【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「へーえ、話半分としても、ほとんど、エルフ族の国を乗っ取ったようなものじゃないの」
まずは、ミランダからこれまでの王都情勢の説明を受け、次いで、イライジャはロウとの旅で起こったことをここにいる全員に語った。
すると、ちょっと静かになってから、まずはエルザがぼそりと感想らしきものを口にした。
このエルザは、実はタリオ公国のアーサー大公の大公妃のひとりらしく、いろいろあって、いまはタリオ公国から、ハロンドールに戻ってきたみたいだ。
本人は、アーサーに捨てられ離縁して出戻ったと言っているが、よくよく聞けば、もっと複雑な状況らしい。
ただ、本人的には、二度とタリオ公国に帰るつもりだけはないらしい。
それはともかく、王都情勢の混沌さについては、イライジャもスクルズからも耳にはしていたので、ある程度は認識していたが、改めてロウへの捕縛命令を端とする王都情勢の混乱にはびっくりだ。
だが、それ以上に、ミランダたちは、イライジャの語ったナタル森林における「冒険談」に驚いたようだ。
向こうの話は、こっちにはほとんど伝わっていないらしい。
ガドニエルが二回にわたって世界通信として大陸中に流した「ロウへの英雄宣言」と「ロウの英雄式典」の映像で、ロウ=ボルグという名が世界に拡がったが、突然に現れたエルフ女王の「恋人」というのは、百年近くも表には出なかった謎のエルフ女王の存在とともに、ある意味、神秘的な印象さえ感じさせているみたいだ。
「話半分ってなによ?」
すると、ソファに半分寝そべるような行儀の悪さで、それぞれの話を聞いていたユイナが屋敷妖精の準備した菓子を美味しそうに口にしながら言った。
菓子については、山苺のパイだとシルキーは説明していた。
イライジャもちょっとだけ口にしたが、本当に美味だった。
おいしくなければ遠慮なく文句を言うと宣言をしていたユイナは、なにも言わずに三個目を口にしているから、かなり気に入ったのだろう。
一緒に出された紅茶も最高の味である。
だが、どうでもいいけど、ユイナも寛ぎ過ぎなのではないだろうか。以前に、褐色エルフの里で一緒に暮らしていたときには、ここまで傍若無人ではなかった。おそらく、猫を被っていたということだろうけど、ロウと再会してからは、まるで開き直ったかのように、ユイナも好き勝手に振る舞っている。
しかし、仮にも人間族の王女に対して、その口のきき方はないだろう。
イライジャは嘆息した。
「ユイナ、あなた、もう少しちゃんとした態度を……」
「あっ、いいの、いいの。わたし、そういうことは気にしないから。だけど、いまだに半信半疑というのが本音ね。だけど、本当なら、ガドニエル女王の伴侶としても認められたロウ殿という人が、イザベラ様の伴侶にもなるということになるのよね。これは政略としても大きいわ。そういう縁の結び方は想像もしていなかったけど、ロウ殿という人がうまく振る舞ってくれれば、ハロンドール王国は、これまでになかった力を得るようになるかもしれないわ」
エルザだ。
ロウの女扱いのうまさを国同士の政略に結びつけて考えたことはなかったけど、ロウがハロンドール王国とエルフ女王国の両方の女王を伴侶にするということは、国家同士の結びつきということにもなるのだろう。
ロウという男を中心とした国家同盟か……。
いや、ロウは女を支配するのだから、実質的には、ロウがナタル国とハロンドール国の両方の実権を手に入れることになる。
事実上の女王の上に君臨する「皇帝」だ。
考えてみると、壮大な話だし面白いとも思ってしまった。
「あたしもいるさ。流通については、ロウ殿の望むとおりに、富の流れを作ってみせるよ。ロウ殿次第だけどね。だけど、そういうことなら、かつてないほどにナタル国とハロンドールの流通を強固に結びつけてもみせるよ。ロウ殿の作る新しい国の基盤はしっかりと整えるさ」
すると、マアが優雅に紅茶を口にしながら笑った。
だが、その目の奥にある真剣さのようなものに、イライジャは気がついていた。このマアに限らず、一度、ロウに関わり、その愛を受けた女は、とことんロウに尽くそうとする。
