※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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692 狙われた女簒奪者

 とにかく、会同の場所に向かうことになった。

 ガドについては、どうしても動きがぎこちないので、エスコートの態勢で支えてやる。

 こちらでは、貴族とそうでないものについては、喋り方や日常の起居動作そのものが異なるようだ。それがマナーの違いなどとして身分差に繋がるみたいだが、前の世界で人材派遣会社を掛け持ちして、様々な職業についたことのある一郎としてはなんでもない。

 結婚式場で牧師だってやったこともあるし、新郎の代役というのも一度だけしたことがある。そもそも、享ちゃんや祥ちゃんとすごした仮想空間の一生では、セレブと称されるいわゆる上流階級に属していた。そのときの所作も完全に身についている。

 

「ブルイネン隊がいるので、わたしとコゼはロウ様の後ろにつくわ。シャングリアはガド側を見ていて。スクルドは最後尾から全般よ……」

 

 到着と同時にエリカが素早くほかの女たちに指示する。

 ブルイネンが事前に派遣していた九人の親衛隊員も集まり、あっという間に完全な護衛の態勢が整う。

 頼もしい限りだ。

 一郎たちが態勢をとったのは、辺境候軍の軍営司令部となっている大きな平屋の前だ。

 衛兵のようなものが立っていて、移動術で出現した一郎たちに驚くとともに、すぐに建物内にひとりが走っていった。

 

 すぐに身なりのいい男が現れた。

 男はサーマクと名乗り、マルエダ家の家宰だと自己紹介をした。昼間は会わなかったから初対面だ。

 雰囲気からして、かなりクレオンに近い部下のような気がする。

 彼の案内で建物内に入り、廊下を進む。

 ブルイネン以下の親衛隊は少し前を先行だ。一郎とガドは家宰のすぐ後を進み、次いで、エリカ、コゼ、シャングリア、スクルドという順で歩いている。

 事前の調整ということらしく、親衛隊を含めて女戦士たちは外から見える武器は持っていない。

 だが、すぐに取り出せものは隠している。

 エリカの細剣、シャングリアの剣も、一郎が瞬時に取り出して渡すことが可能だ。

 

「んっ、んんっ」

 

 途中で横を歩いているガドが我慢できなくなったみたいに声を呻かせて、身体を突っ張らせた。

 会同の建物内に入ったことで、さっそく貞操帯の内側のどれかの淫具が動きだし、痒みと疼きでただれたようになっている股間かアナルを刺激されたに違いない。

 この感じだと膣のディルドか?

 「無制御設定」、つまりは「ランダムモード」になっているから、ガドに挿入している三個の淫具、すなわち、股間とアナルとクリトリスのどれが、どのくらいの、どんな動きをするのかは、一郎でさえもわからない。

 もちろん、淫魔術で即座に制御もできるので、ガドが大失敗しそうになったら、制御してやるが、まあぎりぎりまで放置だ。

 一郎もそれが愉しい。

 

 会議室と思われる場所の前に到達する。

 部屋の前には、衛兵のような者たちがいて警護をしていた。武器を持っている。

 向こう側は武器を持って廊下に侍り、こちら側は武器なしで室内で警護する。それが取り決めだ。

 魔素火粒剤はなし──。それも約束事だ。

 一瞬立ちどまる。

 スクルドを振り返る。

 

「わかる限りにおいて、問題ありませんわ」

 

 スクルドが頷く。

 魔素火粒剤、その他、魔道封じのような仕掛けはないみたいだ。

 クレオンは約束を守ったらしい。

 こっちは、武器を隠し持たせてはいるが……。

 一郎も魔眼でさっと全員のステータスを走り読む。

 気になるような武器や道具の所持者なし――。

 “タリオの間者”に類する表示なし――。

 

「エルフ族女王、ガドニエル陛下でございます」

 

 すぐにブルイネン以下の親衛隊十名が室内に入り込み、家宰だと自己紹介したサーマクが室内に声をかけた。

 ガドとともに部屋に入る。

 素早く、全員のステータスを確認した。

 

 まずはクレオン──。

 驚いたことに、ステータスに入る肩書きに“元ハロンドール西方国境守備隊総帥”とある。

 「元」だって?

