【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
サキは、ラポルタの頬に拳を叩き込んでやった。
ラポルタは壁に吹っ飛び、サキの左拳にはラポルタの口の中の牙が数本折れる感触が伝わっていた。
壁に頭と胴体を打ち付けられたラポルタはぐったりとなり、次いで口から血を吐く。
血の中には、折れた白い牙が数本混ざっていた。
「言い訳ができるように、殴るのは左拳にしてやったぞ。右拳で殴れば、貴様の顔面の骨は砕け散るだろうしな。さすがに顔の骨を砕かれると、喋ることができなるくなるかもしれないしのう」
サキは壁にもたれたまま尻餅をついているラポルタの前に立ち、仁王立ちになる。
ハロンドールの王宮内にある後宮の一室だ。
園遊会で集めた貴族令嬢や夫人を集めているのが、もともとは王妃の居住宮である奴隷宮だとすれば、後宮は国王ルードルフの住まいだ。
その後宮側である。
いまは、後宮全体が監禁しているルードルフの檻といっていい。
ルードルフは、後宮の一室で最小限度の食事を与えるだけで、部屋に結界をかけて監禁をしている。人間族たちではなく、眷属に命じて監視させているが、その監視役の眷属の管理もラポルタに任せていた。
しかし、これからはそれも考えなければならないだろう。
いずれにしても、ラポルタを訊問するのに選んだのは、ほかの眷属たちの少ない後宮側であり、この部屋は二人きりだ。
サキの眷属たちの中でもリーダー的な地位であるラポルタに対するせめてもの慈悲である。
「い、いきなり……なんでしょうか……? なにか粗相をいたしましたか? でも、できれば、次からは殴るよりも前に、怒鳴るか、なにかをして欲しいですわ」
ラポルタが自分の頬に手を当てながら言った。
真っ赤に腫れていた頬が元々の白い肌を取り戻す。
治療術だろう。
変身術の得意なラポルタは、いまは、あのテレーズの顔と格好をしていた。
「まずはその忌々しい変身を解け、ラポルタ。話はそれからじゃ」
サキはラポルタの頭を掴んで、顔面を壁に叩きつけてやった。
「ふごおっ」
ラポルタがおかしな奇声をあげる。
構わず、二度、三度と壁に力任せに顔を打ち続けた。
五回までは数えたが、それから後は数えなかった。
顔を壁に叩きつけるのをやめたのは、頭を抱えて吊りあげていたラポルタが完全に脱力したからだ。
床に仰向けに放り投げる。
ラポルタの顔からは変身が解け、平素の魔族女としての顔になったと思う。“思う”というのは、鼻も目の周りも潰れ、顔全体が血だらけでよくわからなくなっていたからだ。
少なくとも、テレーズの顔ではなくなったので、変身が解けたのだとは思う。
また、ラポルタは、完全に気絶しているようだ。
サキはラポルタの両手を束ねて持つと、魔道で出した手枷で拘束した。
手枷には鎖が繋がっていて、魔族の魔道を封じる紋様も刻んである。
その鎖の先端を天井に投げて密着させた。
今度はそれを短くしていく。
ラポルタの両手が頭上に伸び、やがて足先が頭ひとつ分ほど床から浮きあがる。
ちょうど、そのとき、ラポルタが呻き声とともに覚醒したのがわかった。
「つ、強いサキ様は……ひ、久しぶりです……。す、素敵ですわ」
ラポルタが荒い息をしながら、血まみれの顔をあげた。
サキは拳をラポルタの腹に叩き込む。
「えごおおっ」
ラポルタが胃液のようなものを吐く。
とりあえず、その嘔吐液とともに、顔の血を消した。
「勝手に喋るでないわ……。さて、わしにエルフ族どもの騒乱のことを黙っていた理由を訊こうか。それと、いろいろとおかしなことを隠れてしていたようだな。ピカロとチャルタを人間族たちに密告して捕らえさせ、ジャスランを焚きつけてわしの
サキはラポルタに向かって怒鳴った。
青・黄・赤組に分かれている性奴隷の束ねのような存在であるフラントワーズの疑念に触れ、すぐにサキは、ずっと閉じこもっていた王宮から出て、王宮の外の状況を探った。
すると、ずっと知らなかった外の情勢のことを知ることができた。
サキが王宮の奴隷宮に閉じこもっていた一箇月ほどのあいだに、エルフ族の王宮では人間族の皇帝家の陰謀とやらで乗っ取り騒ぎがあり、それをロウたちが解決するということがあったのだ。
その一件により、ロウはエルフ族の女王から英雄認定を受け、さらに百年も姿を表に姿を出さなかったガドニエル女王が姿を世間に示し、そのロウに口づけをする映像が大陸中に流されたのだそうだ。
人間族たちは、その噂で持ちきりだった。
ラポルタは、それを知っていてずっと黙っていたのだ。
