【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
73 …木馬責め
テーブルの上には、卵とじゃが芋の料理があった。冷やした薄肉もある。ほかには熱いスープと木苺のデザートだ。飲み物は冷やした果実水が準備してあった。
屋敷妖精のシルキーが一郎の指示でエリカにつきっきりなので、コゼとシャングリアがふたりで準備したもののはずだ。
コゼとシャングリアは先に夕食を済ませたらしく、食事は一郎の分だけが準備してあった。
ふたりが食事をする一郎の給仕ができるように、一郎が座る広いテーブルの両側に腰かける。
「うまそうだな。もらうぞ」
一郎は席に着くなり、すぐにテーブルにあるものを口にした。
腹が減っていた。
喉はもっと乾いていた。
好きな嗜虐だが、延々と悪態を続ける女を拷問し続けるというのも、案外疲れるものだ。
それがわかった。
「拷問」には体力を使う。拷問を受ける側が体力を削ぎ取られるのは当然だが、拷問をする側も同じくらい疲れる。
一郎はそれを今回のことで知った。
「なあ、ロウ、エリカはどうなのだ?」
シャングリアが声をかけてきた。
「頑なだ……。俺のことは憎みきっているからな。もう少し時間がかかりそうだ。それに、堕とすにも、もう少し体力を削ぎ落とさないと駄目だ。だが、さすがは、狩猟種族のエルフ族だ。生半可なことじゃ音をあげもしない。半日のあいだ、延々と俺に悪態をつき続けた。大した根性だよ。まあ、大変さ──」
一郎は目の前の料理を口にしながら言った。
「それにしては、ご機嫌ですね?」
コゼがからかうような口調で言った。
「そりゃあ、ご機嫌さ、コゼ。なにせ、あのエリカをもう一度調教できるんだ……。本当のことを言えば、エリカは最初から呪術で支配してしまったから、実は一度も俺はエリカを屈服させたことはないんだ。それを体験できるんだ。こんな愉しいことはないよ」
一郎はコゼとシャングリアに会心の笑みを向けてみせた。
ふたりの顔に苦笑が浮かんだのがわかった。
「だが、エリカが可哀想ではないのか、ロウ? ロウの精を与えれば、簡単にジョナスの操りは解けるのであろう? いずれ正気に戻ったときに、すごく罪悪感があると思うのだ。エリカは真面目だし、考え込むかもしれないぞ」
シャングリアだ。
「逆だ。エリカは俺を刺したんだぞ。それこそ、簡単に戻せば、そっちの罪悪感に潰れるかもしれない。あんなのどうでもよくなるような、壮絶な調教をあいだに挟んでやる」
「だけど、ご主人様に悪態をつき続けているんですよね。それだって、エリカからすれば、あとで思い出して、相当に後悔すると思うんですけど……」
コゼも心配顔だ。
一郎は微笑んだ。
「まあ、そのときには、お前たちが慰めてやってくれ。俺がエリカの再調教を本当に愉しんでいたとな。それに、これは必要なことなんだ。何度も説明したぞ」
一郎は言った。
今回のことについては、シャングリアにもコゼにも、エリカがジョナスのような操り師の支配を受けないようにするために必要であり、そのためには、いまのエリカが一郎に対して「自らの意思で屈服する」という行為が必要であることを繰り返し説明した。
ふたりとも一応は納得もしているが、半信半疑という目つきをしている。
エリカの再調教を一郎が愉しみたいだけではないかと、いまだに半分は疑っている感じだ。
それに、エリカのことは心配なのだろう。
また、恐怖も感じているようだ。
ふたりが知っているのは、とにかく、一郎に一途のエリカの姿だったはずだ。
それが操りひとつであんなに豹変してしまうのだ。
この屋敷に連行するまでのエリカの人が変わったような様子に、本当にコゼとシャングリアは驚いていた。
それは一郎も同じだ。
エリカが頑固で真面目なのは元々だが、ひとたび「敵」に回ると、本当に態度にも言葉にも容赦がないということも、改めて今回わかった。
「……それに、また操られて、仲間に危害を加えるようなことがあれば、その方がエリカが可哀想だ。俺だから助かったが、同じことをお前たちにやっていたら、助かっていないぞ。改めて思い出したが、俺やエリカを追っている女には、一騎当千のさまざまな特殊能力を持った奴隷戦士がたくさんいるしな」
一郎とエリカを追っている女というのはアスカのことだ。
今回のジョナスがアスカの手の者かどうかはわからないが、なんとなく違う気がする。少なくともジョナスのステータスには「外界人」の表記はなかった。召喚された異世界の人間なら、その表記があるはずだ。
