【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「だって、たった二年足らずじゃない。ご主人様のところには、また来るよ。だけど、いまは、このしもべのそばにいてやりたいと思う。だって、可哀想だし……」
ピカロが言った。
一郎は仰天した。
すでに一郎の眷属であるはずのピカロが、一郎から離れて、この知らない男について行くと言ったのか?
全く信じられない。
周囲の女たちも、ちょっと驚いている。
「はあ、なに言ってんのよ、ピカロ──。あんた、もしかして、この化け物のような人間族に絆されたの?」
そのとき、チャルタが声をあげた。
すると、明らかにむっとしているピカロの手から、人の顔ほどの球体が出現して、ものすごい勢いでチャルタに向かって飛んできた。
「ロウ様──」
エリカが叫んで、ロウの前に立つ。
球体がチャルタの直前で弾けて、水しぶきが散らばる。とっさに魔道壁を出現して球体が身体にぶつかるのを避けたのは、チャルタ自身の魔道のようだ。
一方で、ピカロが飛ばしたのは、単なる水の塊だったみたいだ。
チャルタに、けがをさせるようなものではない。
「うわっ、なにすんだよ、ピカロ──」
チャルタが叫ぶ。
「うるさい──。この人を化け物って、言うな──。誰かがそれをこの人に口にするたびに、この人は傷ついている。傷ついていない素振りをしながらも、この人の心は血を流している。そんなことを言うんじゃない──」
ピカロが怒鳴り返した。
「待ちなさい、ピカロ──。あんた、ロウ様と別れて、この人と一緒に行くと言っているの? 本当にそう言ってんの?」
エリカだ。
心の底からびっくりしている。
すると、突然に、ピカロがけらけらと笑い出した。
「まさかああ──。そんなことあるわけないよ。眷属というのは、主人とは離れられないのさ。魂が結びつくからね。だけど、この人って、可哀想なんだよ。それに、ばかでさあ……。ご主人様を仕留めるために、やめろってとめたのに、生命力を代償にした呪術の紋様を肉体に刻みまくってさあ……。もう何年も寿命が残ってないんだよ。だから、すぐに死んじゃうんだ……。だから、ちょっとだけ、一緒にいてあげようかなあって……」
ピカロはあっけらかんと言った。
一郎は苦笑した。
まるで、ちょっと数日間、遊びに行ってくるというような口調だ。
実際に、そんな気持ちなのだろう。
魔族の寿命は長い。
このピカロも、おそらく、もう百年近くは生きているみたいだ。魔族は、魔力が強いほど長生きするらしいので、一郎に支配されることで魔力があがった彼女たちの寿命が尽きるのは、まだまだ数百年の先なのかもしれない。
とにかく、時間に関する感覚は、人間族たちとはまるで異なるに違いない。
それに、テータスの寿命がほとんど残っていないというのは本当だろう。
ステータスを改めて読むと、生命力が著しく低下している。テータスは上半身が裸だが、その肌にはさっきの戦闘でついた傷跡が走っているとともに、赤黒い入れ墨のような模様が無数についている。一郎は、前世の世界の“タトゥ”を連想したが、あれがピカロがいま主張した呪術の紋様なのだろう。一郎の読むステータスには“生命力代償の呪術”とたくさん表現されている。
そして、片腕を失って、テータスの攻撃力も完全に低下している。
もう危険はないかもしれない。
まあ、仕方ないか……。
魔族というのは、本能的な種族だという。
感情に素直で友誼や愛情を大切にする。理性よりも勘や感情に頼るのだ。ピカロは、感情でこのテータスとやらを選んだのだろう。
しかし、自分がふられたような気持ちなのは、少しだけ悔しくもあるが……。
一郎は溜息をついた。
だが、一郎には、確認しておかなければならないことがあった。
「テータス……。お前がコゼをあの針金の鉄線で刺したとき、一瞬で死に至るほどの猛毒を塗っていると思った。だが、俺がコゼを助けようとしたときには、すでにほとんどの毒が抜けていた。あれは、お前がやったのか?」
一郎はテータスに銃を向けたまま言った。
