【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
情報は逐次に入っている。
南王軍は、賊徒である
領都から見て右側の西方向のユンデの街から二千、そして、左側の北方向のガヤの港町から向かうのが四千だ。
両方とも騎兵が混ざっている。
ドピィたち賊徒が領都の城壁を利用してたてこもることを見越して、ユンデ側からの部隊は攻城兵器も運んでいるようである。だから、その動きは遅い。
また、「南王軍」というのは、南方国王直轄軍のことである。
王国は、王都にいる近衛軍や騎士団などの王軍のほかに、地方領主貴族のいる西域と南域に対して地方王軍を直轄領に展開させており、そのうちの南域側を「南王軍」と呼ぶのだ。
それが、今回のドピィたちによるクロイツ侯爵領の占領に対して、ついに出動してきたというわけだ。
そして、領都を密かに出撃したドピィたちの出撃隊は、主力と思われるガヤから向かう南王軍の方向に出動してきてた。
いまは、領都に向かう街道上の狭い峡谷の上に潜伏しているところである。
以前から目をつけて準備していた場所であり、ここを通過するときには、どうしても狭い隘路を一列に近い態勢で通過しなければならない。
そういう場所を上から見る山側に、いまドピィたちは騎馬とともに隠れているということだ。
「いつでも出動できますよ、頭領」
ユーレックである。
女魔道士のスージーを手放してから、そばに置いている少年である。利発で腕がたち、目端が利いていて従者として重宝していた。あまり人を寄せつけたくないドピィとしては、どうしても、こういう者をあいだに置いて、部下たちに指図をしたいので、そういうことにはうってつけだ。
だから、便利にいつも横にいさせている。
ただし、こいつはタリオの間者だ。
重税を支払えなかったために、母親と姉を奴隷として連れて行かれ、その母と姉が奴隷商で折檻死をして、これを苦にした父親が自殺をしたという経歴をドピィに教えたが、実は母も姉も生きている。
母も姉も、タリオの諜者に買われていて、向こうで人質になっているのだ。ただ、父親が自殺をしたのは本当である。
とにかく、ユーレックがタリオの間者として役割を果たしている限り、母親と姉にはいい暮らしをさせるという約束になっているらしく、それで半年前に道化師団に潜り込んできていた。
能力は高いから、平の賊徒からすぐに幹部級になり、今回、スージーを開放したことで、ドピィの世話を専管する従者役が必要となって、このクロイツ領侵攻からそばに置くことにした。
間者ではあるが、能力は高い。うまく使えばいいと思ったのだ。
童顔で可愛らしい顔をしており、明るい性格を表に出していることで、誰にでも好かれていて、この賊徒団の重鎮役の者たちからも可愛がられている。
ドピィにも、ちょっとぞんざいな口の利き方をするが、これも許しているので、本人はかなりドピィに喰い込んでいると思っているだろう。
まあ、どうでもいいことだが……。
そして、さらに、どうでもいいことは、ユーレックの母と姉の本当の状況だ。
ユーレックは、きちんとしたところに預けられていて、人間らしい生活を送っていると思い込んでいるが、タリオの諜者は詰めの甘いところがあったらしく、ふたりとも媚薬で狂わされて、男であれば、すぐに身体を差し出す雌犬に落ちている。すでに気が触れているが、娼婦として扱う分には問題ない。
そんな存在になっている。
ふたりとも、一般の農民にしては美貌だったのが不幸だったのだろう。
ちょっと調べさせたところによれば、父親が不当な税を要求されたのも、最初から母と姉が狙いだったきらいがある。
そもそも、奴隷商に売られ、次いでタリオが手を出す前に、最初の高位役人のところで散々に犯されており、奴隷商に渡されるときには、すでに頭がおかしくなっていたみたいだ。
まあ、特に、ユーレックに、そのことを教える気もないが……。
「戦闘部隊はそのまま待機──。工作隊は合図をしたら岩を落とせ。そして、出撃だ。すべて、俺の下知に従えと伝えておけ」
ドピィがそう伝えると、すぐにユーレックが走って行く。
それを確認しつつ、ドピィは、再び眼下の谷地を見下ろす。
