【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
81 夜の蝶ごっこ
神殿の外に出るのは十日ぶりだった。
ひそかに神殿の自室に監禁されていたこの十日……。
病気と称して閉じこもらされていた自室からやっと出れる。
そう思ったが、スクルズは少しも愉しい気分にはなれなかった。
むしろ、恐怖に包まれている。
「そろそろ、行くわよ、スクルズ。神殿の者たちはすっかりと寝静まっているわ。いまなら、見回りをかいくぐれば、誰にも見咎められることなく外に出れるわ。さあ、行きましょう」
ノルズがくすくすと笑った。
手には、細い鎖の繋がった小さな輪っかを持っている。それがなにに使う物かを知り抜いているスクルズは怯えおののいた。
ここは、ハロンドールの誇る三神殿のひとつの「第三神殿」であり、ハロンドールの王都ハロルドの三神殿といえば、国王のいる雷陽宮と並んでハロンドール王都の象徴だ。
スクルズは、その第三神殿の筆頭巫女だった。
筆頭巫女というのは、神殿では、神殿長、副神殿長に次ぐ格式の役職であり、クロノスの五人女神を祀る三個のそれぞれの大神殿において、多くの巫女の序列第一位であることを意味する。
また、男性神であるクロノスへの祭祀をする場合は、主宰は必ず女でなければならないと定められてるので、筆頭巫女が取り仕切ることになり、結果として大神殿における重要な祭祀はすべて筆頭巫女たちが主宰となるのだ。
重要な役なのだ。
その筆頭巫女に、わずか二十五歳にして就任しているスクルズは、同じ年齢で第一神殿と第二神殿の筆頭巫女になっていた神学校の同窓のウルズ、ベルズとともに、自分がハロルド市民が「美貌の三人巫女」と称賛してくれている存在のひとりであることを承知している。
だが、この十日間──。
スクルズは、目の前のノルズという女から、これまでの人生では考えられないような破廉恥な仕打ちを受け続けていた。
「お、お願いよ、ノルズ……。考えなおして……。か、隠れている建物の中であれば、もう、あなたの言うことはなんでもきくわ。でも、外に出るなんて、怖ろしいことは許して」
スクルズは哀願した。
「ああ、構わないわよ。あなたが嫌なら、あたしは、この第三神殿を出て、第一神殿で筆頭巫女をしているウルズのところか、第二神殿のベルズのところに行くわ。あなたに仕掛けたものをあの二人の身体にも仕込んでいるのよ。それを暴発させるわ。あっという間に肉片になってしまうんじゃないかしら。できるだけ人の集まっている場所でやってあげるわ。多分、劇的な見物になるわね。ハロルドの王都でも有名な三人の美人巫女のうち、二人が突然に爆死してしまうんだから。周りにいる者たちを巻き込んでね」
ノルズが意地悪く笑った。
「ああ……」
スクルズは項垂れた。
「さあ、脚を開きなさい。言うことを聞かないと、あたしの部下に魔道の言玉を飛ばして指示を送るわ。そうすれば、すぐに、あいつらの周りにとりついているあたしの部下が魔瘴石を暴発させる。ふたりは死に、この王都の真ん中に特異点が二個できあがるということね。そこから出現するのが、どんな魔獣なのかは知ったことじゃないけど、おそらく、大騒ぎになるでしょうね」
ノルズが意地の悪い口調で言った。
この十日──。
おそらく、同じ脅しを百回は聞かされた。
本当にウルズとベルズにも、魔瘴石と呼ばれる瘴気の結晶体を仕込んでいるのかはわからない。
だが、仕込んでいるのだろう。
スクルズの体内にノルズが魔瘴石を魔道で埋め込んだのは確かなのだ。
魔瘴石とは、かつて異界に封印された魔族や魔獣たちが生きるために必要な「瘴気」と呼ばれる悪の力の結晶体だ。
通常、魔瘴石は、魔族や魔獣が封印された異界と、この世界側を繋ぐ「異界の門」、すなわち「特異点」にできるものだ。
封印されているはずの異界との出入口が、なぜ時折、こっちの世界に出現するのかはわかっていないが、特異点ができるときには魔族や魔獣たちが生きるために必要な瘴気と呼ばれる彼らの力の源の一部が塊って、丸い結晶体を作る。