「……コゼを狙ったわけじゃない。狙ったのはあんただ……。だから、とっさに毒を逆流させて抜いた……。あの女はどうなった?」
「問題ない。ただ一応は安静にさせてきた」
「そうか……」
テータスは明らかにほっとした表情になった。
殺し屋だが、本当は心の優しい男なのかもしれない。だからこそ、ピカロが慕ってしまったのだろう……。
「つまりは、やっぱり、あれは毒針だったんだな。もしも、俺に刺さっていたら、俺は死んでいたか?」
「間違いなくな。俺の失敗は、お前を命を捨てて庇う女がいるということを計算にいれなかったことだ。多分、あのコゼは、あれが毒針であることに気がついたのだと思うぞ。そんな必死の顔だった」
「コゼもそんなこと言ってたよ。俺が死ななかったことを喜んでいた……」
「俺が言うことじゃないが、大切にしてやれ。自分の命を犠牲にして、男を庇う女がいるなんて、羨ましいことだぜ」
「お前にもいるだろう。ピカロは命を捨てて、お前を守っているぞ。本当なら、眷属のくせに、俺を殺そうとした相手を庇うなんて、うんとお仕置きしてもいいくらいだ」
一郎は笑った。
「ロウ?」
テータスは怪訝な顔になった。
だが、それにしても酷い顔だ。
これが生まれついてのものだとしたら、苦労もしたに違いない。
可哀想な魂の色か……。
一郎にはわからないが、ピカロはこいつから、そういうことを感じとったのだろう。
同情もまた、愛情か……。
「……とにかく、だったら、お前を自由にしても、俺の女を狙うことはないな」
一郎は銃を亜空間に収納して消した。
「お、おい」
テータスは困惑の表情を浮かべた。
おそらく、一郎が殺気を消したのを感じたのだろう。
「ロウ……?」
「ロウ様?」
シャングリアとエリカだ。
背中越しだが、一郎が銃をしまったのを気配で悟ったみたいだ。かすかに後ろに視線をやってきた。
「よいのですか?」
一郎の後ろに立っているスクルドが言った。
「仕方ないだろう。ピカロはこいつと行きたいそうだ」
一郎は亜空間から身体を隠すマントを取り出して、ピカロに放った。
「わおっ、ご主人様、感謝するよ」
ピカロがマントで裸体を隠しながら破顔した。
「いつでも戻ってこい。別にお前を開放するわけじゃない。お前は俺の眷属だ。俺が死ぬまで永遠にな」
「ありがとう、ご主人様」
ピカロが満面の笑みを浮かべた。
「待ってください、ロウ様。こいつは、ロウ様を殺そうとした暗殺者です。許せません。それに、やっぱり危険です。あの殺人の能力は超一流です」
そのとき、エリカが口を挟んできた。
「いや、いや、いや、問題ないよ──。この人はもう大丈夫なんだ──。ぼくが保障する。誰も傷つけさせない。ご主人様もみんなもね。ぼくのしもべちゃんだ。絶対にそんなことをさせないったら。命令が効いている。この人もぼくを受け入れた。完全に支配してるったら」
ピカロだ。
その必死の口調が面白い。
「おい、どういうつもりだ? まさか、俺を許そうというんじゃないだろうな? 俺はお前を殺そうとした暗殺者だぞ──」
テータスが声をあげた。
その表情には、完全な困惑がある。
「ピカロに感謝しろ。それと、ピカロはサキュバスだ。こいつらにとっては、人族とのセックスは食事と一緒だ。だから、浮気じゃないぞ。お前は嫉妬深そうだが、大丈夫か? まあ、嫉妬深いのは俺も一緒だが」
一郎は声をあげて笑った。
すると、テータスが唖然とした顔になった。
「だけど、ご主人様は、嫉妬深くて狂人のクロノスとは違うよ。ぼくを行かせてくれたからね。ありがとう」
ピカロが言った。
「クロノスって?」
エリカが剣を鞘に収めながら訊ねた。
「昔々の話だよ。クロノスと女神たちの神話の話さ。人族と魔族とでは伝わっているものが違うけど、獣人の女神のモズを追放したことに怒ったへラティスたちが、森を出ようとしたとき、クロノスはそれに腹を立てて、女神たちを監禁して徹底的に折檻したのさ。それが女神たちがクロノスを見限るきっかけになったということだよ。だけど、ぼくのご主人様は、やっぱり大物だ。度量がある」
ピカロが言った。
どうやら、この世界の神話のことらしい。クロノスが嫉妬深くて、女神を監禁した?
