【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「あら、お帰りなさいませ。そろそろ、三タルノスですわ」
一郎がリィナを連れて、現実側に戻ると、スクルドがいつもの満面の笑顔とともに待っていた。
部屋の隅には、護衛が座り込んだまま眠っている。
「つ、つまり、まだ三タルノスじゃないってことね……」
腰を抱くように身体を支えてあげているリィナが自嘲気味に笑った。元の通りにリィナをソファに座らせる。一郎もまた、向かい側に腰掛けた。
動いているあいだ、リィナは不自然に股間を締めつけるような仕草をしていた。膣とアナルに注いだ精を出すなと命じているからだろう。
もちろん、下着は与えていない。
一郎はほくそ笑んでしまった。
「随分とお綺麗になられましたね、リィナさん」
スクルドが笑った。
「わかるのか?」
リィナの首には、変化している外観をカモフラージュする魔道具のチョーカーをさせている。
余人には、年齢相応の皺のある中年の女性に見えているはずなのだ。
「はい。でも、魔道具は作動しておりますわ。多分、もっとお若いのですよね。でも、隠しきれてません。わたしが作ったものですが、ご主人様の淫魔術の力がまたあがったので、効き目が足りなくなっていると思います。調整が必要かもしれません」
「まあいいさ。目の錯覚とでも、勝手に思ってくれる」
ロウは肩をすくめた。
一郎自身には、カモフラージュ効果はないので、リィナは若くて美しい女性に見える。だから、ほかの者には、いまどういう風に見えているのかわからない。
だが、まあいいだろう。
「淫魔術って?」
向かい側のリィナが怪訝な表情になる。
「そのうちに説明するよ……。それよりも、スクルド、護衛を起こしてくれ。ジェシーが顔を出す刻限だ」
「わかりました。すでに記憶は調整しています」
スクルドの言葉が終わると同時に、リィナのソファの背後で護衛がおもむろに立ちあがった。
ちょっとぼんやりとした表情だったが、スクルドが軽く手を打つと、すぐに引き締まった顔になる。
すると、扉の外からジェシーの声がした。
返事をすると、扉が開く。
「あのう、三タルノスです」
ジェシーの胸には、リィナが渡した砂時計がある。砂は完全に落ち切っていた。
「長い三タルノスだったわ」
すると、リィナが小さな笑いをした。
「人生の変わる三タルノスか?」
「間違いないわね」
一郎とリィナはお互いに軽口を交わす。
「ず、随分と仲良くなられて……。あっ、失礼しました」
思わず出てしまったらしい自分の言葉に、ジェシーが慌てて謝罪して頭をさげる。
「そうね。仲良くなったわ……。愛人契約をしたのよ。今夜から、わたしも彼の女よ。あなたもお願いしたら? 彼は本物よ」
すると、リィナがはっきりと言った。
一郎は苦笑した。
「えっ、愛人──?」
ジェシーの声だ。びっくりしたみたいであり、声が裏返っている。
振り返ると、ジェシーは動顛したように、顔を真っ赤にしていた。
可愛らしくて、
また、一郎の視線では正面になるリィナの護衛は首を傾げている。当然ながら、彼にはそんな話を一郎たちがしたという記憶はないだろう。不思議がっている表情だ。
「行きましょうか。悪いけど腕に掴まらせて頂けるかしら、愛人様? 最後の一回……、いえ、四回のおかげで腰に力が入らないのよ」
リィナがお道化た口調で言って、座ったまま腕を差し出す。
一郎は立ちあがって、エスコートの格好をとり、リィナの腕をとって立ちあがらせる。
最後の四発はちゃんと手加減した。だから、回復は省略した。回復させると、膣内の精を我慢して出さないことが楽になり、面白くないからだ。
しかし、リィナは立て続けの四発はまったく手加減とは言わず、むしろ、暴力的だと文句を言った。
そうだろうか?
