【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
768 国を作るという
「農民たちが庭を突破し、屋敷まで辿り着いて囲みました」
幕の外から少年の声がした。
ユーレックという名の従者らしい。シャロンから見ても、なかなかに利発そうなのがわかる。
だが、基本的に、ドピィという賊徒の頭領としてのルーベンが自分に近づくのを許すのは、このユーレックだけだ。
しかも、最小限である。
いまも、ルーベンは賊徒軍の陣の中心に黒い幕で囲ませた場所を作って、その中にひとりだけで座っている。
護衛もいるが、全員が幕の外だ。しかも、すぐ幕の近くではなく、結構距離を離した格好で守らせてるみたいだ。
そして、ユーレックという従者少年についても、いまのように、幕の外側から報告をさせている。
しかも、シャロンから見ても、外からの者も、周囲を覆っているのは黒い幕だが、ここに入るとルーベンは片目だけの片眼鏡を嵌めて、時折、外を眺めるような仕草をするようになった。
おそらく、その片眼鏡で、ルーベンだけが幕の外を透けて見ることができる仕掛けになっているのだと思う。
とにかく、随分と用心深い。
シャロンは、床几に座るルーベンの股のあいだに、正座をして地面の上に直接に座らされていた。
だから、幕に囲まれている場所に、ふたりきりの状態だ。
相変わらず、クリトリスの根元に喰い込まされている「啼き環」という名の責め具がシャロンを追い詰めているし、裸身に覆わされた内側に羽毛のあるマントが全身をくすぐり続けている。
シャロンはマントの中ですでにたっぷりと汗をかいていて、股間からはかなりの愛液が滴り続けていた。
だが、後手に手枷を嵌められているシャロンには、一切の抵抗ができない。ただ、淫らに感じさせられるだけだ。
もっとも、逃げられるとしても、もうルーベンから逃げるつもりはない。
「わかった。全員にいつでも動けるようにしておけと伝えておけ。農民たちの襲撃に変化があれば報告しろ。それまでは来なくていい」
「わかりました」
ユーレックが幕のすぐ外から離れていくのが気配でわかった。
この幕のある場所は、賊徒軍が陣を築いている場所の中でやや高台にあり、幕を開けば、あの大勢の農民たちが王太女がいる屋敷を襲撃している状況が確認できるはずだが、いまは幕を完全に閉じさせている。
片眼鏡で透けて見えるから必要ないのかもしれないが、そもそも、ルーベンは農民たちを演説でけしかけてからは、興味を失ってしまったようにも思える。
関心を寄せる感じがない。
いまも、農民たちが攻撃をしている屋敷などどうでもいい感じだ。
少なくとも、朝にシャロンを連れて、農民たちを動かした以外は、ドピィはここに引きこもって、外のことに無関心だ。
こうやってシャロンに溺れ込むルーベン──。
農民を呷り、残酷に貴族や豪商たちを殺害していくドピィ──。
まるで、ふたりの人間が彼に宿っていると思うほどに、ちぐはぐな感じがする。
いまも、本当は、王太女に関心がないからこそ、集まっていた農民を煽ったのかもしれない。
勝手に攻撃をさせておいて、しばらくは静観を決め込むという雰囲気である。
いずれにしても、シャロンには見えないので、ここでわかるのは、凄まじいほどの喧噪と、万余の農民が動くことでここまで伝わってくる地面の振動だけだ。
「まあ、今日一日というところだろうな。ガヤにいるリー=ハックという司令官には、手の者をつけまくっているが、いまのところ、女色に励むのに急がしくて、王太女救出の軍を動かす気配はないらしい。だったら、あそこにいる王太女を捕らえるか、殺すかするのに、夕方までで十分だ。お前を勝手に連れ出した仇が討てるぞ」
ルーベンがシャロンに嵌まっている首輪の鎖をぐいと引っ張る。
「おごっ」
苦しくて、口から声が迸る。
口には、穴の開いた開口具を嵌められて、その上から革の口覆いをされているのだが、垂れっぱなしの涎ですでに革の口覆いはびっしょりと変色している。
シャロンは、そのまま首輪を強引に引かれて膝立ちにさせられた。
