※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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739 突入せよ! クエスト完了、しかし…

「殺した──? この人殺し──」

 

 イライジャに向かって伸びていた銃口が火を噴いた。

 

「ええ──?」

 

「きゃあああ」

 

「危ない──」

 

 イライジャは、まさか自分が撃たれると思わず棒立ちのままでいた。また、ユイナは悲鳴をあげてうずくまり、イットが立ったままのイラジャに飛びついて床に押し倒してきた。

 イライジャが立っていた後ろの扉が銃弾で穴が開く。

 

「うわっ」

 

 その弾痕を見て、イライジャは眼を丸くしてしまった。

 

「な、なによ、このあほおお──。わたしたちは助けに来たんだから──」

 

 ユイナが起きあがって、シャロンを怒鳴りつける。

 

「わ、わたしは、それを頼んでおりません」

 

 椅子の背もたれに隠れて銃を撃ったシャロンが二挺目の銃を背もたれに置いて構える。

 ぎょっとした。

 火縄についたままの銃をあらかじめ数挺準備してあるみたいだ。

 ここに監禁されていたシャロンが、そんなものを準備できるわけがないので、渡したのはあのキーネだろう。

 しかし、ここに監禁されてたシャロン夫人自身に銃を渡すとか、あり得るのか──?

 もしかして、呪術による洗脳とか、それとも、隷属の魔道──?

 

「うわっ、撃つなああ──」

 

 今度は銃口をユイナに向けている。

 どう見ても、銃の扱いなど初めての感じだが、銃など相手に銃口を向けて引き金を引くだけだ。

 しかも、この距離だ。

 外しようもない。

 

「しゃああああ──」

 

 イットが跳躍した。

 

「きゃああああ」

 

 イットがシャロン夫人を椅子の後ろから突き飛ばして、椅子の後ろから離した。

 その反動で銃が発射され、誰もいない壁に銃弾が喰い込む。

 また、シャロンは、ほとんど裸同然の薄物一枚だけを身体に身につけていた。胸を乳房の前で紐ひとつだけで結ぶ肌着であり、丈は乳房の部分しかなく、臍から下は剥き出しだ。

 ただ、股間には革の貞操帯がきつく喰い込んでいる。

 また、両手は自由だが、左足首には革枷が嵌まって、枷に繋がっている長い鎖が椅子の脚のひとつに繋がっている。

 

「イライジャさん──」

 

 イットが椅子の後ろから銃を出した。

 たったいま撃った二挺を含めて、三挺の銃があったみたいだ。残りの一挺にも火縄に火がつき、すぐに発射できる状態になっていた。

 

「こ、殺しなさい──。あなたたちのような悪党にさらわれるくらいなら、死を選びます。その銃を返して──。三挺目はわたしの自殺用です」

 

 シャロンがイットが手にしていた銃を奪おうとするように飛びかかる気配を示した。

 

「ええっ?」

 

 イットが驚いて目を丸くしている。

 

「待ちなさいって」

 

 そのとき、いつの間にか、シャロン夫人のところに来ていたユイナがシャロンの足首に繋がっている鎖の根元を踏んだ。

 

「きゃあああ」

 

 鎖が引っ張られる感じになり、シャロンが前のめりに倒れ込む。

 

「は、離して──」

 

 シャロンが今度はユイナに飛びかかる。

 だが、さすがに、たかが貴族夫人にどうにかなるユイナでもない。いくら武術の心得えがないといっても、ただの人間族の女が身体能力でエルフ族にかなうわけもなく、ユイナも簡単にシャロンをうつ伏せにして、両手を背中に捻じ曲げてしまう。

 

「いたいっ、いたああっ」

 

 シャロンが悲鳴をあげた。

 だが、それでも足をじたばた動かしての腕からの腕から脱しようとする。

 しかし、イライジャは混乱してしまった。

 どうにも、隷属で身体の行動を支配されているとか、呪術のようなもので思考をねじ曲げられているという雰囲気ではない。

 そういうときには、明らかに態度が不自然になる。

 シャロンは、どう見ても、自分の意思で行動しているか、あるいは、魔道的な方法以外で操られてるかだ。もっとも、魔道的な方法以外の操りとは思いつかないが……。

 

「ユイナ――、どうなってるの? 人質だった侯爵夫人は、彼女に間違いないの? それとも、なんらかの異常兆候は?」

 