面白そうな話だが、まあ、いまはいいか。
「そんなのじゃないさ。数年で戻るというから行かせてやるだけだ。ずっといなくなるというなら、行かせない。お前を監禁して、セックス漬けにして、どこにもいけなくしてやった」
「わおっ、それも悪くないね。だけど、いまは、この人でいいや。ご主人様にはかなわないけど、このしもべちゃんも絶倫なんだ。淫気も豊富でおいしいし」
ピカロが笑った。
「ね、ねえ、本当に行くの、ピカロ? 本当に?」
チャルタが驚いた口調で言った。
「しばらく、このしもべちゃんと遊んでくるよ。じゃあね、チャルタ」
ピカロがあっけらかんと言った。
「お、おい、答えろ。どうしてなんだ? どうしてだ? なぜ、俺を始末しない。なんでだ。どうして、俺に優しくするんだ──。なんでだ──」
そのとき、テータスが叫んだ。
「お前に優しくした覚えはない。ただ、ピカロが頼むから許しただけだ。残っている人生、ピカロを大切にしろ……。スクルド、ブルイネン、みんな、撤収だ」
一郎は女たちに声をかけた。
「わかりました……。攻撃態勢を解除──。撤収──」
ブルイネンが親衛隊たちに命令を発した。
*
「死ぬだと? 人間族の短命な命になんの価値がある。くだらぬことを唱えるよりも、もっとましなことを口にするがいい」
ケイラ=ハイエルこと、享ちゃんだ。
辺境候軍との和睦を話し合う会同である。
時刻は正午を少し過ぎたところであり、場所は夕べと同じである。相手側は六領主と称するマルエダ家、ワイズ家などの当主だ。昨日と異なるのは、夕べはいなかったクレオンの弟のヨーク家の当主がいることだろう。
一郎たちも、ほぼ参加者は一緒だが、こちら側の席の代表のようなかたちで、享ちゃんが一郎の横に座っている。
また、軍営に到着したアーネスト将軍もいる。
ただ、アーネストは、特段に発言するつもりもないようであり、にこにこと微笑みながら、優雅そうに紅茶を飲んでいるだけだ。いまも、二杯目を所望していた。
とにかく、ずっと主導的に喋っているのは、享ちゃんだ。
そして、いまも、昨日のレオナルドの兇行に引き続き、サキュバスたちの引き渡しの場面で、今日も再び、一郎とガドを危難に陥らせた責任をとって、クレオンが自分の命をもってあがなうと発言したことで、激怒して声をあげたということだ。
まあ、享ちゃんには、夕べの会同の結論については話している。
ワイズ家のリィナが辺境候軍の総帥の地位を継ぐことになり、今後は彼女を優遇することで、リィナがこの一帯を完全に支配できるように押し立てたいと説明した。
もちろん、リィナが一郎の女になったことも言っている。
享ちゃんは喜んでくれ、リィナが辺境候域一帯を牛耳ることが、一郎が間接的にこの地域を抑えることになるなら、喜んで協力すると約束した。
だから、いまは、徹底的にマルエダ家を会同で叩くつもりなのだろう。
一郎としては、アネルザの実家でもあるし、できれば、お手柔らかにしてやって欲しいという気持ちなのだが……。
「し、しかし、それでは……」
自分の自裁で度重なることになった失態をあがなおうとしたことを一蹴されて、クレオンはすっかりと汗をかいてしまっている。
一郎は肩をすくめた。
「夕べの会合での結論に変更の気持ちはありません。クレオン殿は爵位をシモン殿に譲渡。リィナの相談役ということで、彼女を支えてやってください」
一郎は口を挟んだ。
「おお、心優しい英雄公に感謝するがいい、人間──。そして、リィナとやら、しっかりと、こいつを監督せよ。エルフ王家は、そこにいるリィナが今後の監督をするという条件で和議に応じよう。人間族の支払えるはした金の賠償金もいらん。ただし、要求はさっきの説明のとおりだ」