 

 ほかの四人──。こちらも“タリオの間者”のような表示がステータスに現出する者はいない。

 まあ、領主たちだしな……。

 気になるステータスのひとりがいた──。

 

 

 

“リィナ=ワイズ

   ワイズ家女伯爵

   ハロンドール西方国境守備隊総帥

  人間族、女

  年齢50歳

  ジョブ

   施政者(レベル20)

   戦士(レベル12)

  生命力:45

  攻撃力:15(素手)

  魔道力:10

  経験人数:男15

  淫乱レベル:A

  快感値:150

  能力

   交渉術

  所持

   鑑定の指輪

   守りの首飾り

  家族

   夫3、子10”

 

 

 

 ワイズ家女伯爵か……。ほかの三家は大したことはない。領主らしいが能力も凡庸だ。

 しかし、クレオンも含めて、このリィナ=ワイズだけが能力が突出している。

 施政者というジョブは“20”レベルであり、彼女が統治者として優れていることを示している。

 また、交渉術という能力まで出現しており、これは彼女が高い政治力を保持する証拠か……。

 それにしても、“夫3”……。そういうのは初めて見たな……。

 所持しているのは、身を守る手段のための魔道具だろう。

 

 付け焼き刃でシャングリアに教えてもらった貴族情勢を思い起こす。

 マルエダ家を中心とするハロンドールの西方域の主要貴族は六家──。このうち、マルエダ家はこの六家に分裂している「常備軍」と称される国境守備隊の指揮権を持ち、このワイズ家はマルエダ家を寄親とする寄子の関係になるはずだが……。

 しかし、すでに、ステータスに現れているところを見ると、クレオンはもう指揮権を奪われたか?

 だが、早すぎだろう……。なにしろ、可能性はあると思ったが、その下剋上は、いまの王国からのこの地の領主群の離反がある程度前提だ。

 思い切りがよすぎるだろうに……。

 一郎はかまをかけることにした。

 

「あれ? そちら側の代表はクレオン殿ではなく……、そっちのリィナ=ワイズ伯爵殿……なのですか?」

 

 惚けた口調で訊ねた。

 

「まだ、クレオン=マルエダ殿がわたしたちの代表です。いまのところは……。ただ、明日の朝には変わっているかもしれません。それだけのマルエダ家の失態です。それと、女王陛下におかれましては、今回のマルエダ家の失態に際して、同じ軍営に属する者として伏して謝罪を申しあげます。マルエダ辺境候家の蛮行には、わたしたち領主同盟も憤懣激怒するところであります。同じ軍営の一員として、心からの謝罪、並びに、お見舞い申しあげます」

 

 あまり間髪入れずに、そのリィナ=ワイズが応じた。

 クレオンは赤い顔をして黙ったままだ。

 これは、早速、取って代わられたか……。

 面倒だな……。

 一瞬、思った。

 なにしろ、クレオンが交渉の代表でなくなるということは、ピカロとチャルタのことは、この女伯爵と一から調整し直しだ。

 だが、捕らえている魔族女を無条件で返せなどという交渉が成立するか?

 

「なるほど、マルエダ家の失態か……。それで突きあげを……? だけど、それは困ったなあ……。クレオン殿と事前に約束したこともあるしなあ……。そうかあ、代表の交代かあ……」

 

 そう発言して様子を観察する。

 このリィナ=ワイズが密かに、ピカロたちのことを聞いていれば、一郎としては交渉の相手がクレオンであろうと、リィナであろうともどちらでもいい。

 アネルザの実家が没落するのは、アネルザは残念がるかもしれないが、一郎が王都に戻れば、アネルザはイザベラごと権威を復活してみせる。

 すでに、アネルザの力は、実家の権威を必要としていないところにある。

 一方で、リィナは、一郎が口にした「約束」というものがぴんとこないみたいだ。きょとんとした表情である。

 