まあ、ジョナスの背景などについてミランダが調査をしてくれているが……。
しかし、いずれにせよ、エリカの強化は必要だ。
アスカは、召喚術で連れてきた外界人を奴隷にして、自分の戦力にするというやり方で、小さな範囲とはいえ、どの勢力にも支配されない独自の世界を保っている女だ。
一郎もそうだが、召喚術で連れてきた異世界の外界人には、召喚の影響により、この世界に到着した段階で、なにかの特殊能力が覚醒する。
アスカは、そんな特殊能力者を奴隷の首環で支配して、自分の道具のようにしているのだ。
心を操る能力が、決して一郎の専売特許ではないとわかった以上、できる限りの防御策をしておく必要がある。特殊能力者集団を率いているアスカのところに、ジョナスという小者など比較にならない操り師がいてもおかしくない。
それに対抗できるのは、一郎の持っている淫魔師の呪術だけであることは確かだ。
すでに、一郎の淫魔師としてのレベルは“70”ある。
まともに、一郎の呪術が女たちに影響を与えていれば、ほかの操り師などの影響を受けることなどほぼあり得ないはずだった。
だが、一郎は自らの意思により、意図的に女たちへの精神支配を弱める処置をしていた。だから、ジョナスのような小者に女たちがしてやられる羽目になったのだ。
特に、エリカについては、もともと、一郎の呪術支配の土台が弱いこともあって、あっさりとジョナスの術の侵入を許してしまった。
その理由もいまでは明白だ。
淫魔師の呪術で女を支配するという行為には、「正しいやり方」というものがあったのだ。
つまりは、呪術で支配する前に、支配しようとする女に自分自身の意思で一郎の支配に陥ることを決心させることだ。
それは、どんな方法でもよいのだが、呪術で支配しきってしまう前に、屈服の意思があるとないとでは、呪術の強さがまったく違うのだ。
実のところ、それは、この世界で一般的な「奴隷の首環」あるいは、「支配の首環」についても同じだ。一郎も最初にアスカに捕らわれたとき、アスカに首輪をつけられて、支配の首環で奴隷状態にされた。そのとき、アスカは一郎に、一郎自身の言葉で「奴隷になる」ということを口にさせてから術式を刻んでいた。
それが必要だったのであり、この世界におけるあらゆる支配魔道の常識だったのだ。
そうでなければ、どんなものでも支配の刻みは不完全となり、操りは不安定になる。
強い術で支配しているはずのエリカへの呪術が、遥かに支配力の劣るジョナスのような操り術で塗り替えられたのもそのためだ。
呪術による支配前に一郎に屈服した経験のないエリカに対して、コゼとシャングリアは、一郎に支配されるということを納得済みで一郎の呪術を受け入れた。
だから、一郎との関係が強固だ。
それに比べて、エリカは一度も、エリカ自身が一郎の性奴隷になるということを決めることなく、一郎に支配されることになった。だから、コゼやシャングリアの結びつきに比べれば、いまのエリカの呪術の支配度はもともと弱い。
従って、エリカにも、かつてアスカが一郎にやったことと同じように、屈服してもらう。
それで、エリカに刻む一郎の呪術は完全なものになるはずだ。
そのために、一郎は、エリカがジョナスの影響で一時的に一郎の支配から脱しているこの状況を利用して、エリカを支配しなおすつもりだ。
これにより、エリカと一郎の結びつきは、これ以上ないというほど強固なものになるはずだ。
「なあ、ロウ、コゼとも話し合ったのだが、わたしたちがエリカを説得するというのはどうだろう?」
一郎の食事がやや落ち着いてきたのを見計らうように、シャングリアがふたりを代表するという感じで口を開いた。
「お前たちが?」
一郎は食事をする手を休めて顔をあげた。
「そうです、ご主人様、あたしたちが、エリカへの“再調教”に加わるというというのは駄目ですか? エリカは、別に記憶を失くしているわけじゃありません。すでに、性奴隷になっているあたしたちが説得すれば、案外にあっさりとエリカは応じるかもしれないじゃないですか。エリカはご主人様をジョナスの術で憎んでいるかもしれませんが、あたしたちに対しては、そこまでの感情の縛りはないようですし……」
コゼも言った。
だが、一郎は首を横に振った。
「だめだ」
「なんでだ? エリカが頑固なのは知っているから説得に応じるとは限らんが、やってみても損はないと思うぞ、ロウ」
シャングリアがさらに言った。
