※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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688 副女王の困惑

「ロウ、すまない──」

 

 煙でかたどられているラザニエルの身体がふたつに折れ曲がる。

 一郎は呆気にとられてしまった。

 

「あのう……、副王陛下、どうされたんでしょうか?」

 

 全員の疑念を代表するように、横からブルイネンが口を挟む。

 

「ケイラ=ハイエルだよ」

 

 すると、向こう側から返事が返ってきた。煙のようなかたちでも、ラザニエルが苦虫でも噛みつぶしたような表情をしているのがわかる。

 

「享ちゃんがどうかしたのか?」

 

 一郎は訊ねた。

 ケイラ=ハイエルとは、エルフ族の王族の中でも、最古参となる女性であり、“長老”の名をもらっている人物なのだが、一郎にとっては、前の世界の従妹であり、仮想空間の中で妻として一生をすごした「前世妻」だ。

 もともとは、ケイラ=ハイエルというのは、本来のエルフ族王族の人格に加えて、異界から集めた十数人の人格の集合体らしいのだが、一郎がその中の享子を抱いて、仮想空間の中で妻にしたら、なぜか、ケイラ=ハイエルの人格は裏に隠れてしまい、一郎の従妹妻である“田中享子”の人格が表になってしまった。

 おそらく、一郎が淫魔術を注いだことで、享子の人格の強さが本来の人格を含めたほかの人格を圧倒してしまったために、そうなったのだと予想しているが、よくはわからない。

 それはともかく、なにがあったのだろう?

 

「昼過ぎに、そっちから辺境候の嫡男とやらの暴走で、お前やガドニエルが襲撃されたと情報を送ってきただろう?」

 

「俺というよりは、主にガドだけどね。それで?」

 

 遠く離れている一郎たちと水晶宮側だが、ガドかブルイネンが使えるエルフ族用の魔道を使えば、こうやって気軽に連絡を取り合うことができる。一郎の感覚では、“テレビ電話”のようなものだ。

 今日の昼間のことについては、あれからすぐにその顛末を水晶宮に送った。

 いずれ、襲撃のことは伝わるだろうけど、くれぐれも大袈裟なことになって欲しくなかったからだ。

 

 一国の女王、しかも、この大陸でもっとも権威のあるというエルフ族の女王を襲撃して、大けがを負わせたというのは大変な事件だが、おそらく、裏で糸を引いていたのはタリオ公国であり、この辺境候のクレオンも当事者のレオナルドも、操られて動いたに過ぎない。

 ここはちょっと、水晶宮側としては怒りを抑えてくれと、ラザニエルに頼んだのだ。

 ラザニエルは、あまりにも弱腰だと、これからの他国との外交にも差し支えるからと迷っていたが、最終的な落とし所は一郎に任せると伝えてきた。

 一郎はほっとした。

 だが、それがどうかしたのだろうか?

 

「お前たちが襲撃を受けたという事実をあの長老が知ってだねえ……。怒り狂って飛び出してしまったんだ。水晶宮の精鋭を五百人連れていったよ。あいつ、わたしの許可なく、長老権限だとかいって、将軍のひとりを勝手に動かしたんだ。しかも、緊急出動でね。気がついたときには、移動門のゲートをくぐり抜けられたあとだった。すまない」

 

 ラザニエルが言った。

 享ちゃんが来る?

 当惑したが、疑問も感じた。

 

「つまり、享ちゃんが水晶軍の一隊を連れて、こっちに乗り込んでくるということ? しかも、すでにゲートを潜っている?」

 

「ああ、武装した五百人の人数だ。知っているとおり、移動門というのは、大人数で潜れば潜るほど、目的地に到着したときの時差が生じる。そっちに近い森林内のゲートに着くのは、明日の早朝だろうね。すまないけど、到着次第にわたしに連絡するように伝えておくれ。それと暴走もとめて欲しい」

 

 ラザニエルが大きく息を吐いた。

 一郎は、その弱っている様子がなにか面白くて笑ってしまった。

 

「すっかりと真面目になったんだね、ラザも。わかったよ。こっちに着いたら、享ちゃんはお尻ペンペンして送り返すよ。まあだけど、今日の明日で、水晶軍を送り込むのはいいだろうね。明日の会合のときのいい恫喝になる。あっちの辺境候軍の総帥のクレオン殿はすっかりと謝罪と恭順の態度を示しているけど、あっちもたくさんの諸侯たちの集合体で、一枚岩というわけでもないしねえ。たった一日で正規の水晶軍が到着するのはいい脅しだ」

