【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「えっ?」
「なんで?」
カリュートは、ユージナと同時に声をあげてしまった。
中では、ユージナの妹が縛られて訊問を受けているはずで、訊問をしているのはオキュトのはずだった。
ところが、縄で縛られて床に転がっているのはオキュトであり、その横で困った顔をして立っているのは、あの童女の方なのだ。
さらに、オキュトは素っ裸だ。そのオキュトの服はその辺りに散らばっている。
おかしい──。
ユージナの眼を見ないと……。
「おい、ユージナ、眼を見せろ──」
カリュートは怒鳴った。
「わおっ、あんたやるわねえ、ミウ。初級の操心術だと、相手の心に逆らっていいなりにするのは難しいのよ。だから、わたしは、うまくこいつの好色を刺激する物言いを選んで、暗示をかけているのに、あんたはいきなり、拘束しちゃったの?」
しかし、ユージナは、カリュートに反応せず、妹のミューズに話しかけた。それはともかく、呼んだ名前が違うような……。
「おい、ユージナ、眼だ──。眼を見せろ」
カリュートは怒鳴った。
眼だ──。
眼を見ないと──。
目の前の光景には、腑に落ちないことだらけだ。
「ち、違うんです、ユイナ──。ユイナに教わったように、まずは自分で望むようになるって暗示をかけたら、なんか、縛られたいとか、足で踏まれたいとか言い始めて、自分で服を脱いじゃたんです。やめさせようとすると、操心術が解けそうになるのがわかるし……、かけ直ししようとしても、言ったとおりにしないとかけ直せなくなっちゃって……。今度は股を思い切り踏めって言うし、あたし、どうしたら……」
妹が泣きそうな顔になって、ユージナに抱きついた。
すると、ユージナが爆笑した。
「あんたの魔道力が強いから、こいつの隠れた性癖まで出しちゃったのね……。でも、ちょっと待って。このうるさいのを黙らせるから……。ほら、わたしの眼よ──。気持ちいいわよ。心がもっと軽くなるし……」
ユージナがやっとカリュートに振り向いた。
視線が合う。
心の底からの安堵感が襲う。
ああ、いい気持ちだ……。
カリュートは、宙にも舞う気持ちになり、ズボンの下で股間から精を吐き出させた。
「えっ、こいつ、射精したの──? えええっ──。気持ちいいって、そんなに強く反応──? 眼を見ると、気持ちいいって暗示をかけたからって……」
すると、ユージナが悲鳴をあげて、後ろに跳びさがった。
「おい、こらああっ、ミューズ──。俺を踏めって言っているだろう──。拷問されたいのか──」
そのとき、床に縛られて寝ているオキュトが怒鳴った。
よくわからないが、このオキュトがとても怒っているということはわかる。
「ね、ねえ、ユイナ、どうしたらいいですか? もう、暗示が解けそうなんですけど──」
「言葉の順番を間違えたんじゃないの──。最初のひと言は鍵になる言葉になって大切だから、眼を見ると心が楽になるとかいうような、暗示をかけ直しやすい言葉を選べって言ったわよねえ」
「ああ、間違えたかもしれません。気持ちよくなるとか、楽になるとかを最初に繰り返したかも……」
「だから、こいつが気持ちよくなることが、暗示を深めるキーワードになってんじゃないの? どうでもいいけど、こいつ、操心が解けかけてるわよ」
ふたりが言い合いを始めた。
なんだかわからないが、またもや、ユージナの眼を見たくなる。
「おい、ユージナ、もう一度、眼を見せろ──」
カリュートはユージナの肩を掴む。
「ちくしょう──。俺を気持ちよくしねえのかよ──。ああっ、なんで、俺は床に寝てんだ?」
一方で、オキュトが不機嫌そうに声をあげ、さらにきょろきょろと辺りを見回しだしている。
だが、そんなのどうでもいい──。
なにかが不自然なのだ。
だから、ユージナの眼を見ないと……。
「おい、眼を見せろって、言っているだろう」
カリュートはユージナの肩を揺り動かした。
「もう、うるさい──。カリュート、あんたは一度寝なさい。とっても気持ちがよくなるわ。ほらっ、眼を見て──。寝るのよ──。ミウ、あんたは、いいから、そいつの言うとおりに思い切り踏んづけるのよ──」
ユージナが喚きつつも、カリュートを見た。
視線が合うと、心からの愉悦が身体を貫くとともに、深い睡魔が襲ってきた。
「だ、だって、あたし、ロウ様に踏まれるなら、されたいけど、こんなの踏みたくありません──」
「四の五の言わずに、踏みなさい──。暗示が解けるってばあ──」