「シャングリアやコゼの言うことも一理あるが、まあ無駄だろう。そんなに簡単に納得するなら、もう堕ちてる──。もう、エリカへの拷問を開始して半日になるんだぞ。それに大きな問題もある」
「大きな問題ですか?」
コゼだ。
「そうだ──。大きな問題だ、コゼ。それであっさりとエリカが応じてくれたら、俺が愉しくないだろう。せっかくの機会だ──。俺は、たっぷりとエリカへの拷問を愉しませてもらうよ」
一郎はにやりと笑った。
コゼとシャングリアが呆気にとられた顔をした。
「なあに……。いずれにしても、何日もかかることじゃない。どうしても、手こずるなら、精を与えて元に戻し、俺の支配を強化する要領は別に考えてもいい──。まあ、とにかく、俺に任せておけ──。これは、俺の愉しみでもあるんだ。エリカを再調教できるんだぞ。こんな機会を逃してたまるか」
一郎はうそぶくと、目の前にある残りの料理と飲み物を口の中にかき入れた。
*
地下に下り、エリカを監禁している調教室に戻ったのは、食事を終えてから自室にしている部屋でひと休みしてからだった。
ちょっと微睡むだけのつもりだったが、気がつくと、すっかりと陽も暮れていて、時間にして、一時間半ほどが経過していた。この世界の時間単位では、“二ノス”というところだ。
「むう……ううっ……うぐうう……」
ロウを認めたエリカが吠えるような声をあげた。
その表情から見ると、すでにかなり参ってはいるようだが、心が折れるには程遠いとわかる。
いずれにしても、エリカの口には小さな穴の開いたボールギャグを噛ませているので言葉を喋ることはできない。だから、エリカがなにを一郎に叫んでいるのかはわからない。
あまりに悪態をつき続けるから、懲らしめのために咥えさせたのだが、エルフ美女のボールギャグ姿というのはそそるものがある。
ボールギャグのおがげで、口から垂れ流れる涎を防ぐことのできないエリカの唾液は、エリカの首筋から裸身の胸の谷間へと伝い落ちている。
なかなかの惨めな姿だ。
一郎は自分の股間がすっかりと欲情して固くなるのを感じた。
「ふぐう、ふう、ふう……」
一郎がそばまでやってくると、エリカは一郎を睨んで、憎しみたっぷりの視線で睨みつけた。
だが、エリカの強気の態度の一方で、その姿には一郎に対する敵愾心に加えて、すでに苦痛の限界であることが表れていた。
なにしろ、エリカを乗せているのは、頂点が天井を向いている大きな三角木馬だ。
一郎は、全裸のエリカを三角木馬に跨らせて放置した状態で、一階に食事をしに戻ったのだ。
また、エリカの両手は背中側に曲げ、ウエストの後ろで水平に重ね合わさせて、しっかりと革帯をしている。そして、ひとり残されても、尖った木馬の上から勝手におりることができないように、首輪を嵌めさせて、天井にある金具に鎖で繋げていた。
もちろん、完全に床から離れている両方の足首には重しをしっかりと繋いでいる。
圧巻は三角木馬の頂点が喰い込んでいる股間だ。
エリカの肉芽の根元には、硬い糸が根元に喰い込んでいて、それを木馬の前側の端に糸で繋いでいる。
この状態で一時間半だ。
かなりつらいはずだ。
ただでさえつらい三角木馬に跨らされて、身体のもっとも敏感な場所を繋いだ糸で固定され、さらに首輪に引っ張られて真っ直ぐに木馬の上で伸ばすように身体を固定されているのだ。
エリカの裸身には夥しい脂汗が浮かんでいるし、重しが繋がれた足首の下には汗による水溜りがふたつできていた。三角木馬の頂点は、一応は股間を傷つけることがないように、少しは丸く削ってはいるが、乗せられることで激しい苦痛が加わる程度には尖っている。
「ふぐうううっ──んぐうう──」
さらに、エリカがまたなにかを叫んだ。
ボールギャグに阻まれた声は意味のある言葉として一郎の耳には届かなかったが、一郎には汗まみれのエリカがなにを叫んでいるのかがやっとわかった。
エリカは、いまだに一郎に対して悪態をついているのだ。
一郎はエリカの精神力の強さに舌を巻く思いだった。
およそ一時間半も先端の尖った三角木馬に跨らされて、相手に哀願ではなく、罵りの言葉を叫び続けることができる女がどれだけいるというだろうか。
改めて、その支配を外してしまうと、よくもこんな気の強い女を性奴隷にすることができたものだと我ながら感心する。
だが、一方でエリカの股間はしっかりと汗以外の体液でびしょびしょに濡れていた。一郎が垣間見ることのできる「ステータス」にも、苦痛に喘ぐエリカが、一方で欲情を覚えていることも示していた。
こんな苦痛に喘ぎながらも、根っからのマゾ体質のエリカの身体はしっかりと感じてもいるのだ。