それが魔瘴石だ。
特異点が発生すると、封印されている魔獣がこちらの世界に出現する。だから、魔瘴石は魔獣の象徴ともされている。
いずれにしても、魔瘴石が生まれると、そこから瘴気が漏れ出て、魔瘴石はそれを吸い込み、どんどんと成長して大きくなる。魔瘴石が大きくなると、最初は力の弱い魔獣程度だったものが、やがては、人類に危害を及ぼす大量の魔獣が出現できるようになる。
だから、魔瘴石は発見次第に破壊されることになっていて、それを成した者には高額の褒賞金が与えられることになっているのだ。
その魔瘴石がスクルズの腹の中に埋められている。
ノルズがどうして、そんな魔瘴石を操れるのかは知らない。
だが、重要なのは、十日前にこの神殿の見習い巫女として突如スクルズの前に現れた彼女が、魔瘴石を操る能力を持っていて、再会の喜びに油断しているスクルズの隙を突いて、小さな魔瘴石をスクルズの体内に魔道で入れたということだ。
魔道の力を持つスクルズは、挿入された瞬間に、それが瘴気の塊りであることを悟った。
それでいて、魔瘴石とともに仕掛けられていたらしい「魔道封じの紋様」が効果を及ぼし、スクルズ自身が魔瘴石を取り出すのは不可能になってしまったのだ。
いまは、まだ魔瘴石が発動しておらず、魔界と人類世界を結ぶ通路は開かれてはいないが、それが発動しさえすれば、大きな瘴気が周囲に撒き散らされて、魔界との通路がこの王都に開けてしまうであろうということもわかった。
スクルズは愕然としてしまった。
しかも、ノルズは同じものをスクルズの幼馴染にして、いまでは、スクルズ同様に、王都の三神殿のうちのほかの二神殿の筆頭巫女になっているウルズとベルズにも、ひそかに魔瘴石を仕掛けたというのだ。
また、ふたりに仕掛けたものは、スクルズのものとは異なり、自分ではそれを挿入されたかどうかわからないはずだという。
さらに、ウルズとベルズのふたりの周りには、ノルズの部下がついていて、スクルズが誰かに助けを求めたり、ノルズのしていることを誰かに告げたりすれば、ふたりを見張らせているウルズとベルズに仕込んだ魔瘴石を暴発させて、ふたりを爆死させるとも威したのだ。
スクルズにはどうしようもなかった。
王都の危機という状況だが、スクルズには、ウルズやベルズを犠牲にして、誰かに危機を伝えるということはできなかった。そもそも、スクルズには、ノルズがいないときも、常に誰かが見張っている感じであり、スクルズが動くことで、魔瘴石を暴発させられて、特異点が解放されてしまうことになってしまうのだ。
ノルズは、スクルズがノルズの命令に従っている限り、王都内で特異点も発生させないし、ベルズやウルズを殺さないとも言っているのだ。
いずれにしても、ノルズが何らかの組織に属しているのは確実だろう。
ノルズが属している組織がどういう組織であり、なにを目的に三人の前に出現したのかは教えてもらえなかった。
ただひと言だけ、これは三人に対する「復讐」だとノルズは、スクルズに告げた。
しかし、スクルズは、ノルズに復讐をされるなんの理由も思い出せない。
だが、ノルズは、それ以上のことをスクルズに対して説明しようとはしなかった。
とにかく、ノルズに言われたのは、病気と称して居室にこもり、看病の下級巫女にノルズを指名しろということだ。
こうして、十日前からひそかに、この神殿の一画になる筆頭巫女の居室で、ノルズに「調教」されるという日々が開始された。
逆らえば、ウルズとベルズの爆死と引き換えの王都内での特異点の発生と強力な魔獣の異界からの召喚──。
スクルズは言いなりになるしかなかった。
そして、十日目──。
今夜は、久しぶりに神殿の外に出されるということになった。
スクルズは踵の怖ろしく高いブーツを履かされただけの素裸だ。
「さあ、脚を開くのよ、スクルズ」
スクルズは項垂れながら脚を開く。
ノルズの指がスクルズの股間を淫らに弄りだした。
数日前までは薄っすらと股間を覆っていた、髪の色と同じ栗毛の茂みはいまはない。
ノルズによる「調教」の過程ですっかりと剃られてしまったのだ。