 やっぱり、聞いてはいないか……。

 そのときだった。

 

「うんっ」

 

 まだお互いに立ったままだったが、横のガドが一瞬がくりと膝を折りかけた。

 またもや、ディルドが動いたのだろう。

 

「ガド……、静かにな……」

 

 一郎はガドだけに聞こえる程度の声でささやいた。

 

「は、はい、ご主人様──」

 

 だが、思ったよりも大きな声でガドの返事があり、一郎もさすがに慌てた。

 しかし、ガドは気にする様子もなく、すぐに背筋を伸ばし、真っ赤な顔ながらも表情を一生懸命に繕った。

 まあ、頑張っているだろう。

 

 だが、“ご主人様”って……。

 もしかして、我慢しろとは言ったが、調教されていることをばれるなとは言わなかった……?

 半分、呆れながら、懸命に記憶を思い起こしてみる。

 

 それはともかく、領主たちの反応はどうかと思って視線をやったが、彼らにはガドの言葉に動揺する感じはない。

 隣のクレオンだけが、ちょっと不審な表情だ。

 ガドの声量はそれなりだったので、聞こえなかったということはないはずだが……。

 

 すると、スクルドがかすかに、一郎の前のテーブルを指さした気がした。

 視線を向ける。

 すると、文字が書いてあった。この世界にやってきて二年。完全ではないが、一郎もある程度の読み書きはできる。

 

 

“ガドとご主人様の周りに、咄嗟に軽い防音術をかけました。一定量以下の声量のふたりの声は周りには聞こえにくくなっています。ただし、隣のクレオン殿は距離が近いので、術の効果が限定的です。でも、これ以上に効果の拡大をすると、普通のおふたりの声も周囲に聞こえなくなってしまいます……”

 

 

 そう書いてあった。

 一郎は“了解”という気持ちを込めて、スクルドに振り向き、微笑み頷く。

 机の上の文字がすっと消滅するのが横目に映った。

 

 しかし、ある程度であれば、防音効果が効くなら、もしかして、かなりのところまでガドを追い詰めても大丈夫か?

 一郎は横でびくびくと身体を震わせているガドに視線をやりながら、内心でほくそ笑んだ。

 

 だが、そのとき思った。

 

 そうか……。

 調教か……。

 

 改めてリィナ=ワイズという女性を見た。

 

 見た目は明らかな中年の女性である……。

 頭髪にはわずかに白髪が混じっている。身体には心地よく肉がついているようだ。

 ただ、服のセンスは一郎にはよくわからないものの、十分に精錬されていると思った。しかし、女性らしい飾りのようなものは皆無ではある。ほとんど目立たない首飾りは、“守りの首飾り”とかいう防衛具だろう。

 一方で化粧もしっかりとされているし、頬のえくぼは彼女に若い外観を与えてはいる。

 もっとも、全体的には、歳をとっているという印象は否めない。それを防ごうと努力している感じはない。

 おそらく、苦労もしてきたのだろう。

 顔の皺は深く、肌も荒れている。それが彼女を年齢を感じさせるのか……。

 

 しかし、“あり”といえば、ありだな。

 

 もしかして、このままクレオンを総帥とやらから引きずりおろして、リィナを総帥に仕立て上げた方がいい?

 そうするか……。

 一郎は、股間に血がたぎるのを感じた。

 

「し、失礼ですが、英雄殿のことをなんとお呼びすれば?」

 

 すると、リィナが訊ねてきた。

 一郎がじっと視線を向けているのに気がついたのだろう。

 リィナ=ワイズは、ちょっと動揺したように言葉を詰まらせている。一郎は頬に笑みが浮かぶのを感じた。

 

 やっぱり、この中年の女性を淫魔術で支配する……。

 それがもっともうまくいく……。

 一郎は決断してしまった。

 

 そして、決断してしまえば、実行するだけだ。

 獲物に狙いを定めた肉食獣の心境である。

 一郎は、目の前の女性を強引に犯す方法を即座に十以上は考えついた。

 