愉しい拷問になりそうだ……。
一郎はほくそ笑んだ。
「シルキー、水の入った瓶を出せ。俺が準備しておくように命じておいたやつだ」
一郎は調教室の空間に向かって声をあげた。
すると、一郎がいないあいだ、万が一のことがないように、姿を消してエリカを見守らせていた屋敷妖精のシルキーが出現した。
その手には、一郎の注文した水の入った瓶がある。
「どうぞ、旦那様」
シルキーが差し出す瓶を受け取った一郎は、エリカの首の後ろに片手を回してボールギャグを外した。
「喉が渇いたろう、エリカ」
一郎はエリカの口に水の入った瓶を押し込む。
さすがにこれだけの汗だ。
余程に喉が渇いていたのだろう。
エリカは喉を鳴らして、むさぼるように水を飲んだ。
あっという間に、瓶の水の大半がなくなる。
「はあ、はあ、はあ……。い、いい加減にして……。お、おろしなさい……。こ、こんなことをしても……む、無駄よ……。あ、あんたに屈服しろと……いう……話であれば……こんなこと……いくらやっても……」
エリカが肩で息をしながら、一郎を睨んだ。
一郎はエリカの肉芽の根元に喰い込んでいる糸を無造作に引っ張ってやった。
「ぎゃああああああ──」
エリカが絶叫した。
股間の激痛の衝撃でエリカの身体が揺れて、首輪の鎖が思い切りエリカの細い首を引きあげる。そのために、エリカは悲鳴をあげながらも激しく咳き込んだ。
一郎は肉芽に繋いだ糸から手を離してやった。
「その調子で頑張ってくれよ、エリカ……。そして、一生懸命に抵抗を続けてくれ。俺が愉しめるようにな……。それから言っておくが、エリカを屈服させるための拷問なんて、まだ始まってもいない。これは、俺に悪態をついたことを謝らせるためにやってるんだ。木馬からおろして欲しければ、まずは、俺に酷い言葉を使ったことについて詫びをしろ」
一郎はそう言って、再び肉芽を糸で引っ張り出すと、木馬の頂点の上に伸ばされたエリカの陰核を反対の手の親指でぐいと押してやった。
エリカのけたたましい悲鳴が再び調教室にとどろいた。
*
「ひぐうううう──」
エリカは目を見開いて、声をあげた。
ロウが肉芽の根元に喰い込んでる糸を思い切り引っ張り、肉芽を股の肉から引き出すと、それを親指で木馬の背にぐりぐりと押したのだ。一気に脳天まで突き抜けるような衝撃だった。
エリカの想像を遥かに超える痛みだ。
「ひぎゃあああ──ぎゃああああ──」
エリカはなにも考えられずに、ただ悲鳴をあげた。
苦痛をやわらげるために股間を前に出すこともできない。長時間にわたって座らせられた三角木馬はいまやエリカの股間にしっかりと喰い込んでいて、腰を少しでも身じろぎさせただけで、激しい苦痛が沸き起こるようになっていた。両足首にぶら下げられている重りに逆らって、自ら動かすことなど不可能だ。
エリカにできるのは、ただ雄叫びのような悲鳴をあげるだけだった。
「さあ、謝罪の言葉を口にする気になったか?」
ロウがやっと肉芽から指を離して、くすくすと笑った。
「はああ……」
エリカはがくりと脱力した。
しかし、ロウは、まだ肉芽を引っ張る糸はしっかりと握ったままだ。
なにも答えられない……。
謝罪の言葉を口にしなければ、ロウは容赦なくいまの苦痛をエリカにまた与えるだろう。肉芽に繋がった糸をロウがしっかりと握っていることで、エリカは極限までの緊張を味わっている。
だが、もう一度、あれを受ける気になれない。
口惜しい……。
口惜しい……。
ただ、口惜しかった。
こんな風に抵抗できない状態にされて、卑劣な拷問を加えられることは耐えがたい苦痛だ。だが、それ以上に口惜しいのは、こんな卑怯者の男に何度も身体を許し、全身全霊を捧げて仕えたというエリカ自身の記憶だ。
騙されていたのだろうか……。
そんな言葉が頭に浮かぶと、そうに違いないという思いが心をいっぱいにした。
自分は騙されていたに違いない。
そうでなければ、こんな卑劣な男に、なにもかも捧げようという気になるわけがないのだ。
だが、エリカはこの男と起居をともにし、戦い、激しく愛し合った日々のことも覚えている。そこにあった堪らない充実感のことも、エリカはありありと思い出すことができる。
あの日々は、エリカにとって大切な悦びの日々だった。
ロウがいて、コゼやシャングリアという本当に心を許せ合う仲間もでき……。
愉しかった。
両親の記憶のないエリカにとって、生まれて初めて「家族」という感情を抱いた者たちだ。
確かに、ロウとの日々は素晴らしい時間だった。
混乱した。
