【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「……ま、まさか、サキ様なのですか? いえ、そうなのですね……。ああ、お可哀想に……」
ラポルタではない若い女の声がした。
サキは戸惑った。
なんでここに?
しかも、その肌からはかなりの血の匂いがしていた。おそらく、かなり傷だらけなのではないのだろうか。
「……舌に金具が……。お待ちください。留め具が嵌められているだけです。外れます」
前側にまわってきたようだ。
サキはやっと、部屋に入ってきた女が誰なのかわかった。
赤組の中に所属している女騎士のベアトリーチェである。
シャングリアと同様に王軍騎士団に所属していて、なかなかに美人で凜々しい感じがロウ好みだと思ったので、理由をつけて捕縛させ、ロウのための奴隷宮に放り込んだのだ。
ところが、サキの女眷属のひとりが目をつけ、わざと小便をさせず、お漏らしをさせては懲罰として小尿を許さないという意地悪をしていた。
サキが気がついて、その眷属は張り倒して異界に送り返したが、それ以来失禁癖がついてしまい、特に性的に興奮すると、すぐにお漏らしをしてしまうという特異体質になってしまった。
これは、ロウが喜んで揶揄うだろうと嘲笑うと、ならば、この癖は絶対に直しませんとか、張り切った感じになったのを思い出した。
しかし、そのベアトリーチェがなぜ、ここに?
サキは困惑した。
「……外れました」
舌の根元から金具の感触がなくなる。
「あっ」
はっとした。
なにも考えられない。
口の中に舌を戻して、口の中を舐めまくる。
地獄のような掻痒感が解消され、衝撃のような快感が走る。
「おあっ、おああああっ」
目の前にベアトリーチャがいるのはわかっているが、サキの理性は崩壊していた。
一心不乱に、性器化されている口を舐め回す。
恐ろしいほどの痒みが少し解消され、また、クリトリス化されている舌でそれをやることで、さらに快感が沸騰していく。
一気に絶頂感が襲いかかる。
「サ、サキ様?」
ベアトリーチェの困惑したような声がした。
だが、構わない。
とにかく、サキは舌で口を擦り続けた。
「ほおおおっ」
絶頂した──。
いや、絶頂したと思っただけだ。
快感の頂点はぎりぎりのところで届いていない。
そういえば、自慰では絶頂感覚を与えられないと言っていたっけ……。
サキは泣きそうになった。
そして、息が苦しい。
舌を口の中に戻したので、息ができないのだ。
「ぷはっ、はあ、はあ、はあ……」
舌を出す。
途端に息ができるようになった。
だが、絶頂寸前のもどかしくて、ぎりぎりにくすぶっている性の苦悶はそのままだ。
痒みもぶり返す。
地獄のような苦悶が復活する。
「はあ、ああ、ひゃああ……」
サキに絶望感が拡がる。
「あのう、サキ様……。もしかして、眼が見えないのですか……? それと、寸止めのような処置もされてます? それだけでなく、舌を出さないと息ができないとか……?」
ベアトリーチェが訊ねてきた。
ほんの聞こえるかどうかのぎりぎりのささやき声である。
そういえば、この女騎士がいるのだと、我に返る。
しかし、なんでここに? その疑念を思い出す。
一方で、ベアトリーチェは、サキの置かれている状況を的確に見抜いていた。
これには驚いた。よくいまのだけで見抜いたものだ。
寸止めで苦しんでいることも、口の中を性器化されて敏感になっていることも……。 舌を出さなければならない理由まで……。
人間族の女騎士というのは、実に様々な仕事をするらしく、剣を持って戦うのみならず、場合によっては犯罪捜査のようなこともすると耳にしたこともある。
だから、観察力もそれなりに鍛錬されているのかもしれないが……。
「そ、そうら……。そうだ……。りゃが……だが、なぜ、ここに?」
顎の力が極端に弱められているので、口を閉じて発音するのがかなり難しい。
それでも、なんとか言い直しながら、サキは訊ねた。
「ああ、お可哀想に……。僭越ながら、わたしにさせてください。寸止めの苦しさはわかりますので……。それに、見た感じだと、口の中を敏感にされたりしているのですね。わたしがやってもいいですか? その代わりに、声をできるだけ殺してください」
なにを言っているのかと思ったが、サキは一縷の望みを捨てることができなかった。
もしかして、この苦しさを解消できるのか?