すでに、多くの王軍が通過をしている。そろそろ野戦隊が通り終わり、最後の輜重隊と輸卒、あるいは、軍とよく行動を共にする娼婦や商売人などを乗せた馬車が見えてきてもいい頃だ。
ドピィはそれを待っていた。
だが、眼下の谷地は道幅が狭く、なかなか速度が出せず、最後列がここに差し掛かるのはもう少しかかるのかもしれない。
「伝達終わりました。工作隊はここから布を振れば、瞬時に対応できます。騎馬も同じです」
ユーレックがにこやかな顔で戻ってきて言った。
この表情と屈託のなさそうな微笑み──。
その柔和な外見と親しげな人柄に接すれば、誰もこいつが間者などとは思わないだろう。
まあ、所詮は賊徒だ。
間者くらいじゃないと、本当に優秀な人材は集まらない。
しつこく間者を送り込んで送るタリオには感謝だ。
ドピィは、ありがたく使わせてもらっている。
「わかった」
ドピィは頷いた。
それにしても……と、ドピィは思った。
領都に近づく主要街道でありながら、急に狭くなり、両側に峡谷がある難所──。
ドピィが向こうの指揮官であれば、間違いなく主力がここを通過する前に、峡谷の上に偵察を向かわせる。
しかし、南王軍の斥候は、眼下の谷地は通り過ぎていったが、潜伏していた峡谷の上のドピィたちのことは調べようともしなかった。
もっとも、もし偵察隊が現れたとしても、第二、第三の策も準備はしてあった。ただ、ドピィとしては、もっとも呆気ない結果になったということだ。
もしかして、賊徒というのは、王軍の到着を大人しく待つものであり、迎え撃つ策などというのは用いないと思い込んでいるのだろうか?
首を傾げたくなる。
「ところで、頭領、ありがとうございます。みんな、言ってます。やっぱり、頭領は機会を待っていたんだと。決して、民をお見捨てにはならないと」
すると、ユーレックが言った。
ドピィは怪訝に思った。
「なんのことだ?」
「出動のことです。ユンデとガヤが落ちたとき、頭領はまったく動こうとなさいませんでした。もしかしたら、俺たちの大望をお忘れになったのかとまで噂になっていましたが、俺はそんなことはないと信じていましたよ。だから、お礼を言います。ありがとうございます」
ユーレックが頭をさげた。
ドピィはますます混乱した。
まったく意味がわからない。
そして、そもそも「大望」とはなんだと問いかけようとして、すぐに、この賊徒の者をまとめるためにでっち上げた「
一応は、ドピィは、この叛乱を、国王や貴族たちを倒して、民衆だけの国を作るのだということを大義名分にしていた。
そんなことは欠片も思ってないし、賊徒が国を作るなど、まず成功するとも考えてはないが、そういえば、ずっとそう唱えてきたので、いまや一万にもなった賊徒やその家族たちは、それを信じ切っているのだということを思い起こした。
「ユンデやガヤのことで、俺が動かなかったから、疑心暗鬼になっていたのか?」
ユンデとガヤというのは、このクロイツ侯爵領内にある街であり、いずれも、ドピィが領都を占領したあとで民衆の蜂起があり、それぞれの城郭から役人や分限者を殺すか、追い出すかして、道化師団が使っている深紅の無地の旗を掲げていた。
それが南王軍が入ってきて、ふたつの街とも賊徒から開放されていたのだ。
まあ、新しく支配側になった民衆代表とやらも、大概の人物たちであり、統治らしい統治もできず、混乱していたところに王軍が現れ、それで、ほぼ無血開城になったみたいだ。
いまは、報復の民衆代表たちやその家族の処刑が祭りのように続いているらしい。
確かに、ドピィはそれを知らされても、まったく動かなかった。
どうやら、これが賊徒たちの疑心を呼んでいたということのようだ。
あまり賊徒連中の心情のことまでは気にもしていなかったが、まあ事実なのだろう。
「しかし、やっぱり間違いでした。頭領が女に溺れて、大望を忘れることなどないと、俺は信じていましたから──」
ユーレックが眼をきらきらさせて言った。
これには、ドピィは苦笑するしかなかった。
南王軍がクロイツ領内に入り込んでも動かなかったのは、間違いなく、ドピィがシャロンに溺れていたからだ。
そもそも、それこそが、ドピィがこの叛乱を起こした目的であり、大望などというのは、人を集めるための手段であり、餌であり、嘘っぱちだ。
