【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
698
「今度は、四つん這いになれ、ピカロ」
テータスはピカロの耳元でささやいた。
ふたりのサキュバスを監禁している地下牢である。テータスは相変わらず、ここに入り浸っていた。
「ふふふ、すごいねえ、旦那さん──。まったく絶倫じゃないかい。まだできるんだねえ……。じゃあ、こんな感じでいい?」
ピカロが四肢を折って、床で四つん這いになると、テータスに白い尻を突き出すようにする。
しかも、全裸の身体を妖艶にくねらせて、テータスを誘うように真っ赤に充血している陰部をこっちに晒す。
もう十発以上もテータスが射精している。ピカロの陰部はテータスの精で汚れきり、さらにピカロ自身の興奮の淫汁が混じり合っており、これ以上ないほどにぐちょぐちょだ。
匂いもすごい。
だから、興奮する──。
このピカロをテータスの精で汚しきる──。
テータスは、再びピカロの裸体に手を伸ばした。
ピカロは、すでに拘束はしていない。
彼女がテータスに愛を誓い、逃げないと誓ったからだ。一応は、「奴隷の首輪」の前側の金具に鎖を繋いで施錠し、その反対側の先端を地下牢の床の中心に作った金具に繋げている。
鎖は牢を自由に動き回るのに十分な長さがあるので、牢の中であれば、不自由はないはずだ。
それどころか、テータスと性愛に耽っている最中に鎖でもなんでも使って、テータスを襲撃することもできる。
しかし、ピカロはそんなことはしない。
これこそが、ピカロがテータスを愛している証拠ではないか。
「ああ、それでいい、俺のピカロ……」
テータスは両手をピカロの胸にやって、強くもみしだきながら、尻の下から怒張を濡れきったピカロの中に突きたてた。
ずぶずぶとテータスの勃起しきった一物がピカロの中にめり込んでいく。
「ほおおっ、いいいっ、ああ、気持ちいいよう、旦那さん、あああっ」
ピカロが背中を弓なりにして大きく喘いだ。
火傷するかと思うほどに、ピカロの膣の中は熱かった。
テータスはピカロの乳房を揉み、指で挟んで乳首を転がすようにしながら、股間の一物を激しくピカロの体内で律動させる。
「ああっ、いくうう、旦那さん、いぐうう」
ピカロが全身をがくがくと震わせて絶頂した。
ずっと愛し合い続けているので、ピカロの身体も敏感になっているのだろう。テータスの与えるほんのちょっとの刺激であっという間に達してしまう。あるいは、それもテータスを悦ばすための、サキュバスならではの性技のひとつだろうか。
まあ、どっちでもいい……。
テータスはただただピカロと愛し合う快感をむさぼる。
ピカロの絶頂とともに、テータスの怒張から精を搾り取るように、ぎゅっと膣が引き締まって動いた。
膣が根元から波のように先端に向かって蠕動運動をする。
「おおっ」
テータスも快感で声をあげてしまった。
ピカロの子宮に向かって精を放つ。
本当に気持ちいい。
テータスは最後の最後まで味わうように、ピカロの中に精を放ち続けた。
「ああ、やっぱり、気持ちいいよ、旦那さん。口づけしよう」
ピカロが四つん這いのまま顔を振り返らせる。その顔には満面の笑みがあった。
体内の官能のすべてが引きずり出されたような快感の余韻に浸っていたテータスに、新たな歓喜が沸き起こる。
これまでの人生の中で、この醜いテータスの顔に口づけをしてくれる女などいなかった。
それなのに、このピカロは自ら望んで、テータスと口づけをしてくれようとしている。
あんなに笑みを浮かべて。
この笑みが偽物なんてことは、あり得ない……。
いや、たとえ偽物でも、テータスの愛で本物にしてみせる。
「愛している、ピカロ……」