それだけでなく、しばらくのあいだ、サキが外との接触をとろうとしなかったあいだに、このラポルタは実にいろいろと暗躍をしていたこともわかった。
辺境候のところに送り込んだサキュバスのふたりをわざと密告して人間族に捕らえさせていた。
さらに、サキがロウを出迎える役割で国境に送ったジャスランに対しては、到着後の命令を修正して、ロウを殺せとそそのかせてもいる。これについては失敗はしていて、ほっとしたが……。
さらに、今度は王太女だ。
ロウの子を宿している王太女とアンの安全を図る意味もあり、サキがノールの離宮に禁足させていたイザベラを南部で起こっている戦場に送り込む企てまでやっていた。
驚愕するとともに、激怒したサキは、それらの始末をどうにかする前に、王宮に戻り、まずはラポルタをぶん殴ったというわけだ。
「サ、サキ様……。は、話を……聞いて……く、ださい……。せ、説明を……させて……」
「おう、早くしろ──。わしの頭の血管が切れる前にな。だが、早く喋らんと、怒りすぎて、お前を殺してしまいそうだ」
サキは手に電撃鞭を出す。
まずは一打目をラポルタの首から下腹部にかけて叩きつけた。もちろん、最大出力の電撃を帯びながらだ。
「ふがあああ」
ラポルタががくがくと身体を痙攣させながら、背中を限界まで反らせた。
その一撃でラポルタの服が左右に千切れて、素肌が露わになる。
続けざまに打つ。
二打──。
三打──。
四打──。
電撃鞭を打つたびにラポルタは宙吊りの身体をのたうち回らせ、そして、身につけているものは、次々に電撃で焼け焦げて弾け飛んでいく。
やがて、ラポルタの身体に残るのは、肩から先の腕の部分だけになった。ほかの部分は完全に布がなくなり裸だ。その肌には十数個の電撃鞭の傷が残っている。
「いずれにしても、お前は最下層の眷属に落とす。今日から、奴隷宮にいる人間族の奴隷としてすごせ。服など与えん。それがお前の罰じゃ……。さあて、そろそろ、なんでわしに断りもなく、好き勝手をしたか喋ってもらおうか」
サキは電撃鞭を消して、すでに息も絶え絶えのラポルタの前で腕組みをした。
「サ、サキ様……人間族は……ま、魔族の敵……。わ、わたしたちの敵……。共存するものでもなく……、友愛の対象でもない……。人間族に媚びる……サ、サキ様は堕落……。だ、だから、サキ様をただそうと……。に、人間族は……サキ様の敵……。正しい姿に……。だから、サキ様の……企てに見せ……かけて……人間族を……周りから……排除を……。そうすれば……失敗しても……人間族はサキ様を……見放す……。あるべき……姿に……」
「前言撤回だ。やはり死ね──。だが、一瞬で殺すような慈悲はやらんぞ。苦しんでから死ぬがよい」
サキは絹の布をラポルタの顔にきつく巻きつけた。
その顔に魔道で水を浴びせてやる。
絹がラポルタの鼻と口に張りつくのがわかった。
しばらく待つ。
すると、だんだんと宙吊りのラポルタの身体が痙攣のように震えてきた。
「んんっ」
さらに待つ。すると、今度は苦しそうに呻き声を出し始める。
濡れている絹のラポルタの口の部分が生き物のように動きだした。
やがて震えが激しくなり、思い切り暴れだす。
だが、だんだんとそれも緩やかになり、そして、がくりと脱力した。
サキは、やっと顔の布を外してやった。
「ぷはあっ、はっ、はっ、はっ」
ラポルタが盛大に息を吸う。
だが、すぐに再び布で顔を包む。また、水をかける。
同じことを十回はした。
十回目に布を外したところで、サキはラポルタの顔を覗き込んだ。
「死ぬのが苦しいのがわかったか。なぜ、勝手なことをした──? なぜ、わしに外のことを黙っていた? なぜ、わしを裏切った──?」
「う、裏切りなど……。わ、わたしは……サキ様の眷属……。しもべです……。せ、世界で一番……大好きな……サキ様を裏切るわけなど……」
「裏切りでなくてなんだ──? わしをお前は
怒鳴りあげた。
「サ、サキ様……お、お願いでございます……。強いサキ様を……取り戻して……。弱さは悪……。それが……魔族の掟……。いまのサキ様は……間違っている……。お、俺の好きな……サキ様では……」
「俺?」
ラポルタの口調が変化したと思った。
少なくとも、サキはラポルタが自分を“俺”などと称したことを一度も聞いたことがない。
「人間族に媚び……。
「令嬢や夫人どもに優しくしている? ばかな。わしはあいつらを奴隷扱いしているのだぞ」
サキは言った。
どうでもいいが、ラポルタの様子が異常だ。
なにかが起きようとしている……。
それだけはわかる。
だが、なにが……?