 

 一郎は言った。

 

「脅しで済めばいいけどねえ……。あれは、水晶宮の宝物庫から宝珠を持っていったからね。戦闘のときに、エルフ族側の魔道を封じる魔素火粒剤とか、魔道反射板の楯の情報があったろう。それで、対抗の手段がいるとか言ってね。それについても、勝手に宝物庫を開かせたんだ。宝珠がなくなって、手紙と報告だけが後から来た……。参ったよ……。長老だといっても水晶宮では部外者だ。ケイラの脅迫に屈して、宝物庫を開いた責任者は懲罰拷問の最中だけどね……」

 

 向こうのラザニエルが舌打ちしたのが聞こえた。

 ラザニエルの拷問か……。

 ああやって、真面目に政務をしている姿からは想像できないが、もともとは、ルルドの森に君臨する希代の悪魔女として、魔族や魔物を集めて周辺一帯を魑魅魍魎の世界に変えたアスカである。

 一郎も彼女に召喚されたのであり、召喚直後は、アスカと当時はアスカの愛人だったエリカに手酷い拷問も受けたものだ。

 その元アスカのラザニエルの拷問なのだから、それはこっぴどくやっているのだろう。

 責任者というのが、男なのか、女なのかは知らないが、ちょっと気の毒と思ってしまった。

 

「勝手にと言っているけど、享ちゃん……ケイラ=ハイエルという長老は、女王家の宝物庫を開かせたり、水晶軍の出動を命じたりする権限もあるのかい?」

 

 一郎は訊ねた。

 さっきから疑念に思うのはそれだ。

 一郎は、ケイラ=ハイエルという女長老は、王族の重鎮ではあるが、水晶宮としての組織には所属しておらず、無役であると認識していた。

 それなのに、副女王を兼ねて水晶宮の太守でもあるラザニエルに黙って軍の出動などをさせられるのか?

 

「権限なんてあるわけないだろう。しかし、あいつは、重鎮になっている子や孫がたくさんいて影響力だけはすごいんだ。加えて、元老院貴族たちの弱みなんかもたくさん握っていて、脅迫の材料には事欠かない。なくても作ってしまう。耳目や手足として動く組織もたくさん抱えているしね」

 

「組織?」

 

「そういう闇集団の女帝なんだよ……。お前には、そういう面は見せないかもしれないけど、ケイラ=ハイエルというのは、そういう怖い一面もあるんだ。いや、その一面こそが、本当のケイラ=ハイエルなんだ」

 

 ラザニエルが言った。

 闇組織を抱えている?

 全く知らなかった。

 しかし、あの無邪気で真っ正直で、一郎のどんな理不尽な調教に逆らうこともない享ちゃんが、闇組織の女帝など、似合わないことこの上ない。

 

「あの……、口を挟んで申し訳ありません。さっき、宝珠と言われましたけど、もしかして、三種の神器のことを言われているのですか?」

 

 ブルイネンだ。

 三種の神器?

 

「三種の神器って?」

 

 一郎は訊ねた。

 

「確かに三種の神器だよ……。あれが持っていったのは。お前らが受けた魔道封じの技術に対抗するためには必要だと置き手紙があったよ……。ロウ、三種の神器というのは、エルフ族王家の持つ兵器のひとつと思ってくれ。“紅蓮(ぐれん)”、“毘藍(がらん)”、“壊劫(えこう)”と名づけていて、一個で人間族の都市くらい軽く滅亡させることができる宝珠具だ。まあ、エルフ族に人間族が攻めてこないための威嚇のための兵器だね。こっちがそれを持っていれば、人間族も迂闊にナタルの森林に、軍を入り込めさせられないだろう?」

 

 一郎の元の世界における「核爆弾」のようなものかと思った。

 

「それを使うと、魔素火粒剤のようなものは無効になる?」

 

「話を聞く限りにおいては、魔素火粒剤とやらは、魔道を発動するときに発生する魔道陣に反応する粉塵なのだろう? 宝珠が発動するときにも陣は発生するけど、宝珠が爆発すれば、宝珠の効果も発動する。もともと、爆発させて使うものなんだ」

 

「それで、長老様は、どれを持ち出されたのですか?」

 

 ブルイネンが言った。

 ものすごく真剣な表情になっている。

 それだけ、恐ろしい兵器なのだろう。

 

