【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
素肌に、短い黒スカートと袖のないベストだけを身につけている三人の令嬢たちが簡易なステージの上で妖艶な踊りをしている。
美しい音楽の調べもあり、それもまた、令嬢たちの演奏だ。
園遊会で狩り集めた貴族夫人や令嬢たちの住まいになっている王宮内の奴隷宮と呼ばれる場所である。
もともとルードルフの性奉仕の奴隷を集めていたのが“後宮”で、アネルザが自分の奴隷を集めていたのが“奴隷宮”らしい。その奴隷宮側ということだ。
いつものような朝のひと時である。
「美しいわあ……。さすがはアドリーヌ様……」
「エミール様もカレン様も、あんなにお色気を……」
「ほら、演奏なさっているカミール様たちも可愛いわ。見て。お股から、あんなにお汁が……」
「わたくしたちも、負けてはいられませんね。もっと鍛錬して、天道様に気に入っていただけるように、いやらしくならなければ……」
今は見物側の令嬢たちも、ちょっと頭の線が切れたような感想を交わしながら、目の前の演舞に見入っている。
そんな視線を受け、三人の令嬢たちは、淫靡に身体をくねらせ、音楽に合わせて踊り続けている。
踊っている娘たちも、演奏の娘たちも、さらに見物の娘たちまで顔は欲情して真っ赤だし、色っぽい汗もかいている。
この広間全体が女の香りでむんむんしていた。
踊る令嬢たちは、生足を惜しげもなく剥き出しにしており、ベストの胸を覆う部分は意図的に切り込みをしていて、乳房の裾の左右の両端が布地の外に出るようになっている。
かなりの際どい格好だ。
このような格好は、人間族の習風であれば、娼婦でもしない破廉恥な姿のはずだ。
ましてや、良家の貴族令嬢がするような格好ではない。
しかし、こいつらは、立派な人間族の高位貴族の令嬢たちなのだ。
まあ、すでに“元”がつくのかもしれないが……。
だが、別段、これはサキが強要しているわけでもなければ、令嬢たちの調教担任に当たっている眷属たちがさせていることでもない。
自分たちで考え、服装も自分たちで作り、演舞の演出も自分たちだ。
サキは、令嬢たちの励みになるので、一度謁見してくれと頼まれ、ほかの人間族の性奴隷候補や眷属の調教係たちと混ざって、こうやって彼女たちの妖艶な舞踊を見物しているだけである。
「もっと脚をあげて──。腰を振って──。きっと天道様はあなた方のいやらしい姿に欲情なさるわ」
「でも、完全に見えてはだめよ。ちらっとよ。ぎりぎりのちらりを追求しなさい。見えそうで見えないところに、きっと天道様はおちんぽ様を大きくなさるわ──」
「もっと艶めかしく──。演奏班も魅せるのよ。あなた方は決して裏方ではないのよ。天道様のことを考えて演奏しなさい。そうすれば、愛の液が内腿を濡らすはずよ。演奏しながら足のあいだの床にお汁溜まりを作るくらい欲情なさい。そうすれば、天道様のお目にとまれるわよ」
左右から指導の声をあげているのは、青組や黄色組に区分されているやや年配の貴族夫人の者たちだ。
これもまた、強要しているわけじゃない。
彼女たちは、自らの意思で、赤組令嬢たちを鍛えあげ、天道様、すなわち、ロウを悦ばせようと令嬢指導に当たっているのである。
いまや、人間族の調教をさせていたはずのサキの眷属の女妖魔たちも、調教についてはすることもなく、普段はただ人間族たちが相互に調教し合っているのを見守るか、あるいは、夜の“自主練”に参加して、自分たちもまた苦痛の中の快楽を愉しもうと、人間族の女たちの責めを受けたりするくらいだ。
こんなおかしなことになったのも、いつの間にか、この奴隷宮を完全に染め尽くしてしまった「天道教」をやらが原因である。
破廉恥なことをして、天道様であるロウを悦ばせ、その快楽を追求するという教義とか言っていたが、やめさせようにも、それを考えようとすると、必ず頭に霞みがかかったようになり、なにも思考ができなくなる。
いまでは、サキ自身まで、フラントワーズの天道教に染まってきた気がする。
だが、それをなんとかしようなどとも、もう思わない。
なにしろ、天道様、すなわち、ロウのことを想うだけで気持ちがいいのだ。
「いかがですか、サキ様? 娘たちの出し物は?」
サキの隣に椅子を持ってきて令嬢たちの余興を見ていたフラントワーズがサキに声をかけてきた。