ルーベンの手が脚に伸びて、布地の上から内腿をさすられる。
「おわっ」
シャロンは飛びあがりそうになった。
柔らかい毛でくすぐられっぱなしの肌は、これ以上ないほどに敏感になっている。
それに、啼き環が絶えず股間を責め続けていて、甘い疼きを走らせ続けていた。
ルーベンの手によって大きな快感が貫き、シャロンに襲いかかる。
すると、ルーベンが喉の奥で笑ったような声を出した。
「くくく、ちょっとは声を我慢することだ。認識阻害の首輪とは言ったが、そんなに性能の高いものじゃない。別に見えていないわけじゃない。あまり気にしなくなるだけだ。だから、ちょっとした声、ちょっとした目立つ仕草をしただけで、効果は消滅するぞ」
ルーベンがシャロンを毛皮のマント越しに抱きしめて、耳元に息を吹きかける。また、手がマントの上から乳房に触れる。羽毛がさわさわと乳房全体を襲う。
「ああっ」
シャロンは身体を悶えさせた。
声なんて我慢できない。
愛しているルーベンに愛撫されているのだ。
乳房は硬くしこり、乳首は勃起していて、それが羽毛でぴりぴりと疼いている。それを羽毛越しにくすぐられて揉まれることにより、急激に快感が上昇して、目の前がぼやけてきた。
膝の力が抜ける……。
「もっとも、もう遅いがな……。お前の存在は、ばれてしまったみたいだ。そんなによがり声を出して歩いたりすれば仕方ないか……。とにかく、目立ちすぎだ。恥ずかしくないのか、雌犬……。俺が侯爵夫人を監禁していたのも、追いかけてここにやって来たのも知られているし、俺はどうということはないが、こうやって調教されていると知れると、恥ずかしいのはお前なんだぞ」
ルーベンがマントを剥ぐって、股の奥に無造作に手を入れてきた。
「おおっ」
シャロンはびくんと身体を反応させてしまった。
そして、またもや悶え声が出てしまい、ルーベンが愉しそうに笑った。
しかし、声を出さないでいるなど無理だ。
そもそも、声が漏れるのを防げないように、わざわざ口を開かせる開口具を装着させているに違いないのだ。
ルーベンの意地の悪さだ。
もっとも、シャロンは、この姿を人に知られようが、見られようが、ルーベンがいいなら、どうでもいいと思っている。
あと残されているルーベンとの時間がどれくらいなのかわからないが、残りの人生をルーベンのそばで生き、ルーベンだけを感じ、ルーベンとともに死のうと決めている。
淫らな姿を余人に見られるなど些末ごとだ。
すると、ルーベンがシャロンから、口覆いと開口具を外した。
「さあ、外してやったぞ。少しは声を我慢できるか?」
ルーベンが啼き環に繋がっている細い鎖を強く揺すった。
「んふううっ」
その力があまりに強かったので、クリトリスが千切れるのかと思うほどの激痛がシャロンを貫いた。
だが、同時に恍惚ともいえる陶酔がシャロンを包む。
「うぐうううう」
気がつくと、シャロンは全身を突っ張らせて、激しい絶頂をしてしまっていた。
「大した雌だ。いまのは間違いなく幕の外に聞こえたぞ」
ルーベンが股間から手を抜きながら笑う。
シャロンは荒い息をしながら、ルーベンの胸にしだれかかった。
「はあ、はあ、はあ……。わ、わたしは……みんなに……知られたい……。あなたの雌犬だと……」
シャロンは言った、
本心だ。
それ以外に願うことはない。
回り道をした十年を取り戻す──。
考えているのはそれだけしかない……。
「そうか……? だが、こんな賊徒の叛乱など、早晩に討伐される。だから、俺が死ぬときには解放してやるつもりだ。俺が死んだ後まで拘束するつもりはないんだ……。ベルフ伯は、まだお前の使い道を考えているようだな。お前が卑しい賊徒に陵辱されたことを承知の婚姻を準備しているようだ。どこかの豪商の後妻だそうだぞ。だが、あまりにも評判が悪くなりすぎると、それも消えるかもしれん」
ルーベンが口調から笑いを消して、不意にそう言った。
ベルフ伯というのは、シャロンの実の父親だ。
王太女の前に、シャロンが連れて行かれたとき、イザベラ王太女は、シャロンを賊徒からの救出をクエストで依頼したのはシャロンの実の両親であり、年齢の違うクロイツ侯爵との政略結婚を強いたことを後悔していて、シャロンを引き取って、今度は幸せにさせてやりたいと泣いていたと説明された。