「全部だよ……」

 

 ラザニエルが言った。

 

「ぜ、全部──?」

 

 ブルイネンが声をあげた。

 その顔が引きつっている。

 とにかく、とんでもない状況になりかけているということはわかりかけてきた。

 

「それで、その宝珠とやらは、どういう効果があるのですか、アス……いえ、ラザ様?」

 

 エリカが一郎の前に顔を出してきて、向こうのラザニエルに訊ねた。

 

「うーん、“紅蓮”は煉獄の炎でかたちあるものを全て焼き尽くす。“毘藍”は風暴と水流だ。“壊劫”は一瞬にして周囲の大気を無にして、それが一日間続く。生きとし生けるものは呼吸ができなくなり全滅する。さっきも言ったけど、一個で人間族の大都市でも完全に滅亡する。効力範囲はそのくらいさ」

 

 一郎は驚いた。

 本当にこっちの世界版の核爆弾だ。

 

「そんな宝珠は、どの国もあるのか?」

 

「まさか……」

 

 一郎の質問に、ラザニエルが首を横に振る。

 

「……歴代のエルフ族の王族が何十年もかけて魔道を注ぎ込んだものだそうだ。魔道に疎い人間族には、作りようもないものだ。エルフ族王家だって、その三個しか保有していない。まあ、使用を前提としたものでないから、存在するだけで事足りたからね」

 

「なるほど」

 

 とりあえず、ほっとした。

 そんなものがあちこちにあるなら、国同士の戦争ともなれば、お互いにその核爆弾もどきを使い合うのかと思った。

 

「とにかく、あいつは怒っていたからねえ……。ずっと水晶軍のそっちへの出動はとめていたんだけど、結局、そのせいでお前……、“お兄ちゃんが傷ついたあ……”とか、涙目で怒って飛び出していった。それで、どうするのかと思ったら、気がついたら軍と宝珠を勝手に持ち出されたんだ。あの剣幕なら、行きがけの駄賃に、宝珠を一個使って、報復だとかいって、お前と合流する前に、人間族の都市を破壊することだって考えられる。すまないけど、なんとかしておくれ」

 

 ラザニエルが言った。

 

「行き掛けの駄賃で人間族の都市を破壊する? 冗談だろう? まさか、享ちゃんはそんなことしないよ」

 

 一郎は笑った。

 

「お前の享ちゃんは、そんなことをす、る、ん、だ、よ……。もういい。それで、ガドニエルはいるかい? 姿が見えないけど、ガドニエルなら宝珠の発動をとめられると思う。あれは魔道だけは桁外れだからね。ところで、ガドニエルは?」

 

 ラザニエルが言った。

 一郎はくすりと笑った。

 

「さて……、話を聞いていたかなあ……? ガド、ラザが呼んでいるぞ」

 

 この話のあいだ、一郎はずっとガドと繋がったままだった。

 ガドは一郎の下半身側で仰向けになっている。

 一郎は挿入している怒張を一度抜いて、ぐっと奥まで再び押し入れた。

 

「ひいん──、が、我慢してます──。ご主人様、ガドはちゃんと我慢してますわ──」

 

 ガドが緊縛されている身体を大きくのけぞらせて言った。

 だが、顔も身体も真っ赤だ。

 ずっと挿入されっぱなしで、かなりの脂汗をかいており、すっかりとガドが追い詰められているのがわかった。

 ステータスを確かめたら“快感値”が“5”から“3”のあいだをいったりきたりしている。その数字は絶頂寸前の数字だ。その状態でずっと保持されてしまっていたのなら、かなりつらいはずだ。

 

「これは、間違いなく話は聞いてないわね」

 

 コゼが横から言った。

 

「まあ、無理はないがな」

 

 シャングリアだ。

 一郎はまたもや苦笑した。

 

「はああ? いまのは、ガドニエルの声かい? まさか、なにかしているのかい?」

 

 向こうのラザニエルが怪訝そうな声をあげた。

 

「取り込み中だと言っただろう……。まあ、なにをしてるよ……。とにかく、事情はわかった。享ちゃんのことは引き受ける。こっちに任せてくれ」

 

「そうかい。じゃあ、頼むよ。ケイラに人間族の都市なんて破壊された日には、全部の人間族の国が連合で報復で宣戦布告してくることだってあるかもしれない。あいつは、お前絡みだと頭おかしいんだよ。とにかく、よろしくしておくれ」

