【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「あがああっ、ぐずりいいっ、ぐずりをちょうだいいい──。おねがいじまずうう」
脂汗と涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに汚したスカンダが足の下で暴れている、
逃げ足と瞬間移動の能力に特化した妖魔であり、人間族の幼女のような外観や知能の高さを感じさせない話し方からは想像し難いが、実はかなりの高位能力を持つ妖魔の範疇に入る。
しかし、こうなったら形無しである。
人間族から取りあげた「魔族殺し」という魔毒で一時的に能力を消失させ、さらに亜空間牢獄に監禁して、わずか一日で頭が破壊されるほどの中毒症状が出るという「
「黒魔の毒」というのも、「魔族殺し」と同様に、もともと人間族の開発した毒であり、服用すれば身体が蕩けるような気持ちよさが走る反面、怖ろしいほどの中毒症状が発生して、もうその毒なしには生きていられなくなるという薬らしい。
それを無理矢理に口にねじ込んで、一日でスカンダは、完全な中毒症状に陥った。
だが、それでも、サキとの契約を破れないと泣き喚き続けたので、「契約」よりも強固な「隷属」を結ばせ、完全に奴隷状態にしてから、さらに二日をかけて、サキとの魔道契約を破棄状態にすることに成功した。
実際には、魔道契約など破棄できないのだが、それに相反する新たな契約を強引に結ばせ、心の中で葛藤させるのである。相反する契約行為の葛藤は、異常なほどの苦痛を伴うものだが、それを「黒魔の毒」の快感と苦痛で訳をわからなくさせた。
「黒魔の毒」の連続服用五日目となれば、サキが見込んだスカンダといえども、もはや、ただの中毒症状に苦しむクズ妖魔になりさがる。
薬が欲しいとのたうち回る足の下の醜い童女妖魔の姿を見て思った。
「ははは、人間族というのは、実に面白いものを作るなあ。大勢の人間族を大量に操る宝具とか、この黒魔の毒とかな。しかも、こんなものがあるのに、禁忌扱いにして使うのを禁止するとはねえ。だったら、なんで作ったんだろう。本当に不思議な種族だ」
スカンダの背を踏む足に力を入れながら笑った。
「うえええん、うええええん、ぐるじいいい。ぐずりいいいっ」
スカンダが泣き喚く。
そのスカンダの前に、亜空間から取り出した黒魔毒の袋を開き、ほんのちょっとだけ粉を床にこぼす。
「ひゃああああっ」
スカンダが足の下で奇声をあげて大暴れする。
だが、「魔族殺し」で魔道を封じているスカンダなど、本当に力は人間族の童女並であり、まるで足の下で虫が暴れているようにしか感じない。
「ぐずりいっ、ぐずりいいっ」
スカンダは必死に手を伸ばすが、ぎりぎりで届かない。
そういう位置に粉をばら撒いたのだ。
「苦しいだろう、スカンダ? この苦しみをよく覚えろ。そして、サキ様のために動くことを考えるのだ。サキ様のご命令に従うじゃなく、どうしたら、サキ様のお心に叶うのかを考えるのだよ」
「ぎいてるうう。いうことぎいてたああっ。ご命令にしたがってだああ」
スカンダが泣き喚く。
苛立って、蹴り飛ばす。
「ふぎゃん」
亜空間牢の壁にスカンダが背中から叩きつけられた。
だが、懸命に床にこぼれている薬に向かって駆け寄る。それをまた踏みつけて、粉に指が届くのを阻止する。
「外見通りの低能だな──。サキ様は弱っているのだ。本来のサキ様じゃない。人間族の男に媚びを売るようなサキ様は、堕落しているのだ。だから、それをただしてあげなければならんのだよ」
「わがんだいいいっ。そんなのスカンダにはわがらないよお。ぐずりいい」
「だから、俺の言葉に従えばいい……。もう一度、言え。お前はなにをするのだ?」
スカンダを踏みつけたまま言った。
「お、王太女さまを置き去りにするうう。嘘をついで、逃げられないようにするうう」
スカンダは泣きながら叫んだ。
「そうだ。低能の女妖魔に複雑なことは求めん。ただ、サキ様から人間族の匂いを剥ぐことに協力しろ。このところのサキ様から漂う人間族の匂い……。本当に臭くてたまらん……。まあいい。薬だ。うまくできなければ、もう薬はやらん。禁断症状とやらで、苦しんで死ぬしかない」
スカンダの身体から足をどかして、残っている黒魔の毒の粉を床に全部こぼす。