「そんなのありません。そして、間違いなくシャロン=クロイツ夫人です――。ねえ、イット、来て──。これで拘束して。あと口枷もさせて──。こいつ舌を噛もうとしてるわ──」

 

 ユイナが膝でシャロンの背中と腕を押さえるとともに、シャロンの顎をぐっと押さえた。

 それとともに、床に革枷がふたつと穴あきのボールギャグが転がる。

 収納術でしまっておいたものを出したのだろう。

 ただ、おそらくこれらは、もともとロウが淫靡な悪戯をするときに、よく取り出して女たちに装着させるものみたいだ。そも証拠に、口枷など涎が垂れるのを阻止できないように、口に嵌まる部分の球体に穴がたくさん開いている。

 それをなぜ、ユイナが自分の収納術で格納していたのかは知らないが……。

 

「どういうこと──? もう一度、鑑定して、ユイナ──」

 

 とにかく、イライジャも暴れまくるシャロンに飛びかかる。

 イットと協力して、後手に手枷をつけて、足首にも枷を装着した。椅子と繋がっていた鎖付きの枷については、キーネから奪った鍵で簡単に外れた。

 

「何度鑑定しても、別に洗脳とか、操られているとかじゃないですよ。こいつは、自分の意思で抵抗してるんです。多分、逃げたくないんじゃないんですか」

 

 最後に、ユイナが強引にシャロンの口にボールギャグを咥えさせて、口枷を嵌める。

 

「んんんんっ」

 

 だが、シャロンはまだ暴れている。

 イライジャは困惑してしまった。

 

「逃げたくない?」

 

「多分ですけど……。だけど、どうでもいいけど、これじゃあ、連れて逃げるのも大変じゃないですか? ああ、丁度いいから、この貞操帯を使うか……。簡単な初歩魔道紋だから、書き換えは一瞬ね。ちょっとここをいじくって……」

 

 三人がかりでシャロンを押さえている状況だが、ユイナがそう言って、シャロンの股間に嵌まっている貞操帯に手を置く。

 ユイナのかざしている指が青白く光り、その光が貞操帯に移っていく。

 

「シャロン様、大人しくしてください。あたしたちは、あなたのお父様の依頼を受けて、賊徒からあなたを救出しに来た冒険者です。これはクエスト受けのときに預かったベルフ伯からの手紙です」

 

 イライジャはうつ伏せに押さえているシャロンの視界に入るように、しまっていた書簡を見せた。

 ここで見せるつもりはなかったが、もしかしたら、救援者であることを信用されていないのではないかと考えたのだ。

 ベルフ伯からの書簡には、伯爵家の家紋が使われているし、字体でわかると思った。

 また、ベルフ伯は、シャロン夫人の実の父親である。

 

「んふううう」

 

 だが、シャロンは顔でその手紙を払った。

 

「とにかく、大人しくさせてから連れ出しましょうよ。こいつの話も事情も逃げ出してからにしましょう、イライジャさん」

 

 ユイナが顔をあげた。

 

「そ、そうね」

 

 イライジャは言った。

 だが、両手両足を拘束されているにもかかわらず、シャロンは必死の抵抗を続ける。

 この状態で、屋敷の外のミウが待っているところまで突破するとなると、かなり面倒だ。

 マーズがくい止めていると思うが、この離れの外には、すでに賊徒兵が殺到しているはずなのだ。

 

「あんた、大人しくしなさい……。ところで、その貞操帯は、ずっと装着しっ放しなんでしょう。お尻に張形が入れられてますよねえ? 大人しくしないとこうですよ。うんちが溜まっているお尻の張形を動かされるのは苦しいですよう……」

 

 ユイナが言った。

 シャロンが一瞬、眼を見開いた。

 どうでもいいが、なんという言い草だろうと、イライジャは呆れた。

 

「んぐううっ」

 

 次の瞬間、シャロンが身体を突っ張らせた。

 貞操帯のお尻の部分がぶるぶると震えている。

 どうやら、さっき貞操帯に刻まれている魔道紋様を書き換えるとか口にしていたので、ユイナが制御できるようにしてしまったのだろう。

 そして、シャロンに嵌められているアナルの張形を動かしたのだとわかった。

 だが、どうでもいいけど、ロウの薫陶もあるのか、ロウの女たちは、嗜虐的な性交や淫らで好色的な変態的な行為に、あまり抵抗がなくなっている気がする。

 まあ、イライジャも人のことは言えないが……。

 