「お……、俺は……サキ様を……見ているだけで……よかった……。たとえ、人間族の女になっても……。所詮は……短い……人間族の寿命のひと時……。でも、目の前に……サキ様をものにする……手段が与えらて……。ああ、サキ様はひどい……、ひどい……ひどい……」
ラポルタの身体から白い湯気のようなものが大量に湧き始める。
そして、ぎょっとした。
ラポルタの身体が女の身体から男の身体に変化したのだ。剥き出しの股間からは怒張がそそり立っている。
サキは目を見張った。
「き、貴様、男──?」
サキは驚愕した。
「サ、サキ様には……ばらすつもりは……ありませんでした……。なにしろ……、サキ様は、男魔族を眷属には選ばない……。だから、女魔族に変身していれば……ずっとサキ様のおそばにいられる……。ただ、そばに……いれればよかった……。ずっと……。それだけで……。高望みなど……しない……。でも、サキ様が……弱くなり……その隙を見せ……。そして、俺にも、その機会が与えられて……」
「機会だと? さっきから、なにを言っておる──? それよりも、お前、本当に男魔族か──。わしをずっと騙していたのか──」
サキは怒鳴りあげた。
すると、ラポルタ……いや、もはや、本当の名前すらわからない。眷属として隷属はしているが、真名までは知ってはいない。そもそも、魔族の全員が真名という枷を持っているわけでもなく、高位能力の魔族にのみ、なぜか真名というのがあるからだ。
このラポルタは、会うたびに姿を変化させており、今回の呼び出しには“ラポルタ”と名乗ったので、そう呼んでやっただけだ。
ラポルタとは、テレーズが化けていた女伯爵の家名であり、このラポルタも手頃なので、それを名乗っただけだと口にしていた。
そうやって、こいつは、いつも名を変える。
気にもしていなかったが……。
「サキ様……。俺に……あの人間族の闇魔道師がいなくなったとき……。タリオの間者狩りを命じたのを……覚えてますか……?」
一瞬、なんのことかわからなかったが、あの闇魔道師のテレーズから真名の支配を受けていて、そのテレーズを支配しているタリオの諜者をサキが殺すことで、テレーズが縛られていた隷属を解放してやった。そのときに、このラポルタに命じて、王都内や王宮に巣くっていたタリオ公国の間者狩りを一斉にさせただが、そのときのことを言っているみたいだ。
「覚えているが、それがどうした──?」
サキは怒鳴った。
いや、そんなことよりも、こいつをどうしてやろうか……。
変身の得意な魔族だが、まさか、女魔族に化けていた男魔族だったとは……。
「サキ様が悪いのですよ……。あいつらは……色々なものを隠し持っていましたよ……。この王宮を魔族が占拠していたのもわかっていたんでしょうね。魔族の能力を弱める魔毒……。通称“魔族殺し”……。これをたくさん持ってました……。全部、押収しましたけど……。無色……無臭……。それを口にしても、サキ様は気がつかないのですね……。そうやって、あのテレーズの支配を受けた……。呆気なく真名を読み取られるまで、魔道を弱められて……。簡単な人間族の鑑定具で真名を知られて……」
ぎくりとした。
どうやら、サキがテレーズの支配に陥ってしまったときのことを語っているようだ。
しかし、サキは信頼をしていたラポルタに、テレーズの支配に陥っていることについて愚痴めいたことは漏らしたことはあったが、サキの失敗についてまで喋ったことはない。
しかし、ここまで詳しく知っているということは、なんらかの方法でそれを知ったということである。
どうやって……?