うちの女たちはもっと過酷な回数を毎夜こなすが……。
それにしても、もともと自信家のような感じだったが、一郎が見た目の若さをリィナに取り戻させたことで、さらに元気になった感じだ。それに陽気で明るい。
辛辣な部分もあるが、明るく軽口を言うのも、本来の彼女なのかもしれない。
一方で、立ちあがるときも注意深くしっかりと股間を締めているのがわかる。
口はざっくばらんだが、調教はしっかりと甘んじて受けている。
いい感じだ。
一郎はにんまりとしてしまった。
部屋を出る。
会議室は真向かいだ。
そこに入る直前に、スクルドがリィナの背中に顔を接近させて、すっと息を吸い込む仕草をした。
「な、なに、魔道遣いさん? 匂うの?」
小声だが、リィナは焦って動顛している。
リィナの股間にはたっぷりと一郎が精を注ぎ、拭き取らせもさせてない。
スクルズの行為に顔を赤くした。
「はい、わたしには匂います……。ご主人様のいい香りです。くらくらしそうですわ」
「スクルドの言葉は気にしなくていい。うちのファミリーでも、一、二を争う好色者だ」
一郎は笑った。
そして、会議室側に入る。
一郎たちに視線が集まり、特に、リィナの顔を見て、クレオンをはじめとする領主たちが唖然としているのがわかる。
やっぱり、カモフラージュ効果が薄いのかもしれない。
まあいい。
騒ぎ出さないことを考えると許容範囲なのだろう。
このまま押し通す。
「ああ、予想どおりだな」
待っていた女たちの中で、まずはシャングリアが声をかけてきた。
「まあな」
一郎は微笑んだ。
リィナを席に着かせる。
一郎も座る。
「んんっ、んんんっ」
甘い鼻声が耳に入ってくる。
ガドだ。
短い時間でクリトリス、ヴァギナ、アナルを交互に刺激する「連続モード」にしていた。
顔は真っ赤だし、全身に脂汗をかいている。
しかし、ステータスを覗くと、一度も昇天はできなかったようだ。
一郎は、貞操帯の刺激を停止させてやった。
ガドが一気に脱力する。
すると、一郎に向かって、顔をあげた。
欲情しきった雌の顔であり、眼に涙を溜め、うるうるした瞳で一郎を見つめてくる。
一生懸命に頑張ったのだろう。
多分、誉めて欲しいに違いない。
「ガド、頑張ったな。ところで、小部屋でワイズ伯と合意に至ったことがある。エルフ王家として受け入れて欲しい。つまりは……」
「あっ、は、はい。わかりました。承知します」
ガドが肩で小さく息をしながら言った。
我慢するなんて、苦手なガドだ。
だから、頑張りすぎて、朦朧とまでしている感じだ。
それはいいのだが、まだ一郎は先を喋ってない。一郎も苦笑してしまう。
また、それはともかく、領主たちの前でガドにぞんざいな物言いをしているのは、意図的なものだ。
これからの話し合いで、完全に一郎が主導権を得るには、まずは一郎がエルフ王家に強い影響力があることを見せつける必要がある。
「へ、陛下、まだ、ロウ殿は内容をおっしゃられてませんが……」
見かねてブルイネンがガドに後ろから声をかけた。
「ま、まあ、なにを言うのです、ブルイネン――。ごしゅじ……いえ、ロウ様……、ロウ殿のご申し出なのですよ。承知するに決まっているじゃありませんか。なにを言うのです――」
ガドがちょっと憤慨したように言う。
「相変わらずのポンコツ女王ね」
「ロウ、喋らせない方がいいぞ」
コゼとシャングリアだ。
「やめなさい、あんたたち」
すると、エリカがぴしゃりとふたりの軽口を叱る。
だが、一郎もそれもそうかと思った。
ガドはやっぱり黙って座ってもらえればいいか。ただ、ガドの権威だけは貸してもらおう。
「そうか、ガド。ならば条件は一緒に聞いてくれ。それと納得してくれて感謝する。ご褒美だ」
一郎は横のガドに手を伸ばして上半身を引き寄せると、いきなり口づけをした。
周囲が騒然となる。
だが、気にしない。
ガドも気にしてない。
侵入してきた一郎の舌を一心不乱に舐め返してくる。
「えっ、ええ」
「なんと」
「わっ」
クレオンをはじめとする領主たちの驚愕の声が耳に入ってくる。
構わず、一郎はガドとの口づけを堪能した。
そして、ガドから顔と手を離す。
座り直したガドは、とろんとした表情で満足そうに一郎だけを見つめてくる。
相変わらず、周囲の声も視線も気にしていない。
ひたすらに一郎だけを嬉しそうに見ている、まるで子供のような無邪気な目だ。
「あ、ありがとう……ございます、ご主人様……」
ガドがうっとりとした表情のまま、一郎に向かって呟く。
「ガド、女王様の仮面が外れてるわよ」
「いや、いまのはロウが悪いな」
また、コゼとシャングリアが茶化すように言った。
「やめなさいって、言ってるでしょう、あんたら」
再び、エリカが声をあげた。
クレオンをはじめ、居並ぶ領主たちは唖然とした顔だ。リィナはちょっと驚いた感じだが、納得した様子でもある。
一方で、親衛隊の連中はいつものことなので、平然としている。
ブルイネンだけが、困ったような顔だ。