だが、シャロンは知っている。
ベルフ伯というシャロンの父親は、そんな峻峭な人物ではない。王太女は絆されたみたいだが、傷物のシャロンを取り戻したいなど、どうせ、シャロンの新しい使い道を見つけただけだと思っていた。
王太女が正しいのか、いまのルーベンの言葉が正しいのかは知らないが、少なくとも、ルーベンの言葉の方がシャロンの知っている実の父親の人物像に合致する。
それはともかく、シャロンは激怒した。
まだ、このルーベンはそんなことを言っているのか──。
昨日、ルーベンに「救出」されてから、何度も何度も、シャロンは同じことを言った。
ルーベンがシャロンを次に手放すとき、あるいは、ルーベンが死ぬときには、一緒に殺してくれと──。
ルーベンも、それに応じたくせに、実際にはなにもわかっていなかったのだと悟った。
シャロンは、顔を伸ばして、ルーベンの首の横に思い切り噛みついた。
「いてえええっ──。な、なんだ──。なにすんだああっ」
ルーベンが悲鳴をあげて、シャロンの顔を引き離す。
しっかりと歯形がついて、血がにじんでいる。
いい気味だ──。
「何度、言えばわかるのよ──。ルーベンが死ぬときには、わたしを殺しくれと言ったはずよ──。あんたも、それを承知したじゃないのよ──。それなにの、自分が死んだときには解放するって、なによ──」
叫んだ。
「お、お前……。だ、だが、なにも噛むことはないだろうが──。吸血鬼か──」
吸血鬼というのは、他人の血を吸って人を性支配するという伝承の魔物だ。
「吸血鬼じゃないわよ──。あんたの雌犬よ──」
腹が立って怒鳴った。
ルーベンは一瞬、きょとんとしていたが、急に笑い出した。
シャロンもちょっと冷静になり、怒ってしまったことが恥ずかしくなった。
「……ご、ごめんなさい……。痛かったわね……。血が出ているし……」
シャロンはもう一度、口をルーベンの首に寄せて、血を舌で舐める。
そのシャロンの顔をルーベンが両手で掴む。
叩かれるのかと思って身体を竦めさせたが、ルーベンはシャロンの顔を自分の顔の前に持っていき、口づけをしてきた。
舌が口の中をしつこく舐められる。
その口づけの感覚だけで、シャロンは再び夢心地の感覚になる。
「股を開け……」
ルーベンに腰を抱えられて、向き合うかたちで大きく脚を開いて、ルーベンの股間の上に跨がらせられる。
素早くルーベンは、自分のズボンと下着をずらして、股間を剥き出しにしていた。
勃起して空を向いているルーベンの怒張に、シャロンの股があてがわさせられて押し入れられる。
しかも、啼き環の嵌まっている鎖をぐいと避けながらだ。
「あぐっ、くううっ」
クリトリスの根元が引っ張られて、激痛が走る。
だが、ルーベンに与えられる苦悶は、シャロンにとっては甘美な快感でもある。
弾けるような快感でがくがくと身体が痙攣した。
「あああっ、あああっ」
完全に股間を貫かれた。
啼き環を嵌めら、それに繋がる鎖に引っ張られたままなので、びりびりと股間が痛みと疼きで響く。
ルーベンがシャロンの腰を下から持って、上下にあげたりおろしたりする。しかも、腰を回すような刺激も加えられる。
何度も何度も乱暴に、股間を律動される。
膣にルーベンの怒張が出入りするたびに、鎖が引っ張られて、クリトリスに痛みが加わる。
それが猛烈に気持ちいい……。
「あっ、あっ、ああああっ」
やがて、電撃にでも打たれたような衝撃が貫き、シャロンは絶頂してしまった。
すると、ルーベンもまた、シャロンの中に欲望の精を吐き出したのを感じた。
シャロンはがくがくと身体を震えわせ、そして、脱力した。
ルーベンが、シャロンの中に怒張を挿入したまま、シャロンを抱きしめる。
しばらくのあいだ、そのままふたりでじっとしていた。
「はあ、はあ、はあ……。お、お願い……。わたしを……連れて……逃げて……。どこか、遠いところで……。ふたりで……」
シャロンはルーベンに身体を預けたままささやいた。