それこそ、持っているものの全身全霊でだ。
大体からして、もともとこの王国全体の混沌も、そこから始まっている。
イザベラとアンのふたりの王女を同時に孕ませたことに国王が激怒し、ロウに捕縛命令を出したことで、それに反逆して王妃たちが結託して、この王都に混乱を起こさせたのだ。
考えてみると、なんという影響力を持つ男なのだろう。
だが、それでいて、決してロウが女たちに、自分にかしずくことを強要しているわけでもない。
ロウ自体は極めて自然体だし、むしろ、女に尽くしている。
基本的には女性には優しい。ただ嗜虐趣味で、かなりの好色なだけだ。
まあ、女の抱き方については、少々……いや、かなりの過激さもある気もするが、嫌がる女はいないし、だいたいにおいて、ロウに抱かれれば、あの神の手管のような性技の巧みさの虜になる。
それ以外は、いや、性でさえも、ロウは女には献身的だ。自分の快感よりも、女をよがらせ、我を忘れるほどに女を苛めるのが大好きだ。ある意味、ロウの嗜虐趣味は、完全なロウの一方的な奉仕である。
そして、一度自分の懐に入った女については、それを全面的に援助し、ときには身体を張ってでも助けようとしてくれる。
それでいて、イライジャなどのように、適度な距離で関係を保ちたいと女側が思えば、そんな風に接してくれる。
実に不思議な男だ。
「おやまあ、呆れたわね。反逆者たちは、アネルザ王妃やスクルズたちだけなのかと思ったけど、こんなところにもいたのね。もしもロウ殿が望めば、おマアまで、この国を滅ぼそうという感じじゃないの」
ベルズが苦笑のような顔を浮かべている。
「滅ぼすよ。ロウ殿が望めばだけどね……。一介の商売人だけど、どこまでのことができるか、見せてあげてもいいよ」
マアがあっさりと言った。
ベルズがちょっと圧倒されたような表情で首をすくめるような仕草をした。
「そんなことはいいよ。だけど、とにかく、ロウはエリカたちを連れて、辺境候領に向かったんだねえ……。ピカロとチャルタというのは、サキの眷属なんだろうけど、正直、できれば、すぐにこっちに帰ってきてもらいたかったよ……。ロウなら、王宮を占拠しているサキの暴走をとめられるだろうし、イザベラの出陣の前に間に合ってくれたのにねえ……。」
そのとき、ミランダがぼそりと言った。
すると、ユイナがいきなり声をあげて笑った。
「あいつが間に合ったらなんなのよ、ドワフ女? あいつを守るためだったかは知らないけど、勝手に騒動を起こして、その始末をつけるために、急いで戻ってきて欲しかったって? 随分とわがままなこと言っているじゃないのよ。自分たちの始末は自分たちでつけなさいよ。なんで、ロウ頼りなのよ」
「なっ」
ユイナの乱暴な物言いに、ミランダが真っ赤になった。
だが口は悪いが、ユイナの言うことももっとものような気がした。
「それに、あいつが辺境候軍に乗り込むことに決めたのは、自分の女を助けるためよ。ピカロとチャルタは、自分の女だって、はっきりとあいつは言っていたわ。だから、危険を冒して行ったのよ。あいつだって忙しいのよ──。だから、あんたらはあんたらで、やることをしなさい」
さらに、ユイナが言った。
マアがぷっと吹き出した。
「これは、ユイナさんの言うとおりだねえ。ミランダも、いつの間にか、ロウ殿への甘え癖がついていたようさ」
そして、マアが言った。
「甘え癖って……。そんなつもりは……」
ミランダの顔がますます赤くなる。
「まあ、あいつのことだから、甘えてくれれば、喜んで応じてくれるだろうけどね。エルフ女王なんて、全身全霊で甘えてるわよ。あそこまで甘えることができるのは、さすがは女王よねえ。他人が自分のために、なにかをするのが当たり前だと思ってるんだから……。本当のマゾよ。それに比べれば、さっき聞いたイザベラというこの国の王太女は甘え下手?」
また、ユイナだ。
冗談めかして言っているが、そういえば、数回会ったことのあるイザベラという王太女の少女は、生真面目そうで甘え下手という感じではあった。それを散々にロウから
いずれにしても、頑固そうでもあったような……。