だいたい、ユンデにしても、ガヤにしても、ドピィが領都を占領した後で、勝手に蜂起して役人や分限者を叩きだして、自分たちで自治を始めただけであり、ドピィ側からなにかの示唆をした記憶はない。
まあ、ユンデについては、蜂起のときの撒き餌として、領軍を引きつけるのに利用したが、最終的にあそこを叛乱のまま置こうとしたわけではない。
ドピィの目的は、あくまでもシャロンだけだ。
シャロンがいたから、領都を襲撃して占領した。
もしも、シャロンが王都にいたら、ドピィはシャロンを取り戻すために、王都を占領しただろう。
そのための手段を死に物狂いで整えたはずだ。何十年かかろうとも……。
だから、ユンデであろうと、ガヤであろうと知ったことではない。
今回出動しているのも、あの連中が領都に向かってきたからだ。
シャロンを手に入れれば、それでどうなってもいいとは思っていたが、こうやって手に入れてみると、まだまだシャロンとの時間が欲しい。
それにしても、出て行くときのシャロンの姿は、まさに見物だった。
絶対に収まることのない魔道の痒み棒を尻の穴に入れてやり、それを貞操帯で封印してきたから、ドピィが出て行く一日目にして、すでに七転八倒していた。
まだまだ、可愛さの残るあの顔で、卑猥な言葉を大声で叫び、自分の尻穴へのディルドの振動を求めるのは圧巻の光景でもあった。
財のために幼い頃からの愛を捨て、侯爵夫人になるのを選んだような女であり、ルーベンと名乗っていたドピィを容赦なく、鉱山囚人に落としたくらいの性根なので、演技なのだとはわかっているが、あの女がルーベンと昔のように親しげに話しかけてくると、どうしても情を感じてしまう。
いまだって、さっさとこれを片付けて早くあの女の調教の続きをしたくてたまらない。
口惜しいが、確かにドピィは、シャロンに溺れている。
しかし、ドピィの目算では、どんなに早くても十日はかかるだろう。
それを三日で帰ると言ってきたから、三日が過ぎてからは、ドピィの帰りを一日千秋の思いで待つようになるに違いない。
だから、おそらく、当面の南王軍を撤退させて、領都に戻った頃には、間違いなく、シャロンは堕ちている。
今度こそ、洗脳してドピィのものにしてやる。
これが、ドピィ自身ではなく、単なる快楽のためであろうが、ドピィでなければ生きていけないようにしつけ、残っている人生をドピィだけのことを考え続けるようにさせてやるのだ。
ドピィは、そんなに長い時間が過ぎないうちに、賊徒として無残に処刑されると思うが、救出されたシャロンには、調教されて熱く疼く肉体が残されるということだ。
身体が疼くたびに、ドピィのことを思い出すといい。
もしもそうなってくれれば、これこそがドピィの復讐だ。
しかも、あのシャロンの実の父親のベルフ伯爵は、ドピィが手紙で脅すと、王印もなく、貴族の婚姻としては効果のない喰わせものではあるものの、伯爵印を押した結婚許可証を送ってきてもいた。
ドピィは大いに満足していた。
「よいお顔になられています。やっぱり、頭領だ」
なにを勘違いしたのか知らないが、シャロンのことを考えていたドピィを評して、ユーレックがそんなことを言った。
睨みつけると、興奮したようにユーレックは顔を赤らめていた。
ドピィは肩をすくめた。
そして、眼下を見下ろすと、やっと南王軍の主力の野戦軍が隘路を通過し終わったところだった。
遠くに視線をやると、ずっと遅れて輜重隊がこっちに向かってきていた。
まだ、峡谷の入口にも入っていない。
足が遅いのでかなりの間隔が開いてしまったのだろう。
輜重隊の警護をないがしろにするとは、馬鹿な指揮官だと思った。
「よし、工作隊は岩を落とせ──。そして、騎兵隊は出動──。目標はあの輜重隊。兵糧を燃やし尽くせ。男も女も殺せ──。破壊し尽くすんだ──」
ドピィは合図をさせた。
峡谷の隘路に、南王軍の戦闘隊と後方の輜重隊を割くように大岩が次々に落下していく。
「行くぞ──」
ドピィは馬に乗って駆け始めた。
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切りも悪いですが、今日は用事があるので、これで投稿させてもらいます。続きは明日……。