このフラントワーズこそが、この得体の知れない信仰もどきを作りげた張本人である。もっといえば、ここにはいないスクルズもだ。
「すごいな。それに尽きる。いやらしいし、それでいて下品でもない。ロウは好色だが、下品なのは好かんからな」
「まあ、それはよいことをお聞きしました。聖典に付け加えるものが増えましたわ。天道様は淫靡は好むが、下品は好まぬと……。これは戒律の中にも含めねばなりません」
フラントワーズが微笑んだ。
その手には、いつも手放さない聖典が握られている。
スクルズが知らずに魅了術と言魂をかけてしまった文書綴りであり、この聖典が存在し、フラントワーズがそれを朗読すると、頭に霞みがかかり、おかしな感じになるのだ。
すなわち、間違いなくサキも影響を受けている。
わかってはいるのだが、サキはどうしても、それを取りあげる気持ちにはなれない。
もしかしたら、ロウも気に入るかもしれないし……。
なぜか、そんな風に思ってしまう。
いずれにしても、あの好色巫女のスクルズの馬鹿げた置き土産を使い、フラントワーズが教祖のようになって、この奴隷宮に完全に拡まったのが、ロウを奉仕するのを悦びとするのだという「天道教」だ。
最近では、フラントワーズが令嬢の娘たちに破廉恥映像を映録球に撮影させ、それに聖典にこもった言霊を載せて、王都中に拡散させたりしているみたいだから、もしかして、この「天道教」とやらは、ゆっくりと王都にも拡がっているのかもしれない。
ただ、サキもこのところ、ずっと王宮に閉じこもったままなので、王都がどういう状況なのか詳しく承知はしてない。
「なにか……すごいな、サキ様」
口をぽかんと開けたまま、人間族の破廉恥舞踊を眺めていたラミダナが呟くように言った。ラミダナは妖魔側の調教係の取りまとめをさせている。
今日は、令嬢たちが夜の「自主練」で作りあげたロウのための演舞を披露するというので、サキ以下の調教係をしている妖魔の眷属たち十数名も集まっていた。
ラミダナならずとも、ほかの妖魔たちもびっくりだ。
なにしろ、人間族とは異なり、魔族には芸術だとか音楽だとかいう文化がほぼない。
だから、美しい音色の音楽と、幻想的とさえ感じさせる踊り──。
それでいて、淫靡で破廉恥でもあり、局部や乳首などが見えそうで見えないように計算された美しい身体の動き――。
全てに、圧倒されている感じだ。
それはサキも同じである。
ほかの性奴隷たちもほぼ集合だ。
いつもは、集団で調教をさせている広間である。
ただし、黄色組と呼ばれる夫人たちの集団の半数は、この奴隷宮の家事全般も担っているので、その者たちはここにはいない。
また、黄色組には、ほぼ停止状態の王宮行政のための事務作業も最近はさせている。
サキにはよくわからないのだが、大臣や高級官吏などはしばらくいなくても困らないらしいが、書類だけは動かさないと、王都全体の機能が停止して大変なことになるらしい。
サキが王宮内の奴隷宮に閉じこもって、そろそろ一箇月くらいになるかもしれないが、人間族の王都の機能を破壊して、人が暮らせないほどにすれば、ロウも怒るかもしれないので、フラントワーズの忠告に従い、黄色組の連中に官吏業務の代替えをさせている。
はっきり言って、サキを含め、この王宮を占拠している妖魔には、人間族の業務の仕組みなどわからないので、お任せの状態だ。
「確かにすごいな。美しくもあり、妖艶でもある。破廉恥だし、
サキは大きく頷いた。
これを見れば、ロウは絶対に喜ぶ。
サキは確信した。
ロウが喜んだら、サキのことを褒めてくれるに違いない。
いまから、楽しみだ。
そして、演じていた令嬢たちの踊りと音楽が終わった。
真っ先に眷属たちが拍手をし、それに遅れて人間族たちが次々に歓声をあげて手を叩く。
サキも拍手した。
「アドリーヌ様、エミール様──。素晴らしかったわ。ほかの方々も。もちろん、音楽演奏も最高でした。特に、カミール様のハープがよかったわ。大きく脚が開いていて、そこから脚の内側を伝って、床まで見事に愛液の線が繋がっていたわ。本当に淫靡よ。きっと天道様もお喜びになるわ」
演者たちに向かって駆けつけたのは、元公爵令嬢のエリザベスだ。サキを怒らせた当初の生意気さの影もなく、こういう芸事では一番の熟練だということで、今回の演舞の演出をしたらしい。
いまもお互いに、演出の意見交換などをしている。
よくわからないが、いつの間にか、すっかりと打ち解けて仲良しになっている。