テータスは顔を伸ばして、ピカロが薄っすらと開いている唇に口を重ねた。ピカロは笑ったような眼で、誰もがおぞましいと口にする醜いテータスの顔をしっかりと見ながら、すぐに舌を差し入れてきた。
五体に衝撃が走る。
貫いたままだった怒張が再び膨らみを増すのがわかった。
口を離す。
テータスは再び律動を始める。
「ああ、気持ちいい──。旦那さん、愛してる──。ぼくも愛しているよおお。あああっ」
ピカロが感極まったように叫んだ。
その言葉に、テータスの興奮が爆発する。
電撃のような快美感に見舞われた。
またもや、テータスは射精をしていた。
「あっ、ああああ──」
それに合わせるように、ピカロが絶頂をした。
だが、終わらない。
心の歓喜は続いている。
射精をしても、まだテータスの一物は勃起したままだ。
テータスは、さらに激しくピカロの股間に腰を打ちつけた。
まるで、毀れたかのように、テータスはひたすらにピカロの身体をむさぼる。
これが、この二日間でテータスがここでやっていることだった。
この二日間のほとんどの時間を、テータスはこの地下牢でずっと過ごしていた。
外に出たのは三度だけだ。しかも、できるだけ短時間で終わらせた。
一度目は、テータスの飼い主であるレオナルドから、ロウ=ボルグの暗殺の指令を取り消されたときである。
ただ、テータスの中では、すでにロウを殺すことは決めている。
このピカロが、ロウが自分の主人であり、どうしても、テータスのものになれないと言ってきかないのだ。
だったら、そのロウを殺すしかない。
ピカロがテータスを愛してくれているのはわかっているので、ピカロからすれば、ロウが生きている限り、テータスと結婚できない何らかの事情があるのだろう。
だったら、殺すしかない──。
テータスはそう決めた。
ピカロを諦めるという選択はない。
そのときは、テータスは迷いなく自分の死を選ぶ。
あと二回の地下牢からの外出は、ロウを殺すための準備だ。
まずは、レオナルドがサキュバスの見張りのためにつけていた三人の去勢された奴隷戦士を、テータスの手のものと入れ替えた。
三人ともぶち殺して、すでに土の下であり、連れてきた手の者を死んだ三人によく似た姿に変装させ、この地下牢の見張りをさせている。
レオナルドは、サキュバスたちに余人が近づくのを嫌って、無許可でこの地下牢に近づくのを全員に禁止していたので、いまのところ、奴隷戦士たちが入れ替わっているのに気がついた者はいない。
まあ、いちいち、奴隷の顔を覚えている者もいないだろう
一度、サキュバスたちの様子を確認するために、領主のクレオンの直属の部下が直接、地下牢の入口までやってきたらしいが、部下たちによれば、まったく怪しまれることはなかったらしい。
テータス自身は、ここでピカロとの交合に耽っていたので対応していないが、そのクレオンの部下という男は、特にサキュバスの姿を見ることを強要はしてこなかったみたいだ。
しっかりと地下牢に監禁してあり、特に怪我も病気もなく元気だと教えられると満足して戻ったらしい。
ただ、サキュバスの扱いについては、くれぐれも丁重にしろと伝言を残したということだった。サキュバスたち用の豪華な食事も運ばせたらしい。
部下に許可したので、その食事は部下たちが片付けたと思うが……。
レオナルドは、二日に一度、サキュバスたちの手足の骨を折るという拷問をさせていたみたいだが、どうやらサキュバスの待遇が変わったのだと悟った。
テータスは怪訝な気持ちになった。
そもそも、レオナルドではなく、領主のクレオンが指示をさせたというのが気になった。
あのクレオンは、侍女に扮しているタリオの女間者に毒を盛られ続けていて虫の息であり、しかも、これまで、まったくサキュバスの管理にまったく口を出していなかったはずなのだ。
少し気になって、外に出て調べることにした。