「あ、ああっ……」
はしたない声が出る。
この十日、朝昼晩と休むことなく快感漬けにされ、スクルズの身体は信じられないくらいに淫らなものになった。
しかも、ノルズがスクルズに与える食事にも飲み物にも、強い媚薬が混ぜられているのだ。
ただじっとしているだけで、悶え震える身体をこうやって指で弄られては、スクルズにはもう声を耐えることなどできなかかった。
「ふくうっ──」
スクルズは悲鳴のような嬌声をあげてしまった。
ノルズが、スクルズの股間を指でなぶりながら、肉芽を無造作に引き剥いて、その根元に手に持っていた輪を嵌めたのだ。
その輪に繋がった鎖の端をしっかりとノルズは握っている。
スクルズはこれからされようとしていることに震えた。
ノルズは、犬のようにスクルズの身体に鎖をつけて、外に連れ出そうとしているのだ。
しかも、繋げるのは首ではなくスクルズの肉芽だ。
だが、どんなことをされても逆らえない。
逆らえば、スクルズだけでなく、ウルズとベルズの爆死──。
魔獣による王都住民への大被害──。
どうしたらいいのか……。
「ふふふ……。十日前に比べて、随分とここに嵌めやすくなったわね。だいぶ大きくなったわ、スクルズ」
「あっ──。ひ、引っ張らないで、ノルズ……。おっ、お願い──」
わざとらしく鎖を動かされて、スクルズは悲鳴をあげた。
肉芽の根元をぎゅっと締めつけられると、スクルズはなんともいえない切なさのような感覚に包まれて、すっかりとノルズに逆らう気持ちを失ってしまう。
ただでさえ、四六時中口にさせられている媚薬入りの飲食物のために、身体は火照りきっている。
そのうえに肉芽を思い切り刺激する金属の輪に締めつけられてしまい、スクルズはたちまちに腰をくなくなと砕けさせてしまった。
「さあ、行くわよ」
ノルズはそんな状態のスクルズに一枚のマントを投げた。袖のない肩に羽織るかたちの黒いマントであり、腰の部分で合わせ目を縛るだけのものだ。それを素裸に直接に着させられた。
「両手は自分で後ろ手になるのよ」
スクルズがマントのベルトをしっかり縛っていると、ノルズが言った。
スクルズは、両手首に金のブレスレットをはめさせられていた。その一部を互いに噛み合わせて捩じると、接合して離れなくなる仕掛けだ。
つまりは、手錠になるのだ。
一度嵌め合わすと、他人の誰かにブレスレットの合わせ目にできる突起を押してもらわなければないと外すことはできない。
スクルズは、命じられるままにマントの中で自らを後ろ手に拘束した。
「これをしなさい。有名な三人巫女のひとりのスクルズだと知られたくないでしょう?」
ノルズはスクルズの顔半分を覆う飾り羽根の付いた目の周りを覆う「目隠し」を嵌めた。
完全に視界を妨げるわけではないが、くり抜いてある部分に薄布があり、前がよく見えない。
スクルズは怖くなった。
「さあ、行きましょう。今夜は夜の蝶になるのよ……。きっと、愉しい夜になると思うわ、スクルズ……。だけど、こうやって調教をしていると、神学校時代を思い出すわね。懐かしいわ」
神学校時代の思い出というのは、実はスクルズ、ベルズ、ウルズ、そして、ノルズは高位魔道遣いを目指す学生として同部屋であり、この四人はお互いの身体を慰め合う百合の関係だったのだ。
しかし、そのまま神殿界に残って、王位魔道師としてあっという間に、揃って王都三神殿にまで昇りつめたのに対して、なぜか、ノルズについては突然に神殿界から去り、スクルズたちの前から姿を消していた。
その理由はわからない。
だが、少女時代のそんな関係があったから、スクルズは突如として現れたノルズを受け入れた。
きっとベルズやウルズもそうだったに違いない。
「おいで、スクルズ」
ノルズがスクルズの股間に繋がっている鎖をぐいと引いて笑った。
「んひいいっ」
スクルズは悲鳴をあげて、慌てて脚を前に進めた。
*
夜の街とはいえ、スクルズが身にまとっているマントの合わせ目から伸びる鎖は、その気になれば、すれ違う男たちは、はっきりと認めることができたはずだ。