「英雄公の要求があれば、軍事力の提供をする……、ということですね。辺境侯軍と英雄公との誓約として、これを結ぶということと……」
リィナだ。
「おう、そうじゃ。その条件を飲むなら、この一帯へのクリスタル石の割り当ての増加と価格の引き下げをしよう。ただし、約束を
「わ、わたしどもに異議はありません。感謝します」
リィナが半分戸惑った感じで言った。
さっきの内容については、実は、この会同に先立つ事前の顔合わせのときに、リィナも承知していることだ。
いまは、そのときに話し合ったことをほかの領主たちを前にするこの会同の場で正式に決めようとしているだけである。
つまりは、この会同は「出来レース」でしかない。
ただ、リィナが困惑している態度なのは、さっきの仲間内での面談のときには、享ちゃんはいつもの一郎に甘えた感じの優しい感じだったのに、いま目の前のケイラ=ハイエルというエルフ族の女長老としては、あまりにも強い態度なので、そのギャップに驚いているのだ。
いずれにしても、辺境候軍が一郎個人への将来の軍事協力を約束し、これに対して、クリスタル石の流通という枷を嵌める──。
これが今回の落としどころだ。
いますぐに軍事行動を約束するものではないので、辺境候側も特段の出費があるわけじゃない。
それで、クリスタル石の割り当て増加と価格の低下をしてもらえる。当面的には、辺境候軍側には損はない。
ただし、今後のことを考えれば、大きな問題も孕んでいる。
一郎は一国の代表でもなんでもなく、ただのエルフ族の客人のようなものだ。ハロンドール王家についても、現時点でなにかの立場を持っているわけじゃない。ただの一代子爵だ。
その一郎と、辺境候軍というハロンドール貴族集団が対等に条約のようなものを結び、しかも、要求による軍事行動を約束にするというのは、この辺境候域の六当主が一郎を相手に封建するようなものだ。
常識であれば、ハロンドール王家としては認めるわけもない。
反逆にも等しい。
しかし、一郎と享ちゃんとリィナは、話し合いにより、それで押し切ることにした。
だからこその、クリスタル石の優遇措置だ。
あらゆる魔道具の動力でもあり、いまの人間族社会に不可欠のクリスタル石は、どの地域にとっても、社会を成り立たせるための重要な資源である。
これが安く手に入るようになるのだから、ほかの当主たちも、今回の話し合いの結果を受け入れたくなるだろう。
それだけ、クリスタル石の流通の優遇というのは、恩恵が大きいのだ。
もっとも、実はこれも罠だ。
これから、この辺境候域に入るクリスタル石は、リィナに支配させる商会を通じてしか取引させないことも、これから決めることになっている。
つまりは、この一帯の六大当主をはじめとする周辺諸侯は、クリスタル石の流通という首輪をリィナにかけられてしまうということだ。
また、そのリィナの商会も、マア商会の進出により、その傘下に入れてしまう。
これで、リィナの首輪も、一郎が握ってしまうということだ。
マアの了承はまだ受けていないが、一郎の頼みをマアが拒否するとも思えない。
まあ、リィナについては、すでに一郎が淫魔術で支配している。そんな首輪がなくても、リィナは一郎を裏切れないことには変わりはないが……。
「おう、では、そのような方向で進めるか。では、細かいことは事務方の話し合いに任せるとしよう……。では、そのように決まりました。女王陛下、よろしいでしょうか?」
享ちゃんがガドに視線を向ける。
ガドは、事前に「大義である」「承知した」「それはどうであろう」の三言以外は喋るなと、享ちゃんに散々に念を押さえれている。
