※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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730 王太女の苛立ち

「遅い──。リー=ハックは、なにを考えておるのか──。わたしをないがしろにしておるのか──」

 

 ついに、イザベラが癇癪を起こした。

 シャーラは閉口した。

 リー=ハックというのは、このクロイツ侯爵領における道化師(ピエロ)団と称する賊徒の鎮圧に出陣している南方国王直轄軍、通称“南王軍”の司令官である。

 そのリー=ハックに対するイザベラの不満は、頂点に達したみたいだ。

 

 もともと気が短くて、融通が利かない性質のイザベラだったが、その彼女が扱いやすい王族となったのは、間違いなくロウとの出会いがあってからだ。

 誰の言葉も重きを置かないイザベラだが、あのロウの言葉だけは大切にする。ロウが王たるに相応しくあれといえば、なにを置いてもそうなろうと努力し、自分で抱え込まずに信頼のできる部下に難しいことは丸投げしろと笑って言われれば、女官団と称されている侍女たちに篤い信頼を寄せる態度が顕著になり、仕事もやりやすくなった。

 我が儘王女と言われることもあるが、イザベラは素直である。

 まあ、ロウ限定というところもあるが……。

 

 だから、イザベラの癇癪らしい癇癪は久しぶりだ。

 まあ、無理もない。

 シャーラ自身も、いま置かれている状況に苛々してきている。

 

 ノールの離宮から水軍の船団に乗船して二日たち、船団はやっとガヤの港に到着した。

 同行しているとりあえずの五百の手勢を率いているライス将軍からは、リー=ハック将軍の指示があり、先に下船すると挨拶にきた。

 ライスというのは、ノールの離宮でイザベラたちの警護にずっとあたっていた王兵の一隊の指揮官であり、色々とあったが、いまは王太女のイザベラに忠誠を誓っていて、イザベラもそれなりに信頼を寄せるようになっていた。

 シャーラからすれば、軍人としての能力については心許(こころもと)ないが、忠誠については信用はできると思っている。

 

 ともかく、五百の人員は、この船だけに乗っているのではなく、四隻の輸送船に分乗してきた。ライスとしては、一度降りて、各隊を掌握するということであり、指揮官としては当然のことだ。

 イザベラもすぐに合流すると、ライスに言葉をかけ、この船内の部屋で、南王軍司令官のリー=ハックの迎えを待つことにした。

 まずは、ここでリー=ハックの出迎えを受け、それでシャーラたちはイザベラとともに、リー=ハックの案内で司令部に移動することになっていたのだ。

 

 しかし、リー=ハックどころか、南王軍のうち、話のわかる者が誰もやって来ない

 さらに、この船室の外を船にあがってきた南王軍の兵に固められ、船室からの出入りを禁止されてしまった始末なのである。

 さすがに、シャーラも文句を言ったが、命じられた南王軍の将校は、許可なく外に出すなと言われているので、大人しく待ってくれというだけだ。

 どうして、南王軍司令部の者が王太女に挨拶に来ないのかという問いにも、その将校は答えられなかった。

 ただ、王太女の警護を命じられていただけで、司令官の状況はわからないという。

 シャーラも困ってしまった。

 

 とにかく、船からおろせと要求した。

 船の外の港側には、すでにライス隊が待っているはずなのだ。

 だが、その将校はとんでもないと首を横に振った。

 それで終わりだ。

 自分の任務は、司令官がここに来るまで、王太女を守ることであり、どうかお待ちくださいということだ。

 なにかあったのかと重ねて質問したが、それを説明する許可は与えられていないと一蹴された。

 ここにいるのは、王太女だぞと言っても無駄だった。

 軍としての命令が優先すると言われただけだ。

 シャーラは、その将校とのやりとりをイザベラに報告し、とりあえず待機するということになった。

 

 だが、それから四ノスだ。

 夕方前に到着したが、すでに夜になっているだろう。

 まったく状況がわからない。

 それで、イザベラの癇癪がついに爆発したということだ。

 