もっとも、この黒魔の毒の中毒になれば、数箇月もすれば、内蔵がぼろぼろになって死ぬそうだ。
だから、死毒とも呼ぶらしい。
まあ、どうでもいい。
人間族の場合だから、丈夫な魔族であれば、もう少し生きるかもしれないし……。
「ぐずりいいっ」
喜びの声をあげて、床にこぼれた薬を舌で必死に舐めるスカンダには、知性のかけらもない。
その滑稽さに笑ってしまう。
「ほら、追加だぞ。お前はサキ様と契約を結んで、王太女たちをあの離宮に禁足すれば、人間族の男を性交させてもらうご褒美をもらうはずだったらしいな。まったく馬鹿げている。人間族と交わるなど、魔族にとっては大いなる恥辱だ。屈辱だ──。それを褒美に使うなど、サキ様もサキ様だし、お前もお前だ──。陵辱して欲しいなら、魔族の俺が犯してやる」
新しい黒魔毒の粉を露出させた自分の男根にふりかける。床を舐めていたスカンダの目の色が変わった。
契約の報酬に性技に長けた人間族との性愛を選ぶくらいであり、スカンダのような“韋駄天族”は、本能的に好色だ。
だから、韋駄天族の飼育には、性交を覚えさせて調教するのが効果的というのは、魔族界の一部ではよく知られている。
だから、このスカンダを捕らえたとき、人間族の黒魔毒を使って中毒にすることとともに、性にのめり込むことも同時にやった。
五日目だが、すでにスカンダは、この黒魔毒を併用した性交に夢中になっている。
「んんんんんっ」
スカンダがすぐに起きあがり、黒魔毒の付着した男根を一心不乱に舐め出す。
たちまちに、この童女妖魔の口の中で男根が勃起する。
「尻を捲れ、低能妖魔──。犯してやる」
「あいいっ、あ、ありがどうございますうう」
スカンダがこっちにお尻を向けて服の裾を捲る。
人間族の童女ほどの小さな尻が飛び出す。
だが、女性器だけは大人の妖魔と変わらない。しかも、黒魔の毒で恍惚となっていて、その快感で欲情状態だ。
そして、覚えたばかりの性交の期待で女性器からは愛液が滴り、男を求めて真っ赤に充血している。
「人間族よりも、気持ちいいはずだぞ──。サキ様も愚かだ。これよりも、人間族の粗末な珍棒がお好みとはなあ」
サキのことを思い出しながら、スカンダを後ろから犯す。
興奮する──。
いつか……。
いや、近いうちに、サキをこうやって……。
そのためには、サキから人間族の味方を排除すること……。
別に人間族を侮ってはいない。
あいつらは、奸智に長ける。それだけは脅威だ。
だから、注意深く、罠にかけて、サキから離さねば……。
そして、昔のサキに……。
あの強かった頃のサキに……。
これは、サキを裏切っているのではない──。
間違いをただしているのだ。
「いぐうう──。スカンダ、いぐうううっ」
スカンダの小さな身体がまたもや弓なりになる。同時にすごい圧迫感が怒張を襲う。
「うおっ」
まるで吸い取られるように、スカンダの膣の中に精を放ってしまった。
*
「妊婦様の身体にいいハーブ茶です。是非、お試しください」
ラレンの横に座らせたスタンが差し出したのは、可愛らしいガラス容器に入ったハーブ茶の粉だった。
デセオ公国の工芸技術であるガラス細工は、数多く出回らないので、まだまだハロンドール国内では珍しいし高価だ。
スタンの心使いに、イザベラは頬を綻ばせてしまった。
ノールの離宮である。
イザベラたちは、マア商会の重鎮であるラレンとの話を終え、同行してきたスタンという少年からの挨拶を受けていた。
この少年がスクルズの愛弟子であるミウに初恋を抱き、告白しようと思っていた矢先に、ロウたちとの旅への同行が決まってしまって、今度こそ告白をしようと考えているというのは、この離宮に最初に、目の前のスタン少年がやってきたとき、スタン自身から告げられた。
それ以来、イザベラは、このスタンの初恋を成就させてあげたい気持ちでいっぱいになった。
なんと可愛らしくて、微笑ましいのだろう。
スタンもミウも十一歳だ。イザベラが十一歳のときには、あのキシダインとの王位継承者争いが顕著になる頃であり、生き残ることだけに必死で、恋など別世界の話だったが、誰かに恋をするなど、なんて素晴らしいのだろう。
それに、ふたりはお似合いであると思うし、スタンが有能であることは、ラレンも保証している。
なによりも、マアがスタンの才能を見いだして鍛えているのだ。