 一方で一郎の背中にいるエリカやコゼも、一郎の考えていることを悟ったみたいだ。背中越しだが、ふたりがクレオンではなく、リィナに注目をして視線を配りだしているのがわかった。かすかに、彼女に身体を向けたのだ。

 

「ロウ殿は、先般の英雄式典において、エルフ王家からサタルスの姓を受けられております。エルフ族国にとって姓というのは、人間族の国における爵位と同様であって、サタルス姓を人間族の貴族爵位に当てはめると、“大公”に匹敵するものです。従って、“サタルス公”、“ロウ公”、あるいは“英雄公”とお呼びするのが適切かと……」

 

 応じたのはブルイネンだ。

 実のところ、これは事前にブルイネンに頼んでいたことだ。

 実際には、エルフ族の貴族制度は、極めて曖昧なものであり、人間族側の社会のように厳密すぎる階級社会ではないらしい。長命なので、階級区分も家ではなく本人に属する。だから、余計に曖昧なのだそうだ。

 せいぜい、王族、上級貴族、下級貴族、一般庶民の区分けであり、一郎が名誉貴族として元老院の議席を与えられたので、サタルス姓が上級貴族であることは確かなのだが、人間族のように、それをさらに細分化する爵位区分はないのだという。

 

 だが、ガドの代わりに会同を仕切るとなると、どうしても、人間族側が一郎の貴族的な地位を気にするのは間違いない。

 ハロンドールでもらっている爵位は“子爵”なので、会同に集まっている領主たちに比べて、あまり高くないということもある。

 なにしろ、シャングリアが少し言っていたが、もう廃れかけている習慣だが、人間族側では、かつては、地位の低い者から高い者に話しかけてはならないとか、どうしても会話が必要なときには、話しかける権威を有する爵位を持つ者に紹介をしてもらう必要があるとかの非常に面倒で馬鹿馬鹿しい仕来りまであったようだ。

 

 それで、ブルイネンと事前に打ち合わせたときに相談したら、ならば“大公”相当ということにしておきましょうと笑っていた。

 一郎が大公とは行き過ぎじゃないかと言ったところ、人間族では、かつてローム帝国に女皇帝がついたとき、女王の王配に一代限りの“大公”という爵位を付与した例があったといい、一郎の立場なら問題はないと言っていた。

 それに、明確に“大公”とは言わず、「大公相当」とか、「大公のようなもの」と口にすると笑っていた。

 そのとおり、いまも「大公に匹敵する」と表現をした。

 いつものように、真面目な顔で……。

 

 すると、リィナを含む全員が動揺したような表情をした。

 思った通りだ。

 やっぱり、人間族は爵位に弱い。

 一郎は内心でほくそ笑んだ。

 

「では、英雄公殿、こちらの軍営の代表が変わりましても、もしも、クレオン殿と交わしている約定があるなら、それが口約束であっても、わたしたちはそれを尊重するとお約束しましょう。それで、それは、どのようなものでしょうか?」

 

 しかし、リィナはすぐに冷静さを持ち直して訊ねてきた。

 また、やっと彼女は、会話の相手の主体に、ガドではなく、一郎を選んできた。

 一郎は満足した。

 

「そうですねえ……。だが、ここでは……。あっ、とりあえず座りましょうか……。それで、ワイズ伯がよければ、その事前の内容について別室で語りたいのですが……。いえ、ほんのちょっとです。小さな砂時計が落ちきるほどの時間です。ほかの方はここでお待ちを……。スクルド、皆さんにお茶でも……」

 

 一郎の言葉に全員が座る。

 ただし、こっち側で座るのは、一郎とガドのみだ。

 ほかの者は全員が一郎たちの後ろに立っている。

 すぐに、スクルドが魔道で温かいお茶と菓子を出現させる。

 すると、再び一郎の前の机に文字が出現した。

 

 

“女伯爵様だけのお茶とお菓子に強力な媚薬を入れました。問題ありません。魔道探知にも鑑定術にもかかりません”

 

 

 一郎はほくそ笑んだ。

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