しかも、素裸にマント一枚という格好でありながら、前がはだけないように両手で閉じあわすことができない。
自然に合わせ目が次第に離れていき、歩くたびに白いスクルズの腿がちらちらと露出するようになっていた。
さらに、ノルズがわざとらしく夜の繁華街を大股でどんどんと進んでいく。
スクルズはマントの前が、身体の揺れで完全にはだけてしまったらと思い、もう生きた心地もしなかった。
人の目に死にたくなるような羞恥が走る。
しかも、脚を進めるたびに、肉芽が強く刺激されて、淫らな疼きが走り、股間に蜜が溢れかえる。
悲鳴が出そうになるのを何度も堪えた。
そして、足がもつれるたびに肉芽が強く引っ張られて、泣き声をあげそうにもなった。
そうやって、しばらく、どこに向かうでもなく、ノルズに夜の王都を引きまわされた。
やがて、薄暗い路地にやってきた。
ノルズは、たまたまあった一本の低木の幹に、スクルズの肉芽に繋がっている鎖をひと巻きさせて結んだ。
さらに、次の瞬間、ノルズは、いきなりスクルズのマントをはがし奪った。
「あっ、な、なにをするの──」
路地とはいえ、人の多い王都の城郭の中だ。
そんな場所で素っ裸にされたスクルズは、思わず腰を屈めて身体を隠そうとした。しかし、股間の鎖がそれを邪魔して許さない。
スクルズは夜風を肌に感じて身を竦ませた。
「じゃあ、しばらく待っていてね。遊び相手を連れてくるから」
ノルズがくすくすと笑いながら、どこかに行ってしまう。
スクルズは正真正銘の恐怖を感じた。
こんな格好で、たったひとりで取り残された。
悲鳴をあげそうになった。
だが、声を出すことはできない。
助けを呼べば、こんな破廉恥な恰好をしているところをみんなに見られるだけでなく、ノルズに脅されていることを誰かに教えることにもなる。
そんなことをすれば、ウルズやベルズが……。
王都の住民が……。
そして、スクルズがどうしていいかわからずに、狼狽えているうちに、完全にノルズはどこかに行ってしまった。
スクルズはたったひとりで残されてしまった。
だが、肉芽を繋がれた鎖を樹木に結ばれて、逃げることも、しゃがむこともできない。
スクルズは途方に暮れた。
そのとき、どやどやと誰かがやってくる声がした。
スクルズは飛びあがりそうになった。
やってきたのは、見知らぬ人夫風の男たちだった。
三人ほどいる。
スクルズは、飾り付きの目隠し越しに、少し酔っているような彼らの姿をはっきりと捉えた。
「おい、本当にいるぜ」
「本当だ。あの女の喋った通りだな」
「さっそく、やっちまおうぜ……。おい、見ろ。股間に繋いだ鎖で樹に繋がれていやがる──。こりゃあ、面白れえ──」
男たちが躊躇なくスクルズを取り囲んだ。
ひとりが樹の幹から鎖を外す。
「あっ、なにをなさるの?」
スクルズは声をあげた。
だが、ひとりに股間に繋がる鎖を握られている。
これでは逃げられない。
「あっ、いや──。さ、触らないで──」
身体の前後から男たちの手が伸びた。
おぞましさにスクルズは死にもの狂いで身体を暴れさせようとした。しかし、肉芽に喰い込んだ輪が引っ張られて、それを阻止される。
スクルズは大人しくするしかなかった。
「ああ、やめて──。さ、触らないで──」
スクルズは控えめな悲鳴をあげた。
この期に及んでも大声を出すことは憚られた。
スクルズの身はともかく、ウルズやベルズが……。
「こんな痴女の格好をしながら、触るなもねえもんだ。まあ、遠慮なく騒ぎな」
前側の男がスクルズの股間の亀裂に指を押し込んできた。後ろからは乳房を揉まれる。
さらに、もうひとりはスクルズの口に舌を押し込もうとしてきた。
「いやあ──」
スクルズを襲う三人の見知らぬ男の破廉恥な行為に、ほとんど無意識に身体を左右に捩じった。
そのとき、顔につけていた目隠しが男のひとりに当たって外れた。
「ああ──見ないで──」
とっさに顔を伏せて隠した。
だが、三人の中のひとりがびっくりしたような声をあげた。
「あ、あんたはスクルズ様──」
その男が叫んだ。
すると、残りのふたりも呆気にとられたような表情になって、スクルズから手を離した。