聞けば、このガラス細工も、スタン自身が輸入を手配したということであり、マアの許しを受けて、王国内で事業展開するらしい。
この年齢にして、頼もしいことだ。
まさに、ミウに相応しい。
そして、やり手である。
こうやって、第三神殿で一緒に暮らしてアンやノヴァ、さらに、イザベラにまでご機嫌伺いをするのは、どうやら外堀を埋めようとしているつもりのようだ。
王太女に縁を結びたいから、ミウなどに接近するというのはよくあるようだが、逆というのは新しい。
イザベラは、すっかりとこのスタンが気に入ってしまっていた。
「ロウがやっと水晶宮を出立したという情報は受けている。さすれば、ミウも一緒なのだろう。いまは、王都も混乱しているし、ロウたちの状況もわからん。だが、落ち着いたら、いずれ、お前たちの話の場は作ってやろう。このハーブ茶の礼だ」
イザベラは笑って言った。
「ありがとうございます」
スタンが満面の笑みを浮かべて頭をさげる。
しかし、イザベラは、横のアンが小難しそうな表情をしていることに気がついた。そういえば、スタンがやってくると、ずっとこんな顔をしていたかもしれない。
「アン姉様、どうした?」
イザベラは声を掛けた。
すると、アンがスタンに視線を向けた。
「そのことなんだけど……。気を悪くしないでね……。多分、ミウちゃんは、ロウ様のことが大好きなのだと思うわ。スタン君の気持ちもわかるんだけど……」
アンが申し訳なさそうに言った。
イザベラは、それは知らなかったから、ちょっとびっくりした。
しかし、スタンは明るい表情で、顔を破顔させる。
「ああ、そのことなら知っています。好きな子のことですからね。ミウさんを見ていればわかります。ロウ様はとても素敵な人ですからね。だけど、いつかミウさんを振り向かせてみせます。僕だって、まだ半人前ですし、いまの僕をミウさんが好きになってくれるとまで考えていません。だけど、僕がミウさんのことが好きなことは、知って欲しいのです」
スタンはきっぱりと言った。
「そうなの……」
アンはさらに困ったような表情になった。
ラレンとスタンが辞去したあと、イザベラはアンに改めて視線を向けた。
「どうして、アン姉様は、そんなに難しい顔なのだ? あのスタンは、なかなかによい少年だと思うがな。アン姉様は、ミウの相手として反対か?」
「そういう問題じゃないわ、イザベラ。さっきの言葉のとおりよ。多分、ミウちゃんは、ご主人様が好き。憧れとかじゃないわ。女として、ご主人様を愛しているわ。わたしにはわかるの……。ねえ、ノヴァ?」
「はい、わたしもそう思います」
ノヴァも頷く。
どうでもいいが、いまもそうだが、ラレンやスタンがいたときにも、ふたりはずっと手を繋いでいた。
アンの妊娠が判明したときから、このふたりは、お互いが心の伴侶であることをまったく隠さなくなった。
考えてみれば、妊娠して女は変わるというが、もっとも変わったのは、むしろノヴァだと思う。
少し前なら、ほかの侍女やシャーラまで立っている状況において、アンが求めたとあっても、侍女であるノヴァはこういう場所では、決して座りはしなかったろう。
だが、今日は、当たり前のように手を繋いだままふたりでやって来て、当然のように手を繋いだままふたりで座った。
おそらく、ノヴァの中で、アンの妊娠によって、なにかが吹っ切れたのだと思う。
「そうだとしても、ロウはミウには手は出さんぞ。ミウは十一だ。ロウは三十を超えていたと思うぞ。しかも、むしろ、四十に近いのでは?」
イザベラは笑った。
「失礼ですが、姫様。これについては、アン様に同意します。ロウ殿に限って、自分に言い寄る女の年齢を気にするとは思えません。恋多きお方ですから。その度量も包容力もあります」
シャーラだ。
振り返ると、ヴァージニアやほかの侍女ふたりも頷いている。
「そうか?」
イザベラは、首を傾げた。
「まあいいさ。そうだとしても、恋ができるだけ幸せさ……。それよりも、イザベラ、辺境候域の情勢だけどね……。この話の直前に辺境候域から手紙が届いた。あとで目を通しておいておくれ」
アネルザが二通の手紙をイザベラに差し出す。
差出人を見ると、アネルザの弟のレオナルドとシモンだ。イザベラは面識はないが、アネルザの異母弟たちだ。
また、アネルザは、あまり明るい顔ではない。