さっきのシャロンの喘ぎ声は、ちょっと大きかったかもしれない。ここでなにをしていたかはルーベンの部下にもばれただろう。
シャロンはいいが、ルーベンは大丈夫なのだろうか……。
そんなことをちょっと思った。
また、口から出たのは、ただの戯れ言だ。
遠くで逃げるとはいっても、根っからの貴族育ちのシャロンに、逃げて生活することなど不可能だ。
だから、戯れ言だ。
もっとも、もしも、ルーベンがそうすると言ってくれたなら、シャロンは心からの喜びとともに、ルーベンに従うに違いなかった。
「……逃げるのは無理だな……。大勢……殺した……。お前の夫だった男も……。関係する男たち……、いや、関係のない男も……女も……子供も……全部……殺した……。だから……どこまでも、この国の軍に追われるだろう……。逃げるのは無理だ……」
「だ、だったら、やっぱり……一緒に死んで……。わたしを連れて行き……そして、殺して……。あなたが死ぬ前に……」
いまだにルーベンの男根は、シャロンの中で逞しさを失わない。
熱くて……。
気持ちがよくて……。
シャロンは、またもや身体が疼いてくる。
夕べは寝ることも許されずに抱かれ続け、朝から淫靡な責め具で追い詰められ、いまは、幕で隠されているとはいえ、ルーベンの部下たちが耳を傾けているのがわかっている状況で抱かれた。
首輪に刻んである認識阻害の効果など、もう無効になっているのは間違いない。
肉体も心もぼろぼろだ。
しかし、シャロンはもっと痛めつけて欲しいと思った。もっともっと辱められて……。もっとルーベンに苦しめられたい……。
「なら、国を作るか……」
すると、ルーベンがシャロンを抱きしめたまま、耳元でささやいた。
「く、国?」
「その気になれば、すぐにでも国くらい立てられるさ……。この南域地区に国を作ってやろう。そうすれば、この国の軍からは逃げなくてすむ。なにしろ、俺が王だからな……」
ルーベンが小さく笑った。
シャロンは噴き出した。
「い、いいわね……。でも、わたしを王妃様にしてくれなきゃいやよ。側室も許さない。わたしだけを愛して」
シャロンは言った。
戯れ言だ。
だからこそ、シャロンは心からそれを夢見た。
「マゾのくせに王妃か?」
「まぞ?」
「お前のように、苛められて感じる変態女のことだ」
ルーベンがくすくすと笑う。
「わ、わたしは、苛められてなんて……」
シャロンは否定しようとしたが、よく考えれば、ルーベンの言うとおりであることに気がついた。
ルーベンに叩かれたり、蹴られたりして、シャロンが欲情をしていたことは事実だ。だが、あれは決して苛められて悦んだわけではなく、ルーベンがシャロンに剥き出しの感情をぶつけてくれたことが嬉しかったのだ。
しかし、やはり、痛みや苦悶や辱めに興奮したのかもしれない。
シャロンも、自分がよくわからない。
「……い、いいわ……。わたしはまぞ王妃よ……。だけど、約束して。ルーベンが王になるなら、その横にいるのはわたし……。それ以外には認めないわ」
「当たり前だ。俺の横はお前だけだ。昔からずっと……。まあ、わかった。なら、俺が国王で、シャロンは俺の唯一の王妃だ……。それでいいな?」
「嬉しい……」
シャロンは答えた。
ルーベンが嬉しそうに笑った。
そして、シャロンから股間を抜く。
「あんっ」
抜けるときも気持ちがよくて、シャロンは喘ぎ声をあげてしまった。
ルーベンが愉しそうに笑った。
そして、マントを整えてもらった。後手の手枷も、啼き環もそのままだが……。
ルーベンに横抱きにされて膝の上に載せられる。
「だったら、本当に国を作るか……。シャロンのためなら、作ってやるぞ」
「わたしのため? 民のためとは言わないの?」
シャロンはくすくすと笑った。
ドピィという頭領がとても民衆に人気のある存在であるというのは知っている。さっきもそうだったが、ドピィになったときのルーベンには不思議な弁舌の力があり、大勢の人を言葉で酔わせるのだ。
それがいまも、聞こえるあの屋敷を襲撃している農民の大集団を動かしている。
「民衆のため? あの愚かで……移り気で……偽善的で……臆病で……利に貪欲なあいつらのために?」