「さあ、これは皆さんの見本です。ほかの者も、いまのような工夫をして、天道様に気に入っていただける性奴隷をめざしましょう」
すると、黄色の首輪をしている人間族の夫人のひとりがぱんぱんと手を叩く。
「そうですね。では、今日の調教に入りましょう。いつもの三班に分かれなさい。妖魔様たち調教係の皆様は、至らぬところがあれば、わたしたち指導側を含めて、容赦のない罰と罵倒をよろしくお願いします」
「さあさあ、天道様のお戻りは、きっと近いと思います。それまで、淫靡さを磨くだけ磨きましょう。一班は天道様のおちんぽを見立てた木の張形を準備してます。口奉仕の鍛錬をします。二班は二組に分かれて胸いきの鍛錬です。媚薬を使っても構いません。三班は疑似性交です。二人組を作って責め合うのです。先に達した側は、懲罰が待っています。では、励みなさい──。人間の指導係は、持ち場についてください」
ほかの黄色組の奴隷も声をあげた。
今日は、黄色組からの六人ほどが「指導係」のようだ。
調教の指示をしたのは眷属側ではなく、やはり、黄色組の夫人たちである。
最近はいつもこうだ。
日々の調教は眷属側ではなく、人間側がやり方を決めて勝手にする。本来の調教係の眷属は、ほぼ見守るだけだ。
それどころか、夜の自主練とやらは、女眷属も一緒に調教を受けたりしている。
「ところで、サキ様……。天道様のことですが……。ううっ」
立ちあがりかけたサキに、フラントワーズが話しかけようとした。だが、急に両手を股間にあてて膝を崩してしまった。
いまは、いわば天道教の指導部にあたる数名の青組も、そして、夫人組の大部分であり、官吏業務、召使い業務、さらに赤組の調教に任じている黄色組も、普通に服を着ることは許している。
だが、いまなお、股間と尻穴を無秩序に苛む張形付きの貞操帯の装着義務はそのままだ。
当然に、排便も排尿も、彼女たちは決められた時刻にしかできない。あくまでも、こいつらは奴隷であり、その自覚を忘れないためだ。
いまも突然に前側の張形が振動したのだろう。
よく見れば、指導係として散った黄色組の夫人たちも、時折、腰を折ったり、身体を突っ張らせたりしている。それぞれに貞操帯の責め苦を受けているに違いない。
「どうした、フラントワーズ?」
サキはにやにやしながら言った。
すると、フラントワーズががくりと脱力する。振動がとまったのだろう。
だが、次の振動がいつ襲うのかなど、サキにもわからない。そうやって、性奴隷根性を身につけていくのだ。
性奴隷候補は、別に赤組だけではない。黄色組も、青組も、ロウの気が向けば犯されてもらう。
「そのう……。天道様のお帰りですが……。どのくらいになるのかと……。も、もちろん、わたくしたち奴隷が知るべきではないと仰せなら、このようなことを問うたことに罰をお与えください。でも、教えて構わないのであれば、ある程度の時期が知れれば、皆の調教の励みになりますし」
フラントワーズが肩で息をした感じで言った。
実は貞操帯の張形は、不規則ではあるが、絶対に寸止めになるように魔道で貞操帯に細工をしてある。
だから、一回一回がかなり苦しいらしい。
いまも、一度だけなのに、フラントワーズはかなり追い詰められた感じだ。
それはともかく、ロウの帰還か……。
そういえば、ロウたちの出立からかなりになるが、まだ音沙汰はないのだろうか?
確か、ロウは褐色エルフの依頼人のクエストで、奴隷として競売になるエルフ娘の落札に行ったはずだったが、時期的には、すでに戻ってきてもいいはずだ。
すべてを任せているラポルタには、少しでも情報があったり、なにかの異変の兆候でもあれば、直ちに教えよと命令しているから、それがないということは、状況に変化はないのだろうが……。
しかし、そもそも、どうなっている?
考えてみれば、ナタル森林から戻るロウの身柄を真っ先に把握しようと、国境に行かせたジャスランとスクルズからの定期報告も受けてない。
まあ、これもまた、ラポルタに任せていたのだが、ラポルタもラポルタで、あいつらが無事に国境に到着したくらい、報告をサキにしていいのに……。
「さて、わしもうっかりしていたが、隠すつもりはない。情報があれば教える。だが、
サキは笑って言った。
だが、そう口に出して、ちょっとはっとした。
その工作のために、辺境候領に行かせたチャルタとピカロからも、最後の連絡から時間が経っている。
そもそも、あいつら、ちゃんと辺境候軍を把握したのか?