「さて、話を始めましょう。エルフ王国側の代表の名代は、俺が務めます。明日にはエルフ本国から一個魔道師団と女長老ケイラ=ハイエルが到着しますが、あなた方への報復行為は慎むようになんとか説得します。俺はエルフ族王家そのものではないので、最終的な決定権はありませんが、見たとおりにかなりの影響力はありますよ」
一郎は領主たちに微笑みかけた。
「あっ、いえ、別に、ごしゅ、ロウ様が決定していただいて……」
ガドがはっとしたように口を挟んできた。
一郎は一瞬だけ、クリトリスに当たっている部位を強く振動させる。
「んふっ」
ガドが股間を服の上から押さえて上体を折り曲げた。
「へ、陛下、しっかり。また、負傷した場所が痛んだのですね」
ブルイネンが慌てて、ガドの身体を支える。そのときには、貞操帯の振動はとめている。
ブルイネンがガドの背中を支えつつ、一郎を睨んできた。
これ以上はやめとくか。
一郎はもう悪戯は自重することにした。
「報復……ですと?」
一方で、クレオンが怪訝そうに言った。
「やってくるエルフ本軍は、上級魔道の使い手の数百人のみならず、人間族の都市ひとつを丸ごと破壊できる武器も携行しているようです。お互いの幸せのために、なんとかこの準備会合で双方が納得し合える結論を得たいものですね」
「と、都市を破壊――?」
クレオンが真っ青になった。
享ちゃんについては、明日の朝、お尻をぺんぺんするが、折角来るんだし、しっかりと脅しの材料には使わせてもらう。
「いや、心配はいりません。この準備会合で合意に至れば、エルフ王国側としては、今回の報復行為はとりません。もっとも、マルエダ家に対するなんらかの賠償は求めます……。しかし、なによりも欲しいのは、今後、同じことが起こらないという確実な保証です」
一郎がそう言うと、すぐにリィナが口を開く。
「まったくもって、その通り――。わたしらは、あのような蛮行が起きぬ再発防止策をエルフ王家にお示しして、それで誠意を伝えねばならん」
さっきまでの快感に蕩けたような女の顔はなくなり、毅然とした政治家の顔になっている。
リィナが続ける。
「……いい機会だから、現在の国境守備軍の保持態勢を見直しましょう。そもそも、本来はひとつにまとまるべき軍が、王家の都合で六領主に分けられるなど正しいかたちなのかしら? 各領主に分断されているから、無能な嫡男に大軍か集まるなんて怖いことが起きるのです。今後は国境軍は統一。総指揮官は、わたしたちが合意によって選んだ相応しい者を任命することにしましょう。もちろん、その指揮官に対する統制権は、この六領主の合議によって発動することにもします」
「なるほど、それなら、しっかりとした指揮官に率いられるのだから、今回のような間違いは起きませんね」
一郎はわざと大きく頷く。
そして、会同はリィナの独壇場になった。
今回のマルエダ家本軍の暴走の繰り返し防止という名の各領主からの軍権とりあげと統一。軍管理のための経費の分担などの必要事項が次々にリィナから提案され、合意に至っていく。
統一軍の暫定指揮官として、現在、ワイズ家軍を率いているリィナの息子が選ばれるまでも、あっという間だった。
クレオンはほとんどなにも発せず、本当の自領軍以外を取りあげられたうえに、もっとも高額な維持費負担を押しつけられる結果となった。
アネルザに嫌みを言われるかな?
ちょっと、一郎は苦笑を浮かべてしまった。
「……こんなところかしら。さて、あとはマルエダ家の処置だけね。いまのは西方域六家全体のことであり、マルエダ家の処置ではないわ。クレオン殿は当主としてどう考えているのかしら?」
リィナがクレオンに視線を向けた。
すでに、クレオンはたっぷりの汗をかいている。
可哀想だが、レオナルドには死んでもらうしかない。クレオンも引退だ。
これは最低条件だ。
それくらいなければ、さすがにラザニエルも困るだろう。
「レオナルドは処刑。わしは自裁する」
クレオンが言った。
一郎は口を挟むことにした。
「王都のこともあります。凶行を起こしているルードルフ王がいまだに王都にいることを考えると、ここの混乱は最小限にしたい。……レオナルド殿は、処刑ではなく、自裁でいいでしょう。それでエルフ王家は納得します。マルエダ家の当主には、シモン殿を呼び戻して、彼に……。クレオン殿は当主からおりるが、この六家集団の相談役としての地位につくということでどうでしょう? まだ王都のことは片付いていません。クレオン殿の力がまだ必要です」
「そうね。わたしからもお願いするわ。あなたが檄で集めた反ルードルフの集団よ。最後まで面倒を見てちょうだい」
リィナも言った。
「この老いぼれの無能者に、まだ機会を?」
「あなたを無能とは思ってないわ。ただ、ちょっとつけこまれただけよ。本当の敵は別にいるんでしょう? 円卓の騎士を気取っている謀略好きの坊やとか」
リィナが言った。
タリオ公国のアーサーのことだ。
この場でタリオの関与を断定してしまうか?
