【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
やって来たのは、ガヤの城郭の中心部にある石造りの大きな建物だった。
もともとはガヤを治める政庁官の屋敷だった場所ということであり、政庁官の家族が生活するとともに、ここで行政業務もしていたそうだ。
そんな構造になっている。
政庁官家族を惨殺した賊徒たちが一度拠点にし、その後、南方王国軍が奪回して司令部として占拠しているということだ。
いまは、イザベラの仮政庁というところだろう。
馬車が奥に乗り入れられるような前庭の造りになっていて、エルザやアネルザが乗っている馬車は、そのまま屋敷の敷地内に入り、中心部の建物に向かってゆっくりと進んでいく。
馬車の窓から眺めていると、多くの王軍の兵たちの姿が動き回っているのが見えた。
しかし、馬車は政庁部らしきの前には停まらず、さらに奥に進んでいく。
すると、歩いているのがエルフ族の女兵たちばかりになり、馬車は最初に通り過ぎた大きな入口のようなところではなく、小さな入口に辿り着いた。
エルフ族の女兵がふたり立っている。
「ここだ」
イザベラが声をかけた。
馬車の扉が外から開かれる。
開けたのは、エルフ族の女兵だ。具足姿だが
エルザが息をのむほど美しい。
思わず、見とれてしまうほどだ。こんなに美しい女性が一介の女兵というのは少し不似合いのように思った。
「王妃殿下、エルザ様、遠路お疲れ様です。ようこそおいで頂きました」
馬車の外でエルフ兵とともに待っていたのは、イザベラの女官長のヴァージニアだ。
エルザはノールの離宮でしばらく一緒だったので、もちろん面識はある。
「ああ、つつがなくやっているみたいだね。元気そうで安心したよ」
アネルザが馬車の中から声をかけた。
「いいえ、死ぬかと思いましたわ。でも、こうやって、笑っていられるようになってほっとしてます」
馬車の下にいるヴァージニアが白い歯を見せた。
そして、アネルザが立ちあがって馬車を降りようとすると、扉を開けたエルフ族の女兵がそのまま手を取って、それを助ける。
続いて、イザベラ。同じようにもうひとりの女兵が手を取った。エルザは続いて下車をし、ケイラ、ユイナ、ミウと降りる。
「あたしは、馬車を回してきます。ヴァージニア、あとはよろしくね」
馭者台からイライジャが声をかけ、全員が降りたところで、馬車が動き去っていく。
「じゃあ、わたしたちもいいわね。ミウ、行くわよ。もう護衛役は終わりでいいんでしょう」
ユイナがミウに声をかけた。
「えっ、でも、あたしは、皆さんと一緒に行こうかと……」
「なに言ってんのよ。あいつに命令されたノルマがあるって言ったでしょう。明日までに、生活魔道具を五十ずつ、二十種類納品できるようにしないといけないのよ。忙しいんだから──。まったく、なんで、そんなことやらないといけないのよ……」
「それは、ユイナさんが命じられたことじゃあ……」
「言われたことやらないと、折檻を受けるって言ったでしょう。あいつのことだから、くだらない悪戯をするに決まってんだから。いいから、手伝いなさい──。マーズにもやらせようとしたけど、あいつ、細かいことはだめなのよ。手伝ってったら」
「ええ──。だって……」
「だってじゃないわよ。昨日だって、戦場から戻ったばかりなのに、魔道具作り命令されて、面倒だから放って寝たら、薬を塗って貞操帯で封印して、仮想空間とやらに、一ノスかけて、一日以上放り込んだのよ。とんでもない鬼畜よ──」
「でも、その後、可愛がってもらったんでしょう。いいじゃないですか」
「あの貞操帯を外してもらうために、どんなこと喋らされたと思ってんのよ──。あんな屈辱もういやよ。とにかく、来なさい──。じゃあね、王妃様、皆さん。ごきげんよう」
ユイナはミウを連れて慌ただしくどこかに行ってしまった。
エルザは目の前の会話に唖然としてしまっていた。どうでもいいが、王女や王太女の前でする会話ではないだろう。
それに、話の内容はさっぱりと意味がわからなかった。
貞操帯──?
一ノスで一日の仮想空間──?
なんのこと──?