ロウを憎いという感情と、ロウとの生活を懐かしむ感情……。
どちらが本当なのか……。
だが、そのとき、エリカはこの男の能力が女に精を与えて、呪術で支配することだということを改めて思い出した。
精の呪術でエリカを支配し、女たちを言いなりにして、自分を守り、仕事をさせて金を稼ぎ、それでのうのうと生きるような卑劣漢だ。
ロウに対する愛しみのような感情も、この卑劣漢が意図的に作ったものであるに違いない。
そうに決まっている。
しかし、同時に恐怖も走った。
この男はこの瞬間にも同じことができる……。
また、精を注がれたら……。
いや、精を注がれなくても、いまも、エリカがこの男の支配下にあることは間違いない。ジョナスが死んで、この男に囚われなおされた瞬間から、エリカの魔道の力は完全に封印されている。それは、この男がやっていることに決まっている。
このロウは、すでに精の力で支配しているエリカの身体を好きなように操ることができる。
「考え込みだしたな、エリカ……。なにを考え始めたかどうかまではわからんが、だいたいの想像はつく……。俺は卑怯者だ。精の力で女を支配して、言いなりにするような卑怯者だ……」
ロウが静かな口調で語るように言った。
心を見透かすようなロウの物言いにエリカはどきりとしてしまった。
だが、さらに動揺が走ったのは、ロウが糸で引っ張っている肉芽にすっと指を伸ばしてきたことだ。
また、あの激痛が襲う──。
エリカははっとした。
しかし、襲ってきたのは触れるか触れないかというくらいの柔らかい愛撫だった。
「はあっ、はっ、ああっ」
エリカは火がついたような快感の迸りに、堪らずに鋭い悲鳴をあげてしまった。
「……だが、その卑怯者にどうしようもなく快感を覚えるのも確かだろう……。そら、思い出すんだ。この快感を……。この性の疼きを……。俺はお前のありとあらゆることを知っている。どんなに苦痛に喘ぐお前からでも、あっという間に快感を絞り出すことができる……。自分に正直になれ。考えるな。どうだ、エリカ……?」
ロウは木馬の背に乗っているエリカの肉芽をこれ以上ないというくらいに優しく小刻みにしごいている。
ただでさえ、根元を糸で縛られて、怖ろしいほどに敏感になっている肉芽だ。
それを今度は一転して、優しく愛撫されるのは堪らなかった。
じんという疼きが、腰骨から背骨にかけて貫いた。
思わず腰を悶えさせた。
しかし、その瞬間に木馬の頂点が喰い込んでいる股間に激痛が走った。
「ううっ」
エリカは呻いたが、肉芽から与えられる快感の気持ちよさと、股間の痛みの苦しさが混ざり合い、果たして自分は苦しんでいるのか、悦びを感じているのかわからなくなった。
三角木馬に座らせられている苦痛が快楽に変わりそうだ……。
そして、ロウの肉芽への愛撫は続いている。
「なにも考えるな、エリカ。この気持ちよさだけを感じろ。これだけは本物だ。あとは全部、嘘だ。俺を憎いという気持ちも……。俺を愛する気持ちも……。感情はいくらでも操りや呪術で作り出せる……。しかし、俺の指を感じているお前の快感だけは本当だ……」
ロウがささやきながら肉芽へのくすぐりを続ける。
苦痛と愛撫──。
それが混ぜ合わさってささやかれるロウの言葉は、それ自体が魔道のようだった。よくわからないが、ロウの言葉のひとつひとつがエリカを動揺させる。
エリカは自分が毀れていく感覚を覚え始めた。
なにかがいまのエリカを崩そうとしている。
これは本当ではない……。
誰かがそう心の中でささやいている。
そして、それは別のエリカの声だった。
それがわかった。
いまのエリカではない、別のそのエリカが心を支配しようともしている。
戸惑った。
そのエリカが頭をもたげたとき、それこそが本当の自分だという気持ちが沸いたのだ。
だが、すぐにそれは心の混乱とともに、なにもわからなくなった。
あるのは快感……。
ロウの指で与え垂れる途方もない気持ちよさ……。
快楽とロウ……。
そのロウに対する激しい憎しみ……。
だが、それに相反するようなロウに対する愛情……。
仲間……。
なにが本当で……なにが嘘なのか……。
どれが真実の心で……どれが作られた嘘の感情なのか……。
混乱した……。
怖い……。
自分が自分でなくなるのが怖い……。
だが、そんなエリカの思考を奪うようなロウの愛撫……。
「いやああ──や、やめてええ──」
エリカは我慢できなくなり、悲鳴をあげた。
そのとき、ある違和感が下腹部を襲いだした。
尿意だ。
なんでこんなに急激に……?