いまのところ、証拠らしい証拠は、レオナルドの証言くらいだが……。それも、耳にしたところ、物証らしきものはないようだ。うっかりと糾弾して、もしも覆されたら、あの色男はその報復を口実になにかを堂々と仕掛けてこないだろうか。
いまのハロンドールはがたがただ。たとえ、向こうに否があっても、侵略を受ける状況は避けたい。
あの色男への仕返しは、こちらの態勢がとれる状況でやりたい。
一郎はリィナを制するかどうかを迷った。
そのときだった。
突然に部屋の外から、マルエダ家の家人らしき者が慌てたように入ってきた。
彼が家宰のサーマクになにかをささやき、そのサーマクの顔色が変わる。
「お館様――」
サーマクがクレオンに駆け寄り、やはり、なにかをささやく。
「レオナルドが――? まさか――」
すると、クレオンが絶句した感じになる。
なにかあったようだ。
「それと……」
さらに、サーマクがクレオンに耳打ちした。
今度は、思い切りしかめっ面になる。
「どうしたの、クレオン殿? なにか凶事?」
リィナが鋭くクレオンを睨む。
「ふたつのうちのひとつは……。いや、ふたつとも凶事か……」
「なに? 言いなさい――」
リィナが怒鳴る。
一枚被っていた礼節の皮を消してしまったようだ。
「ひとつは身内のことだ。レオナルドが地下牢から逃亡した。すまん――。家人の中に手引きした者がいたらしい。すぐに捕らえる」
クレオンが唸るように言った。
「逃げた――? 冗談じゃないわ。レオナルド殿の処断は、エルフ王家に対する謝罪の表れよ。それを逃がすなんて――。マルエダ家だけの失態で、どこまでエルフ王家とわたしたちの関係を危うくするのよ――」
リィナが声をあげた。
「わかっている。必ずすぐに捕らえる――。女王陛下、ロウ殿、これは我が子可愛さに逃亡をさせたわけじゃない。信じてくれ」
「信じますよ。ところで、もうひとつの報告とは?」
ガドをちらりと見たが、一郎を見ているだけで、そもそも話に参加してないみたいだから、勝手に一郎が応じた。
しかし、なぜか、もうひとつの凶事とやらが気になる。
理由はないが勘だ。
なにかの訃報?
いや、そこまでいかなかいが、心がざわめく。
「王国の南方で、ドピィと名乗る賊徒が侯爵領を占拠していたが、それを討伐しようとした南方の王軍が大敗したそうだ。それで、新たに王軍がその討伐に派遣されたらしいが……」
クレオンが言った。
その南部域の賊徒の反乱については多少は耳にしていた。もっとも、そんなには情報は集めているわけではない。
一万にもなる大きな規模の賊徒が、ある侯爵家の領都を占領して略奪と陵辱の限りを尽くしているという内容だった。
あの地域はもともと、キシダインの権力基盤であり、一郎とマアとで徹底的にその流通を潰した。
だから、一気に失業者が溢れ、領地の経済を回復させようと、各領主が増税したりし、そのことが民衆の不満を誘発したりして、情勢は最悪の状況だった。一郎もそれは知っていた。
それらが大きな民衆反乱を許した下地になったのだろう。
あのときは、それが一番のやり方と思ったが、それによる南域で暮らす民衆の疲弊は一郎の責任だ。
「いま、入ったばかりで不確定情報だが……。国王の命令による王軍討伐軍の指揮官は、王太女殿下イザベラ様とか……」
イザベラ……?
なんで――?
「姫様を?」
「どうして?」
「えっ、姫様は身重じゃないのか?」
コゼ、エリカ、シャングリアが声をあげる。
「これはあり得ません、イザベラさんは妊婦です。しかも、あの馬鹿王の命令だなんて――」
スクルドも珍しく余裕のない口調で怒鳴った。
「……とにかく、情報を集めよう……」
一郎は静かに言った。
だが、妊娠しているイザベラに、王宮が出兵を命じただと?
もしも、それが事実なら……。
まさか、サキが関与しているとは思わないが……。しかし、万が一、そうなら……。
一郎はめらめらと腹が煮えかえるのを感じた。
※
小題名は、かの一世を風靡したテレビドラマから。
もう、若い人は知らないかもしれませんね。