 

「ああ、任せろ」

 

 一郎の言葉に、ラザニエルがほっとした表情になるのがわかった。

 その後、いい機会なので、クレオンとの話し合いに必要なことについて、ふたつほど簡単な打ち合わせをした。

 

「……こんなところかねえ……。とにかく、悪いけどケイラの暴走を頼むよ。それと、改めて、お前たちに怪我がなくてよかった」

 

「親衛隊の女たちが頑張ってくれたからね。千人を超える人間族の屈強な男の戦士とまともに戦うどころか、三十人で圧倒したんだ」

 

「そうだったね。わたしも信じられないよ。魔道戦ならともかく、頼みの魔道を封じられるなんてね……。それなのに集団戦の白兵戦で勝つとは……。人間族というのは、とにかく集団戦には長ける種族のはずだけどねえ」

 

「俺の自慢の親衛隊だからな。毎日、精を注いでいる。彼女たちは、俺に抱かれれば抱かれるほど強くなる」

 

 一郎は笑った。

 

「ところで、ケイラのことについては、ああ言ったけど、もしも、ガドニエルかお前に、万が一のことがあれば、ケイラに任せはしない。わたしが人間族を滅ぼしにいくよ」

 

「怖いねえ」

 

「本気さ」

 

「わかってるよ……。ありがとう、ラザ。じゃあな」

 

 一郎はブルイネンに合図して、通信を切らせる。

 そして、スクルドを見た。

 

「スクルド、あっちのナタル森林側のゲート場所まで、こっちからスクルドの魔道で一瞬で跳べるよな?」

 

「はい、問題ありません。向こうには移動術のための魔道陣を残してきましたし、あとはこっち側に刻むだけです。いつでも跳躍できます」

 

「だったら、享ちゃんを迎えにいくのは明日の朝でいいな。しかし、こうなったら、享ちゃんが到着する前に、クレオン殿との話し合いを終わらせておく方がいいか。一緒に参加すると、引っ掻き回されるかもしれないし……。ブルイネン、悪いけど、至急、クレオン殿に連絡をしてくれるか? 会合は明日の午前中の予定だったけど、水晶宮から代表が来るので、その前に、こっちだけで準備会合をしたいとね。今日の夜だ。時刻はいつでもいい」

 

「了解です。すぐに調整します」

 

 ブルイネンが出て行った。

 一郎は周りの女たちを見回す。

 

「というわけだ。すまないけど、予定変更だ」

 

 一郎の言葉に女たちが頷いた。

 コゼ以外は、すでに寝着に近い服装だったので、それぞれに支度を開始する。

 一郎は、身体の下のガドにやっと意識を向ける。

 

「ガド、そういう状況なので事情が変わった。これからクレオン殿と会合だ。ガドにも参加してもらうからな……。ただ、その前に……」

 

 一郎はガドの腰に手をやって、律動を再開した。

 

「あうっ、あうううっ」

 

 ガドが身体を震わせはじめる。

 そして、その身体がすぐに硬直したように伸びた。

 

「いぐううっ、ご、ごめんなさいいい──。が、我慢できません──。いぐううう」

 

 その言いつけ、まだ、続いていたのか……。

 

「いくらでも絶頂していい……。そうだ。クレオン殿との会合のときまでに、たっぷりと精を注いでやるからな。下着ははかせないけど、しっかりと股を締めて、俺の精が漏れないようにしろよ。ほらっ」

 

 一郎はそう言って、さっそく一度目の精を注いだ。

 

「んぐうううう」

 

 すると、またもやガドが激しい仕草で絶頂をして果てた。

 

 

 

 

(第9話『辺境候家の御曹司』終わり、第10話『辺境候軍の総帥』に続く)






 一般的な現実世界の尺度では、五百人は1~2個中隊程度であり、将軍の指揮は不自然かもしれませんが、エルフ族の常備軍(水晶軍)の動員数は、人間族の国よりも遥かに少ない設定なので、そんなものと思ってください。
 その意味では、ブルイネンは本来は、女王親衛隊の数百人を率いるので、エルフ族の女将軍クラスである設定です。


 なお、申し訳ありませんが、本日より仕事で週末まで出張です。従って、投稿再開は週末以降になると思います。(いまのところ来週も平日は出張です。宣言も解除されて、早速、北海道に、九州にと全国移動です(笑))
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