そう思ったが、さっきロウによって瓶に入った水を飲まされたことを思い出した。
もしかしたら、それに尿意を沸き起こす薬剤が入っていた?
とにかく、尿意は急激にエリカを苦しめ始める。
そのあいだも、ロウのいやらしい指遣いは続いている。
尿意と快感……。
もうエリカはどうしていいかわからなくなった。
「も、もう、やめて──」
エリカは叫んだ。
怖い──。
なにがなんだかわからない……。
こんな愛撫なんて……。
「狼狽えるな、エリカ……。どっちが欲しいんだ。快楽か……? それとも苦痛か……? どっちでもいい。選ばせてやる。だが、快楽を選べば、その先にあるのは、俺の精による呪術の支配だ。そのときには、お前は再び俺に支配される。俺の奴隷になるんだ……。だが、苦痛を選べば、少なくとも自分は保っていられる。ただし、苦しい拷問を受けながらの話だ。さあ、どっちだ? 苦痛か? それとも、快感か……?」
「や、やめて……やめて……」
エリカはどうしようもなく身体が燃え立ち始めたことを意識した。
股間に喰い込む三角木馬の苦しみでさえ、いまはエリカを追い詰める材料だ。
エリカに怖ろしいほどの快感を湧き起らせているのは、ロウの指一本だが、たった指一本によって、全身に大きな陶酔が込みあがってくる。
悶えることさえ許されない木馬の上──。
もはや、なにをしてもこの淫らなロウの責めからは逃れられない。
エリカはそう自覚した。
そして、おしっこが……。
なにも考えられない……。
思考が飛んでいく……。
その瞬間、快感の度合いが大きくなった。
わからない……。
なにをしても無駄だと諦めたとき、受ける快感が倍になった気がする。
ロウの肉芽への愛撫は続いている。
腰から背中にかけてじんじんという鋭い快感が貫いた。
エリカは悲鳴をあげた。
重しをつけられて床方向に引っ張られている太腿が激しい発作のような痙攣を起こした。
「どっちだ? 快感で支配されたいか──? それとも、それを拒否して苦痛を選ぶのか──」
ロウが耳元で怒鳴った。
エリカは一瞬我に返った。
「く、苦痛よ──。もう、許して──」
エリカは慌てて叫んだ。
そのときには、内側からつきあげてくる大きな甘美感が、すべての思考を一気に弾き飛ばそうとしていた。
だが、愛撫を続けていたロウの指がまた肉芽をぐっと押した。
「ひがあああ──」
エリカは絶叫した。
一瞬にして快楽は消え去り、激痛が全身を貫く。
ロウはすっとエリカの股間から指を離した。
「さすがに簡単には落ちないか……。だが、あのまま、昇天する方を選びそうだったがな」
ロウが意地の悪い笑い声をあげた。
エリカは羞恥と屈辱でのたうちたくなった。確かに、さっきの一瞬、エリカは自分があのまま昇天したいのか、それともそれを拒否したいのかわからなかった。苦痛を選んだのは、ほとんど意識してのことじゃない。
もう一度、同じことをされれば、今度はあのまま快感に溺れることを選んだかもしれない。
そう思うと、自分の浅ましさに気が狂いそうになる。
「なあ、エリカ、賭けをしないか?」
そのとき、不意に一郎が言った。
「か、賭け?」
エリカは顔をあげた。