いや、その手段など、どうでもいい──。
こいつは危険だ──。
背に冷たい汗が流れたのがわかった。
まずい──。
殺さないと──。
サキは手に大鎌を出現させた。
一瞬にして、首を切断してやる──。
それで終わりだ──。
「無駄です、サキ様……。いえ、リュンネガルト・ゴーテンバウム・サキュテスト……。俺の奴隷になってください……」
次の瞬間、全身に、目の前のラポルタもどきに対する隷属が駆け抜けるのがわかった。
ぞっとした。
だが、まだ──。
「俺を殺すことも傷つけることも禁ずる──。俺に逆らうな──。そして、俺の拘束を解き、俺への隷属を解放せよ──」
さらに、ラポルタが早口で怒鳴った。
サキは、魔道を放って、ラポルタの身体を吊っている両手の手枷を外していた。
ラポルタが宙吊りから開放されて、二本の足で床に立つ。
「き、貴様……」
サキはまるで
まさか、同じ手に引っ掛かるとは……。
いや、同じ手だからこそ、引っ掛かったのか……。
このラポルタは、あのタリオの間諜狩りのときに、連中から、魔族殺しとともに、サキがテレーズの奴隷に下った方法についての知識を得たのだと思う。
テレーズは、誰にも喋っていないとは言ってはいたが、そのテレーズも隷属されていたのだ。
テレーズからタリオの間諜が方法を問いただす手段はいくらもあっただろう。いや、絶対にそうする。
その危険に、気がつかないとは迂闊だった……。
サキは内心で舌打ちした。
「サキ様は、ずっと俺に少しずつ魔族殺しを飲まされていたんです……。だから、身体の抵抗力を失って……。人間族の聖典とやらの魅了術に引っ掛かったりしましたよね。本来のサキ様なら、あんな微少の術になどかかりません。だけど、俺が弱めていたから引っ掛かっていたんです。あのまま、大人しくしてくれれば、ずっとこのまま一緒にいられたのに……。どうして、気がついてしまったんですか……」
「ずっと、わしを弱めていただと……?」
思わず唸ったが、後悔しても遅い。
本当に完全に同じ方法だ。
テレーズからも、ずっと食事に毒を弱められて、低級鑑定術を受けつけるほどに魔道耐性を消滅させられてしまって、あの様になった。
今度はラポルタか……。
しかし、思い当たることもある。
あのフラントワーズが手にしている聖典の言葉を耳にすると、頭がぼっとして、なにも考えられなくなってしまったりしていたが、それは、このラポルタが少しずつ魔族殺しで、サキを弱めていたからだったのだ……。
「ええそうです。だから、いまのサキ様は弱いですよ……。だから、俺なんかにしてやられるんです……。でも、俺は本当にそばにいるだけでよかったのですよ……。女魔族として、生涯、お仕えしようと……。もしも、サキ様が人間族の女になど、ならなければ……。いや、なったとしても……、サキ様を支配する方法などを知る機会を与えたりしなければ……」
「わ、わしをどうするつもりだ……」
サキはラポルタを睨んだ。
男の身体をしたラポルタが自由になった手首をさすりながら、サキに近づく。その股間はいまだに男根が勃起している。
「見てください、サキ様……。じっとして、動かずに……。見るんです……。俺がどんなにサキ様を愛しているかをお見せします……」
ラポルタがサキの前に足を開いて立つ。
その股間の怒張がさらに大きく膨らんだと思った。
ラポルタが目を閉じる。ラポルタの両手は身体の体側につけたままだ。
そのラポルタの腰がかすかに震えた。
「ああ、サキ様……、愛してます……」
ラポルタが呟く。
次の瞬間、なにも手を触れてないのに、ラポルタの股間の怒張から白濁液が飛び出した。
それはサキに向かって放たれ、サキの足もとに落ちた。
「はあ、はあ、はあ……。見てくれましたか……。サキ様のことを想うだけで、射精ができるんです……。それだけ、サキ様を好きなのですよ……」
ラポルタがうっとりとした表情になっていった。
サキは鼻を鳴らした。
「ふん、大した芸だのう。それで人間族の街でもまわれ。よい見世物になるわ」
サキは吐き捨てた。
「ああ、サキ様はお強いですねえ……。やっぱり、サキ様はそうでなくっちゃ。俺はサキ様のことは何でも知っていますよ。その股間には淫紋まで刻んで、あの人間族の男以外は犯せないようにしているんですよね……。知っています。俺はなんでも知っているんです……。だから、その鎌で自分の首を切断してください、リュンネガルト・ゴーテンバウム・サキュテスト──。胴体と首を切断するんです──」
ラポルタが言った。
サキの腕は、まだ手にしていた大鎌をサキ自身の首の後ろに当てた。その鎌が、力の限りに、前側に引かれた。
「んごっ」
切断の瞬間、口から息が抜けて、大きな呻き声のような音が喉で鳴った。
自分の首が胴体から離れ、ごとんと床に落ちるのがわかった。