「んんっ、んんっ、んんんっ」

 

 お尻の穴を張形で刺激されるのは苦しいのだろう。

 シャロンは涙目で首を左右に振って、すがるように、なにかを必死にユイナに訴えようとしている。

 

「そんな眼をしても無駄よ、シャロンさん。これからここを飛び出しますけど、大人しくなってもらいますね」

 

 ユイナが言って、次の瞬間、シャロンの全身が硬直して、その身体が限界まで弓なりになる。

 

「んがあああああ」

 

 シャロンが穴開きのボールギャグから涎を撒き散らしながら絶叫した。

 イライジャには、ユイナがなにをしたのかわかった。

 ユイナが魔道紋を書き換えた貞操帯を使って、シャロンのお尻に電撃を流したのだ。

 発散している魔道の波長でイライジャにもそれがわかった。

 

「んぎいいいっ、んぎいいいい」

 

 しかし、長い──。

 イライジャがちょっと躊躇(ちょうちょ)しているあいだに、シャロンがぐったりと脱力した。

 気絶したみたいだ。

 

「ちょ、ちょっとユイナ……」

 

 さすがにイライジャは、ユイナをたしなめた。

 

「だって、仕方ないじゃないですか。気絶くらいさせとかないと、外は突破できませんよ。こいつをこのまま連れていくと、多分、賊徒の前で暴れだしますよ」

 

 ユイナが言った。

 イライジャは溜息をついた。それはそうかもしれないと思ったのだ。

 

「まあいいか……。とにかく、このままじゃあ、気の毒だから毛布にでも包んで運びましょう。ユイナ、毛布を出して」

 

 本当は、もしも裸のような格好だったら、ちゃんと着替えさせて連れ出すつもりだったが、そんな状況でもない。

 ユイナが出した毛布でシャロンをぐるぐる巻きにして包む。念のために毛布の上から縄もかけた。

 ユイナと協力して、ふたりで担ぎあげる。

 イライジャが前でユイナが後ろで、それぞれの肩に載せた格好だ。

 

「じゃあ、行くわよ──。イットは前を守って──。いい?」

 

「あっ、はい……。だけど、思ってたのと違いますね。あたしたちが悪者みたいで……」

 

 イットがぼそりと言った。

 

「それを言わないでよ……。とにかく、マーズと合流して強行突破よ──。出発――」

 

 イライジャが声をかけ、そして、三人で駆け出した。

 

 

 *

 

 

 マーズは、別宅の石壁を背にして戦い続けていた。

 後ろに敵が回り込めないというのは、それだけで随分と戦いやすかった。

 マーズは、不謹慎だが斬り殺した賊徒の身体を別宅の壁の前に防壁のように積んで、それで敵が射かける矢を避けるということをしている。

 目前に迫っている賊徒は、少しずつ集まってきて、いまはもう六、七十人はいるだろう。

 斬り殺した賊徒の数も同じくらいだ。あの爆裂矢によるものを含めると、その倍にもなるかもしれない。

 

 ただ、ユイナからもらった爆裂矢は、すでに残り二発である。

 一方向からだけではなく、あらゆる方向から賊徒の集団がやってきて、そのたびにマーズは爆裂矢を射て、大音響の火柱とともにそっちからの集団を地面ごと破砕した。

 それを繰り返しているうちに残り二発になった。

 マーズはその二発は残しておくことにして、爆裂矢を隠した。

 

 それで、もう、爆裂矢がなくなったと思ったのだろう。

 そうなると、あっという間に、このマーズの守る離れの出入り口に向かって賊徒たちが殺到してきた。

 

 ただ、いまはそれは少し遠巻きに戻っている。

 マーズが容赦なく接近してきた賊徒を斬り殺して、目の前に賊徒の死骸の山を築きあげてやったからだ。

 それで、いまは弓を中心とした攻撃に変わっている。

 

 そのため、マーズの身体には、もう全身に十数箇所の矢傷があり、全身は血にまみれていた。

 ただ、動きを妨げるものはない。

 致命傷となるものを避けるために、かすり傷程度で終わるものを無理に避けるのを諦めたためにできた傷ばかりだからだ。

 また、剣で斬られたものはない。

 マーズの剣の届く範囲内に近づけば、ほぼ一刀で全員を斬り殺している。

 最初に使っていた大剣はもう折れてしまってない。倒した相手から奪ったものを使っていて、いまは四本目になる。

 