辺境候というと、いまルードルフ王の蛮行を糾弾しており、遠い辺境候域でルードルフの追放を掲げ叛旗をあげている。
王都から遠いので、それほど切迫した雰囲気は伝わりにくいが、情報によれば、いわゆる辺境候軍を預かる六大領主だけでなく、続々と周辺諸侯が辺境候クレオンの檄に参集しているという。
もともとは、アネルザの出したクレオンへの檄文が切っ掛けらしいが、アネルザは、ルードルフ王の退位要求の声を集めて欲しかったものの、内乱を求めるつもりまではなかったらしく、身内から王家への裏切りが出てしまいそうな現在の情勢に心を痛めている。
「状況に変化が?」
イザベラは、受け取った手紙をとりあえず、ヴァージニアに渡しつつ、アネルザに訊ねた。
「どうやら、わたしの父親は、ロウを叛乱の旗頭に担ぎだしそうな雰囲気らしい。それで、レオにしても、シモンにしても、それに激怒していてね。シモンなど、父の命令でロウに会うらしいが、女たらしの化けの皮を剥いでやると、手紙に書いて寄越した」
アネルザが話をはじめる。
驚いたが、アネルザの説明によれば、辺境候のクレオンは、いま病に倒れているみたいだ。
それで、参集した諸侯軍の指揮を嫡男になるレオナルドが執っているようだが、クレオンはそれをエルフ女王から英雄認定を受けたロウにさせたいという雰囲気だという。
レオナルドからの手紙は、それに激怒している内容とのことであり、シモンからの手紙は、得体の知れない男が辺境候軍の重鎮に加わることへの不満らしい。
いずれも、何度か書簡を交換してからの返書として送られたようだ。
「ロウを反乱軍の旗頭に? だが、辺境候とロウとに、これまでなにかの関係が?」
イザベラは首を傾げた。
「関係など皆無のはずだけどねえ……。わたしの書簡くらいだ。なぜ、叛乱の旗頭にロウなのかは、さっぱりとわからない。サキが暗躍していることはわかっているけど、もしかしたら、それが関係あるかと思うくらいさ」
アネルザも首を横に振る。
「では、ご主人様は、王都ではなく、辺境候領に?」
アンだ。
「さあ……。シモンからの書には、モーリア男爵領に行き、これから、ロウに会うんだと書いてある。いろいろと諫めたいこともあるけど、シモンの予定通りなら、時期的に、すでにシモンは男爵領でロウたちとすでに会っている頃だね」
アネルザが言った。
ここと辺境候域とは距離がある。どうしても情報には遅延が発生する。王宮であれば、魔道による即時通信の設備もあるが、残念ながら、そんなものはここにはない。
アネルザも、魔石を使った高速書簡でやり取りをしており、これでも異常なほどの情報伝達速度なのだ。
そのときだった。
突然に目の前の空間が揺れた。
移動術で現われたのはスカンダだ。
イザベラたちをこの離宮に禁足している童女姿の妖魔である。しかし、いつも姿を消して見張っているのはわかっていたが、姿を現すのは久しぶりな気がする。
しかし、どうでもいいが、目の下に黒い膜がある。
なぜか、息も荒いし、顔もなにかに怯えているように切羽詰まった表情だ。その雰囲気の異常さに、イザベラはまずは面食らった。
「ど、どうしたの、スカンダちゃん?」
いつもは、最初に口を開くことのないアンが一番に呼びかけた。
「み、み、皆さんに、お、お、お別れを、い、言いにきた。スカンダは、サキ様から任務を解かれた。では、さよならです」
そして、消滅した。
もうスカンダの姿はない。
「なんだい、あれ?」
アネルザも唖然としている。
「任務が解かれたって言いましたよね? つまり、ここから離れられるようになったっていうことでしょうか……?」
ヴァージニアがぼそりと言った。
「さあなあ……。おい、スカンダ? 返事をせよ、スカンダ──」
イザベラは宙に呼びかけた。
しかし、返事もないし、スカンダが再出現する気配はない。
そこに、部屋の外からノックがした。
返事をすると、侍女団のひとりのオタビアだ。
この離宮を警護しているライス将軍がやって来たらしく、宰相をしているフォックス卿が離宮まで訪問してきて、イザベラとの面会を求めているということだった。
「宰相が? 今日は、なんて日なんだろう──? この滅多に誰も来ないノールの離宮に、こんなにも訪問者がくるだなんてねえ」
アネルザが驚き半分、戸惑い半分のような口調で声をあげた。