「もう一度、外にいる将校に確認してきます」

 

 シャーラはイザベラに頭をさげ、船室の外に出ようとした。

 いま、この船内にいるのは、イザベラとシャーラのほかに、侍女のモロッコの三人である。

 女官長とヴァージニアと侍女のトリア、ノルエルは、時間も時間なので、王太女のための食事を確保をするために、船室の外に出て行った。それは許可をしてもらったのだ。

 また、イライジャたち冒険者も、すでにいない。

 彼女たちは、もともと、領都で賊徒たちの人質になっているというシャロン=クロイツ侯爵夫人救出のクエストのためにここに同行してきたのであり、船がガヤ港に到着するとともに、すぐに下船していった。

 できるだけ早くクエストを成功させて、ここに戻ってくるという言葉とともに……。

 危険な潜入任務であるが、ロウたちほどではないにしろ、なかなかに頼もしそうだったし、おそらくやり遂げるだろうと期待した。

 

 そのときだった。

 ヴァージニアたちが外から戻り、小さな車輪のついた台車を押して入ってきたのだ。

 パンに温かいスープ、果物や飲み物などを載せている。

 こういう食べものの提供でさえ、港に到着して最初だ。ずっと報告もなく、ただただ放置されているのだ。

 

「お待たせしました。姫様、全員一緒でよろしいでしょうか。とりあえず、食事にしましょう。お腹が満足すれば、姫様の苛つきも落ち着くと思いますわ」

 

 ヴァージニアがちょっとおどけた口調で言った。

 彼女も、さっきまでここにいたので、イザベラが怒っているのは知っている。だから、あえて冗談めかしく言ったのだろう。

 

「食事は一緒でよい。しかし、わたしは苛々はしていないぞ。ただ、こうやって、報告もなしに待たされることに不満を覚えているだけだ」

 

「そうですか。でも、食事にしましょう。司令官がのこのことやってくれば、今度は食事中だといって、部屋の外で待たせればいいのですわ。さあ、簡単なもので申し訳ありませんが奥に……」

 

 ここは、王太女用の船室としてあてがわれているふたつの部屋が繋がっている場所であり、こちら側は人を迎える客室のようになっていて、奥が王太女を含む全員の居室のようになっている。

 海を移動しているあいだは、奥側に集まって直に絨毯に座ったり横になったりしていたが、あっちはもともとは簡易寝台や仕切りのあった部屋だ。全部、取っ払ったので、向こうは大きなひと繋がりの部屋になっている。

 

「なあ、わたしは寛容であるつもりだぞ。癇癪は直せとロウに言われたのだ。だから……」

 

「わかっております。でも、どうぞ、奥に」

 

 ヴァージニアがイザベラを再び促す。

 部屋にいたモロッコを含め、侍女三人はすでに奥に向かっている。

 シャーラもイザベラたちとともに、奥に向かう。

 

 トリアたちは、こっちの大部屋で、これまでのように丸く囲むように食事を床に並べている。 

 準備といっても、スープを器に注いでパンと飲み物を配る程度の簡易なものなので、すでに終わりかけている。

 船が移動中のときまでは、イライジャたちがいたので賑やかだったが、いまは六人であり、ちょっと寂しい感じもする。

 とにかく、元気で明るい者たちだったし、ロウの話は楽しかった。

 特に、最後のミウが中心の猥談があんなに盛りあがるとは思わなかった。結局は、みんな、ロウに気に入られることに一生懸命なのだ。

 見えそうで見えない“ちらり仕草”とかを練習したりして、結局、イザベラさえもやったりした。

 シャーラは、思い出して微笑んでしまった。

 

「では、食べるか」

 

 すぐに食事になる。

 昔は王宮で毒ばかり盛られていたので、王太女とふたりで、食事を抜いたこともあるし、食べられるものを見つけて、ふたりで分け合ったりしていた。粗末ともいえる食事には、イザベラは慣れている。