「畜生、押し包むんだ──。夫人を連れて行かれてたりしてみろ──。怒り狂った頭領に全員が殺されるぞ──」

 

 賊徒たちの囲むの外側で大声で声をかけているのは、この正面を指揮している隊長だ。

 最初は組織だった感じではなかったが、あの男が到着したことで、俄然、賊徒たちがまとまりを作り出した。

 マーズの矢傷も、それからものだ。

 ただ、幸いなのは、どうやら、背後の離れの建物に入るための場所は、後ろの出入り口一箇所だけみたいだ。

 だから、ここでマーズが倒れない限り、賊徒たちは夫人の救出を防ぐために人間を建物に入れられないみたいなのだ。

 

「いけえ、いかんかあ──。ここで殺されなくても、頭領が戻れば、怒りで殺される──。行けええ」

 

 隊長が絶叫している。

 喚声をあげて四十人ほどが一斉に突っ込んできた。

 賊徒たちの死骸で作っている壁まで来られれば、それを崩されて矢を避けにくくなる。

 マーズは、あえて前に出て、集団の中に紛れた。

 混ざってしまえば、賊徒たちは矢を遣えない。

 

「うわあああ」

 

「ちくしょおおお──」

 

「くそおおお」

 

 賊徒たちが声をあげながら、剣を振ってくる。

 マーズは容赦なく剣で斬り、突き、払いのける。

 三人、四人とまとまって血を噴いて倒れる。

 

 身体はよく動く。

 以前なら、これくらい動けばもう息があがったはずだが、ロウに愛されるようになってからは、いくら動いても限界という感じはない。

 信じられないくらいに身体が軽い。

 

「来たか──。よおし、全員さがれ──」

 

 すると、隊長の声──。

 新手か──?

 すると、金属音がして、最初に地面が音を立てて弾けた。

 なんだと思う間もなく、次いで、前を塞いでいた賊徒が同時にふたり、呻き声とともに倒れた。

 

「くっ──」

 

 膝に熱を感じた。

 さらに金属音──。

 今度は地面が数箇所弾かれる。

 

 銃か──。

 

 しかも、まだ味方が残っているのに、マーズに撃ちかけている。

 マーズは跳び退いて、建物側に作っている死骸の壁の内側に身を躍らせた。

 右肩に銃弾──。

 

「あぐっ」

 

 人壁の内側に倒れ込む。

 さすがに、すぐに起きあがれない。

 しかし、銃弾は作っていた死骸の壁に阻まれて、こちら側までの貫通は阻まれている。

 マーズは、ロウとともに鍛錬した気を練って、弾痕の当たった傷痕に気を集める。痛みが薄くなり、なんとか動けるようになる。

 

「いけええ──。いまだああ」

 

 あの隊長が絶叫した。

 多くの兵が一斉に駆けてくるのがわかった。

 マーズは隠していた弓と爆裂矢を手に取り、迫ってくる集団に向かって射る。

 大音響とともに、人の集団が吹っ飛んで消滅する。

 

 続いて、もう一発──。

 

 銃が集まっている場所を確認して、そこを目がけて射た。

 再び大音響がして、阿鼻叫喚の混乱が向こう側で起きる。

 

「マーズ──」

 

 声がした。

 イットだ。

 

「うわっ」

 

「あんた、大丈夫なの──」

 

 続いて、ユイナとイライジャも来た。

 毛布に包まれた大きな蓑虫(みのむし)状のものをふたりで担いでいる。

 もしかして、あれは侯爵夫人?