気がついたら必死に首を縦に振り続けていた。
もっとも、ほとんど動かない首はぴくぴくと動くだけなのだが……。
そんなことをしている場合ではないと考える心もよぎるが、いまのサキには性器の痒み苦しさと、開放されない性欲の猛りの苦悶がすべてを占めてもいる。
「……お任せください。サキ様に天道様のご加護を……」
ベアトリーチェの指だと思うものが、サキの口から出ている舌を擦りだした。さらに、口の中にも指を入れて、あちこちを強く擦り出す。
「ふえっ、ふっ、ああっ、らにっ、あああっ、ああっ、あああっ」
異次元の戦慄に見舞われたサキは、一気に性感を沸騰させた。
そして、あれだけ頑固に拒んでいた絶頂の壁が打ち破られ、サキは信じられないくらい呆気なく絶頂を極める。
「ひりゃああっ、へれえええっ」
舌を出しているし、顎を緩められているのでおかしな声しか出ないが、サキはその恥辱を感じることもできずに、エクスタシーの愉悦にしばらくうち震えた。
そして、ベアトリーチェの指の愛撫は終わらない。
口の中の刺激の場所を変え、舌を擦る場所も変化させて、さらに快感を送ってくる。
「あしゃあああっ、ひゃあああっ」
あっという間に二度目の絶頂をする。
ベアトリーチェがサキへの愛撫をやめたのは、三度目の絶頂だった。
快感の余韻に浸りかけていたサキから、すっと指を引く。
「少し落ち着かれたのでは……? 申し訳ありません。まだまだ満足ではないでしょうが……」
愛撫がなくなれば、痒みの苦しさも蘇る。
それはわかっているが、ずっと放置状態のときから比べれば、かなりましだ。
サキにも余裕ができる。
それにしても、ベアトリーチェはよく見ている。
サキの反応を見て、強引とも思えるような愛撫を開始し、落ち着いた感じになったのを見てやめたのだろう。
ちょっと感嘆した。
「あ、あひが……ありが……とう……。う、うひゃい……うまいな……」
サキは頑張って、口元を綻ばせた。
状況が理解できないものの、とにかく、限界まで追い詰められていたサキを助けてくれたベアトリーチェにできる精一杯のお礼だ。
いまのサキには、微笑みを返すくらいしか、できることはない。
「お褒めいただけたなら嬉しいですわ。毎晩、みんなで勉強会をしていますから……。お互いに責め合いながら、相手の様子を観察して効果的な奉仕をする訓練をし合ってるんです。天道様に抱いていただける日が来れば、できるだけ喜んでもらいたいですから……」
「しゅろの……ロウりょの……ロウ……殿は、奉仕するよりも……する方が好みかな……。だが、喜ぶりゃろう……。いや、そんなことはいい……。りゃせ……、なぜ、ここに……?」
そうだった。
そもそも、こいつはなんでここにいるのだ。
ここは危険だ。
いまこの瞬間に、ラポルタが駆けつけないということは、気がついてもいないし、潜入者を警告するような魔道具も設置していないということだが、ラポルタの気性なら、ベアトリーチェがサキに接触した時点で、こいつは殺されてもおかしくない。
いや、いまも危険だ。
すっかりと追い詰められていたから、サキもそれに気が回らなかったが、我に返ってくると、この状況に困惑してきた。
「フラントワーズ様や皆様のご指示で、本物のサキ様を探しに来たのです。あのサキ様が偽者であることはすぐにみんな気がつきました。だから……」
あのサキ様というのは、ラポルタが変身をしたサキの姿のことだろう。
あいつは、サキになりすまして、こいつらのような奴隷宮の人間族たちの扱いを過激な拷問調教に変えさせたと自慢気に語っていた。
だが、どうやら、人間族たちは、それはサキではないと、すぐに気がついたということのようだ。
しかし、だからといって、サキの捜索をしようとするのいうのは意外すぎる。
「そ、それれ……ここに……? ら、だが、そ、そひゃた……そなた……から、血の匂いが……」
血の香り……。
視力のないサキには、はっきりとはわからないが、目の前のベアトリーチェからは血の匂いがするのだ。もしかして、無数の傷があるのではないだろうか……。
「ああ、血ですか……。止まっているとは思いますが、懲罰で
よくわからないが、あのおかしな信仰に染まって、性奴隷候補たちと一緒に、夜の自主調教とかいうものに参加していた連中のことだろう。
ラポルタは、サキから眷属たちの支配を横取りしたと言っていたが、まだまだ綻びもあるみたいだ。
「りゃが……だが……、それで、ここまで……?」
「おそらく、奴隷宮側ではなく、後宮側に監禁されていると思いましたから……。なにしろ、こっちは兇王の住み処ですし、もしかして、サキ様がまたもや、捕らわれたのではないかと……」
「わ、わしを……と、捕らえたのは、ラポルタりゃ……。わ、わしのふは……部下じゃ……」
「なるほど、サキ様の部下のラポルタが兇王に寝返ったのですね。わかりました。それよりも、サキ様を連れ出します。どこかに隠して……」