これが三度目の外出だ。
それでわかったのは、驚いたことに、あのレオナルドは女王とともにやってきたロウを攻撃しようとして自軍を動かし、ロウではなくエルフ族の女王に大けがをさせてしまったということだった。
馬鹿じゃないかと思ったが、そのときにエルフ軍の女兵たちをさらに攻撃し、追い詰められなかっただけでなく、自軍に大打撃を与えてしまったのだそうだ。
それで、レオナルドは、捕らわれて、こことは違う別の地下牢に監禁されてしまったのだそうだ。
つくづく阿呆だと思った。
それはともかく、そんなことになったのなら、マルエダ家は慌てて、エルフ族との関係修復を図ろうとするはずだと思った。
エルフ族たちは、クリスタル石と呼ばれる魔石を作ることのできる唯一の場所であるナタル森林を押さえている。
そうでなくても、あのローム大帝国を凌ぐ歴史をもつ国ということで、ロームにあるティタン教会に勝るとも劣らぬ権威もある。
あそこと喧嘩しても、百害あって一利もない。
一方で、当主のクレオンだが、レオナルドの起こした争乱のあいだに、ロウによって助けられていた。
潜入してきたロウが侍女たちがクレオンに盛ろうとした毒を見抜き、彼女たちを捕らえたうえに、クレオンを治療術で完全に治していたのだ。
いずれにしても、こうなれば、当主のクレオンは、レオナルドの責任を追及して処刑してでも、エルフ族王家に謝罪するに違いない。
そして、当然のことながら、このピカロは、ロウに引き渡される。命を助けてくれた恩義もあるのだ。
もともと、ロウはこのサキュバスふたりの身柄を受け取りに、ここに来たのである。
案の定、テータスが少し調べただけで、すでにクレオンとロウとのあいだで、明日の朝に、ピカロたちを引き渡すことの密約が終わっていた。
テータスは、引き渡しのときに、もともとレオナルドと話が終わっていた渡し方で、ふたりの身柄がロウに渡されるようになんとか処置して、ここに戻った。
入れ替わった見張りの奴隷役の手の者についても、奴隷の主人がレオナルドからほかの者に移るように処置するとも思ったので、それもうまく誤魔化せるように魔道具を準備して、三人に渡した。
さっき確認したが、夕方過ぎに、三人の「主人」は地下牢に収容されているレオナルドから家宰のサーマクとやらに移行されたようだ。
この地下牢の前まで、部下が伝えにきた。
実際には隷属魔道は移動してないが、魔道具のおかげで、うまく処置できたらしい。
とにかく、すべては明日だ──。
テータスは、もうピカロなしの人生というものを考えられない。
そして、狂ったようなテータスの律動は続いている。
得体の知れぬ芳烈な快感がテータスの背筋を駈けあがり、脳天に打ち響く。
女に愛されるということが、これほどの快楽を与えるものであることをテータスは知らなかった。
危うく、この歓喜を知らぬまま死ぬところだった。
この歓喜を抱いたまま死ねるなら、テータスは心から喜んで命を差し出すだろう。
「ああ、ああっ、ピカロ──。お、俺はもう、お前なしで、いられない──。俺の──、俺のものになれ──」
テータスは激しくピカロを後ろから突きながら叫んだ。
まるで熱にうなされているかのようだった。
「も、もう、あんたの、ものだよ──。ああ、ああ、気持ちいい──。気持ちいい。好きだよ──。あんたって、いっぱいぼくのことを愛してくれるから、好きいいい──」
ピカロが嬌声とともに言った。
たまらない──。
テータスはピカロに抱きつくと、挿入したままピカロの身体を反転させて、正常位の体勢にした。
すぐに律動を再開して、口づけをする。
ピカロの耳にしゃぶりつき、顎を吸い、唇を舐め、舌を絡めとった。
なにをしても、ピカロはにこやかにテータスを受け入れた。
実の母親でさえも嫌悪して、恐怖した、このテータスの顔を──。