 

「ああ、来ましたか……。ところで、それが人質だった夫人ですか?」

 

 訊ねた。

 多分、そうだと思ったが、念のためだ。

 

「そ、そうね……。動けるの……?」

 

 毛布に包まれている夫人を担いでいるイライジャが心配そうに訊ねてきた。

 

「いくらでも……」

 

 マーズは応じた。

 

「そう……。じゃあ、もう少し頑張って。外壁まで行けば、逆結界もなくなる。ミウの移動術で逃亡できるわ。治療もそのときまで我慢して……」

 

「大丈夫です。いくらでも戦えます」

 

 イライジャの言葉にマーズは頷いた。

 

「あたしが先頭に……。大丈夫です。今度は突っ走りません……。失敗もしません。後ろを見て進みます」

 

 イットだ。

 なんだか悲痛そうな顔をしている。

 もしかして、最初に突っ走ったから、叱られたのだろうか。

 

「ユイナ、あの爆裂矢はまだあるか? あるなら使いたい。あれはいいな。おかげで、ここを守り抜けた」

 

 マーズはユイナに声をかけた。

 

「そうでしょう──。残り一発だけなら……。でも、役に立ったのよねえ。反省会にはほど遠いでしょう? そんなの、この獣人娘だけでいいんだから──」

 

 ユイナが嬉しそうに言った。そして、彼女の足もとに新しい爆裂矢が転がる。

 毛布の夫人を担いだまま、収納術で出したのだろう。

 それはともかく、毛布に包まれている夫人らしき人物はまったく動かないけど、意識がない状態なのか?

 それに、反省会って……?

 まあいいか……。

 

「もちろんだ。あれはすごいね」

 

 マーズは言った。

 褒めると、ユイナが嬉しそうに笑った。

 とにかく、マーズは爆裂矢を手に取って、弓につがう。

 

「行って──」

 

 マーズは弓を引き絞って叫んだ。

 

「走ってください──」

 

 イットも声をあげる。

 イライジャとユイナのふたりが夫人を抱えて駆け出す。

 イットがそれを守るように、前方に近い側面を一緒に進む。

 

「あっ、逃がすなあ──。追えええ──。銃は使うな──。あの毛布が侯爵夫人だあああ」

 

 向こうは、さっきの二発の爆裂矢で混乱した状態だったが、こっちが動き出したことで、また、あの隊長がそれに気がついて、悲痛な声で絶叫したのが聞こえた。

 マーズは、その声に向かって爆裂矢を射る。

 

「うわあっ、お前ら楯になれええ──」

 

 隊長の悲鳴が聞こえた。

 それが最後だ。

 大音響がして、その付近が吹っ飛ぶ。

 当たったかどうかわからないけど、とにかく、マーズも走る。

 傷だらけの身体が引きつりそうだが、気を充実させる。

 懸命に走る。

 

「逃がすなあ──」

 

 しばらく進むと、再び賊徒が集まりだす。

 外壁に向かっているのがわかるのだろう。

 どんどんと、そっちに先回りしてくる。

 

 前を五、六人が阻んだ。

 イットがものも言わずに躍りかかり、全員を斬り殺した。

 

 さらに新しい敵──。

 それはマーズが斬った。

 

「進んで──。あたしたちが全員を斬ります──。おふたりは前に──」

 

 さらに新しい敵が来たので、マーズはそれを倒しながら叫んだ。

 そのあいだに、イットも五人ほどを血祭りにしている。

 

 やがて、外壁が見えた。

 

「ミウ──。壁を壊して──」

 

 イライジャが絶叫した。

 その壁の前に十人以上の賊徒が集まっている──。

 

「しゃああああ──」

 

 イットが飛び込む。

 マーズも斬りかかった。

 あっという間に全員を死骸に変える。

 

「皆さん、退がって──」

 

 そのとき、外壁の一角が解けるように蒸発した。

 蒸気が噴きあがった向こうには、ミウが立っていた。

 

「早く──」

 

 ミウが叫んだ。

 魔道紋が赤く光っている。

 そこに乗れということだろう。

 イライジャとユイナ、マーズもそこに乗る。

 イットは、殺到してくる賊徒を必死にくい止めている。

 

「もういい、撃てええ──。さらわれるくらいなら、全員殺せええ」

 

 あの隊長の声が遠くからする──。

 まだ生きていたみたいだ。

 

「ねえ、あの声、あのときの幹部さんでは?」

 

「そうね。カリュートだわ」

 

 ミウとユイナの会話が聞こえた。

 

「イット、来てえ――」

 

 イライジャが絶叫した。

 イットが目の前の七、八人をあっという間に倒して、こっちに合流した。

 

「跳びます──」

 

 ミウの移動術が作動する。

 はらわたが捻れるような感覚が襲い、あっという間に目の前の風景が一変した。

 

 

 

 

(第17話『人質救出大作戦』終わり)

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