なんだか、心配になってきた。
それについても、ラポルタに任せていた。
問題があれば、サキに言ってくるはずだが……。
ラポルタは、魔族とは思えないくらいに、人間族並みに奸智に長け、しかも、何者にも見事に変身できる特殊能力があり、便利なので、面倒な人間族の相手はラポルタにお任せだ。
最近では、いなくなったあのテレーズに変身したり、時にはルードルフ、さらに、サキへの変身も許して暗躍させているが、そういえば、ずっとなにも言ってきていない。
ちょっと確認してみるか。
「そうですか……。ところで、サキ様は“英雄様”のことはお耳に?」
すると、フラントワーズが言った。
「英雄様?」
「ええ、黄色組のひとりが出入りの業者から耳にしたらしいのですが……。おおっ、また──」
フラントワーズが話をしかけて、今度はお尻を押さえて、ぐんと身体を伸びあがらせる。
「おっ、おお……」
アナルで張形が暴れているのだろう。
しばらく、フラントワーズは真っ赤な顔で震えていたが、やがて再び脱力した。
サキは大笑いした。
「忙しいことだな」
「うう……はあ、はあ、はあ……。と、とにかく、その出入り業者の話では、王都の民衆は、エルフ女王の認定した人間族の英雄のことで話が持ちきりだとか……。ところが、その業者と話をした者によれば、その英雄様とは、天道様のことを言っているのではないかと……」
「エルフ族の女王が人間族を英雄認定? あいつらは大の人間族嫌いだぞ」
サキは言った。
そして、そんな話があれば、どうしてラポルタは、サキに話をしにこないのだろうかと思った。ナタル森林は、ロウたちが赴いている場所だ。
ちょっとでも異変があれば、すぐに報告しろと命じていたのに……。
サキは、やっとラポルタを不可解と思い始めた。
だが、なんだか、またもや、頭に霞がかかったみたいになって、思考力が低下した感じになる。
最近、いつもこうだ。
なにかを考えようとすると、急に頭がぼうっとなる。
「サキ様?」
すると、フラントワーズが心配そうに声をかけてきた。
サキははっとした。
「おお、どうした?」
「いえ……そのう、大丈夫……ですか?」
「なにがだ? いや、あれっ、いまなんの話をしていた?」
サキは訝しんだ。
急に頭が白くなり、記憶が飛んだ感じになったみたいだ。
「……英雄様の話です。本当に大丈夫ですか?」
フラントワーズが言った。
そうだった。
思い出した。
ラポルタから、最近報告がないなということだった。
どうもおかしい。
今度は忘れないようにと、しっかりと頭に刻み直す。
「……それと、ちょっとよろしいでしょうか?」
フラントワーズに改まって声をかけられる。
一方で、いつの間にか、すでに今日の赤組令嬢の調教も開始になっていた。ずっと同じ場所にいたので、サキたちは邪魔な感じだ。
サキは、フラントワーズから、彼女たちが官吏業務をしている別室の部屋に案内された。
そこでは、五人ほどの黄色組の夫人が書類を前に業務していた。
サキとフラントワーズの姿に接して、夫人たちが慌てて姿勢をただそうとするのを、サキは押しとどめた。
「サキ様、これなのですが……」
すると、フラントワーズがサキを大きな机の前に座らせて、十枚ほどの書類を並べ始める。
書類としては新しいもののようだ。
だが、人間族の書類というのは、さすがにサキにはさっぱり意味不明だ。
なんのために、書類をサキに見せる?
「なんだ、これは?」
サキは、不愉快になり、訊ねた。
「こっちは、ノールの離宮に向かって王国水軍が移動し、さらに南域に進むための燃料をはじめとする物資の使用許可書です……。また、これは王都王軍管理を一時的に彼らに流用させるための許可書です……。こっちなどは、南部王軍への武器や物資の王都軍管理の物資の全面使用許可書です。外から流れてきたものであり、すでに許可のある事項に関する単なる手続きの書類です」
「ああっ? それがなんだ──?」
サキはむっとして言った。
小難しいことを言われると、考えるよりも先に怒りが沸く性質なのだ。
どうして、フラントワーズは、サキにわけのわからない書類を説明しようとする?
「サキ様、ノールの離宮には、王太女殿下がおられるのでは? その王太女殿下のいるノールの離宮近くの港に、なぜ王国水軍が向かうのですか? そして、その水軍はそのまま、南域に向かうことになっていますが? また、南域で急に激しく王軍の物資が流用されております。どうしてでしょう? とても不思議な感じなのですが……」
フラントワーズは怪訝そうに言った。
サキは、やっと彼女の懸念を理解してきた。