それに、折檻……。
「ふふふ、相変わらず、愉しい娘ね。あれで魔道技師としては天才なんだから、本当にお兄ちゃんの周りには、人材が集まるわねえ。あの人間族の女の子も、人間族にするにはもったいないくらいの貴重すぎる
ケイラが愉しそうに笑った。
アネルザも怒るでもなく、にこにこしている。
問題ないのだろうか……。
エルザは戸惑っていた。
とにかく、随分と気安い。目の前のエルフ族の美しい女兵たちも、まったく緊張感のない様子である。
「では、中にどうぞ。まずは旅の汗をお流しください。大浴場に案内します。ガド様とロウ様もそこでお会いになるそうです。お待ちかねですよ」
ヴァージニアが先導して建物内に進んでいく。
大浴場で会う?
身体を洗うことなどできない船室にずっといて、そのままここにきたのだから、面談の前に汗を流すのは当然だが、そこで会うというのはどういう意味なのだろう。
もしかして、聞き間違ったのだろうか。
「大浴場? そんなものあったかねえ」
前で廊下を歩くケイラが首を傾げるのが見えた。
「ガド様とスクルド様が魔道でお造りになったのです。ロウ様が喜ぶからと……。そりゃあ、すごかったですよ。大魔道なんて初めて見ましたが、あっという間に土がくり抜かれて地下室ができあがって、大きな石がどんどんと宙を動いていって……。本当に凄まじかったとしか……」
先頭のヴァージニアが進みながら笑顔をこっちに向ける。
魔道であっという間に造った?
エルザはびっくりした。
「へえ、あいつもたまには、いい仕事するじゃないの。ポンコツ女王の面目躍如だねえ」
ケイラがけらけらと笑った。
「ロウ様って、本当に浴場がお好きなんですねえ。ご褒美だといって、女王陛下とスクルド様はずっとその浴場で可愛がってもらってます。だから、ついでに、そこで王妃様たちともお話をしようかってことに……」
「へええ。じゃあ、アネルザ、そういうことでいいかい? 裸の会談ということじゃないかい。さっきも言ったけど、エルフ王家は、ハロンドール王家の要望を全面的に応じるつもりよ。見返りもなし。お兄ちゃんが望む限りのことだけど」
ケイラが横を歩くアネルザに言った。
「そ、そりゃあ、ありがたいけど、ケイラ……。ところで、さっきから、女王とかいう単語が聞こえるんだけど、まさか、女王というのはガドニエル女王陛下のことじゃないよねえ」
アネルザが戸惑いの声をあげた。
エルザもそれが疑問だった。
その前も、ヴァージニアが“ガド様”と口にした気がするし、“ガド”の愛称で思い浮かぶ女王というのはガドニエル女王しかいない。
だが、ガドニエル女王は、百年間も表には出なかった謎の女王と呼ばれていて、しかも、エルフ王国の王や女王がナタル森林の外に出るというのは、長いエルフ族の歴史でもなかったはずだ。
そんなはずはないのだ。
「あれ、言わなかった? うちのポンコツ女王は、ずっとお兄ちゃんと一緒よ。表向き、お忍びということになっていて、口外できないんだけどねえ」
ケイラが言った。
エルザは仰天してしまった。
「えっ、エルフ族の女王陛下がここにおられるのですか──?」
思わず、後ろから口を挟んでしまった。
「まあ、そんな構えるような相手じゃないさ。お兄ちゃんの愛人になるんなら、全員が家族なんだから、気安くすればいいのよ。あれで魔道だけはものすごいから、一緒にいれば、ちょっとでもお兄ちゃんのお役に立つでしょうし。さっそく、いい仕事したようだから、これは褒めてやらないとねえ」
ケイラが嬉しそうに言った。
エルザは耳を疑った。
本当に、本物のエルフ国女王のガドニエル陛下──?