激しい睡魔に身を委ねるカリュートが完全に眠る前に見たのは、半泣きになっている童女のミューズが思いきり、オキュトの生の股間を踏みつける光景だった。
勃起していたオキュトの股間から白濁液が飛びだし、ミューズが悲鳴をあげて跳びあがるのを辛うじて認識した。
しかし、それで完全に眠りの中に陥ってしまい、あとはなにもわからなくなった。
*
「ああ、酷い目に遭った……。まあ、色々と想定外のこともあったけど、概ね、イライジャさんの計画通りということになるのかしら……。」
ユイナはその場にぺたんと尻餅をついた。
なんか精魂つきたという感じだ。
連れ込まれた牢の中である。石の壁と天井と床に囲まれたかなり広めの場所であり、おそらく地下牢なのだろう。
そこに寝ているカリュートがそれを匂わすことを言っていた。
通路の先には、牢番の詰め所があるとも……。
いずれにしても、とりあえず、この場所にはカリュートが施したらしい防音の結界もあるし、ユイナたちを陵辱しようとしていて、カリュートとオキュトは、ここを人払いしているようだ。
当面は安全だろう。
こいつらが、賊徒兵を制御できるだけの高い立場の幹部であることや、そもそも、こいつらの名前については、ユイナの眼に刻んでいる鑑定術を使って知ったことである。
とにかく、事前に調べた噂の通り、訊問者がひとりであってよかった。そういう噂だったから、操心術で操るという手段になったけど、よく考えれば、集団で見張られている状況なら問題のある方法だった。
まあ、その場合でも、まったく対応できないというわけではなかったが……。
「大丈夫ですか、ユイナ……。びしょ濡れじゃないですか。いま、乾かします」
ミウもユイナの前にぺたんと座り込む。
次の瞬間、温かい風が身体を包み、気がつくと、ユイナの濡れた服も身体も、髪までも乾いている。
あいつにさんざんに触られて濡らしてしまった下着も、完全にきれいになっているのがわかる。
ユイナはほっとした。
「便利な魔道ねえ。生活魔道って、いうんでしょう?」
ユイナは笑った。
「ええ、生活魔道系の洗浄術です。一番最初に覚えた魔道です。ロウ様やエリカ様たちにも、気に入ってもらえて、いつも喜んでいただきました」
ミウが嬉しそうに笑う。
「そうでしょうね。わたしには使えないけど……。でも、確かに、この魔道は露営するような旅には便利そうねえ」
ユイナはしみじみと言った。
「えっ、だったら、教えますけど……」
「あのねえ……。あんたみたいに、教われば、どんな魔道でもすぐにできるようになるっていうのは、本当は常識外なのよ。普通は相性のいい系統の魔道をひとつか、ふたつくらい……。あんたは、結界魔道も、攻撃魔道も、白魔道も、空間魔道も、そして、今度は操心系の黒魔道も覚えて、いよいよ、あの魔道馬鹿たちに近づいたけど、普通は無理よ。わたしは禁忌系の古代魔道はけっこういけるけど、ほかの魔道は初級程度よ。さらに生活魔道なんて、手をつけたくないわよ」
「そうなんですか……。それでも、ユイナの方がすごいじゃないですか。この眼球紋という方法は素晴らしいです。魔道封じをかけられても、これは使えるだなんて」
「目隠しをされればだめだけどね……。それに、わたしが何年もかけて身につけた必殺の技を、たった一日で使えるようになったあんたは、どうなのよ」
ユイナは自嘲気味に笑った。
「それはユイナが教えてくれたからです」
ミウがにこにこしながら言った。
ユイナは嘆息した。
「まあいいわ。それよりもこのカリュートを抑えられたのは運がよかったわね。それに、こっちは問題ないわ。操心術の暗示のキーワードをわたしの眼を見るという行動にしているから。誰かさんみたいに、欲情に忠実になることをキーワードに操心をかけるへまはしてないし……」
ユイナは床に転がっている男たちをちらりと見た。
カリュートについては、ユイナの魔道で眠らせていて、完全に寝息をかいている。
また、ミウが股間を踏んづけたオキュトについては、余程にミウが強く踏んだらしく、泡を吹いて気絶している状態だ。
自縛であったが、さっき魔道で結び直したので、起きあがってもとりあえず問題はない。
「ああ、だって、操心術をかけるときには、自分の望まない感情や行動をさせるのは難しいから、とにかく操心にかかることを気持ちがいいと思わせろって、ユイナが言ったから、そうしなくちゃと思ったんです」
ミウは、ちょっとオキュトを見て、嫌悪感でいっぱいにして顔を歪める。
なにしろ、白目を剥いているが、顔は笑っているし、なによりも仰向けになって、性器を剥き出しにしているのだ。