「ああ、あんたが好きだから、泣かないで──。泣かないでよ──。いっぱい、いっぱい、愛しているから──。ねえ、泣かないで──」
ピカロがテータスの背に両手を伸ばして抱きしめてきた。
テータスは、それで自分が涙を流しているのだということを悟った。
「俺を愛してくれると言うのか、ピカロ──。愛しているのか──」
「愛しているよ。しっかりと、あんたのことが好きだよ──、おおお、また、いくうう──。いぐううう」
ピカロがまたもや身体を弓なりにして、歓喜に身体を震わせた。
テータスの体内にも、恐ろしいほどの絶頂感が襲いかかる。
「おおっ」
テータスは、もう何回目なのかも見当もつかない精を、ピカロの子宮に注ぎ込んだ。
*
テータスは、疲れ切った身体を壁にもたれさせた。
床に尻をつけて、だらしなく足を伸ばしているテータスの股間では、ピカロの顔がしきりに動いている。
もう、十数発は連続で射精した。
どう考えても、これ以上、射精することはできない。
それに、もうすでに夜もかなり更けた。
この牢には時間がわかるものはなにもないが、おそらく夜半はすぎている。
これ以上の射精は、絶対に明日に響く。
明日に影響が残る行為は、これ以上は自重しなければならない。
だが、ピカロが「掃除フェラ」だと口にして開始した奉仕により、テータスの股間はまたもや大きくなろうとしている。
どうやら、どんなに疲労をしても、そして、精を出しても、テータスは、このピカロに限定ではあるが、無尽蔵に精を出せるようだ。
しかし、さすがにテータスは、今夜はこれで終わりにすることにした。
「もういい……。ありがとう、ピカロ」
股間にあるピカロの顔を軽く叩く。
ピカロが顔をあげた。
「だけど、また、大きくなったよ……。ねえ、最後の一回だけでいいから、ぼくの相棒にもお情けくれないかなあ……。ずっとあれから、あの貞操帯をしたままで、淫気が吸えなくて、かなり弱っているんだよねえ……。ほら、食べ頃だよ」
ピカロがこの牢の隅に胡座に縛って転がしているもうひとりのサキュバスを指さした。
チャルタという名前のサキュバスだ。
最初は、鎖で吊って立たせていたのだが、場所を取って邪魔なので、いまは鎖ではなく、縄を使って脚は胡座に組ませて縛り、両手を後手に縛って、さらに首の後ろに縄を伸ばして顔を胡座の脚に密着するように上体を倒させて雁字搦めにしている。
かなり窮屈な拘束であり、魔族の体力を奪うには丁度いいのだ。
もちろん、縄も魔族用の特別なものであり、どんなに怪力の魔族でも魔力の元である魔素などを吸い込み、力が発揮できないようになっている。
それはともかく、口で奉仕したことにより、テータスの一物が勃起したのを確認したピカロが、全身を折りたたまれたようになっているチャルタに近づき、身体をひっくり返して、こっちに股間が見えるようにした。
刺激遮断の貞操帯が喰い込んだチャルタの股間は、針金の入った貞操帯の縁でも防げなかった淫液が溢れ出ていて、尻の下だった床が、まるで放尿でもしたようになっていた。
「ほら、どうにでもしてちょうだいって格好じゃないかい、旦那さん。こいつも、貞操帯外して犯してやってよ。ぼくたちは人族と性交して身体に力を溜めるんだけど、もうかなり弱ってんだよ。どうせ、これだけ弱らされて、魔道も封じられれば、ぼくたちは旦那さんに逆らえはしないからさあ」
ピカロが胡座縛りで開脚しているチャルタの股間の貞操帯のぎりぎりのところを指で愛撫した。
「んふううっ、んぐううう」
顔を床に向かって潰されている感じになっているチャルタが涙を流して、なにかを叫んだ。
しかし、チャルタの口には口が膨れるくらいに渇いた布を押し込み、その上から内側に突起がある革製の猿ぐつわを嵌めさせている。