ルーベンが鼻で笑った。
「彼らのために戦っているじゃないの?」
シャロンはきょとんとなった。
「冗談だろう。あいつらは道具だ。部下たちもな──。道具は大切だから慈しむが、道具のためになにかをしようということはないさ」
ルーベンがうそぶいた。
「彼らは道具? あなたにけしかけられて戦っているのに?」
本当であれば、シャロンは彼らに同情し、そんな偽善的なことを語るルーベンをたしなめなければならないのかもしれない。
しかし、ルーベンが彼らは道具だというのだ。
だったら、そうなのだろうという気持ちにしかならなかった。
いまのシャロンは、ルーベンのことしか考えられない。
ルーベンのことしか気にならない。
だから、他人の前で抱かれても気にならない。恥ずかしさよりも、快感やルーベンに求められる悦びが上回った。
「ああ、道具だ……。しかし、シャロンのためなら、国を建ててやるよ」
「また、戦って……?」
「戦とは限らないな。王国がこの地に国を建てることを認めれば、戦にはならない」
「認めないわよ……」
シャロンは言った。
しかし、ちょっと、もしかしてとも思った。
いまは王国は揺れている。
国王のルードルフが王都で蛮行を続けていて、多くの貴族や民衆が離反しようとしているのだ。
そういう状況の中で起きているルーベンが起こした民衆叛乱だ。
王国は事態を早期に解決しようとして、たとえば、このクロイツ領に民衆自治を認めるなどという妥協で和解に走ることもあり得ないことではない?
「認めなければ戦だ。いまもそうなっているがな……。しかし、勝ち続ければ、あいつらも、認めるしかない。そういえば、殺すつもりだったが、あの王太女は人質にでもするか? 考えてみれば、次期女王だ。恩でも売っておくか?」
ルーベンがにやりと微笑む。
だが、シャロンはむっとなった。
「生かしておくのはいいわ。でも、ルーベンの隣はわたしだけよ──。それを忘れないでね」
シャロンは頬を膨らませた。
ルーベンがまた笑い声をあげた。
そして、シャロンを立たせて背中を向けさせ、後手に嵌めていた革枷による拘束を解いた。
「ルーベン?」
自由になった手をさすりながら、シャロンはルーベンを見た。
「だったら、いまからシャロンは、
ルーベンが声をあげて、笑った。
「連座? わたしはあなたの妻として、一緒に戦うわ。一緒に死にましょう」
「いいだろう」
ルーベンが手を伸ばして、鎖と首輪まで外した。
しかし、正直に言って、シャロンは拘束がなくなっていくのをを少し寂しいと感じてしまった。
そのときだった。
幕の前に人影が立ったのがわかった。
「頭領、屋敷が燃え始めました」
ユーレックという少年の声だ。
そういえば、幕で隠れている向こう側の一角でもうもうと煙が空に上がっている場所があるのが見える。
方向的には、屋敷のある方向だ。
「燃えているだと? 農民の連中が放火したか?」
ルーベンがシャロンを地面におろしてから、移動して幕の外に向かう。
シャロンもそれを追った。
身体にまだ力が入らないし、なによりも啼き環がシャロンを苛むが、なんとか、ルーベンについていく。
幕の外に出ると、ユーレックがちらりとシャロンを見るとともに、顔を赤くした。
そういえば、首輪がないということは、認識阻害は完全にないということだ。そもそも、もともと従者のユーレックには効果が消えていたのだから、ここでルーベンとシャロンが抱き合っていたことはわかっているだろう。
そんな表情だ。
ちょっといたたまれない気持ちになる。
「い、いえ……。中の連中が自分たちで油を撒いて、自ら屋敷に火をつけてみたいです」
ユーレックが言った。
「自分で?」
ルーベンが怪訝な口調で屋敷側に目をこらす。
シャロンも視線を向ける。
遠目だから判然とはしないが、確かに屋敷は炎で包まれているが、屋敷が燃えているという雰囲気はない。
燃えているのは、周りの群衆だ。
阿鼻叫喚の悲鳴をあげている。
そのとき、冷たいものが頬に触れた。
「雨?」
ルーベンが不思議そうに空を見あげるのがわかった。