 贅を尽くした食事でなくても平気なので、それはありがたいと思う。

 

「ところで、姫様、少し状況がわかりました。やっと聞き出したんです。どうやら、ガヤの街の中で朝から賊徒の襲撃があったみたいです。しかも、民の中に襲撃者が紛れているらしくて、それでここにいる地方兵がぴりぴりしているみたいです。船室の外の兵も、姫様を閉じ込めているのではなく、純粋に警護みたいです」

 

 すると、トリアが言った。

 

「どこから聞いたの、トリア?」

 

 ヴァージニアが訊ねた。

 同行していた彼女も、いまの話は初耳みたいだ。

 

「食べ物を分けてもらった船の厨房の者たちからです。丁度そこに南王軍側の兵が食材を持ち込む場面に出くわして、訊ねることができたんです。港の内外にあった王兵の食糧倉庫を焼かれて、いまあちこちから慌てて調達をしているみたいです。これしかないと、謝罪されました」

 

 トリアだ。

 

「ここで襲撃? 戦場はもっと南ではないの?」

 

 シャーラは驚いて訊ねた。

 水軍がノールを出発する直前に、こっちのクロイツ領のことは情報を集めていた。

 離宮から水軍で移動を開始するときに確認したこっちの状況については、南王軍がクロイツ領のユンデと、このガヤの城郭を賊徒たちから奪回し、さらに領都を占拠している賊徒を制圧するために、ユンデとガヤの両都市方向から「分進合撃(ぶんしんごうげき)」の態勢で軍を進めているというものだった。

 シャーラは、ならばイザベラは、このガヤで南王軍の成果を待てばよく、それほどに危険はないと判断していたところだったのだ。

 しかし、ここで襲撃が起こっただと?

 

「ここも戦場だと、彼らは言っていましたよ。もしかしたら、南王軍の人たちも、姫様が逗留するための安全な場所を探しているのかもしれません。とにかく、兵糧を集中的に襲われているみたいです。……それと、こっちはただの噂らしいですけど、領都に向かっていた主力軍の兵糧馬車が襲撃されて、焼かれてしまっただとか……」

 

 さらに、トリアが言った

 

「兵糧を? 兵もやられたのか?」

 

 イザベラが顔を曇らせた。

 

「かなり……」

 

「あ、あのう……。あ、あたしは別の男の人と話をして……。ガヤの城郭から今朝出発した補給のための隊が、今日早く、城郭から出てすぐのところで、賊徒の騎馬隊に襲われて全滅したとか……。もしかしたら、司令官もそっちの対応でいっぱいなのかも……」

 

 するとノルエルだ。

 シャーラはさらに驚いた。

 そして、後悔した。

 もっと、安全な状況だと考えていたのだ。

 だが、後方であるはずのガヤ港まで賊徒が切迫しているとなると話が違う。身重のイザベラには負担が大きすぎる。

 シャーラは、イザベラに視線を向けた。

 

「なにが言いたいのかわかるが、わたしは動かんぞ。ここで戻れば、わたしは笑い者だ。わたしを女王などと奉ってくれるものはいなくなるだろう。ここも戦場というのであれば、わたしも大人しく身を置くのみだ。だが、そういうことなら、わたしでも役立つことがありそうだな。ガヤの民衆には、わたしの顔を見せよう。王太女がここにいるということがわかれば、民衆も少しは落ち着くだろう」

 

 すると、イザベラがとんでもないことを言いはじめた。

 冗談じゃないと思った。

 

「まさか、本気じゃないですよね、姫様? いまの話を耳にして、民衆の前に顔を出すなどと――。襲撃されます」

 

 シャーラは言った。

 

「危険なのは当然だ。戦なのだからな。わたしは、物見遊山で戦場見物にきたわけでない。賊徒の叛乱でわたしができることを探しにきたのだ。戦の指揮で役に立つとは思わんが、民や兵の前に顔や姿を晒せば、彼らの士気もあがるだろう。民の鎮撫にもなる」