かなり叫んでも、小さな声程度しか洩れないようになっている。
いまも、ちょっと呻いている程度の声でしかない。
「……俺はピカロだけでいい。ほかの女に精を放つくらいなら、ピカロの中に出したい……。しかし、いずれにしても、今夜は終わりだ……。それよりも、こっちに来い、ピカロ」
テータスはそう言って、荷が集めてある木箱に向かった。
とりあえず、ズボンを身につける。
「ごめんよお、チャルタ。だめだってよ。じゃあね」
ピカロがチャルタの顔に軽く手を振ってこっちに来る。
「んぐううっ、むふうううっ」
チャルタが涙を流して、吠え声を発しているが、もうピカロはチャルタには構わず、素直にこっちに寄ってきた。
テータスは、ピカロを自分の前に立たせて足を開かせる。
そして、ずっと外していたディルド付きの貞操帯を取り出す。ヴァギナとアナルにディルドを挿入しつつ、ピカロにそれを嵌めていく。
ピカロは抵抗はしなかった。
だが、とても嫌そうなしかめっ面になる。
「んっ、あっ……。ね、ねえ、これしなきゃ駄目なの? これって、ただの刺激遮断の貞操帯じゃないよねえ。ぼくたちがあれだけ、横でセックスしているのに、あのチャルタがあんなに弱ってんだから、きっと淫気を吸えないようになってんじゃない?」
ピカロが言った。
テータスはにっこりと微笑んだ。
「やっぱり、わかったか? これはサキュバス用の捕獲具でもあるからな。これで股間を封印すれば、淫気も発散できず、逆に吸収もできない。お前らのような淫魔族にとっては、とんでもない拷問具かもしれんな。悪く思うな。お前といえども、できるだけ弱らせねばならん。魔族と人間族とでは、身体の力も魔力もまったく違うからな。人間族が魔族を従わせるには、道具を使って、力を発揮できないようにするしかないんだ」
テータスは、ピカロにテータス側に背中を向かせると、貞操帯を股間に締めつけて、お尻の上で施錠してしまう。
「あんっ──。や、やっぱり? 酷いよお。ぼく、旦那さんの言うことをきいているじゃないか」
ピカロが振り返って、ちょっと拗ねたような顔を見せる。
「まあ、そう言うな。これはどうしても必要なんだ。それに、ピカロも俺を騙していることがあるだろう? 腕は背中だ……」
ピカロが腰の括れの後ろで両腕を水平にする。
テータスは革枷でそれを離せないようにする。さらに足首にも鎖付きの足枷を嵌めた。鎖は肩幅よりも狭いので、ゆっくりは歩けるが走れはしない。
「くっ、うわっ、なにこれ──。ち、力が抜けるよ、この枷──」
ピカロががくりと膝を割った。
その通り、この腕枷と足枷は、魔族が嫌う特別な金属の粉が編み込んであり、すべての魔族の筋力を奪い尽くす効果がある。
これもまた、魔族捕獲用の魔道具だ。
「念のためだ。それよりも、さっきの返事は?」
テータスは胡座に座り直すと、拘束したピカロを横抱きにして、膝の上に乗せた。
「さっきの返事?」
「俺を騙していることだ」
テータスはにやりと笑った。
「騙していることって……。そんなのなにも……。ぼくはちゃんと、旦那さんを愛したし……」
ピカロが首を傾げた。
だが、テータスは首を横に振った。
「首輪だ。その奴隷の首輪……。それは実は効いてないだろう? ずっと、隷属されているふりをしていただけだ」
テータスが指摘すると、膝の上のピカロが目を丸くした。
「驚いた──。いつ気がついたの? ちゃんと騙している自信はあったのに」
ピカロが言った。
テータスは嘆息した。
「やっぱりか……。気がついていたわけじゃない。だが、性交のあいだ、奴隷の首輪で隷属しているわりには不自然なときがあった。絶対に命令に逆らわないようにしているわりには、わりと自由に動いていたしな」
テータスは笑った。