ベアトリーチャがサキに手を伸ばした気配がした。
「な、ならん──。わ、わしを動かすな──。ラ、ラポルタが気づく──。必ず見つけて、お前らが皆殺しになる……。くはっ、はあ、はあ……」
びっくりして、サキはそれをとめた。ちゃんと伝わるように、必死に顎に力も込めた。だから、少しはましな発音になった。
だが、普通に話そうとすると、どうしても舌を口の中に戻さねばならず、たちまちに息苦しくなる。
情けないが、それがいまのサキだ。
そもそも、こんな状況では、助けてもらっても、助けられることはできないし、サキを奪われようとしたラポルタが怒り狂って、奴隷宮の人間たちを皆殺しにするだけの未来しか予測できない。
「……そ、そうですね……。無計画にサキ様を連れ出しても、確かに……。わかりました。一度、みんなに相談します。そして、なんとか、サキ様をお助けする方法を見つけて、戻ってきます」
「や、やめよ──。わ、わしを助けようとするな……。し、死にたいのか……。はあ、はあ、はあ……」
呆れて言った。
「死など……。それよりも、サキ様には、なにかお知恵は? なにかお考えはありませんか? なんとかお助けしますので……」
ベアトリーチェがすがるような、それでいて必死さが伝わってくる口調で言った。
なんだか、泣きそうな声だと思った。なんで、こいつらはサキのことで、こんなに一生懸命になっているのだろうと不思議に思った。
いずれにしても、とにかく、サキは考えた。
放っておけば、こいつらは無茶をしそうだ。
そもそも、このベアトリーチェがいまここにいるというだけでも、かなりの無茶なのだ。
そして、思いつく……。
サキに考えられるのは、それだけだった。
「お、王宮の外に連絡を……。冒険者ギルドのミランダか……神殿のベルズ……。伝言を……。“悪かった……助けてくれ”と……」
いまさら、虫がいいとは思う。
しかし、サキには、あいつらにすがるしか、もう、なにも思いつかなかった。
「ミランダ様とベルズ様ですね……。わたしたちの監視も一気に厳しくなりましたものの、外部との連絡は不可能ではないと思います。なんとかやってみます。でも、もしかしたら、少し時間はかかるかもしれません。とにかく、お待ちを……」
ベアトリーチェが言った。
いまの感じだと、連絡をとるというのは、かなり難しいのだろう。ラポルタがこいつらの扱いを厳しくしたと言っていたし、無理をさせて、こいつらを危険に陥らせたくはない。
「い、いまのは……なし……だ……。はあ、はあ……。わ、わしに考えがある……。と、とにかく、お前らは、お、大人しく……。ふうっ、はあ、はあ……」
「いえ、頑張ります。ミランダ様か、ベルズ様……。ほかにも、いい方法があるか、また考えます。……ですから、サキ様もお頑張りください。そして、希望を捨てないで……。きっと天道様がお守りくださります」
「希望か……。て、天道……様……。そうだな……。しゅろ、
サキは頬を綻ばせた。
ロウのことを思うと、今度は無理することなく微笑むことができた。
天道様……つまり、ロウ……。
ロウは、こんなざまになったサキに怒るのだろうな……。
呆れて……。
怒って……。
叱って……。
サキに罰を与えるのだろう……。
いや、きっと、そうするに違いない。
すごく意地悪な罰を……。
そして、サキを泣き叫ばせて……。
でも、最後には、死ぬほどに、愛してもくれるのだろう。
ロウ……。
ロウに会いたい……。
ロウ……。
助けてくれ……。
「ええ、天道様を信じましょう……。ところで、金具を戻します……」
ベアトリーチェの言葉に対して、サキは思い切り舌を出す。舌の付け根に再びぎゅっと金具が嵌まる。
「……希望を……サキ様……」
ベアトリーチェがささやき、すっと遠ざかる感じがした。
やがて、外に出て行く気配がして、サキは再びひとりぼっちになった。
だが、もう、それほど追い詰められてはいない。
苦しいときや、悲しいとき、そして、絶望に陥りかけたときには、ロウのこと……天道様のことを考えればいいのだとわかったのだ。
天道様のことを……。
それにしても、なんという愚かな者たちだろう。あんなことをしたサキを助けようと考えるなど……。
愚かで……。
そして、とても強いのだな……。
サキは改めて、人間族の奥深さに触れた気がした。
大きく息を吸う。
ならば、あいつらの強さに負けて溜まるか――。
くそったれがああ――。
自分はサキ――。
誇り高き、妖魔将軍だ――。
再び、強い痒みが襲いかかってきた。
サキは必死になって、ロウのことを心に思い浮かべた。
これはロウにされているのだと思おう。
ロウの懲罰だ……。
ロウに意地悪をされ……、そして、愛されているのだ……。
すると、心が軽くなり、存在しない身体まで、かっと熱くなった感じになった。
(第15話『