戸惑ったが、そのままみんなは何事もないように建物内を進んでいく。やがて、廊下は地下に降りる階段の前に着いた。にわか作りのようなまるで洞窟をくり抜いたような感じの階段だ。
ただ、階段部分だけは磨かれたように綺麗になっていて、そこを全員で降りていく。
そして、両開きの大きな扉の前に辿り着き、扉を過ぎると広い脱衣場になっていた。
さらに奥に扉があり、そこが浴場なのだろう。
大勢の女たちが愉しそうに話をしている声が聞こえてくる。
「では、お召し物をお預かりします」
ヴァージニアが頭をさげた。
そして、壁にある紐を引っ張って合図のような仕草をした。
浴場側から鈴の音のようなものが聞こえた。
すると、浴場の扉が内側から開いた。
真っ白い湯気と温かい風が流れてくる。
「ええっ──」
エルザは声をあげてしまった。
現れたのは、イザベラの侍女たちだ。
トリア、ノルエル、モロッコだ。イザベラとヴァージニアとともに、この南部の戦場に向かったと伝えられていた者たちだ。
それはともかく、三人とも一糸まとわぬ素裸だ。
全裸の三人がいきなり現れたのである。
「こんな格好で失礼をいたします、ふふ」
「し、失礼します」
「お手伝いします」
トリア、ノルエル、モロッコが全裸のまま頭をさげた。
三人とも、一介の侍女とは思えないくらいに、肌が綺麗で体型も素晴らしい。改めて、エルザは感嘆してしまった。
それはともかく、エルザは彼女たち身体のある場所に思わず目をやってしまった。
三人とも、股間にあるはずの恥毛が一本もないのだ。
童女のようなつるつるの股間で、美しい亀裂もくっきりと見えている。
悪いとは思うが、視線を向けてしまった。
「お前ら、その股はどうしたんだい? 前はちゃんと生えていたと思ってたけどね」
しかし、アネルザが遠慮のない様子で面白がるように訊ねた。
「さ、さっき剃られたんです……。大浴場作りの記念に、全員の剃毛をするって、ロウ様がお言いになって……。さっきまで順番に剃られてました。それでこんなに……」
トリアだ。
顔を赤くして恥ずかしそうにしている。
しかし、剃毛──?
だけど、アネルザもケイラも別段驚いた感じでもなければ、憤る感じでもない。ちょっと呆れたように笑っているだけだ。
「相変わらずだねえ……。じゃあ、まだロウ殿も中なんだね?」
アネルザだ。
すでに、手伝ってもらいながら服を脱ぎ始めている。イザベラとケイラも侍女たちに手伝ってもらって、脱衣を開始した。
ただ、エルザだけは戸惑ってしまって、そのままでいる状況だ。
ええ?
ええ──。
えええ──?
どうするのだ?
本当に、全員で浴場に入るのか?
いきなり裸になって──?
だけど、エルザ以外は戸惑いの様子もなく、当たり前のように平然としている。
すでに下着姿だ。
それも脱ごうとしている。
自分がおかしいのか?
「あ、あのう、浴場には女王陛下だけでなく、ロウ殿という方もおられるのですよねえ?」
エルザは声をかけた。
すると、全員の視線がエルザに集まった。
「ああ、申しわけありません。お手伝いします」
ヴァージニアがエルザが服を脱ぐの手伝おうと手を伸ばす。
「わっ、ちょ、ちょっと待って──」
エルザは慌てて両手で自分の胸を抱くようにしてしまった。
「どうしたんだい、エルザ? ああ、恥ずかしいのかい」
ちょっと困惑した表情になっていたアネルザが、やっと合点がいったという顔になる。
「そういえば、まだ、エルザはお兄ちゃんの女じゃないのよねえ。だったら、服のまま入る? 別にいいんじゃない」
ケイラも声をかけてきた。
こうやって、話しているあいだにも、アネルザ、ケイラ、イザベラはすっかりと全裸になってしまった。
三人ともとても美しい身体だ。
アネルザなど、四十台とは思えない若々しい身体だし、それはケイラも同じだ。イザベラは少女らしい身体だが、お腹はちょっと膨らんでいて、それはそれで艶めかしい。
なによりも、三人とも……いや、現れた全裸の三人の侍女も含めて、とても身体が綺麗すぎるのだ。
それもあり、エルザは服を脱ぐのを
「服を着たまま、ロウ様やガド様と面談されますか?」
ヴァージニアが真顔で訊ねてきた。
「で、でも、女王陛下は裸ですよねえ?」
エルザは当惑して言った。
「そりゃあ、もう。皆様、全裸です。タオルで隠すことも、ロウ様がお禁じになったので……。だけど、エルザ様はいいと思いますよ。そのままで入られては?」
ヴァージニアだ。
「だ、だけど……」
ええ?
どうするの──?
ガドニエル女王まで全裸でいる場所に、服を着たまま入るわけには……。
でも、中には、ロウという男性もいるという……。
そこになにも隠さずに入っていく勇気は、ちょっとエルザにはない。
すでに、人の妻にもなっていた女が恥ずかしがるなんてとも思うが、恥ずかしいものは恥ずかしい──。
どうする──?
そもそも、どうして、誰も違和感を口にしないのだろう?
本当に、エルザの感覚がおかしいのか?
自分が無駄には恥ずかしがっているのは、不自然なことなのか?
だいたい、さっきから“剃毛”だとか、“貞操帯”だとか……。ロウというのはとても好色な男と耳にしているし……。
そんな男が待っている場所に、一糸まとわぬ無防備な全裸で──?
エルザは困ってしまった。