「そうか……。旦那さんが結構、絶倫で淫気もおいしかったんで、夢中になったしなあ……。まあ、騙したというよりは、黙っていたというのが本当だけど、嘘ついてごめんね」
ピカロがテータスに横抱きにされたまま頭をさげた。
「いやいい。俺もお前に黙っていることもあるしな……。おあいこだ。だが、これは嘘じゃない。俺はお前を愛した。もう離さない。ピカロもそれは忘れるな」
すると、ピカロが大きく頷いた。
「うん、わかった。ぼくも旦那さんを愛しているよ……。だけど、旦那さんのものだけになることはできない。ずっと言っているけど、ぼくたちは、ロウというご主人様のものなんだ。でも、ご主人様が許せば、旦那さんのこともずっと愛するからね。それは嘘じゃない」
「もしかして、隷属の魔道が効かないのも、そのせいか?」
テータスは訊ねた。
奴隷の首輪が効力を及ぼさない場合で、もっとも多いのは、すでに誰かの奴隷になっている場合だ。
しかも、すでにかけられている隷属魔道が、装着しようとしている「奴隷の首輪」よりもずっと高位魔道の場合は、新たな隷属は無効だ。
低位魔道士の魔道で、高位魔道士の魔道を打ち消すことは不可能なのだ。
つまりは、ピカロたちに奴隷の魔道が効かなかったのは、すでに誰かの奴隷であるからだと思った。
特に、魔族の場合は、首輪や紋様による隷属のほかに、「魔名」による支配という手段があるので、誰かに隷属しているかどうかがわかりにくかったりもするのだ。
おそらく、主人は……。
「まあね。ぼくたちの本当の主人は、ご主人様、ロウ様なんだ。ぼくたちは、ロウ様のしもべなんだ」
ピカロははっきりと言った。
そういうことか……。
つまりは、やっぱり、ロウが死なない限り、ピカロはテータスだけのものにすることはできない。
逆にいえば、ロウさえ死ねば……。
そのとき、牢の扉が規則的な合図で叩かれた。
「待っててくれ」
テータスはピカロを床におろして、自分だけ扉に向かう。
すぐに外に出て鍵を閉める。
果たして、廊下には部下がいた。見張りの奴隷に扮させている男のひとりだ。
「どうした?」
「すみません。こんな夜中に……。ここの領主から伝言です……」
部下が口を開く。
それによれば、明日の暁のあとすぐに、サキュバスの引き渡しが行うことになったということだ。
もともと、もう少し時間が経って、しっかりと陽が昇ってからの予定だったが、なにかの都合で、ロウが早々の引き渡しを求めたそうだ。
「早々の引き渡しか……」
テータスは気に入らなかった。
ピカロを受け取るのが当然の自分の権利だと考えているみたいで面白くなかった。
だが、ピカロはもうテータスのものだ。
ピカロも、テータスを愛してくれている。ロウに隷属しているので、テータスのものになれないだけで、ロウさえ死ねば、ピカロはテータスのものになってくれるのだ……。
ピカロもそれを望んでいる。
あんなに、愛し合っているのだ──。
「それと……」
すると、さらに部下が言葉を継いだ。
驚いたことに、レオナルドが死んだそうだ。一度、地下牢から逃亡し、娼婦の情婦と心中をしているところをたったいま発見されたらしい。
いまは、状況確認のために、マルエダ家の陣営でかなりの騒ぎだという。
「情婦と心中?」
テータスは首を傾げた。
情婦というのは、あの娼婦のジーンだろう。
だが、あれはレオナルドに近づいたタリオの間者だ。間違っても、男と心中をするような女じゃない。
多分、口封じで殺されたのだろうなと思ったが、まあ、どうでもいい。
いい雇い主だったが、もうテータスには関係ない。
「わかった。行っていい。魔族たちの引き渡しについては、手筈通りに……」
テータスはそれだけを言った。
部下が頷いて、外に出て行く。
「明日か……。いや、もう今日だな」
テータスは呟くと、愛するピカロの待つ牢に戻るために、牢の扉を解錠した。