 

「いえ、いえ、いえ、そんなわけには……。だって、襲撃者が紛れていると、トリアが……」

 

「うるさい、シャーラ――。そういうことなら、さっそく、リー=ハックには書簡をしたためる。すぐ書くから、シャーラはそれを外の将校にことづけろ。堅い男のようだが、それくらいはしてくれるだろう。前線に立てというなら前線にも立ってもいい。身重の王太女が戦場(いくさば)に出るというだけで、多少は兵の心に影響を与えるかもしれん。リー=ハックには、わたしの役に立つ使い道を考えろと書く。こうしてはおれんな」

 

 食事の途中だったイザベラが立ちあがる。

 

「お、お待ちを……。もう少し話し合いましょう」

 

 シャーラは慌てて、イザベラを追いかけた。

 

 

 *

 

 

 ジグは、伝令の案内を受けて営牢の奥に向かった。

 リー=ハック司令官がここにいると伝えられたのだ。

 なぜここに、とは思った?

 

 なにしろ、すでに夜である。離宮からやってきた王太女一行が到着している時間なのだ。

 ジグが隊とともに、ガヤの城郭内に戻ったとき、水軍の輸送船団が港に入っているのは確認した。そのうちの一艘には、王太女旗も掲げられていた。

 王太女旗がそこにあるということは、まだ王太女が船にいるということだと思うが、立て続けに城郭内で襲撃事件があっただけに、そのまま船内に待機をしてもらっているのだろうと、ジグは考えた。

 しかし、てっきり、リー=ハックもそっちに行っているものだと思い込んでいた。

 だから、司令官が営牢にいると教えられて、ジグはかなり戸惑っていた。

 

「来たか、ジグ。まずは報告を聞こうか」

 

 案内を受けたのは、奥側が地下牢になっている営舎の一室だ。

 この地下牢から外に出る唯一の通路の出口側にあり、奥に監禁されている囚人が外に出るには、ここを通るしかない。

 そういう場所だ。

 

 それはともかく、こんな場所は司令官のいる場所ではないし、司令官の座っている机に酒瓶が置かれていて、半分以上がなくなっていた。そして、リー=ハックの前には、飲みかけのコップもあり、酒を飲んでいるのだと悟った。

 彼は、中央の王軍から左遷されてきた将軍であり、かなりの不平屋だったが、任務中に酒を飲むような性質ではなかったので、ジグは少なからず驚いていた。

 

「あの、お酒を?」

 

 思わず訊ねてしまった。

 

「飲んでるな。それよりも報告だ」

 

 リー=ハックは言った。

 

「あっ、はい。やはり、襲撃は賊徒のものだったと思われます。前線に向かうはずだった輜重隊は壊滅していました」

 

 ジグは報告した。

 このガヤから出発した輜重隊が何者かの襲撃を受けたという報告を受けたのは、午前中のことであり、ジグは副司令官として騎兵を率いて、その襲撃の一団を追跡するために出動していたのだ。

 それで、ずっと外に出ていたが、たったいま戻り、こうやって報告をしに来たということだ。

 

「だった……と思われる?」

 

「逃亡されていました。私が到着したときには、すでに襲撃が終わっていて、すべての兵糧は焼却され、警備の二百ほどの将兵は皆殺しになっていました。おそらく、連中も騎馬を使ってます。足跡を追いましたが、結局、断念せざるを得ませんでした。こっちの騎馬隊よりもずっと速く移動できるものと思われます」

 

「いま、皆殺しと言ったか? 襲撃の一報があってから、お前が出たのはそんなに長い時間ではなかったと思うが?」

 

「皆殺しです。城郭に一報してきた騎兵を除き、ひとりの生き残りもいません。非常に高い訓練をされた一団に間違いありません。そして、ほとんどの者が銃でとどめをさされています」