だから、妊婦なのに出陣するのだという結論になるのだろうか……。
イライジャは、この国の人間でもないから、反対も賛成もする立場にはないが、なんで、軍人でもないあの王太女が南部動乱の鎮圧のために出陣するのか意味はわからない。
説明によれば、王太女は、そのまま地方軍を率いて王都に乗り込む決心のようだが、それなら、ユイナの言い草じゃないが、ロウの帰還を待って、ロウに甘えればいいと思う。
それで十分だ。
だから、ユイナは王太女のことを甘え下手と表現したのだろう。
「なんか、すごいね、ユイナって」
「うん、そうだな」
ミウとマーズが言った。
「はあ、なにが?」
ユイナは怪訝そうな顔になって、四個目の菓子に手を伸ばす。
「確かに美味だが、そんなに食べて大丈夫か、ユイナとやら?」
すると、ベルズがくすりと笑って言った。
「問題ないわ。あいつが戻れば、また死ぬほどに抱いてくれるじゃないのよ。十二分に運動できるわ」
ユイナが菓子を食べながら、あっけらかんと言った。
「そうだね……。とにかく、ユイナの言うことももっともかな……。さっき言われた、ロウの忠告については、しっかりと頭に刻むよ。だけど、それよりも、切実なことさ。王太女のイザベラの出陣のことだけど、そのイザベラを通したクエストをあんたらで、受けてくれないかい、イライジャ? ロウと一緒にエルフ国の危機を救ったあんたらなら信用できる。どうか、受けておくれ」
ミランダが言った。
ロウからの忠告というのは、王宮にいるサキという魔族女性だが、もしかしたら、サキへの情報はなんらかの方法で遮断され、サキ以外の者がサキをいいように操っているのではないかというロウの勘だ。
それを伝えたとき、ミランダたちは、思うことがあるようで、ちょっと深刻そうな顔になった。
だが、そうであっても、いまは王宮に手出しする方法がないとも言った。
また、クエストというのは、先ほどのミランダの説明の中で出た南部叛乱の中で、賊徒主の人質になっている侯爵夫人の救出してくれというやつだろう。
依頼人は、人質の侯爵夫人の実の両親であり、イザベラが直接ギルドに仲介したようだ。
ほかの四人を見る。
イライジャ自身は、受けてもいいと思っている。
それに、王太女のイザベラが身重をおして、出陣したとなれば、ロウはなにをさておき、そっちに駆けつけると思うのだ。
「そうねえ……。どうする、みんな?」
「面倒だけど、わたしは半分、パーティーでは居候の立場のようなものだし、イライジャさんの判断に任せるわ。いいわよ」
意外にもユイナが一番に了承した。
「わかりました」
「問題ありません」
マーズとイットも頷く。
「あっ、もちろん、あたしも大丈夫です」
ミウも言った。
「いや、待て。ミウの魔道はまだ不安定だ。それよりも、わたしが行こう。それでいいだろう、ミランダ?」
すると、ベルズが口を挟んだ。
「はあ? ミウの魔道が不安定? なんのこと? こいつは、あの乳女とポンコツ女王の愛弟子で、魔道馬鹿三世よ。あんたが偉い神官様かどうかは知らないけど、実力もわからない魔道遣い様よりも、ミウの方が安心よ」
ユイナがきっぱりと言った。
「ミウが安心? そなたは魔道が安定して遣えるようになったのか?」
ベルズが意外そうに、ミウに視線を向けた。
そういえば、王都を出発前のミウは、魔道が不安定で、それをスクルズもベルズも心配をしていた。
ロウがミウを抱くことで、完全にミウは安定し、しかも、“
「は、はいっ、ベルズ様。あたしは大丈夫です――。ロウ様に抱いてもらってから、すごく魔道が遣えるようになって」
ミウがきっぱりと自信たっぷりに応じた。
「ミウの魔道は、パーティの大戦力です。スクルド殿に勝るとも劣らない、超一流の魔道の使い手です」
イライジャが受け加える。
「そうなのか?」
ベルズが驚いたように目を見開いた。
「ねえ……。さっきから、ロウという男がそのミウちゃんを抱いたって言ってるけど、なにかの比喩じゃなくて、本当のこと? だとしたら、悪いけどとんでもない鬼畜男じゃないの?」
エルザが言った。
「そうよ。鬼畜男よ、王女様。そして、わたしたちの皇帝様よ」
ユイナがけらけらと笑った。