ユイナも気持ち悪いと思う。
「その結果、こいつが自分で裸になって自縛し、ミウに身体を踏みつけろって叫んだということね」
説明は受けていないが、状況からして、そんなことだろうと理解した。
「そうです……。失敗しました。ユイナが来てくれて助かりました。どうしていいか、わかんなくなってきて……。でも、操心が解けようとしているのはわかるし……」
ミウがちょっと意気消沈したように頷く。
「まあね」
確かに、あれは気持ち悪かった。
「とにかく、情報を取り出すのは、こっちのカリュートで十分よ。賊徒団の最高幹部のひとりみたいだから。侯爵夫人の情報は絶対に知っていると思う。こいつに比べれば、この変態は小者よ」
ユイナは言った。
「もしかして、石運びの作業をしているとき、突然にユイナが服をぱたぱたしたり、スカートをまくったりしたのは、この人を見つけたからですか?」
「そうよ。眼球紋で刻んでいる鑑定術で、遠目から見ている幹部に気がついたからね。あれっ、もしかして、また、わたしが我が儘でぐずりだしたのかと思った?」
ユイナは笑った。
すると、ミウが顔を赤くした。
「す、すみません」
「まあ、それだけわたしの演技が上手だったということね。それにしても、あんなんで引っかかるんだから、世間の男なんてちょろいものね」
ユイナはけらけらと笑った。
いずれにしても、ユイナとミウがこうやって、わざと賊徒に捕らわれるような目立つ行動をして、実際にあえて訊問を受けるようなことをしたのは、とにかく手っ取り早く、この領都のどこかに監禁されているらしい侯爵夫人の情報をとるためだ。
もちろん、ユイナはこんな危険な役目は嫌だったが、イライジャが誰かが囮になってわざと囚われ、情報をとってから、ほかの仲間を呼び込むという案を出したとき、このミウがそれは自分にしかできないと立候補したのだ。
確かに、囮で囚われる者は、情報を聞き出すために、初級でいいので操心術が使えないとならないし、逃亡するにしても、外で待機している仲間を引き込むとしても、移動術のような魔道を使いこなせないとならない。
魔道については天才的なこのミウは、数箇月前に魔道を覚えたとは信じられないほどに、魔道を使いこなし、すでに移動術も使えるし、縮地という技も自由自在だ。
あのガヤの港町から、たった一日足らずで、この領都まで辿り着いたのは、ミウの縮地術で連続移動してきたからだ。
確かに、ミウ自身が主張するとおり、その役目ならミウが適任だろうと、ユイナは横から聞いていて思った。
かなり危険な任務だが、魔道さえ封じられなければ、ミウの魔道は十分な武器だ。もっとも、問題はそこなのだが、ユイナが眼球に刻んでいる眼球紋という魔道の方法は、大抵の魔道封じ手段を無視できる。それをミウが覚えればいい。
実際、ユイナはそれにより、あのパリスさえ騙しきって、監禁されているあいだ、自分の魔道を確保し続けた。
ユイナは、ミウに眼球に初級操心術を刻む方法を教え、ミウはあっという間にものにしてしまった。
とにかく、まずは潜入者に、ミウがなることが決まった。
だが、問題はミウと一緒に行く者だった。
さすがに、ミウ単独というのは、誰も考えなかった。
そもそも、前提として、囮による情報収集という方法をイライジャが選んだのは、ちょっとした調査の結果、この賊徒団の幹部が、このところ保護を願って領都にやってくる者のうち、美人とみるや、難癖をつけて監禁して、性的な悪戯をするという噂に接したからだ。
しかも、ほかの男は連れ込まずに、ひとりで訊問するという。
だったら、そのときに操心術にかければいいということになった。
しかし、まだ童女のミウでは、いくら顔が可愛いとはいっても、賊徒の幹部が手を出さない可能性がある。
そこで気絶している変態は例外的存在だ。
囮役は、ミウ以外に必要だ。
戦闘力のないミウなので、戦える者が望ましいが、獣人のイットではまず潜入そのものが成立しない。イットは魔道を受け付けないので、変装ができないからだ。
同じ理由でマーズも不適格だ。
身体が大きいので、マーズがいると、まず敵が油断をしてくれない。むしろ危険になる。
身体の大きさを変えるほどの変身術だと、魔道を使えないマーズには無理だ。
その結果、消去法で、もうひとりは、ユイナということになった。
イライジャは、自らを考えていたみたいだが、ユイナはミウが自ら立候補した時点で、自分が同行することを決めていた。
イライジャは、外にいて最終的な指図をしてもらう必要がある。
