろなものを持っている。その服そのものが武器だ。魔道片を裏地にたくさん仕込んでいる」
魔道片?
あらかじめ魔道陣を刻んだ紙片や布片のことであり、それに魔力を込めれば魔道が発動するというものだ。
それを持っている?
侍女ふたりがぎょっとしている。
「すでに無効化してありますわ。問題ありません。でも、服を脱がせるのは協力しますね。布が当たっていると、その場所の肌がどんどんと熱くなりますよ。火傷して肌をただれさせたくなければ、一枚残らず服を脱いでくださいね」
青髪の女がにこにこと微笑みながら言った。
彼女はどうやら魔道遣いらしい。
だが、顔は優しげだが、言っている内容はえげつない。
唖然としていると、侍女ふたりが絶叫した。
そして、狂ったように服を脱ぎはじめる。
ジェシーは、呆然となった。
「スクルドは、クレオン殿を看てくれ。全身が毒で染まっている。俺はこっちのお嬢さんの毒を抜くかな。痺れ薬と媚薬だ。変な生物はもらっとくか。面白そうだから、後でユイナにでも研究させよう。それともクグルスかな? さて、エリカとコゼは、その物騒な三人を縛ってくれ」
男が言った。
ユイナとかクグルスとかいうのはわからない。しかし、スクルドというのは、青い髪の女魔道遣いのことのようだ。
そして、エリカにコゼ?
「わかりましたわ」
スクルドがクレオンに向かう。エリカとコゼと呼ばれたふたりも、ロウの指示に頷いた。
一方で、クレオンは、必死になにかを喋ろうとして、スクルドがそれを優しげになだめるような仕草をした。
その表情は慈愛が込められた天女のようでもあると思った。
一方で、侍女たちは絶叫しながら、懸命に服を脱いでいる。すでに下着状態で、それも剥ぎ取るように脱いだ。
そんなえげつない魔道をかけたのと同一人物とは思えない。
「エリカ、箱の横に紐があったわ。これで全員、縛ってしまいましょう」
「わかった」
エリカと呼ばれたのは、エルフ女の方だ。
だとすれば、やはり、この男はロウ=ボルグか?
ロウというのが、エリカとコゼ、さらにシャングリアという美女たちと組んだ冒険者でもあるというのは、ジェシーも事前の知識で知っていた。
また、ロウの相棒がエリカという美貌のエルフ女性という情報も持っている。
そうであれば、小柄な女性はコゼに違いない。
「わ、私は、た、ただの主治医で……。しかも、お前たちは何者……」
コットンが騒ぎだした。
だが、エリカが細剣の柄で、コットンの顔を思い切り殴りつけた。
「うるさいわよ──。許可なく喋ると、ぶん殴るわよ──。裸みたいな格好で歩かされて、気が立ってるんだから」
そのエリカが怒鳴った。
そして、ぐったりとなったコットンを縛りはじめる。
「さっきの膜みたいな服で歩いたくらいで股間を濡らすから、ご主人様に
コゼがけらけらと笑った。
「あんたもうるさい──」
エリカが顔を真っ赤にして怒鳴った。
だが、いま、なんて……?
ものすごく、恥ずかしいことをふたりが喋ったような気がしたが……。
それはともかく、そのコゼもまた、服を脱いで全裸になった侍女ふたりを縛りだした。侍女たちは意気消沈したようにぐったりとなっている。
「ぎゃああああ」
「うぎゃあああ、熱いいいい」
しかし、縛られはじめた侍女たちが絶叫して暴れ出す。
「あら、忘れてました。魔道を解除します。紐が当たっても、服として感知しません。もう熱くなりません。大人しく縛られてくださいね」
クレオンのところにいるスクルドがにこにこして顔をあげた。
解除の魔道とやらをかけたのか、侍女たちが大人しくなる。
だが、ふたりとも、すでに抵抗の気力はなさそうだ。コゼによる拘束を大人しく受けている。
コゼはふたりの両手を後手に縛り、足首も束ねて、そのまま床に座るようにさせた。
「ところで、スクルド、この部屋は大丈夫? 防音をかけ直した?」
エリカだ。
すでに、コットンも侍女同様に、手首と足首を縛られて、床に座らされている。
「問題ありませんわ、エリカさん。どんな方法であっても、扉は開きません。もちろん、防音もしました」
それで気がついたが、いつの間にか廊下に面する扉がしまっている。
さっきは、いつの間にか開いていたから、おそらく、魔道的な手段で姿を消して、この部屋に入ってきたのだろう。
だが、どうして……?
しかし、それ以上、ジェシーの思念はそれで終わった。
ロウ=ボルグが目の前に来たからだ。
「さて、こっちは俺の管轄だな。すでに結構辛いだろう? かなり強い媚薬みたいだしな」
ロウがしゃがんで手をかざす。
すると、一瞬にしてジェシーを縛っていた紐が消滅して拘束が溶けた。下着の中の卑猥な生命体もなくなる。
「スクルドにさせてもいいけど、取り込んでいるし、これについては、俺の方が確かだし、完全だ。まあ、誘拐されるところを助けた駄賃だと思って、我慢しろ」
ロウがジェシーを抱きあげる。
そして、いきなり口づけをしてきた。
「んっ、んんっ」
拒否しようとしたが、強引に舌が口の中に入ってきた。また大量の唾液が注がれて、ロウによって口の中でジェシー自身の唾液と撹拌される。
なにこれ……?
男と口づけをするなど初めてだが、激しい羞恥を覚えるとともに、快感が全身を突き抜けた。
気持ちいい……。
恥ずかしい声が出そうになる。
身体が痺れて、込みあがる甘美感に全身が震えた。
怖い……。
なにこれ……?