 

「銃か……。領都に前進している隊の兵糧車もまた、銃で襲われているんだったな」

 

「クロイツの領軍もです。賊徒だと(あなど)ってはいかん相手だと、改めてわかりました」

 

「銃で武装……。風のように速く駆け、あっという間に二百の軍を皆殺しにできる能力……。王軍の占拠している城郭内で民衆の暴動を起こせる扇動力……。特に、侮る材料は見当たらんな」

 

 リー=ハックが自嘲気味に笑った。

 かなり疲れているみたいだ。

 ジグはそう思った。

 

 目の前のリー=ハックは、もともとは中央の有能な軍人だったが、五年ほど前にキシダインという王族に嫌われて、こっちに流された司令官である。

 こういう賊徒討伐などで、地方軍はたびたび出動することもあるが、中央の王軍ともなれば、滅多なことでは出兵などない。

 少なくとも、いまのルードルフ王の治世ではそうだ。

 だから、リー=ハック自身が戦場に出るなど、初めてのはずだ。

 たかが賊徒討伐で、司令官が出なければならない事態など、滅多にあるわけじゃない。

 だから、疲れているのかもしれない。

 

「ところで、王太女殿下はどうなさったのですか?」

 

 ジグは気になって訊ねた。

 王太女のイザベラがどういう経緯で、この南王軍の戦に加わることになったのかは知らないが、王族、しかも、王太女ほどの身分の者が地方軍に来るなど大変なことだ。

 このリー=ハック司令官も、十日足らず前にその連絡に接し、ジグから見ても、リー=ハックは、再び中央に返り咲く機会だと口にして張り切っていた。

 ところが、このところは、まるで興味がなくなったように、王太女のことを口にしなくなり、いまは王太女のところではなく、こんな営牢などにいる。

 まさかとは思うが、もしかして、出迎えに行っていないのか?

 

「忘れていた。ばたばたしていたのでな。どっちにしても、船から降ろすわけにはいかない。王太女の安全を確保できる場所がない」

 

「忘れていた? まさか──」

 

 ジグは声をあげた。

 今日になって、城郭内でも兵糧庫の襲撃があったので、王太女の安全が確保しにくいというのは理解できるが、忘れていたとはどういうことなのだ?

 ジグは耳を疑った。

 

「明日には挨拶に行く。しかし、もう遅いのでな……。実は、たったいま、船で待っている殿下から書が届いたところだ。自分にできることはなんでもするそうだ。慌てて、こっちからも、謝罪と明日までは船内に留まって欲しいと伝言を送ったところでな」

 

 リー=ハックが笑った。

 ジグは唖然とした。

 いまの物言いだと、こちらから連絡したのは、王太女側から書簡が届いてからなのか?

 しかも、それを受けても、書簡を送り返しただけで、リー=ハック自身は、いまだに向こうに出向いてもいない?

 

「そんな顔をするな。こっちはこっちですることもあったのだ。女のお守りなどしておれんよ」

 

 リー=ハックは言った。

 その言い方も信じられない。

 わずか十日ほど前には、この返り咲きの機会をなんとしても掴むと、本当に張り切っていたのだ。

 賊徒討伐準備よりも、王太女のもてなしの準備にずっと手をかけていて、討伐準備を任されていたジグは呆れたほどだったのに……。

 それなのに、どうしたのだろう?

 ジグは首を捻りたくなった。

 

「そ、そんな……。では、王太女殿下は、いまだに船内に?」

 

「まあそうだな──。しかし、もういいだろう。ところで、お前も参加するか? これから美人の女の諜者を訊問するところだ。これまでは男ばかりだったが、丁度、女の訊問になったときに、戻ってくるとは運がいいな、ジグ。それとも狙ったか?」

 

 リー=ハックが急に卑猥な笑みを浮かべて微笑んだ。

 ジグは言葉を失ってしまった。

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