いずれにしても、ガドはにこにこだ。
享ちゃんが水晶宮に緊急通信の魔道でラザを説得して、当面はもう少しガドが一郎と行動を共にすることを承知させたからだ。
それはともかく、一郎は淫魔術で、ガドのクリトリスに刺激を送る。
乳首への刺激が、一番目の「大義である」──。
クリトリスは、「承知した」──。
膣そのものへの刺激は、「それはどうであろう」──。
それぞれ、その合図ということになっている。
「ひんっ、しょ、承知した──」
ガドが一瞬びくりとしたが、すぐに表情を取り繕って、女王らしい威厳ある態度になって、そう応じた。
一郎は思わずにんまりとした。
「では、女王も仰せだ。これをもって、手打ちとしよう」
享ちゃんが高らかに宣言し、向こうの領主側がほっとしたように拍手をした。
一郎はすかさず、ガドの乳首に弱い電撃を送る。
「くっ、た、大義である」
ガドが叫んだ。
拍手が大きくなる。
これ、面白いな……。
一郎は愉しくなってきた。
いずれにしても、この会議が終われば出発だ。
とりあえずは、一郎たちが出立して、まずはモーリア領に戻る。長距離移動のゲートは、一日経たないと再利用できるようにならないので、アーネストたち魔道師団は、それを待ってということになる。
享ちゃんは、逐次に集まるであろう情報を一郎に伝えるために、一郎たちと同行することになった。
また、南部域やイザベラたちについての情報集めは、水晶宮にも連絡して、アルオウィンの組織や、ノルズにも連絡をした。新しい情報があれば、すべて、享ちゃんの持っている組織に集約されることになっている。
その情報によって行動も変えるが、基本的には、一郎は親衛隊だけを連れて、イザベラに早く合流したいと思っている。
妊婦のイザベラを戦場に送るなど、どういう思惑や経緯なのかはわからないが……。
そして、魔道師団はその後追いだ。
一郎たちは、モーリア領から先も、今度はスクルドが事前に作っていたハロンドール国内の中央街道を呼ばれる経路沿いに建設したゲートを利用できるが、アーネストたち魔道師団はこれは使用できない。
ナタルの森内にあるゲートとは異なり、スクルドが建設したのは、大人数の跳躍には対応していないのだ。
だから、一郎たちは移動術の跳躍で進むが、アーネストたちはそこから進むにしても、「縮地」と呼ばれる魔道でということになる。
通常の手段で移動するよりは遙かに速いが、移動術による瞬間跳躍に比べればずっと遅い。
また、五百人の隊ということになれば、改めて補給路も確保する必要があり、それはモーリア家が援助してくれる手筈になりそうだが、それでもアーネストたちの出発が可能になるのは、数日はかかる見込みだ。
「あん、ご主人様……」
やっと会同が終わったことで、ガドが甘えた声を出して、一郎にすり寄る仕草をしてきた。
「まだ、終わってないわよ、ガド――」
すかさず、後ろに立っていたエリカがガドに声をかけてきた。
「相変わらずねえ……」
エリカたちとともに、一郎の背後に立っているコゼだ。無理をするなと言ったが、一郎の護衛は譲れないと、ここについてきた。すっかりと快復して、いまは緊張を解いたガドに笑っている。
「全くだ」
コゼの横のシャングリアも笑ってる。
一郎は、ガドのアナルに今度は一郎の男根を抽送するよう刺激を送る。
これは、喋るのをやめて、姿勢を真っ直ぐにしろという合図になっている。
「おっ──」
ガドが瞬時に背筋を伸ばした。
一郎は吹き出しそうになった。
(第11話『辺境候軍の暗殺者』終わり)
*
次話からは、一度、一郎たちの視点を離れて、ドピィの状況について語る予定です。よろしくお願いします。