なによ、これ──。
ロウの口づけが続いている。
気がつくと、無意識のうちに身体をくねらせている自分に気がついた。
股間が熱い……。
胸も……。
びりびりと股間や乳首から電撃でも流れているみたいだった。
離れなければ……。
ジェシーもそう思うのだが、ジェシー自身がそれを拒んでいる。
ロウの舌が口の中を動き続ける。
しかし、まるで口の中が性器そのものにでもなったみたいだ。ジェシーは股間を愛撫したことも、されたこともないが、それくらいに気持ちがよかった。
頭の中が火花が散る。
どうでもいい。
ジェシーは口の中にあるロウの舌にふるいついた。
「あっ、あはっ、んんんっ」
大きな悶え声が漏れ出た。
それで気がついたが、全身の力が戻っている。激しい股間の掻痒感も消滅していた。
その代わりに、爪先から頭のてっぺんまでに貫く大きな性の疼きが襲いかかってきた。
ジェシーは理性を総動員して、ロウの身体を突き放す。
そして、思い切り、ロウの頬を平手打ちした。
「いてっ、怖いなあ。毒を抜いてあげたのに」
ロウが笑った。
その頬は赤くなっていた。
確かにコットンに飲まされた媚薬の影響はなくなっている。
身体も大丈夫だ。
「そ、それはありがとうございます……。だ、だけど、あんなに長い口づけ……。そ、それに、い、い、い、いやらしいし……」
ジェシーは声をあげた。
「それは悪かった。あんたが可愛いからついね……。だけど、俺の唾液は解毒効果がある。さっきも言ったが、救援の駄賃だ。報酬としては高くないはずだ」
ロウが笑いながら言った。
しかし、ジェシーはまだ動揺の中にいる。心臓も痛いくらいに動悸している。
「た、叩いてごめんなさい……。で、でも……」
なにを言っていいかわからない。
そもそも、口づけというのは、あんなに気持ちのいいものなのか?
ジェシーは、呆然とする感じに陥っている。
「ご主人様、辺境候様は、魔道の治療術で、ほぼ完全に毒は抜けると思います。そんなに込み入った魔毒ではありません。治療術をかけますか?」
すると、スクルドが言った。
顔をあげると、そのスクルドにしても、エリカやコゼにしても、ロウがジェシーに口づけをしたことはもちろん、ジェシーがロウの顔を引っ叩いたことについても、まったく動じた感じはない。
しかし、はっとした。
魔道で治療──?
「あっ、伯父様は魔道による治療はむしろ体調が悪化するんです。そういう体質で……」
ジェシーは口を挟んだ。
だが、スクルドはくすくすと笑った。
「それは嘘ですね。わたしが見たところ、そんなことはないと思います。もちろん、わたしは医師ではありませんが……。でも、もしも、その医師様にそう言われていたのであれば、騙されてたのでは?」
スクルドだ。
そう言われてみれば、ジェシーも、魔道による治療はむしろよくないと、侍女やコットンに言われていたから、そう思い込んだのだ。
クレオン自身も口にしてから、疑いもしなかったけど……。
自分の愚かさに呆気にとられてしまった。
「治療してくれ、スクルド。クレオン殿がせめて、しっかりと意思を取り戻して、言葉をしゃべれるほどに……」
ロウが言った。
「普通に動けるほどに治療できます。毒で脱力されていただけのようですから。もちろん、しばらく動いていなかったのであれば、身体は弱っていると思いますが……」
スクルドがクレオンに手をかざす。
白い光が拡がった。
ロウが立ちあがって寄っていくのにあわせて、ジェシーはしゃがみ込んでいた身体を起こして、クレオンにところに向かう。
クレオンの顔に血色が戻った。
虚ろだった表情がしっかりとしたものになる。
「……ロ、ロウ殿か……。初めて会う……。いい男だな。そして、助けられた……」
すると、クレオンがゆっくりと言った。
ジェシーはクレオンの手を両手でがっしりと掴む。
「お、伯父様、よかったあ──」
声をあげる。
本当に毒が抜けたのだ──。
いや、そもそも、病だと思っていたが、毒だったのだ──。
ジェシーは自分の心に歓喜が満ち溢れるのがわかった。
「ジェシー……。お前にも苦労かけた。ロウ殿、ジェシーについてもお礼を……。心から感謝する」
クレオンが身体を起こそうとしたので、慌ててジェシーはクレオンの背中を抱えた。
寝台の上でクレオンは上体を起こした格好になる。
ジェシーはその背中を支えている。
「お初にお目にかかります、クレオン殿。いろいろと話もありますが、まずは、いまの状況を解決したい……。あなたの編成した辺境候軍が、いまや、女王に大けがを負わせ、さらに、エルフ女王と女王を守る一隊を包囲して攻撃を継続しています。それをとめてください」
ロウが言った。
クレオンははっとした表情になる。
「そ、そうか──。わしが昨日、おかしな魔毒を飲まされて……。い、いかん、わしらがエルフ族の女王に手をかけるなど……。取り返しのつかないことを──」
クレオンが絶望の色を顔に浮かべたのがわかった。
だが、すぐに気力を奮い起こした感じになる。
「ジェシー、重鎮たちを呼べ──。軍の参謀たちも──。とにかく、すぐにだ。レオナルドにも命令を──。攻撃を中止──。ただちに、軍を引くのだ──。中止、中止、中止──。すぐに、攻撃を中止だ──」
クレオンが絶叫した。
ジェシーは慌てて、部屋を駆け出ようとした。
「ロウ様、大変です──」
そのとき、エリカの悲鳴が突然に部屋に轟いた。
「あっ、こっちも──」
そして、コゼも叫んだ。