囮で潜入して失敗した場合、イライジャが捕らえられてしまった側だった場合、その不測の事態に対応できる人材がいなくなる。
そもそも、ユイナは、このミウが嫌いじゃない。
まだ十二歳のくせに、随分と好色でませているし変態だ。あの乳女のスクルドや残念女王のガドと、淫乱さではいい勝負だ。
そして、とても素直だ。
全身全霊で、ロウのことが好きだと表していて、なんか可愛いなあと思ってしまう。
そういうわけで、ミウとユイナが情報確保のために、あえて賊徒の中に入り込むことが決定した。
ユイナの黒い肌とエルフ族特有の耳は、簡単な魔道液と耳覆いで隠すことができた。
あとは、ミウと一緒に上手い具合に入り込み、適当に怪しまれて捕らわれることだったが、それについても、運よく、わずか数ノスで、賊徒団の最高幹部と接触することに成功した。
魔道封じの枷をつけられることは予想していたが、眼球紋の操心術ですぐに外させることはできると思っていたし、実際にそうなった。
もっとも、計算外は、目隠しをされたまま身体中を触られたことだ。
あれは気持ち悪かったし、一時はだめかと思った。
「そういえば、あんたは目隠しは、すぐに外されたの?」
ユイナは訊ねた。
目隠しをされていては、いくら眼球紋でも魔道封じをされたのと同じことになる。
ユイナはそれで苦戦したが、ミウは大丈夫だったのだろうか?
「あっ、はい――。こいつが、あたしの顔を舐めようとして、すぐに目隠しを外したんです。あたし、びっくりしちゃって……。それで思わず、頭突きをして……」
「頭突き?」
「はい、そして、必死に眼球紋で操心をかけたんですけど、慌ててたんで、変な言い回しになったのか、そいつがもっと俺をぶってって叫んで……。そして、あたしの拘束を外して、しかも、自分で服を脱ぎ始めちゃって……」
「もういいわ」
ユイナは手を振って、ミウの話をやめさせた。
「じゃあ、とりあえず、こいつを起こすわ。ところで、その後はすぐに脱出するけど、ここから移動術は使えそう? 使えないとなれば、ちょっと面倒よ」
ユイナの言葉に、ミウはちょっと周囲を探るような感じになる。ユイナが鑑定術を使った感じでは、移動術を妨げる結界のようなものは感じないが、魔道については、すでにミウが能力が高い。
ユイナの感じないものをミウが探知できるかもしれない。
「大丈夫だと思います」
しばらくしてから、ミウが大きく頷いた。
「いいわ。じゃあ、起こすわね」
ユイナは、カリュートを起こすために魔道を放った。
「おっ、なんだ……?」
カリュートは、ちょっとぼんやりした感じだったが、ユイナが眼を合わすとすぐに操心状態に戻った。
必要な情報を取り出す。
その結果、侯爵夫人は、領主の屋敷の離れに閉じ込められているということがわかった。賊徒団の頭領が気に入り、毎日性調教をしているそうだ。
だが、その頭領は嫉妬深くもあり、部下がその離れに近づくことさえ、禁じている。
また、その離れの周辺に仕掛けられている警戒設備のことをも喋らせた。
カリュートがすべてを知っているとは限らないが、こいつが認識している分だけでも、この牢舎よりもずっと警備は厳重だ。
少なくとも、移動術や縮地のような魔道は、反結界が刻まれていて、通用しないみたいだ。
そうなれば、力押しで突入するしかないかもしれない……。
まあ、情報さえ持ち返れば、あとはイライジャがなにか考えるだろう。
とことん、知っていることを喋らせてから、今度は記憶を消失させる暗示をかけて、もう一度眠らせる。
もうひとりのオキュトも、記憶を消去したいところだが、こっちについては操心をかけるキーワードが面倒なことになっているので、手をつけるのはやめた。
ユイナとミウのことについては、逃げたとは思っても、侯爵夫人のこととは結びつけないだろう。
いずれ結びついたとしても、そのときには、事は終わっている。
イライジャは、情報が入手できたら、すぐにでも突入するというようなことを言っていた。
「どうします? いまの情報が正しいかどうか、あたしたちだけで一度確認した方がいいんじゃあ……」
カリュートをもう一度眠らせると、ミウがそんなことを言い出した。
「馬鹿なことを言うんじゃないわよ。余計なことをして、その警戒設備に引っかかったら、せっかく掴んだ情報が木阿弥になるじゃないのよ。わたしたちだけでできるのは、ここまでよ。さっさと移動術を刻みなさい。イライジャさんのところに戻るわよ」
「はい、ユイナ」
ミウが素直に頷く。
すると、身体の下に移動術の紋様が出現した。